共有不動産を売却したいのに同意が得られないときはどうする?共有物分割請求の方法

亡くなった親が持っていた土地を、相続人である複数の子による共有不動産として相続した場合等で、将来的に土地を売却し現金として分割しようと約束することがあります。
しかし各人の生活設計が異なることから、いざ売却となった時にいずれかの名義人が同意を拒否し、話し合いが進まなくなるケースがあります。

ここでは、共有する土地建物を売却したいのに全員の同意が得られない場合の協議の仕方や対処方法についてご説明します。

目次

共有不動産を売却するには共有名義人全員の同意が不可欠

不動産を持っていた親の死亡により複数の子が土地建物を共有して相続するような場合、その不動産は共有名義の不動産となります。
不動産自体は一つしか存在しないものの、所有権利を持つ人物が複数いる状態であり、例えば3人で共有している場合は3人の名義人が存在し、所有権利を3分の1ずつ持っていることになります。

所有権が複数人にまたがっているため、売却には名義人全員から同意を得る必要があり、以下の書類を共同で用意しなければなりません。

  1. 登記済権利証または登記識別情報
    平成18年までに登記を行った不動産については「登記済権利証」を、平成18年以降に登記を行った不動産については「登記識別情報」が必要になります。いずれも登記簿に記載された人物が法的に認められた所有者であることの証明になります。
  2. 土地の測量図
  3. 境界確認に関する書類
    所有する不動産の面積や隣地との境界を確認するための書類です。本来、土地面積や境界線は不動産購入時に明確になるものですが、売却に向けて再確認する必要があります。
  4. 全名義人の身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票
    名義人全員分の身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票を揃えて本人確認書類とします。本人確認書類が揃い、売却契約書に全名義人が実印押下して初めて、売却することができるようになります。

共有名義人同士での話し合いが進まない場合、訴訟を起こして裁判所による判断を仰ぐことになります。判決の傾向としては「現物分割」であり、不動産を分筆することにより平等に分けることが主旨となりますが、土地は接道状況等により分筆後の評価額を平等にすることが大変難しく、また建物の場合は分割自体が現実的な方法ではありません。

そこで、いずれかの共有人が他の共有人に自分の持ち分を売却し、相手はその対価を支払って分割するか、それができない場合は裁判所により競売が命じられ、共有状態が解消されるようになります。競売にかけられる可能性がある場合、共有名義人としては自分の意思に反する事態になることを不安視し、自主的に持ち分の売買を行って分割しようとするケースも見られます。

【ワンポイントアドバイス:不動産の共有はできる限り避けるべき】

遺産相続で不動産を相続する場合は、できる限り共有での相続は避けることをお勧めします。
遺産分割を行う際には、法定相続分に応じて不動産を共有するという選択をするケースがありますが、これは遺産分割協議の解決策としては良いかもしれませんが、その後のことを考えるとお勧めはできません。

売却する際に全員の同意が必要になるため、必要な時に現金化することが難しくなるためです。また、二次相続が発生するとさらに持ち分が分割され、ますます売却がしにくくなります。

ですので、遺産分割の際に不動産が相続財産に含まれている場合は、売却してその現金を分割する換価分割か、誰か一人が単独で相続した上で、代償金で調整することをお勧めします。

1つの土地を共同所有している場合は分筆を行って分割する

土地の共有名義人全員による同意が困難である場合、土地を分筆する方法を採ることになります。
持ち分に従って土地を分割し、各名義人が単独で分割された土地を所有できるようになれば、各々の意思で土地を所有し続けたり売却したりすることができます。

しかし土地を分筆する時は、分筆後の土地評価額に大きな差が生じないよう慎重に進める必要があります。
例えば不整形地を含む土地は評価額が低くなりますし、接道条件の良い土地は評価額が高くなるため、分筆を行うことで逆に格差が生まれてしまいかねません。
分筆後に元共有名義人の間で不満が生じないよう、慎重に調査を行い、必要に応じて弁護士を介入させる等して対応することが大事です。

土地を分筆し、登記を行い、所有権の移転まで済ませたら、ようやく分筆された土地は個人名義のものとなり自由な売却を行うことができるようになります。

建物は分筆できないため「共有物の分割の申し立て」を行って各人に分ける

民法256条では、各共有名義人はいつでも不動産の分割を請求できることになっています。
不動産をどう分割するか話し合いによる解決を進めることが原則なのですが、どうしても協議がうまく進まない場合は、裁判所に共有物の分割の申し立てを行って判断を仰ぐことになります。

これを「共有物分割請求訴訟」と呼び、3種類ある分割方法から最も適切な方法を裁判所に判断してもらいます。

現物分割

土地は分筆による分割が可能ですが、建物は分筆することができません。従って裁判所の判定からは除外されることになります。

換価分割

共有名義になっている建物を売却し、得た販売代金を共有名義人の間で分配する方法で、最も現実な方法であると言えます。ただし売却には全名義人の同意が必要になるため、一人でも反対があれば手続きは困難になりやすいと言えます。

代償分割

一人の名義人が十分な経済力を持っている場合に有効な方法です。全員の同意のもとで共有不動産をその名義人一人のものとする代わりに、持ち分に基づいて他の名義人に対し金銭を支払う方法で、価格賠償とも呼ばれます。過去の最高裁判例でも、特定の名義人が建物を所有することが相当であり、正当に評価された価格が公平に分配されると期待できる場合は代償分割による建物の分割が可能であると示されています。

共有人同士のトラブルや難解な分割手続きは弁護士に相談を

共有人同士が非常に協力的であれば売却や分割にまつわる問題は発生しませんが、土地建物の活用については各人が思惑や意見を持つことから、ひとたび問題が起こるとこじれやすくなる傾向があります。

また、分筆の仕組みや法的前提を理解することは簡単でなく、弁護士の力を借りなければ混乱と難航の原因となってしまいます。

当事務所では不動産トラブルに関するご依頼を豊富に取り扱っていますので、共有不動産の売却についてご不安がある時はぜひお気軽にご相談ください。

この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

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