居住権を主張する親族の立ち退きを求めるには?居住権の理由と対処法を解説

建物の相続があった場合や親族に建物を無償で使用させていた場合には、居住権を主張する親族との間で立ち退きをめぐる争いが起こることがあります。

居住権を持つ親族の立ち退きを求めるには、居住権の根拠に応じた対処が必要です。

この記事では、親族に立ち退きを求めることを検討している方に向けて、次の内容について詳しく解説しています。

  • 親族が居住権を主張する2つのケース
  • 居住権を主張する親族の立ち退きを求める方法
  • 親族間の立ち退きトラブルを回避するポイント

親族とのトラブルをできる限り避けて円満な解決を目指すためにも、ぜひ参考にしてみてください。

居住権が関係する立ち退き交渉では、法律の専門的な知識を求められる場面が多くあるため、弁護士に依頼した方がスムーズな解決へとつながります。

弁護士法人アクロピースでは、不動産に強い弁護士が立ち退き交渉も承ります。

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目次

親族が居住権を主張する2つのケース

住居

親族が居住権を主張して立ち退きを拒否するケースとしては、次の2つが挙げられます。

  • 相続によって共有状態となっているケース
  • 親族間で使用貸借契約が成立しているケース

どちらのケースに該当するかによって、立ち退きを求めるために執るべき手段が変わります。

それぞれのケースについて、親族に居住権が認められる理由を解説します。

相続によって共有状態となっているケース

遺産分割前の相続財産は、法定相続人の共有状態となります。

不動産について共有持分を持つ人には、不動産を使用収益する権利が認められます。

建物の居住権を主張する親族が法定相続人である場合には、親族に共有持分に基づく居住権が認められるため立ち退きを求めることができません。

たとえば、父(被相続人)の相続人が母、長男、長女というケースで、父と同居していた母が居住権を主張しているときには、長男や長女は母の立ち退きを求めることはできません。

親族間で使用貸借契約が成立しているケース

建物の所有者と親族との間で使用貸借契約が成立しているときには、親族に居住権が認められます。

使用貸借契約とは、動産や不動産を無償で貸し付ける契約のことです(民法593条)。

建物の所有者が親族に建物を無償で使用させていると、両者の間で契約書が作成されていなくても使用貸借契約の成立が認められる可能性があります。

実際、使用貸借契約については契約書が作成されないケースが多いです。

契約書がなくても、親族が建物を使用するに至った経緯や所有者とのやり取りなどから、建物を無償で使用させる合意が成立していると言えるときには使用貸借契約の成立が認められます。

共有状態を解消するには遺産分割協議で所有者を確定させる

共有

親族の居住権が遺産分割前の共有持分を理由とする場合には、遺産分割協議で建物の所有者を確定させることで、親族の立ち退きを求めることができます。

遺産分割協議とは、法定相続人全員で相続財産の分配方法を話し合う手続きのことです。

遺産分割前は、相続財産に含まれる不動産の所有権は法定相続人の共有状態となります。

共有状態を解消するには、遺産分割協議で誰が不動産を相続するかを決める必要があります。

遺産分割協議で建物の所有者を決めたあとは、建物の居住権を主張する親族に対して、所有権に基づく明渡請求が可能です。

ただし、居住権を主張する親族が被相続人の生前から建物に居住していた場合には、遺産分割協議でも何らかの配慮が必要となります。

遺産分割協議を成立させるには、法定相続人全員の同意が必要です。

居住権を主張する親族が法定相続人である場合、この親族への配慮なしに遺産分割協議を成立させるのは難しいでしょう。

親族との使用貸借契約を解消して立ち退きを求める方法

使用貸借

使用貸借契約に基づく居住権を主張する親族に対して立ち退きを求める流れは、次のとおりです。

  • 使用貸借契約を終了させる方法を検討する
  • 立ち退きを求める通知を行う
  • 立ち退き交渉を行う

使用貸借契約には複数の終了原因があるため、立ち退きを求める際は、終了原因を特定したうえで交渉をスタートすることになります。

以下、順序に沿って詳しく解説します。

使用貸借契約を終了させる方法

使用貸借契約が成立している場合には、使用貸借契約を終了させなければ立ち退きを求めることができません。

使用貸借契約は、賃貸人の所有物を無償で使用させる契約であるため、貸主の都合でいつでも解除できるのが原則です。

しかし、例外として、使用貸借契約の期間や使用及び収益の目的を定めていた場合には、貸主の一方的な都合で契約を解除するのは借主にとって酷となるため、終了できる場合が限定されています。

ここでは、使用貸借契約の例外的な終了原因について詳しく解説します。

使用貸借契約はいつでも解除できるのが原則

使用貸借契約の期間や使用及び収益の目的を定めていない場合、貸主は、いつでも契約を解除できます民法598条2項)。

親族間の使用貸借契約では契約書を作成していないケースが多いため、貸主としては、契約期間や使用及び収益の目的が定められていないとして、契約の解除を主張することになります。

一方、借主である親族は、契約書がないとしても、契約期間が定められていた、契約期間は永年とされていた、使用及び収益の目的について口頭での合意がされていたなどとして、立ち退きを拒絶することになるでしょう。

契約期間の定めがある場合

使用貸借契約の期間が定められている場合には、期間の満了によって契約が終了します民法597条1項)。

契約書などで契約期間が明確なケースでは、期間満了まで待つことで立ち退きを求められます。

ただし、契約書がない場合、貸主としても契約期間を明らかにするのが難しいため、期間満了による契約終了を主張するのはハードルが高いでしょう。

契約期間について貸主と借主で争いとなった場合には、借主から「自分が亡くなるまで無料で使っても良いとの合意があった」と主張されるケースが多いです。

使用及び収益の目的が定められていた場合

建物の使用貸借契約で使用及び収益の目的が定められていた場合には、目的の達成によって契約が終了します民法597条2項)。

たとえば、「借主が就職するまで建物に無償で住まわせる」という内容の使用貸借契約については、借主が就職すると目的の達成によって契約が終了します。

ただし、目的が達成されていなくても、目的に従って使用及び収益をするのに必要な期間が経過したときには、貸主による契約の解除が可能です(民法598条1項)。

たとえば、先ほどの「借主が就職するまで建物に無償で住まわせる」という内容の使用貸借契約で、借主が就職活動の意欲を示さずに通常であれば就職が決まるくらいの時間が経過したときには、貸主から契約の解除を主張できます。

使用貸借契約は、貸主と借主の信頼関係に基づく契約であるため、契約期間や目的の定めがあっても、人間関係の悪化によって信頼関係が失われたような場合には、契約の解除が認められる可能性もあります。

立ち退きを求める通知を行う

使用貸借契約書の終了原因を検討したあとは、終了原因を明示したうえで立ち退きを求める通知を行います。立ち退きを求める通知は、内容証明郵便を利用すべきです。

内容証明郵便は、郵便局が郵便物の内容や差出人、受取人、差出日、受取日などを証明してくれるサービスです。

内容証明郵便を利用すると、言った言わないのトラブルを回避でき、交渉の経緯を証拠として残しておくことができます。

立ち退きを求める内容証明に記載すべき事項としては、次のものが挙げられます。

  • 使用貸借契約の終了原因
  • 契約の終了日
  • 立ち退きの条件
  • 立ち退き日 など

内容証明郵便は、後に裁判となった場合の証拠としても利用される重要な書類です。

内容や作成方法について不安のある方は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

立ち退き交渉を行う

立ち退きを求める通知を行ったあとは、対面や電話などでの立ち退き交渉を行います。

親族間の使用貸借契約では契約書が作成されていないケースが多くなっています。

そのため、契約内容が明確とならず、契約期間や使用及び収益の目的についての争いが起こりやすいです。

契約書が作成されておらず期間の定めや目的の定めがあるのかどうか不明で、貸主と借主の言い分が大きく食い違うときには、立退料を支払って立ち退きを求めるケースもあります。

使用貸借契約を解消するための立退料としては、引っ越し先での数か月の家賃、敷金や礼金などの契約費用、引っ越し費用などを負担するのが一般的です。

親族間の立ち退きトラブルを回避するポイント

遺言書

親族との立ち退きトラブルは、できる限り避けたいところです。

建物の居住権をめぐる無用なトラブルを回避するためのポイントとしては、次の2つが挙げられます。

  • 遺言書を作成する
  • 使用貸借契約書を作成する

遺言書や契約書などの書面がなければ権利関係が曖昧となり、トラブルが起こる可能性が高くなります。

トラブルを避けるには親族間のことだからと安易に考えず、しっかりと書面を作成することが重要です。

それぞれの内容について詳しく解説します。

遺言書を作成する

遺言書を作成して誰が不動産を相続するのかを決めれば、不動産が共有状態となることによるトラブルを回避できます。

不動産の共有状態が生じるのは、各不動産を相続人の誰が相続するかについて遺言書で定めていない場合です。

遺言書で不動産を誰が相続するか、誰が使用収益するのかを決めておけば、相続人間で居住権をめぐるトラブルが起こる心配はなくなるでしょう。

法定相続人の1人が自身の所有する不動産に居住している場合には、その人に不動産を相続させて、他の相続人には別の不動産や現金等、同価値の財産を相続させるのが相続人間のトラブルを回避するには有効と言えます。

相続時にもめない、効力のある遺言の書き方」の記事もご覧ください。

使用貸借契約書を作成する

親族に建物を使用させる場合でも、口頭で済ますのではなく使用貸借契約書を作成すべきです。

使用貸借契約書がない場合、居住権を主張する親族は、使用貸借の契約期間や使用及び収益の目的を主張して立ち退きを拒むことになります。

この場合、使用貸借契約書を作成して契約期間や使用及び収益の目的を明確にしておけば、契約書の内容に従って立ち退きを求めることができます。

親族間では、トラブルが起こることを想定せずに契約書を作成せずに物事を進めるケースが多いです。

しかし、契約書を作成していなければ、いざトラブルが起こったときには解決が難しい深刻な問題となる可能性があります

トラブルを想定できないような親しい間柄であっても、使用貸借契約書は必ず作成するようにしてください。

まとめ

立ち退きを依頼する男性

今回は、居住権を主張する親族の立ち退きを求める方法として、次の内容について解説しました。

  • 遺産分割前の共有状態を解消するには遺産分割協議で所有者を決める
  • 使用貸借契約は契約内容で終了させるための方法が異なる
  • 親族間での無用なトラブルを回避するには遺言書や使用貸借契約書を作成する

親族間でトラブルを発生させないためにも、居住権が絡む立ち退き問題でお困りの場合は、専門家である弁護士に相談・依頼して手続きを進めることをおすすめします。

弁護士法人アクロピースでは、立ち退きトラブルを解決する方法や、事前にトラブルを防ぐための遺言書や使用貸借契約書の作成などの相談をお受けしています。

弁護士法人アクロピースは、初回相談が無料です。

親族とのトラブルを抱えてお悩みの方、後にトラブルが起こるのではと不安を感じている方は、不動産トラブルの解決のプロである弁護士法人アクロピースにお問い合わせください。

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この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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