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入居者が長期間賃料不払いを続けている、近隣に迷惑をかけているなどのため、強制退去させたいと考えるオーナーもいるでしょう。
強制退去は、やり方を間違えると大きなトラブルになることがあります。
詳しく知りたいところです。
入居者を強制退去させることは容易ではありませんが、正当な理由があれば認められます。
本記事では、強制退去が認められる理由・条件、強制退去させるための手順・注意点を解説します。
強制退去は、家賃滞納や悪質な迷惑行為などを続ける入居者(借主)が、オーナーからの退去・明け渡し要請に応じない場合にとり得る法的措置です。
オーナーは、入居者を相手に裁判を起こし、建物明け渡しの強制執行を申し立てられます。
物件を明け渡してもらうことが最終目的ですが、入居者の家財なども明け渡し・撤去の対象です。
強制退去は簡単に認められませんが、正当な理由があれば実現できます。
入居者に繰り返し注意しても家賃帯納や迷惑行為の改善が見込めないときは、入居者の強制退去を検討せざるを得ません。
強制退去は容易なことではなく、正当な理由が必要です。
入居者の強制退去が認められる正当な理由・条件として、次の2つが考えられます。
オーナーと借主である入居者の信頼関係が破綻したときは、契約関係の継続は困難です。
建物の賃貸借契約は、オーナーと入居者の高度な信頼関係を前提に成り立つからです。
次のような行為は信頼関係破綻の考慮要素になります。
再三にわたり支払い催促や注意をしても、入居者が対応しない場合です。
入居者に家賃を支払う意思が全くなく、滞納が継続している状況が該当します。
信頼関係が破綻しているとされる目安は、一般的に3か月以上の滞納です。
滞納を放置していると時効が成立するため注意しましょう(民法166条1項1号)。
入居者が騒音や悪臭を発したり、暴力行為をするなど、近隣住民に迷惑行為を続けている場合です。
入居者に過失や非違行為があっても、軽微であれば信頼関係破綻とはいえません。
入居者の迷惑行為により、ほかの入居者が退去することや、近隣住民からオーナーが訴えられることもあるので、放置するのはNGです。
賃貸借契約に違反する行為とは、無断転貸、入居定員オーバー、ペット無断飼育などです。
無断転貸は、民法で禁止されており(民法612条1項)、契約解除理由になります。
居住用の建物を店舗などとして使う行為も、用法順守義務(民法616条で準用する民法594条1項)違反になり、契約解除理由です。
ペット禁止や入居定員が契約に明記されている物件での動物飼育や定員オーバーは、契約違反と同時に用法順守義務違反になります。
ただし、契約違反があっても、その程度が軽微である場合には解除できない場合もあることには注意が必要です。
強制退去までの手順・流れは、次のとおりです。
建物の賃貸借契約は、すぐに解除できません。
借主の権利は、法律で強く守られているからです。
貸主が強制退去を求める場合、法律にのっとって問題のない手順を踏まなければなりません。
手順を踏んでも解決の見通しが立たなければ、法的措置を検討しましょう。
借主と連絡をとり、できれば直接会って話し合いましょう。
滞納の原因はいろいろあるため、相手と連絡をとることが重要です。
家賃滞納や迷惑行為を早急にやめるよう促し、応じてもらえなければ契約を解除する旨を伝えましょう。
連絡をとるだけで問題が解決することもあります。
借主との話し合いが難しいときは、管理会社に依頼することも可能です。
口頭での注意喚起や催促が難しいとき、口頭で伝えても効果が期待できないときは、書面で催促しましょう。
家賃の支払いを求める督促状には、次の事項を明記する必要があります。
履行期限と不履行の場合は契約を解除し法的手段に移行する旨を明示し、滞納家賃の支払い・自主退去を促しましょう。
督促状は、裁判で必要なため、内容証明郵便にします。
参考:日本郵便|内容証明
連帯保証人がいる場合は、連帯保証人にも督促内容を連絡しましょう。
連帯保証人は、借主とともに債務を返済する責任があります(極度額を定める必要、民法465条の2)。
民法改正(2020年4月1日施行)により、オーナーに連帯保証人への情報提供義務(民法458条の2)があるため、注意が必要です。
民法第458条の2(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
出典:eーGovポータル|民法458条の2
出典:法務省ウェブサイト
入居者を強制退去させるためには、賃貸借契約の解除(民法540条)が必要です。
所定の期限までに借主または連帯保証人が対応しないときは、書面で賃貸借契約の解除通知をしましょう。
書式は決まっていませんが、督促状で定めた支払期限までに支払いがない場合は「本通知をもってただちに契約を解除する」との趣旨を明記する必要があります。
なお、2の督促時に、支払期限までに家賃の支払いを求めると同時に、期限までに支払われなかった場合には契約を解除する、と記載しておけば、改めて解除の意思表示を通知する必要はなく、むしろ実務上はこの方法が一般的です。
記載内容と配達の事実を証拠として残すため、配達証明付き内容証明郵便にしましょう。
参考:日本郵便|配達証明
入居者が督促に応じず、自主的に退去しない場合は、法的措置に移行します。
建物明け渡し訴訟を提起しましょう。
建物明け渡し訴訟は、管轄の地方裁判所または簡易裁判所に申し立てます。
訴状に添付する書類は、次のとおりです。
裁判では、判決の前に和解による解決が試みられます。
借主が提訴を受けて退去を申し出ることもあります。
明け渡し訴訟に勝っても、借主が自主的に退去しなければ、改めて裁判所に強制執行を申し立てる必要があります。
強制執行するためには、権利の存在と内容を公証した確定判決などの文書(債務名義、民事執行法22条)が必要です。
裁判で和解したにもかかわらず、借主が和解内容を守らないときも強制執行に移行します。
申立てが受理されると、裁判所から借主に立ち退き要請の催告書が送付されます。
参考:裁判所「民事執行手続き」
強制退去を執行するためには、明渡しの催告が必要です。
強制退去させる物件に執行官が出向き、明渡しの催告をした旨と引渡し期限(明渡しの催告日から1月を経過する日)を明記した公示書を、物件の目立つところに貼り付けます。(民事執行法168条の2)。
引渡し期限までに入居者が退去しなければ強制執行が断行されます。
強制執行の断行日は、引渡し期限の数日前に設定されるのが通例です。
断行日に執行官の指示を受け作業員が荷物を運び出し、物件の鍵を取り換えて申立人(オーナー)に引き渡します。
強制退去を求める場合に注意すべきポイントが4つあります。
独断での実力行使はNGです。
法にのっとった手続きを踏まなければ、罪に問われることもあります。
相手に非があるとしても、冷静に対応することが最短での解決につながります。根気強く問題解決に努めましょう。
強制退去を実現するまでには、少なくとも4か月近くはかかります。
解除通知をし、訴訟提起・強制執行と手順を踏んで進める必要があります。
相手が争えば半年以上かかることも稀ではありません。
また、強制退去のための法的措置には、120万〜200万円程度の費用がかかります。
強制執行費用は債務者(入居者)負担が原則(民事執行法第42条)ですが、入居者が支払う保証はありません。
相手に財産(動産や不動産・債権)がなければ、家賃の回収は実際には困難です。
しかるべき財産がない場合は給与の差押えになりますが、給与の差押えは原則手取額の4分の1までです(民事執行法第152条)。
強制退去が実現できても家賃回収できる保証はなく、次の入居者もすぐ決まるとは限りません。
入居者と連絡が取れないこと、行方不明のこともあります。
相手と連絡が取れない場合も、きちんと手続きを踏むことが大事です。
電話や書面で連絡してもらちが明かない場合は、公示送達による意思表示の申し立てをします(民事訴訟法110条~113条)。
相手が所在不明と見なされれば、公示送達の効力が生じ、強制退去手続きを進められます。
参考:東京簡易裁判所|意思表示の公示送達の申立てをされる方へ
強制退去にかかる費用は、およそ120万〜200万円になります。
強制退去にかかる主な費用と金額の目途は、下の表のとおりです。
費用 | 内容 | 金額の目途 |
---|---|---|
弁護士費用 | 相談料 着手金 報酬金 |
有料であれば、30分5,000円程度 賃料が月額20万円以下の場合は、20万~40万円程度 回収金額の10%〜20%程度 |
内容証明費用 | 基本の郵便料+加算料金 | 加算料金:一般書留 480円、内容証明 480円、配達証明 350円 |
裁判費用 | 訴状に貼付する印紙代 予納金 予納郵便切手代 |
請求額による (100万円までは10万円ごとに1,000円) 6万5,000円(東京地方裁判所の場合) 6,000円 |
強制執行費用 | 執行官の出張費と執行補助者に支払う費用 | 30万円前後 賃借人に請求可(民事執行法第42条1項) |
参考:郵便局「オプションサービスの加算料金一覧」
出典:eーGovポータル|民事訴訟費用等に関する法律別表第1
強制退去のコストは、少しでも安く抑えたいものです。
強制退去費用を抑える主な方法は、次のとおりです。
「強制執行の費用で必要なもの(執行費用)は債務者の負担」と法律で定められています(民事執行法第42条)。
強制執行費用を債務者である借主に請求しましょう。
相手方の資産の状況によっては回収は難しいかもしれませんが、請求は必ずしましょう。
法律事務所や自治体で無料相談を行っている場合があります。無料相談を積極的に活用しましょう。
分割払い・後払いが可能な法律事務所もあります。相談してみるとよいでしょう。
裁判を起こしても、立ち退き・明け渡しの結果を得るまでには、何か月もかかります。
不払いを続ける入居者も、立退料をもらえるならと退去要請にすぐ応じるかもしれません。
裁判を起こすより時間もトータル費用も少なく済む可能性があります。
強制退去を弁護士に依頼すれば、次のようなメリットがあります。
当事者が直接会って話し合うと、お互いに感情的になりもめることもあります。
弁護士が間に入れば、相手の言い分を聞きながら冷静に対応できます。
いきなり強制退去にもっていこうとせず、じっくり話し合い解決点を探ることが可能です。
トラブル解決の経験・実績が豊富な弁護士は、訴訟以外の方法も検討し、より適切な解決方法を提案できます。
弁護士が間に入ることで相手に心理的プレッシャーをかけ、早期の対応を促す効果も期待できます。
自分一人では困難な難しい手続きをすべて代行してくれるため、オーナーの労力や時間を大幅に節減できます。
法的措置を熟知した弁護士が、相手方の反応を見ながら、無駄な作業を省き的確に手続きを進めるため、滞納家賃の迅速な回収が期待できます。
また、自分で書類作成や証拠収集すれば、予想外の時間と労力、費用もかかります。
迅速に強制退去させられれば、新たな滞納の発生も防止でき、大きなメリットといえるでしょう。
強制退去の事態を未然に防ぐ対策をとることも重要です。
次のような対策をあらかじめ講じましょう。
入居者の事前審査は、特に重要です。
勤務先や勤務年数、人柄なども確認し、家賃の支払い能力をしっかりチェックしましょう。
信頼できる管理会社と契約して厳密に審査してもらう方法もあります。
強制退去の条件についてまとめると、次のようになります。
強制退去は、入居者がオーナーの退去要請に応じない場合にとることのできる強力な法的措置です。
法律に基づき適正な手順を踏む必要があります。
どう対応すべきかわからないとき、悩むときは 法律の専門家である弁護士法人アクロピースにご相談ください。 60分間の無料相談を実施していますので、お気軽にお問い合わせしてみてください。 |
弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。