投資におけるオーバーローンと自己資金ゼロの大きなリスク

投資におけるオーバーローンと自己資金ゼロの大きなリスク

不動産購入では金融機関の融資を受けることが一般的ですが、オーバーローンと呼ばれる借り方には注意しなければなりません。

また自己資金ゼロでも投資可能なフルローンも債務超過の可能性が高く注意が必要です。

ここでは、投資におけるオーバーローンとフルローンのリスクについてご説明します。

不動産投資のためオーバーローンやフルローンを組んでトラブルになってしまった時は、法律の専門的な知識を求められる場面が多くあるため、弁護士に依頼した方がスムーズな解決へとつながります。

弁護士法人アクロピースでは、不動産に強い弁護士が交渉や裁判も承ります。

初回60分の相談は無料です。

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目次

オーバーローンとは本来必要な額を超過した借入

不動産投資のために借りる住宅ローンは、購入価格分を融資してもらうことが一般的ですが、本来必要な額以上に借り入れる行為をオーバーローンと言います

不動産購入時には、物件購入以外の諸費用と呼ばれる支出が多く出ます。

不動産取得税や登録免許税等の各種税金、登記手数料、融資手数料、建物に対する保険料等が諸費用に該当し、新築物件なら購入価格の約5%前後、中古物件なら8%前後の費用がかかります。

これら諸費用は基本的に現金払いであるため、ローンで支払うことができないものですが、手持ち資金が不足している等の理由から諸費用分まで込みでオーバーローンとして融資を受けるケースが多々見られます。

かつては不動産購入に際し3割程度の頭金を用意して融資を受けることが一般的でしたが、現在では頭金の必要がないオーバーローン商品として提供する金融機関も増えてきました。

オーバーローンは売却時の債務超過リスクに要注意

住宅ローンを借りる時は、購入する住宅を担保にして融資を受けることになります。

購入物件に見合う金額を借りるのであれば、予定通りの返済が可能ですし、万が一資金繰りが厳しくなった場合でも住宅を売却することで残債を無くし自己破産のリスクを回避することもできます。

頭金を用意して融資を受けた場合は、そのような最悪のケースにおける負担がより軽くなることになります。

しかし、オーバーローンとして融資を受けていた場合、住宅の価値以上の金額を借り入れているため、いざ売却しようとした時に残債の完済が非常に難しくなる傾向があります。

仮に4000万円の新築物件を購入する際、自己資金ゼロで4500万円のローンを組んだとします。

年間100万円ずつ返済するとして5年後には残債が4000万円となりますが、物件の評価額が3500万円に下落していた場合、物件を売却してもなお500万円の負債が残ったままになります。

ローン完済のためには資産を手放してもまだ500万円の現金が必要になり、債務超過の状態に陥ります。

本来あるべき融資の形は、売却価格より残債が少ない状態なのですが、オーバーローンでは売却価格より残債の方が多い状態になります

つまり支払い能力以上の残債を負った状態に陥るため、場合によっては自己破産等の債務整理が必要となる可能性が出てくるのです。

なぜオーバーローンでローンを組ませるのか

このようにオーバーローンは不動産投資において非常にハイリスクであることがお分かり頂けるかと思いますが、では何故それでもオーバーローンを組むのでしょうか。

それは、不動産会社が売りやすいからです。

不動産会社が投資マンションを売る時に最もネックとなる障壁が「頭金」です。

投資セミナーなどを開いていくらその気にさせたとしても、今まとまった頭金がなければマンションを買えないということであれば、いくら営業しても無駄になってしまいます。

そこで登場するのが「オーバーローン」です。

オーバーローンであれば、頭金だけでなく、諸費用全て持ち出しがなくなるため、貯金がゼロでも不動産投資ができてしまうのです。

つまり、不動産会社からすると、ローンさえ組ませることができれば、不動産を買わせることができるということになるのです。

それゆえに、不動産会社としては、投資家本人が儲かるかどうかという視点ではなく、あといくらローンを組むことができる人なのか、という目線で投資家を見定めて営業をかけているのです。

このように、オーバーローンを組むことで得をするのは不動産会社であって、投資する本人ではないことがほとんどなのです。

オーバーローンの不正利用により一括返済を求められる可能性がある

一部のケースでは、不動産会社が自ら不正なオーバーローンを提案することがあります。

本来であれば不動産購入費用について融資を受けるものですが、水増し融資を受けて諸費用分もまかなうことを勧めてくる例です。

諸経費も含めたローン商品を利用するのであれば問題ありませんが、水増し融資を受けるオーバーローンは不正であり違法行為となります。

よく見られる手口は不動産会社が主導するパターンです。

不動産会社が実際の販売価格を水増しした金額で請求書を発行し、買主がその請求書をもって金融機関から住宅ローンの融資を受けます。

手に入れた金銭のうち一部を手数料として不動産会社に支払い、残ったお金を不動産購入や諸費用の支払い、引っ越し費用や家具代等に充てます。

住宅ローンの金利は他の金融商品に比べて数%と非常に低いため、金銭を借りることへの抵抗が減り、水増し融資についてもばれなければ大丈夫と考える人も少なくありません。

しかし、金融機関との契約書には金銭の使用目的がきちんと明記されており、それ以外の用途に使った場合は明らかな契約違反となります。

住宅購入目的だからこそ低金利が適用されているのに、それを不正利用することは悪質と見なされることもあります。

不正が発覚した場合、契約違反として借入金の一括返済を求められたり、支払い能力を超えた借入である場合は悪質であるとして詐欺罪を問われたりする可能性もあります。

いずれにしても金融機関としては見過ごせない重大事案であり、借主としても一括返済を迫られれば大変なことになります。

もともと水増し融資を受けている状態のため、住宅を売却しても残債分を用意できない事態となるからです。

住宅ローンを利用する際には、想定される売却価格で残債をまかなえるか慎重に考えることが不可欠です。

必要以上の金銭を借り入れれば、その時は一時的にお金が手元に入るため何の不安も心配も生じませんが、明らかに金融機関を欺く行為であり、かつ自分自身の借金を増やす行為でもあることを認識しなければなりません。

どうしても諸費用込みの融資を受けたいなら、「諸費用を含めた住宅ローン」を提供する金融機関を利用するようにしましょう。

自己資金ゼロのフルローンによる失敗

手持ちのお金がなくても、必要な金銭を全てローンでまかなう方法をフルローンと言い、金銭的余裕が不足している人でも不動産投資ができる点から非常に人気の高い方法です。

しかし、昨今の不動産投資では、自己資金ゼロや頭金なしの気軽さが強調され、きちんとした資金計画がないまま投資に挑戦して失敗するケースが少なくありません。

物件を購入する際には、購入価格以外に諸費用がかかります。

各種税金、登記や融資の手数料、火災保険料等の諸費用は、新築物件なら購入価格の約5%前後、中古物件なら8%前後になり、基本的に現金で支払う必要があります。

これら費用も含めて全額をフルローン利用した場合、キャッシュフローは以下のように想定されます。

現在家賃が継続し常に満室だった場合

物件購入価格が5000万円(フルローン)で部屋数が10部屋、家賃を7万円と仮定した時の年間収支は以下の通りです。

収入家賃7万円×10部屋
×12ヶ月=840万円
支出500万円(返済額と諸経費)
差額840万円-500万円
=340万円の利益

購入価格が5000万円なので表面利回りは840万円÷5000万円=16.8%となり、実質利益をもとに計算した実質利回りは340万円÷5000万円=6.8%となります。

家賃値下げや空室を考慮した場合

実際には、家賃値下げや空室が発生し収入変動が起こる一方で、諸経費の支出は常に一定ですから、家賃と入居率を下げて計算する必要があります。

仮に家賃値下げと入居率を70%として計算してみます。

収入家賃7万円×10部屋
×12ヶ月×70%(家賃値下げ)
×70%(入居率)
=411.6万円
支出500万円(返済額と諸経費)
差額411.6万円-500万円
=-88.4万円

購入価格が5000万円なので表面利回りは411.6万円÷5000万円=0.12%となり、実質利益をもとに計算した実質利回りは-88.4万円÷5000万円=-1.76%となります。

現実的な計算を行うとマイナス利益となるばかりでなく、表面利回りはほとんどなく、実質利回りに至っては赤字であることがわかります。

フルローンは手持ち資金がなくても不動産投資を始められる気軽さはあるものの、実際の運用や数年後の状態を計算してみると、マイナス要因がいくつも見つかることがあります。

結果として将来的に赤字経営となり、資産形成どころか大きな債務を抱えてしまいかねません。

不動産投資の融資を受ける前に弁護士に相談して将来計画を明確に

オーバーローンやフルローンによって債務超過になると、所有不動産を売却しても残債を相殺しきれなくなるだけでなく、違法なオーバーローンに至っては違法行為として責任追及される可能性も出てきます。

水増し融資を提案する不動産会社との関わりは避けるようにしなければ、将来的にトラブルに発展したとしても、借主が全面的に責任を負わなければならなくなります。

不動産の正当な価格は路線価を確認すればある程度予測できますが、接道状況や不整形地等の条件によって大きく変化しますし、建物についても状態が価格に大きく影響します。

しかし金融機関としては、売買契約書や建築業者の請負契約書における金額を主として見るため、仮に虚偽の金額が記載された書面を提出した場合、その真偽を見抜くことができません。

不動産購入費用として借りたお金にも関わらず、契約書で取り決めた目的以外のことにお金を使っていたとなれば、悪質な契約違反と見なされることも考えられます。

虚偽の申告によって融資を受けたとわかれば、一括返済か差し押さえ、最悪のケースでは詐欺罪で訴えられる可能性も出てきます。

自分の返済能力を超えるオーバーローンを利用しないことはもちろん、水増し融資を勧める業者の誘いを断る勇気を持つことが必要ですが、相手は不動産取引のプロであるため、一個人として対応することが難しいこともあります。

そのような場合は、辛い思いを長引かせないように少しでも早く当事務所までご相談ください

より相談しやすい環境作りを心がけていますので、「こんなことを相談しても良いのだろうか」等と考えず、簡単なことでもご相談頂き解決の一歩とされることをお勧めします。

不動産に関するトラブルで弁護士に相談する費用の目安は以下の記事で確認できますのでぜひ参考にしてみてください。

関連記事:不動産にまつわるトラブル解決のための弁護士費用目安と依頼のメリット

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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

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