交通事故の示談金とは?計算方法や相場・手続きの流れを弁護士が解説

「交通事故の示談金はいくらもらえるのか?」
「保険会社から提示された金額は適正なのだろうか?」
交通事故の被害に遭うと、治療の痛みだけでなく、金銭的な補償についても大きな不安を抱えるものです。受け取れる示談金は、用いる計算基準によって大きく異なり、事案によっては2倍前後の差が生じることもあります。
本記事では、交通事故の示談金の仕組みや計算方法、相場のシミュレーションについて弁護士がわかりやすく解説します。
弁護士 佐々木一夫適正な賠償金を受け取るために必要な知識を身につけ、損をしない解決を目指しましょう。
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交通事故の示談金とは|基本情報を解説
交通事故の解決において、「示談金」という言葉をよく耳にします。しかし、その正確な意味や慰謝料との違いを正しく理解している方は多くありません。
ここでは、示談金の基本的な定義と慰謝料との違いについて解説します。
示談金とは
示談金とは、紛争になった際に、裁判をせずに当事者の話し合いによって支払われる金銭のことをいいます。
交通事故の加害者は被害者に不法行為による損害賠償をしなければなりません(民法第709条)。しかし、その金額は民法などでは一義的に定められておらず、当事者で話し合う(示談)あるいは裁判等で決める必要があります。
示談金は裁判などに至らず、当事者の話し合いで金額が合意に至った場合に支払われるものであり、治療費・休業損害や後述する慰謝料などすべてを含んだものです。
示談金は、原則として全ての治療や手続きが完了し、示談が成立した後に支払われます。ただし、治療費の支払いや当面の生活費が必要な場合は、自賠責保険の仮渡金制度(自動車損害賠償保障法第17条)や被害者請求制度を利用して、示談成立前に一定額を受け取ることが可能です。
なお、示談が成立して示談書にサインをすると、原則として後から追加で請求することはできません(民法第696条)。示談時に予測できなかった重大な後遺障害が後から発覚した場合や、相手方が重要な事実を隠していた場合など、極めて限定的な状況でのみ例外的に追加請求が認められます。



そのため、示談金の内訳や金額が適正かどうかを慎重に判断することが大切です。
示談金と慰謝料の違い
示談金とよく混同されるものとして「慰謝料」があります。
「示談金」と「慰謝料」は混同されがちですが、明確な違いがあります。慰謝料は示談金の一部であり、精神的な苦痛に対して支払われる賠償金に限定されるのが特徴です。
両者の違いを以下の表で確認しましょう。
| 項目 | 定義 | 含まれるものの例 |
|---|---|---|
| 示談金 | 事故により発生した損害賠償金の総称 | ・慰謝料 ・治療費 ・休業損害 ・車の修理費 など |
| 慰謝料 | 事故による精神的苦痛に対する賠償金 | ・入通院慰謝料 ・後遺障害慰謝料 ・死亡慰謝料 |
このように、慰謝料はあくまで示談金に含まれる一つの要素に過ぎません。示談交渉では、慰謝料だけでなく、他の損害項目も含めた総額で判断することが重要です。
また、「示談金は相場通りです」と言われても、休業損害や逸失利益が不当に低く見積もられているケースは多々あります。言葉の定義に惑わされず、項目ごとの金額が適正かどうかを一つひとつチェックする姿勢が不可欠です。
交通事故の示談金の内訳|3つの損害項目と計算方法
交通事故の示談金は、大きく分けて3つの損害項目で構成されています。
それぞれの項目がどのような損害をカバーしているのか、詳細を見ていきましょう。
①慰謝料|入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料
慰謝料は、被害者が受けた精神的な苦痛を金銭に換算したものです。事故の状況や結果に応じて、以下の3種類に分類されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入通院慰謝料(傷害慰謝料) | 怪我の治療のために入院や通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する補償です。 原則として、治療期間や実通院日数をベースに計算されます。 |
| 後遺障害慰謝料 | 治療を尽くしても完治せず、後遺症が残った場合に支払われます。 第1級から第14級までの「後遺障害等級」に認定される必要があります。 |
| 死亡慰謝料 | 被害者が死亡した場合に、被害者本人および遺族の精神的苦痛に対して支払われます。 被害者の家庭内での立場(一家の大黒柱など)によって金額が変動します。 |
慰謝料は、怪我の程度や治療期間が長引くほど、また後遺症が重いほど金額が高くなる仕組みとなっています。
とくに後遺障害慰謝料は、等級が一つ違うだけで数百万円の差が出ることもあるため、適切な等級認定を受けることが重要です。
関連記事:もらい事故で慰謝料はいくらもらえる? 相場や計算方法、請求の流れを解説【弁護士監修】
②積極損害|治療費・入院雑費・通院交通費・修理費など
積極損害とは、交通事故に遭ったことで「実際に支払うことになった出費」のことです。被害者が財布からお金を出して支払った費用や、将来支払う必要がある費用が該当します。
主な項目は以下の通りです。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 治療費 | 診察料・投薬料・手術費など | 必要かつ相当な範囲で全額請求可能 |
| 入院雑費 | 入院中の日用品購入費など | 自賠責保険基準では日額1,100円、弁護士基準(裁判基準)では日額1,500円として計算される |
| 通院交通費 | 病院へ通うための電車・バス代など | 公共交通機関が原則。事情によりタクシー代が認められる場合も |
| 付添看護費 | 医師の指示等で付添が必要な場合の費用 | 入院付添費や通院付添費がある |
| 物損に関する費用 | 車の修理費・代車費・評価損など | 人身事故とは別に計算されるケースが一般的 |
※弁護士基準は日弁連交通事故相談センター『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』を参考
将来の手術費や義肢の交換費用など、示談後に発生する費用も「将来介護費」などとして請求できる場合があります。
領収書がない出費は認められないことが多いため、通院にかかったタクシー代や装具の費用などは必ず記録と領収書の保管を徹底しましょう。
③消極損害|休業損害・逸失利益
消極損害とは、事故に遭わなければ「本来得られたはずの利益」のことです。怪我による収入減少や、将来の収入喪失がこれに当たります。
主な項目は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 休業損害 | 怪我の治療のために仕事を休み、給料が減った分の補償です。 有給休暇を使用した場合でも、損害として請求可能です。 専業主婦(主夫)の場合も、家事労働を労働とみなし請求できます。 |
| 逸失利益 | 後遺障害が残ったり死亡したりしたことで、将来得られるはずだった収入の減少分です。 後遺障害逸失利益は「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応する係数」で計算します。 一方、死亡逸失利益は「基礎年収額 × 就労可能年数に対するライプニッツ係数 ×(1- 生活費控除率)」で計算します。 金額が数千万円単位になることもあり、示談金の中で大きな割合を占めます。 |
会社員であれば源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書などが算定の根拠資料として必要になります。
また、学生や就職活動中の方であっても、賃金センサス(平均賃金)を用いて将来の収入見込みを算定し、請求することが可能な場合もあります。
交通事故の示談金が適切か悩んでいる方は、一度弁護士法人アクロピースにご相談ください。
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交通事故の入通院慰謝料の金額を決める「3つの基準」
入通院慰謝料の計算には3つの異なる基準が存在し、どの基準を使うかで金額が大きく変動します。
保険会社は低い基準で提示してくることが多いため、この仕組みを知っておくことは非常に重要です。
自賠責保険基準|被害者救済のための最低限の補償
自賠責保険基準は、国が定めた「自動車損害賠償保障法」に基づく基準です。すべての自動車の所有者に加入が義務付けられており、被害者に対する最低限の補償を目的としています。
金額は、3つの基準の中で最も低く設定されているのが特徴です。傷害部分(治療費や慰謝料など)の支払限度額は、被害者1名につき120万円までと決められています。
この120万円には、治療費や通院交通費、休業損害もすべて含まれます。怪我の程度が重く、損害額が120万円を超えてしまった分については、加害者が加入している任意保険会社へ請求することになります。
任意保険基準|各保険会社が独自に定める非公開基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している支払基準です。自賠責保険の上乗せ補償として機能しますが、具体的な計算式は一般に公開されていません。
一般的に、自賠責基準よりは高く、次に紹介する弁護士基準よりは低い金額になります。なかには、支出を抑えるために、自賠責基準に近い金額で提示してくることも珍しくありません。
保険会社が「これが当社の規定による最大限の提示額です」と言って提示してくるのは、この基準に基づいた金額です。
担当者が「これ以上は出せません」と言ったとしても、それはあくまで社内規定上の話であり、法的な上限ではない点に注意してください。
弁護士基準(裁判基準)|過去の判例に基づく最も高額な基準
弁護士基準は、過去の裁判例をもとにして現実で裁判所で認定される基準です。裁判所や弁護士が使用する基準であり、「裁判基準」とも呼ばれます。
3つの基準の中で最も高額であり、かつ本来の適正価格です。自賠責基準と比較して、慰謝料だけで2倍近い差がつくことも珍しくありません。
ただ、個人で保険会社に交渉しても「弁護士基準は裁判をした場合の基準です」と一蹴されてしまうケースがほとんどです。
弁護士が代理人となることで、保険会社側も裁判リスクを考慮し、この基準に近い金額での話し合いに応じるようになるでしょう。
交通事故の入通院慰謝料の金額は?自賠責基準・弁護士基準でシミュレーション
実際にどのくらい金額に差が出るのでしょうか。ここからは、具体的なケースでシミュレーションを行い、「慰謝料」を中心に自賠責基準と弁護士基準の差額を比較します。
なお、過失割合は10対0で、かつ金額は概算目安です。
むちうち・打撲(軽傷)で通院した場合の示談金相場
追突事故などで「むちうち」になり、通院したケースを想定します。
自賠責基準は「日額4,300円×対象日数」で計算されるのが特徴です。このときの対象日数は、「治療期間」と「実通院日数の2倍」の少ない方が選択されます。
一方で弁護士基準は、通院期間をベースに、日弁連交通事故相談センター『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』の算定表を用いて計算するのが特徴です。ただし、弁護士基準でも通院期間に比して通院日数が少ない場合は、実通院日数の3~3.5倍で計算することもあります。
仮に通院期間60日(実通院日数25日)として計算した場合、慰謝料の相場は以下のとおりです。
| 計算基準 | 入通院慰謝料の相場 | 差額 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 21万5,000円 | – |
| 弁護士基準 | 36万円 | +15万5,000円 |
※弁護士基準は日弁連交通事故相談センター『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』の「別表Ⅱ(軽傷用)」を参考
軽傷であっても、弁護士基準を適用することで十万円単位で増額する可能性があります。
むちうちは治療に長期間かかるため、早期に治療費を打ち切られそうになるトラブルが頻発します。自覚症状の一貫性を主張し、弁護士基準での交渉を粘り強く行うことが大切です。
骨折・重傷で入院や手術をした場合の示談金相場
骨折などの重傷で、入院と通院が必要になったが後遺症はなかったケースです。
仮に、入院1か月・通院6か月(実通院日数60日)の合計7か月かかった場合の示談金相場は、以下のとおりです。
| 計算基準 | 入通院慰謝料の相場 | 差額 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 77万4,000円 | – |
| 弁護士基準 | 149万円 | +71万4,000円 |
※弁護士基準は日弁連交通事故相談センター『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』の「別表Ⅰ(重傷用)」を参考
入院期間が含まれると慰謝料額は上がり、基準による差額もさらに大きくなります。
重傷事案では、これに加えて休業損害の計算も複雑になるため、専門家のチェックが不可欠です。入院期間が長引くと仕事を休む期間も長くなり、休業損害の計算も高額になる傾向があります。
示談交渉の際は、単なる治療費だけでなく、将来的なキャリアへの影響や生活への支障も考慮して賠償額を算出する必要があります。
後遺障害等級が認定された場合の示談金相場
治療を続けても痛み等が残り、後遺障害等級が認定された場合のケースです。
ここでは、後遺障害等級14級9号が認定された場合に受け取れる「後遺障害慰謝料」の相場を比較します。
| 計算基準 | 後遺障害慰謝料の相場 | 差額 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 32万円 | – |
| 弁護士基準 | 110万円 | +78万円 |
※弁護士基準は日弁連交通事故相談センター『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』を参考
後遺障害慰謝料において、基準の違いは圧倒的です。最も低い14級であっても、弁護士基準では自賠責基準の3倍以上の金額が認められます。
等級が上がるほど(重篤なほど)、この差額は数百万・数千万円へと拡大します。適切な等級が認定されるかどうかで、受け取れる金額の桁が変わると言っても過言ではありません。
認定申請にあたっては、医師による後遺障害診断書の記載内容が極めて重要になるため、事前に弁護士のアドバイスを受けましょう。
死亡事故における示談金の相場
不幸にも被害者が亡くなられた場合の死亡慰謝料の比較です。ここでは、被害者が一家の支柱(主として家計を支えている人)であった場合を想定します。
| 計算基準 | 死亡慰謝料の相場 | 差額 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 死亡本人分400万円 + 遺族分550万円〜750万円 (請求権者の人数により変動、被扶養者がいる場合は200万円加算) | – |
| 弁護士基準 | 2,000万〜2,800万円 | +1,600万円~2,400万円 |
※弁護士基準は日弁連交通事故相談センター『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』を参考
自賠責基準の400万円(遺族の人数等で加算あり)に対し、弁護士基準では非常に高額な慰謝料が設定されています。その差額は2,000万円以上になることも珍しくありません。
遺族の生活を守るためにも、適正な基準での解決が強く求められます。ただ、遺族の精神的な負担は計り知れず、保険会社との金銭的な交渉を行うこと自体が大きなストレスとなるでしょう。



弁護士に一任すれば、精神的な負担を軽減しつつ、故人の命に見合った適正な賠償金を確保することが可能です。
交通事故における保険会社の示談金提示額が低いと感じたときのチェックポイント
保険会社から提示された示談金に納得がいかない場合は、安易にサインをしてはいけません。
保険会社は、自社独自の低い基準(任意保険基準)で算出した金額を提示してくることもあるため、適切かどうかを確認することが大切です。
提示額が適正かどうか判断するためにも、まずは以下の3点をチェックしてみてください。
- 計算基準は「弁護士基準(裁判基準)」になっているか (※最も高額になる法的基準です)
- 提示された「過失割合」は事故状況と合致しているか
- 休業損害や通院交通費などに「計算漏れ」はないか
とくに「弁護士基準」と保険会社の提示額には、2倍近く差が出ることも珍しくありません。これらの項目を見直すだけで、大幅な増額の余地が見つかるケースが多々あります。
示談金提示額が低額になる原因と対処法
保険会社から提示される示談金は、適正額ではない可能性もあり得ます。なぜ低額になってしまうのか、その主な原因と対処法を知っておきましょう。
以下、それぞれ具体的に解説します。
原因1|任意保険基準で提示をしてくる
交通事故の示談交渉において、加害者側の保険会社は、支払う賠償金を可能な限り低く抑えようとする傾向があります。
そのため、最初の提示額は、過去の裁判例に基づいた本来受け取るべき「弁護士基準(裁判基準)」ではなく、各保険会社が独自に低く定めた「任意保険基準」を用いて算出されることが一般的です。
多くの被害者は「保険会社という専門家が提示する金額だから正しいのだろう」と誤解し、そのまま合意してしまいがちですが、これは大きな損失につながります。実際には、任意保険基準と弁護士基準の間には、場合によって2倍から3倍もの金額差が生じることも珍しくありません。
提示された金額はあくまで「保険会社の希望額」に過ぎないことを理解しましょう。適正な賠償金を受け取るためには、相手の言い値を鵜呑みにせず、弁護士基準で計算し直した金額を主張する必要があります。
原因2|過失割合による減額(過失相殺)
事故の責任が被害者側にもあると判断された場合、その割合分だけ賠償金が減額されます。これを「過失相殺」といいます(民法第722条)。
過失相殺の計算例は、以下のとおりです。
- 状況:賠償金総額が100万円、被害者の過失が2割の場合
- 結果:100万円 × (1 – 0.2) = 80万円の受け取り



交通事故ではどちらにどの程度の過失があるかという過失割合が争いとなることもあります。
保険会社が提示する過失割合は、必ずしも正しいとは限りません。過去の判例と照らし合わせ、不当に高い過失割合が割り当てられていないか確認しましょう。
ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの客観的証拠を集めることが有効です。事故現場の道路状況や修正要素(速度超過や合図なし等)を精査することで、被害者に有利な過失割合に修正できるケースも多々あります。
関連記事:交通事故の過失割合を徹底解説|ケース別の相場と納得できない時の対処法
原因3|治療期間の短さと通院頻度
傷害に対する慰謝料(入通院慰謝料)は、治療期間と通院日数を基礎として計算されるのが特徴です。
そのため、以下のようなケースでは慰謝料が低くなる傾向があります。
- 通院頻度が低い:月に1回程度しか通院していない
- 早期の治療終了:痛みが残っているのに「もう大丈夫」と治療を止めてしまう
保険会社から「そろそろ治療費の支払いを打ち切ります」と言われ、そのまま通院を止めてしまうケースも少なくありません。
医師が「完治」または「症状固定」と診断するまでは、自己判断で治療を止めないことが大切です。通院頻度は傷害の部位・程度により異なるため、主治医と相談の上で適切な治療計画を立てましょう。
また、仕事が忙しいからといって通院を怠ると、「怪我は軽微である」「治療の必要がない」と判断され、慰謝料が大幅に減額される原因になります。適切な賠償を受けるためには、痛みがある限り、医師の指示に従って十分な頻度で通院実績を作ることが不可欠です。
【ステップで解説】交通事故の発生から示談金を受け取るまでの流れ
交通事故の被害に遭ってから示談金を受け取るまでには、所定の手続きと期間が必要です。
治療中はお金の話は一旦置いておき、治療に専念することが大切ですが、全体像を把握しておくことで不安を解消できます。
ここでは、事故発生から入金までの流れを3つのステップに分けて解説します。
ステップ1|治療終了(完治または症状固定)
示談交渉は、原則として「損害額が確定」してからスタートします。そのためには、まず怪我の治療を完了させなければなりません。
治療の終了には以下の2つのパターンがあります。
- 完治:怪我が完全に治り、元通りの状態に戻ること
- 症状固定:これ以上治療を続けても、症状の改善が見込めない状態
医師が「症状固定」と診断した時点で治療期間は終了となり、これ以降の治療費は原則として自己負担となります。
症状固定の診断は保険会社ではなく、あくまで主治医が行うものです。保険会社から打診があっても、医師と相談して慎重に決定しましょう。
ステップ2|後遺障害等級認定の申請(必要な場合)
完治せず、後遺症が残ってしまった場合は、「後遺障害等級認定」の申請を行いましょう。
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになり、示談金が大幅に増額されます。
申請方法には、以下の2種類があります。
| 申請方法 | 手続きの主体 | 特徴 |
|---|---|---|
| 事前認定 | 加害者側の保険会社 | 手間はかからないが、提出書類の内容をチェックできないため、適正な認定を受けにくいリスクがある |
| 被害者請求 | 被害者本人(または弁護士) | 資料集めなどの手間はかかるが、納得のいく医証や陳述書を提出できるため、適正な等級認定を受けやすい |



適正な賠償金を目指すのであれば、透明性の高い「被害者請求」を選択することをおすすめします。
ステップ3|示談交渉と合意書の取り交わし
損害額がすべて出揃った段階で、保険会社から示談金の提示(示談案)が届きます。この提示額をもとに、金額や過失割合についての交渉を行いましょう。
双方が内容に納得し、合意に至れば「免責証書(示談書)」に署名・捺印をして返送します。
一度示談書にサインをすると、原則としてやり直しはできません。金額の内訳・過失割合・支払日などを必ずチェックしましょう。
示談金が振り込まれるまでの期間はどれくらい?
示談が成立してから、実際に口座にお金が振り込まれるまでの期間は、一般的に合意をしてから「約2週間程度」です。
ただし、これはあくまでスムーズに事務処理が進んだ場合の目安です。事故発生から入金までは、数か月から数年になる場合もあります。
- 示談成立から入金まで:約2週間
- 事故発生から入金まで:怪我の程度により、数か月〜数年
当面の生活費や治療費の支払いが苦しい場合は、自賠責保険の「仮渡金制度(自賠法第17条)※」や、任意保険の「内払制度」を利用することで、示談成立前にある程度のお金を受け取れる可能性があります。
無理をして早期決着を図るのではなく、上記のような制度を活用しながら、納得いくまで交渉することが大切です。
※死亡の場合は290万円、傷害の場合は程度に応じて40万円、20万円または5万円となります。
関連記事:交通事故の示談期間はどれくらい?ケース別の目安期間や長引く原因・短縮方法を解説
適切な交通事故の示談金を受け取るために大切なポイント
交通事故の被害者が損をしないためには、保険会社のペースに巻き込まれないことが重要です。
適正な示談金を獲得するために守るべきポイントは、以下の3つです。
以下、それぞれ詳細に解説します。
治療は自己判断で中断しない
仕事や家事が忙しいからといって、通院を自己判断で止めてはいけません。
なぜなら、怪我の程度が軽いと見られる可能性があるほか、怪我と症状の因果関係が裁判でも否定されてしまう可能性があるためです。
医師の指示に従い、完治または症状固定までしっかりと通院を継続してください。
安易に保険会社の提示額で示談書にサインしない
前述の通り、保険会社が最初に提示してくる金額は、自社の支出を抑えるための「低額な基準(任意保険基準)」です。これはあくまで「交渉のスタートライン」であり、最終的な決定額ではありません。
「早く終わらせたい」という焦りから、提示された金額をそのまま受け入れてしまう被害者が多くいます。しかし、交渉次第で数十万円、場合によっては数百万円単位で増額できる可能性があります。



提示額が届いたら、「この金額は弁護士基準と比べてどうなのか?」と、必ず疑うようにしましょう。
弁護士に依頼する
最も確実かつ効果的に示談金を増額させる方法は、弁護士に交渉を依頼することです。弁護士が代理人として交渉することで、以下のメリットが得られます。
- 弁護士基準の適用:最も高額な「裁判基準」での交渉が可能になる
- 精神的負担の軽減:保険会社とのやり取りをすべて任せられる
- 後遺障害認定のサポート:適切な後遺障害認定をしてもらうための医学的なアドバイスが受けられる
「弁護士費用がかかると赤字になるのでは?」と心配される方もいるでしょう。自身の保険に「弁護士費用特約」がついていれば、実質負担ゼロで依頼することが可能です。
特約がない場合でも、増額分で費用を賄えるケースが大半であるため、まずは弁護士に相談し、試算だけでもしてもらいましょう。
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関連記事:交通事故で弁護士に依頼するメリットは?デメリットや依頼の適切なタイミングも解説
交通事故の示談金に関するよくある質問
交通事故の示談金に税金はかかる?
原則として、交通事故の示談金(損害賠償金)に所得税などの税金はかかりません(所得税法第9条第1項第18号)。
示談金は「利益(儲け)」ではなく、「マイナスになった損害の補填」という性質を持つため、非課税所得として扱われます。
ただし、例外として以下のケースでは課税対象となる可能性があるため注意が必要です。
| 課税されるケース | 理由 |
|---|---|
| 過剰に高額な見舞金 | 社会通念上、著しく高額な場合は贈与とみなされる可能性がある |
| 商品等の損害賠償 | 事業用の商品が破損し、その補償を受けた場合は事業所得となる |
一般的な治療費や慰謝料であれば、納税や確定申告の必要はありません。
主婦や学生でも休業損害はもらえる?
主婦(主夫)や学生であっても休業損害は請求可能です。
専業主婦の場合、家事労働には経済的価値があると認められています。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」の平均賃金を基準として、家事労働ができなかった日数分を請求可能です。
学生の場合は、アルバイトを休んだことによる減収分が請求できます。事故により就職が遅れた場合や、内定が取り消された場合も補償の対象になります。



「働いていないからゼロ」ではありません。正当な権利として主張しましょう。
もらい事故(過失割合10対0)の場合の示談交渉の注意点は?
信号待ちでの追突など、被害者に過失がない「10対0」の事故では、自身の保険会社が示談交渉を代行できません。
被害者に過失がない場合、被害者側の保険会社は保険金の支払義務を負わず、法律上の利害関係が発生しないためです。
そのため、プロである加害者側の保険会社と、被害者本人が直接交渉しなければなりません。弁護士費用特約を利用し、弁護士に交渉を依頼することが大切です。



「もらい事故」こそ、弁護士のサポートが不可欠なケースといえるでしょう。
加害者が任意保険に加入していない場合の対処法は?
加害者が任意保険に入っていない(無保険)の場合、加害者本人が損害の全額を一度に支払うことができないケースも少なくありません。
この場合、以下のような手段で賠償金を回収することが可能です。
| 自賠責保険への被害者請求 | 最低限の補償(120万円まで)を確保する |
|---|---|
| 加害者本人への直接請求 | 公正証書を作成し、分割払いなどを約束させる |
| 政府保障事業の利用 | 加害者が不明(ひき逃げ)や自賠責保険未加入の場合に、自動車損害賠償保障法第72条に基づき、政府が被害者の損害をてん補する制度 |
無保険車との事故はトラブルになりやすいため、早急に専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ|適正な示談金を獲得するためにも、まずは弁護士に相談しよう
交通事故の示談金は、被害者が受けた肉体的・精神的苦痛に対する大切な償いです。しかし、知識がないまま交渉を進めると、保険会社の基準である「低額な示談金」で処理されてしまうリスクがあります。
適正な賠償金を受け取り、これからの生活の再建に役立てるためにも、一人で悩まず弁護士に相談することが大切です。多くの法律事務所では、無料相談を実施しており、弁護士費用特約を使えば費用の心配もありません。



正当な権利を守るためにも、まずは弁護士に相談しましょう。
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