休業損害は主婦でももらえる?通院日数ごとの計算方法やパート勤務の場合も解説【弁護士監修】
「専業主婦でも休業損害を請求できるの?」「パート勤務だけど休業損害はもらえるのかな?」
事故やけがで家事ができなくなったとき、こうした疑問を持つ方は少なくありません。
専業主婦やパート主婦であっても、休業損害として損害賠償を受け取れる可能性があります。
まずは主婦の休業損害の仕組みやルール、算定基準を把握し、手続きをスムーズに進めましょう。
本記事では、主婦が休業損害を請求できる理由や計算方法、請求までの流れを詳しく解説します。
交通事故によるケガで家事ができない主婦の方は、ぜひ参考にしてみてください。
交通事故によって家事ができなくなり、休業損害の請求をご検討されている方は、弁護士法人アクロピースにご相談ください。
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交通事故の休業損害は主婦でももらえる?自賠責や任意保険の対応も解説
交通事故による休業損害は、主婦であっても請求可能です。家事労働は無償であっても労働と見なされ、補償が認められます。
本章では、専業主婦やパート勤務の方に向けて、制度の仕組みや休業損害の請求が認められている理由を解説します。制度の概要を理解し、必要な手続きを進めましょう。
そもそも「主婦の休業損害」とは?
主婦の休業損害とは、交通事故のけがによって家事ができなくなったことで生じた経済的な損害を指します。
家事は収入を生むわけではありませんが、経済的価値がある労働とされ、自賠責保険や任意保険でも補償対象になります。
国の自賠責保険の支払基準では、主婦が交通事故で家事ができなくなった場合は「収入が減ったもの」とみなされ、原則として1日あたり6,100円が補償されます。(参照:国土交通省|自動車損害賠償保障事業が行う損害の塡補の基準実施要領)
家族の生活を支える役割を担っている以上、事故の影響による負担には金銭的な評価がつくのです。
昭和49年の最高裁判決では、家事労働にも金銭的価値があると明示され、主婦が事故でけがを負った場合でも損害賠償の対象になると認められました。(参照:裁判所| 昭和44(オ)594)
このように、交通事故による負傷で家事が一時的にできなかった場合も、休業損害が認められる可能性があります。
専業主婦でも休業損害が認められる理由
専業主婦でも休業損害が認められているのは、家事ができなくなったことで生活に大きな影響を及ぼす可能性があるためです。
「家事従事者」に該当する専業主婦は、家事を行うことで家庭を支えています。
家政婦や家事代行業者がいるように、家事を第三者に依頼すれば費用が発生します。そのため、家事には経済的価値があると見なされているのです。
ただし、あくまでも同居する家族のために家事を担っていることが必要ですので、一人暮らしで自分の家事をしても、家事従事者の休業損害は認められないことには注意が必要です。
任意保険においても賃金センサスの女性平均賃金を参考に、損害額が算出されるのが一般的です。収入がないことを理由に補償をあきらめず、正当な手続きで請求しましょう。
主婦の休業損害の計算方法【専業主婦・パート勤務別】
主婦の休業損害は、通院日数や就業状況に加えて、用いられる算定基準によって計算方法が異なります。
休業損害の請求額の計算で用いられる算定基準は、以下の3つです。
算定基準 | 概要 |
---|---|
自賠責基準 | 国が定めた最低限の補償基準 請求額は最も低額になる |
任意保険基準 | 各保険会社が独自に設ける基準 実通院日数や交渉結果により増減あり |
弁護士基準 | 裁判所が用いる基準 賃金センサスを基に算出し、最も高額な補償が見込める |
どの基準が使われるかは、保険会社との交渉状況や弁護士をつけるかどうかで変わります。
本章では、補償額が最も高く見込まれる「弁護士基準」を基に、休業損害の計算方法を解説します。パート主婦の補償額も紹介しているため、金額を知る目安として参考にしてみてください。
主婦(専業主婦)の休業損害の計算方法
専業主婦の家事労働は、厚労省の「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」を基に金銭的価値が算定されます。
弁護士基準では、賃金センサスから対象の年齢・性別に応じた年収を確認し、それを365日で割って基礎収入(日額)を算出します。
計算式は、以下の通りです。
基礎収入(日額)= 賃金センサス上の年収 ÷ 365日
賃金センサス上の年収には、女性の全年齢平均賃金が用いられるケースが多いです。
令和6年賃金構造基本統計調査によると、令和6年の女性の全年齢平均賃金は416万4,400円です。(参照:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査)
【計算例】35歳の専業主婦が交通事故によって90日間「入院」した場合
本ケースにおいて、基礎収入(日額)と休業損害の金額は以下のように計算します。
基礎収入(日額):416万4,400円 ÷ 365日=1万1,409円
休業損害の金額:日額1万1,409円×休業日数90日=102万6,810円
入院中は原則として家事が不可能とみなされるため、全期間が休業損害の対象になります。
したがって、上記のケースでは102万6,810円の休業損害補償が認められる可能性があります。
【計算例】35歳の専業主婦が交通事故によって90日間「通院」した場合
一方、通院のみで一部の家事はできていた場合、完全な休業が認められることは稀です。その場合の計算方法は様々ですが、方法の一つとして症状や支障度合いに応じたパーセンテージ(労働能力喪失率)をかけて算出する方法があります。
例:交通事故のむちうちで90日間通院したケース
- 最初の30日間:100%(家事全般に大きな支障)
- 次の30日間:50%(一部の家事は可能)
- 最後の30日間:30%(軽微な支障)
この場合の休業損害の計算例は以下のとおりです。
期間 | 日数 | 労働能力喪失率 | 計算式 | 休業損害の金額 |
---|---|---|---|---|
第1期(初日〜30日目) | 30日 | 100% | 11,409円 × 30日 × 100% | 34万2,270円 |
第2期(31日〜60日目) | 30日 | 50% | 11,409円 × 30日 × 50% | 17万1,135円 |
第3期(61日〜90日目) | 30日 | 30% | 11,409円 × 30日 × 30% | 10万2,681円 |
なお、弁護士基準では、入院日数と通院日数を合算して休業期間を算出する場合が多いです。
ただし、通院日数の数え方は一律ではありません。以下のように、個別の事情によって扱いが異なります。
- 損害保険会社や裁判所の判断
- 医師の診断内容
- 家事への支障の程度 など
症状が軽度であり日常生活に大きな影響がなかったと判断される場合は、実通院日数に限定さたり、そもそも休業損害自体が否定されるケースもあります。
休業損害を請求する際は、医師の診断書や通院記録、家事の支障を示す証拠などを基に、具体的な日数や影響度を主張することが重要です。
パート(兼業主婦)の休業損害の計算方法
兼業主婦の休業損害は、実際のパート収入と女性労働者の平均賃金を比較し、どちらか高い方を基礎収入として算出するのが一般的です。
【計算例】実収入が女性の平均賃金(賃金センサス)より高い場合
実収入が高い場合は、事故前3カ月の給与総額を出勤日数で割って日額を算出し、その金額に休業日数を掛けて計算します。
- 事故前3か月のパート収入:月25万円 × 3か月 = 75万円
- 出勤日数:月20日 × 3か月 = 60日
- 実収入日額:75万円 ÷ 60日 = 12,500円(=基礎収入)
- 賃金センサス(日額):11,409円(例)
- 休業日数:30日間
- 休業損害:12,500円 × 30日 = 37万5,000円
【計算例】実収入が賃金センサスを下回る場合
パート収入が女性の平均賃金を下回る場合は、専業主婦と同様、賃金センサスを基にした計算方法で算出します。
- 実収入日額:6,000円
- 賃金センサス(日額):11,409円(例)
→実収入より賃金センサスの方が高いため、11,409円を基礎収入とする
- 休業日数:30日間
- 休業損害:11,409円 × 30日 = 34万2,270円
なお、パート収入と家事労働の損害を合算して請求することは認められていません。
原則として、どちらか高い方だけ基に休業損害を算出する点に注意しましょう。
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主婦の休業損害を請求するまでの3ステップ
主婦の休業損害を請求する手続きは、以下の3ステップで進めます。手続きの流れを把握し、スムーズに休業損害の請求を行いましょう。
必要書類をそろえる【診断書・自認書など】
必要書類は、以下の通りです。
- 診断書
- 家事従事者自認書
- 通院記録が記載されているもの
- 家族構成がわかる資料(住民票の写しなど)
診断書には「家事労働の制限あり」といった記載があると、休業損害の根拠として有利になりやすいです。
保険会社によっては独自の書式を指定されることもあるため、事前に確認しておきましょう。
保険会社に書類を提出する【任意・自賠責への対応】
必要書類がそろったら、加害者側の任意保険会社に連絡し、指定の手続きに従って提出します。
なお、加害者が任意保険に加入していない場合は、自賠責保険へ直接請求する「被害者請求」を利用できます。
被害者請求では、治療費や通院交通費などを一時的に立て替えた場合、その都度自賠責に請求することが可能です。
損害額が確定していなくても、支払った費用ごとに申請できるため、早期の補償を受けたいときに有効です。(参考:国土交通省 自賠責・共済ポータルサイト|損害賠償を受けるときは?)
示談交渉または弁護士への相談を検討する
加害者との示談交渉または弁護士への相談を検討します。
示談交渉では、まず保険会社が休業損害を含めた損害額を算出し、示談金額を提示してきます。その金額に納得できない場合、交渉が可能です。
しかし、示談交渉は話し合いが難航したり、提示額が妥当か判断できなかったりする可能性があります。
その際は、弁護士に依頼するのも選択肢の一つです。弁護士に依頼すれば、裁判実務を基に損害額を計算してもらえるため、賠償額が上がります。
自分が加入している保険に弁護士費用特約がついている場合は、費用負担なく相談・依頼できる可能性があります。費用面が不安な方は、まず特約の有無を確認しましょう。
弁護士費用特約の補償限度額は、以下の記事を参考にしてください。
保険会社に主婦の休業損害を否定された時の対応と注意点
保険会社によっては「主婦には収入がない」として、休業損害の支払いを拒否されることがあります。請求を否定された際に取るべき対応は、以下の通りです。
家事労働にも経済的価値が認められるため、否定された場合でも適切な対応を取れば補償を受けられる可能性があります。
具体的な対応と注意点を理解し、スムーズに手続きを進めましょう。
否定された理由を確認し、反論の根拠を整理する
保険会社に休業損害を否定された場合は、まずはその理由を明確に確認することが重要です。
主婦の休業損害が否定されるときによくある理由と、その反論材料・対応方法は、以下のとおりです。
主婦の休業損害が否定される理由の例 | 反論材料・対応方法の例 |
---|---|
「日常生活に支障がない」 | 医師が「家事が困難」と診断しているならば反論材料になる |
「主婦は無収入だから対象外」 | 専業主婦の家事労働にも経済的価値がある旨を説明する(参照:裁判所| 昭和44(オ)594) |
主張を通すには、具体的な根拠が欠かせません。理由を確認した上で、診断書の記載内容や家事への影響を客観的に整理し、反証の材料を集めていきましょう。
交通事故で相手の保険会社の対応が悪い場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:交通事故で相手の保険会社の対応が悪いときの対処法と弁護士に相談するメリット
診断書・家事従事者自認書など証拠書類を整える
主婦の休業損害を請求する際は、事故によって家事が困難になった事実を客観的に示す証拠が不可欠です。
特に重要となるのが、医師の診断書です。医師には、診断書に以下のような項目を具体的に記載してもらうよう伝えておくと良いでしょう。
- 家事労働が制限される旨
- 治療期間
- 症状固定日 など
医師は交通事故による怪我を治す専門家ですが、損害賠償に関する専門家ではないので、カルテ・診断書に損害賠償に有利な記載を常にしてもらえるとは限りません。家事労働が制限されると診断されているにもかかわらず、その旨の記載がないこともあります。
医師には、具体的な症状や実際の家事労働への影響などを伝え、家事労働の可否や支障の程度についての意見を記載してもらうことが必要です。
また、家事従事者であることを証明するための「家事従事者自認書」も提出します。
この書類には、以下のような項目を詳しく記載することで、休業損害の正当性を証明できる場合があります。
- 日頃行っていた家事の内容や時間帯
- 家族構成 など
証拠書類に不備があると補償が認められない可能性があるため、必要に応じて専門家に相談して準備を進めると良いでしょう。
交渉が難航する場合は弁護士を通じて進める
保険会社との交渉が長引いたり、休業損害の請求を否定されたりした場合は、弁護士に依頼して手続きを進めるのが有効です。
弁護士に依頼するメリットは以下の3つです。
- 法律の専門知識を基に適切な主張と証拠の整理ができるため、交渉の精度が高まる。
- 弁護士基準での請求に切り替えると、損害賠償額を高く請求できる。
- 交渉の窓口を弁護士が担うことで、手続きにかかる精神的な負担や手間を軽減できる。
弁護士基準での請求の場合、自賠責や任意保険の基準と比べて、賃金センサスに基づいた日額で休業損害を算定するため、補償額が高くなりやすいのが特徴です。
自身での対応に不安がある場合は、早い段階で専門家に相談するとスムーズに進めやすくなります。
交通事故問題を弁護士に相談するタイミングは、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:交通事故問題を弁護士に相談するタイミングはいつがいいか?
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主婦の休業損害に関するよくある質問
専業主婦でも休業損害証明書は必要ですか?
専業主婦は勤務先がないため、勤務先からの証明書は不要です。
ただし、以下の書類の提出が必要な場合があります。
- 家事従事者自認書
- 医師の診断書
- 通院記録が記載された書類
- 家族構成がわかる書類
自認書には、事故前に日常的に家事を行っていたこと、どのような家事ができなくなったかなどを記載します。
これらの書類をそろえれば、無収入であっても家事労働の実態が認められ、休業損害の補償対象となる可能性が高まります。
主婦の休業損害と慰謝料の違いは何ですか?
休業損害は、家事労働ができなくなったことによる経済的損失に対する補償です。
一方、慰謝料は「事故による精神的苦痛」に対する賠償であり、性質が異なります。
主婦でも、けがによって家事ができなかった期間は休業損害、通院や後遺症による苦痛には慰謝料が支払われます。
どちらも請求可能ですが、それぞれ計算基準や必要書類が異なるため、混同しないよう注意しましょう。
むちうちで休業損害はいつまで補償されますか?
むちうちによる休業損害は、その症状により一般的に家事への影響が生じると考えられる期間が補償の対象となることが多いです。
個別具体的な事情にもよりますが、一般的には、長くとも3か月程度までには家事労働への影響が少なくなると考えられます。
高齢者の主婦でも休業損害は認められますか?
日常的に家事を行っていた高齢の主婦にも休業損害が認められる可能性があります。
休業損害の判断において重視されるのは、実際に同居する誰かのための家事に従事していたかどうかです。たとえ高齢であっても、本人が家事の中心を担っていたと認められれば、経済的損失として評価されるのです。
ただし、以下のようなケースでは請求額が低くなったり、休業損害の請求自体が否定される可能性があります。
- 他の家族も家事労働をしていて分担する家事労働が少ないケース
- 一人暮らしで「誰かのための家事」と認められないケース
まずは、家事の量や範囲などを客観的に証明できる資料をそろえておきましょう。
まとめ|主婦の休業損害について正しく理解した上で請求を進めよう
交通事故の被害によって家事が行えなくなった場合、専業主婦やパート主婦であっても休業損害の請求が可能です。
家事労働は経済的価値を持つと評価されており、通院期間や症状の程度に応じて損害額が算出されます。
請求にあたっては、実際に家事ができなかった期間や、基礎収入の根拠となる統計データ(賃金センサス)などが必要です。
証明資料の整備や保険会社とのやりとりに不安がある場合は、弁護士に相談することで手続きが円滑に進みます。
損害を正しく補償してもらうためにも、制度の仕組みを理解し、必要な対応を一つずつ進めていきましょう。
弁護士法人アクロピースでは、交通事故に詳しい弁護士があなたの休業損害請求をサポートいたします。
当事務所は、これまで交通事故に関する案件を1,200件取り扱っております。
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