瑕疵担保責任を追及できる期間や時効消滅、免責の可能性に関する注意点

後になってから気付く「瑕疵」の責任を追及するには、期限や時効、免責の可能性について知っておく必要があります。

ここでは、契約書や関連法を確認した上で、瑕疵担保責任を追及できる期間消滅時効免責の可能性について重要な点を整理していきます。

目次

物件に存在した欠陥に対し売主が負う責任を「瑕疵担保責任」と呼ぶ

不動産を購入し、後になってから欠陥があることに気が付くことがあります。
こういった欠陥を「瑕疵」と呼び、買主は瑕疵に気付いてから1年以内であれば、売主に対し損害賠償あるいは契約解除を求めることができます。これを瑕疵担保責任と言います。

例えばマンションを購入し住み始めてみると、雨漏りがすることがわかったり、壁にひびが走っているのを見つけたりすることがあります。欠陥がある物件は日常生活を送る上で不便や危険性を伴うものですから、それがわかっていれば買主は購入には至らなかったはずです。

この時、民法に基づく以下の定めに従って、売主に対して責任を追及することができる可能性があります。

  • 民法第570条により、買主は売主に対し損害賠償請求を行うことができる。
  • 民法第570条により、瑕疵の程度が契約の目的を達成できないほど大きい場合は、売買契約自体を解除できる。
  • 民法上では、責任追及について期限を定めていないため、契約書において売主と買主が任意に期間を定めることが可能である。
  • ただし権利行使期間は買主が瑕疵に気付いた時から1年以内とされているため、その間に損害賠償請求や契約解除を行わなければならない。

新築物件は10年保証が義務付けられているが、契約書では2年程度に短縮されることがある

住宅の品質確保の促進等に関する法律により、売主は新築物件に対し10年間の保証を行うことが義務付けられています。

対象となるのは建物の基礎や柱、床や筋交いなどの構造体力上主要な部分と、屋根や外壁等の雨水侵入を防止する部分となり、買主は修補や損害賠償、修補不可能である場合は契約解除を求めることができます。
これに対し売主は無償で修補に応じたり、損害を賠償したり、契約解除に応じなければいけません。

ただし、売主側も認識できない瑕疵が存在するのも事実であることから、期限を定めない限りいつまでも買主から瑕疵担保責任を追及される可能性があります。

これでは売主の立場を常に不安定にするため、契約書において売主の瑕疵担保責任を追及できる期間を1~2年程度としたり、瑕疵担保責任そのものを免除したりする場合があります。買主としてはこの部分をしっかりと確認した上で契約に合意しなければなりません。

自分自身が売主の立場であれば、できる限り瑕疵担保責任を免除してもらうことが重要です。瑕疵担保責任がついてしまうと、売った後も一定期間は瑕疵があった場合に責任を追及されてしまいます。
すっきりしない時間が長いと不安も募りますので、多少値引きしたとしても瑕疵担保責任を免除してもらえるのであればその方が良いでしょう。

反対に、買主側の場合は瑕疵担保責任期間ができる限り長い方が安心です。
また最近ではホームインスペクション(住宅診断)を国が推進しています。古い住宅は外観だけ見ても本当に大丈夫な物件なのか判断がつきません。

購入後のトラブルを回避するためにも、専門家に一度ホームインスペクションをお願いして確認してもらってから購入する方が確実でしょう。

損害賠償請求の権利は10年で時効となり責任追及できなくなる

平成13年の最高裁判所による判例では、瑕疵担保責任に対する損害賠償請求の権利は10年で消滅時効を迎えるとしました。
買主が物件を購入し引き渡しを受けた時を起算日として、10年以内に瑕疵を発見しかつ損害賠償請求を行わなかった場合、以降は責任追及する権利を失うことになります。

もし消滅時効の定めがなかった場合、買主が瑕疵を発見しない限りいつまでも責任追及の権利を有しているため、売主側に過度の負担を与えることに繋がります。
このような事態を避けるため、最高裁判所は、瑕疵担保の損害賠償請求権利を10年で時効とするのが相当と判断したのです。

従って買主には、常に購入物件の状態を確認し必要に応じて点検する等して、瑕疵を早期に発見できる努力が求められます。

違法設計や手抜き工事に対しては不法行為責任として追及可能

民法第724条では、不法行為責任を追及する場合、被害者が損害と加害者を認識した時点から3年で権利は時効消滅するとしています。
逆に言えば、違法設計や手抜き工事等の不法行為が原因となる損害を被害者側が発見できなかったり、加害者が誰になるかも認識できないままだったりする場合、そもそも時効計算自体が開始しないことになります。

瑕疵担保責任の時効は10年であり、瑕疵に気付いてから1年以内に権利を行使する必要がありますが、不法行為責任の場合は不法行為があってから20年以内を除斥期間とし、被害者が被害と加害者の両方を認識してから3年で消滅時効を迎えます。

法で定めた期間に権利を行使しなければ権利消滅となるため、不法行為責任の場合は20年以内に訴訟を起こす必要があります。これを除斥期間と呼びます。20年の除斥期間中に不法行為責任を認識し3年以内に損害賠償請求等を行わなかった場合、行使されなかった権利は消滅時効を迎え消滅します。

瑕疵担保責任の場合、10年の除斥期間が経過して責任追及できないとしても、それが不法行為責任でもある場合は、除斥期間が20年であるため責任追及できる可能性があります。

困難を伴う瑕疵担保責任問題は速やかに弁護士へ相談を

民法や宅建業法、建築関連法等の定めが複雑に絡み、かつ期間や時効計算が変化しやすい問題であるため、瑕疵担保責任の追及は困難を伴うものとなります。
このためご自身だけで抱え込んでしまうと負担が過度になり、しかも解決が遠のいてしまう可能性も出てきます。

当事務所では、難解な瑕疵担保責任問題でもできるだけわかりやすく説明し、理解と納得を頂いた上で迅速な手続きを行うよう心がけています。
売買契約書や設計図、瑕疵の写真等の参考資料をご持参の上、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

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