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ここでは、遺産分割について話し合う方法や、遺産分割がうまくいかない場合にできる対処法や解決策についてご紹介します。
遺産分割の形態には、「指定分割」「協議分割」「調停分割」「審判分割」の、4つがあります。遺産分割協議は、この中の1つ「協議分割」のことです。
遺産分割協議は、遺言による遺産分割の指定がなく、相続人が複数いる場合に行われます。
遺産分割協議では、各相続人にどのように遺産を分割するかについて、相続人全員で話し合って決めます。
遺産分割協議に期限はありませんが、遺産に相続税がかかる場合には、相続開始後10カ月以内に終えられるようにしましょう。遺産分割が済んでいる場合にのみ適用できる相続税の優遇措置もあるためです。
遺産分割協議は、相続人全員の参加がなければなりません。
ですから前提として、相続人の範囲が確定してから行う必要があります。相続人が一人でも欠けている場合の遺産分割協議は無効となってしまいますので、注意しましょう。
なお、協議というと一同でどこかに集合して会議をするようなイメージかと思いますが、実際は電話や手紙、メールなどで話し合っても問題ありません。
相続人全員が合意しさえすれば、必ずしも全員で集合する必要はありません。
また、相続人の中に未成年の子どもがいる場合や、認知症その他の病気で正常な判断ができない人がいる場合は、それらの人の代理として遺産分割協議に参加する特別代理人を選任する必要もあります。
特別代理人の選任は、まず相続人ではない親族などから適任な人を選び、特別代理人が必要な相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てます。
未成年の相続人の特別代理人はその親が務めることもできますが、親自身も相続人である場合、その親は特別代理人にはなれません。子どもとの間に利害関係があるためです。
重要なポイントになるのは、必ず相続人全員と連絡を取って合意を得ることと、一度成立した遺産分割協議は一方的に解除できないことです。
相続人にとってはここで自分の取り分が決定してしまうわけですから、それぞれが自分の主張を全面に出して引かない場合も多く、なかなか全員合意に至ることは難しくなります。
遺産分割協議を行う上でのもうひとつの前提は、相続財産の範囲と評価額の確定です。
相続分に応じて遺産分割を進めるためには、相続財産すべての評価額が分かっていなければならないためです。
相続財産の評価額は、遺産分割協議を行う時点での時価が反映されます。相続税の評価額のような詳細な評価方法の規定はありません。
評価額を判断する上で参考になる客観的なデータを集めるなどして、時価を判断します。重要なことは、その評価額で相続人全員が納得できるかどうかという点にあります。
遺産分割に関して相続人全員が合意したら、協議した内容を記した「遺産分割協議書」を作成しましょう。
協議内容を書面の形で残すことで、後々一部の相続人が「自分がもらう遺産について勘違いをしていた」「取り分がこんなに少ないなんで聞いてない」などと言い出した場合、トラブルになるのを防ぐことができます。
また遺産分割協議書は、不動産の相続登記や被相続人の銀行口座の名義変更、相続税の税額軽減措置を受ける際など、様々な場面で必要書類として提出が求められます。
遺産分割協議書を作成する点で重要なポイントのひとつは、どの相続人がどの遺産を、どれくらい相続するのかが明確に分かるように記載することです。
当事者以外の人が見ても、各相続人の相続財産の内訳を簡単に特定できるほど明確に作成するのが理想です。
例えば不動産であれば、登記簿にある通りの仕方で記載します。一部分を省略したり、簡略化して記載したりしないように注意しましょう。
銀行預金であれば、銀行名や支店名はもちろん、口座番号や残高まで正確に記載します。
有価証券であれば、株式の銘柄から株数までを正確に記載します。
遺産分割協議書を作成する点で重要なポイントの二つ目は、遺産分割協議が適正に成立していることが証明されていることです。
そのためには、遺産分割協議書へ相続人全員が実印を押印し署名することが必要です。
署名の際には、住所も記入します。住所の記載は、「1-2-3」などではなく「1丁目2番3号」など、印鑑登録証明書に記載されている書式の通りにします。また、印鑑証明書自体も添付します。
後々のトラブルを予防するという意味では、債務を相続する場合はその分割方法を、代償分割などがある場合は代償金額や支払いの条件なども遺産分割協議書に記載しておくと安心でしょう。
遺産分割では、遺産をいかにして各相続人へ公平に分けるかが最も重要なポイントになります。
各相続人が自分の取り分に不満を持つことがないように分けなければ、遺産分割協議は成立しない場合があるからです。
遺産分割の具体的な方法は、おもに次の4つです。
特に、分割しにくい不動産を含めた相続の際はこの中のどの選択肢も検討する可能性が出てきますので、注目なさって下さい。
遺産分割の基本的な方法が、現物分割です。
「自宅は長男へ、預金は妻へ」など、財産の種類別に相続人へ分配する方法です。
不動産を相続する場合には、可能な限り現物の不動産を残したいと考える方が多いものです。現物分割であれば非常に簡明であるだけでなく、現物の不動産を残せるという利点が生まれます。
他方、相続人ごとにきっちり公平に分割することや、ぴったり相続分通りに分割することは難しく、この点で相続人の合意が得られなければ実施できない分割方法となります。
不動産を相続する際によく選択されるのが、換価分割です。財産を売却して金銭に換え、それを分配するという方法です。
不動産など分割しにくい遺産を相続する際には、換価分割によって公平な分割が可能になります。
しかし覚えておきたい点として、売却に諸手続きが必要で手間を取られること、売り出してもなかなか売れない可能性があること、売却で得た譲渡益に対して譲渡所得税と住民税が課されること、不動産の現物は残せないというマイナス点があることを理解しておかなければなりません。
ある相続人が自分の相続分を超える遺産を相続する代わりに、他の相続人に対して代償として金銭を支払うという方法です。これを代償金と言います。
相続した不動産が事業用資産である場合などによく選択されます。
例えば、被相続人の長男と次男の2人が1億円相当の事務所兼住宅を相続するとしましょう。この場合現物分割はできず、事業用の建物のため安易に換価分割もできないという状況が生まれます。
そこで、事業継承者である長男が事務所兼住宅を取得し、次男へは遺産額の半分の5000万円を金銭で支払えば、それぞれの相続分に見合う公平な遺産分割ができることになります。
代償分割はこのように、事業用資産など事業の継承者がひとりですべてを相続することが妥当な遺産がある場合の遺産分割の場面で活躍します。
分けられないしお金にも換えられない、けれど分割したいという遺産がある場合にも有用でしょう。
注意したい点は、遺産を相続する相続人には、他の相続人への支払いという債務が発生することです。
先ほどの例では、事務所兼住宅を相続した長男は、相続しなかった次男へ5000万円を支払うという債務を負うこととなりました。もし長男にこの5000万円を支払う能力がないとしたら、この方法は実現不可能となります。
遺産を相続せず代償を支払ってもらう側の相続人にとっては、代償金がきちんと支払われるかが分からないという大きなリスクがあることにもなります。
もちろん代償分割の内容は遺産分割協議書に記載されることになるため、後になって反故にすることは許されません。しかし遺産分割の取り決めはあくまで相続人同士という個人間の合意事項に過ぎないため、記載した事柄を履行しない相続人がいたとしてもそれだけで法的な強制力は持っていないのが現実です。
もし代償分割に関連してトラブルが起きた場合は、遺産分割協議書を証拠書類として訴えを起こすほかないかもしれません。
そのため、代償金については生命保険の死亡保険金などを活用して事前に準備しておくと良いでしょう。まとまった現金を準備しておくことが、とても重要です。
遺産分割協議内容の不履行を訴えた原告が勝訴することは簡単ではありません。
もしこれから裁判を起こそうとお考えなら、事前に不動産相続トラブルに強い当事務所へご相談下さい。
不動産などを分割する場合に、複数の相続人にそれぞれの持ち分を割り当て、共有するという方法です。
どんなに分けにくい遺産でも公平な分割が可能になりますし、不動産の現物を残すこともできます。
しかしひとつの不動産の所有者が複数人という状況では、その不動産の利用や処分の自由度は極めて低くなります。その不動産の一部を所有しているに過ぎないため、自分の財産として生かす道がほとんどないということです。
また共有する相続人のうち誰かが亡くなり次の相続が発生してしまった場合には、次の相続の相続人は共有部分の財産に関しても分割しなければならず、非常に複雑な権利関係によって遺産分割で大いに苦戦することでしょう。
共有分割は、相続人全員で共同で使用するような別荘などの分割方法としては有用かもしれませんが、その他の場合にはあまり好ましい分割方法とはならない可能性があります。
遺産分割協議がまとまらないがために、とりあえず共有としてしまうケースがあるようですが、これは諸問題を先送りしているようなものですので、あまりお勧めはできません。
意外なことですが遺産分割は、資産家だけの問題ではありません。
「うちは財産らしい財産なんてないから、遺産分割で揉めることはないだろう。きっと自分たちだけで円満に解決できる」という先入観は持たれない方が良いかもしれません。
実際、遺産分割で大規模に争う事例は、遺産額が少ない家庭に多く見られます。
遺産額が少ない家庭では、遺産分割対象の財産が自宅などの不動産のみとなるケースも多くなります。先ほどご紹介した通り、不動産は公平に分割することが非常に困難な財産のため、相続人となる家族の間で内輪揉めが起こりやすくなってしまうのです。
そのため、遺産が少ないからといって安心はできないのが遺産分割と言えます。
遺産分割協議は、すんなりとまとまらないことも多いものです。
相続人のうちの誰かと連絡がつかなかったり、家族間の確執を理由にわざと遺産分割協議に出席しなかったりする相続人がいる場合もあります。
相続人の範囲を調べた結果、遺族が知らなかった隠し子の存在が分かり、非常に複雑な関係の相続人を集めて遺産分割協議を行わなければならない場合もあります。
前述のように、遺産分割協議は相続開始から10カ月以内に終了させることが推奨されます。
もし色々な理由で遺産分割協議が進まない場合は、相続人の間に修復不可能なほどの溝を作ってしまう前に、遺産分割調停を申立てましょう。
遺産分割調停を行うにはまず、協議を進めたい相続人の住所地を管轄する家庭裁判所、もしくは相続人の間で任意で決めた家庭裁判所へ遺産分割調停申立書を提出し、遺産分割協議の進行を妨げている相続人を相手方とした調停の申立てを行います。
特に問題が無ければ、申立ては受理されます。後日、指定された期日に裁判所へ出頭するよう各相続人へ通知され、調停委員会の立ち会いのもと遺産分割の話し合いが行われます。
調停は、裁判官および裁判官が選任した2人以上の調停委員で構成されます。
調停はあくまで相続人同士が歩み寄ることで解決に導くことが目的のため、基本的には相続人同士の話し合いをもとに進めます。
しかし相続人同士が直接会ってしまえばお互い冷静ではいられなくなり、話がまとまることは難しいでしょう。そこで調停の際は、相続人同士が直接会うのではなく、意思伝達は調停委員が行います。
調停委員会が各相続人から事情を聴き、必要であれば事実確認などを行った上で、解決策や対処方法をアドバイスします。
調停では、調停委員会が遺産分割の方法を強制的に決めることはありません。
調停は1回限りではなく、話し合いの余地がある場合は数回に渡って行われます。
調停によって遺産分割の話し合いがまとまると、合意内容を記した調停調書が作成されます。
調停での合意内容には法的効力があるため、調停終了後はこれに基づいて遺産分割が行われなければなりません。
もし調停でも話が付かない場合は、自動的に「審判」に移行することとなります。
審判については、下記ページにてわかりやすく説明しております。
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ご説明してきました通り、遺産分割というのは家族間だけでは円満解決することが非常に難しい問題です。
自分の家の財産や家族関係のことはとてもプライベートな情報ですし、他人に打ち明けるのは気が引ける、恥ずかしい、という気持ちもよく分かります。
しかし第三者である弁護士が介入することで、遺産分割は拍子抜けするほどスムーズに進むことでしょう。弁護士は相続問題に対する法的知識を豊富に有しており、中立の立場で粛々と手続きを進めることができるためです。
当事務所自体は設立から年数は浅いものの、依頼者様から「ここに相談して良かった」というお声を多数頂戴しております。
ことに遺産分割に関しては、解決したことの安堵とともに「もっと早く相談していれば、こんな思いをしなくて良かったのに」と、早期の相談をためらってしまったことへの後悔のお気持ちをうかがうこともあります。
弁護士の立場としても、遺産分割に際して家族の関係が悪くなってしまうケースを見ることは、何年経っても慣れるものではなく大変心が痛みます。
一度亀裂が入ってしまった家族関係は、なかなか修復できません。大切な家族との良い関係を守るためにも、遺産相続問題に強い当事務所へご相談下さい。
私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、不動産問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。