後遺障害の逸失利益とは?等級別の相場や計算方法を弁護士が解説

「後遺障害の逸失利益って、どれくらいもらえるの?」「そもそも、どうやって計算するの?」

交通事故で後遺障害が残った方の中には、このような不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

逸失利益とは、事故が無ければ本来得られるはずだった収入を補償するものです。

ただし、等級・年齢・職業などにより金額は大きく変わり、適切に主張しないと損をする可能性もあります。

この記事では、逸失利益の基礎知識や計算方法、請求時の注意点まで分かりやすく解説します。適切な補償を受けるための判断材料として、ぜひお役立てください。

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目次

後遺障害の「逸失利益」とは?|慰謝料との違いも解説

交通事故で後遺障害が出た場合、「将来働いて稼げるはずだった収入が少なくなったかもしれない」という不安を抱える人は少なくありません。

このような将来得られるはずだったのに得られなくなった損失を「逸失利益」といいます。

本章では、逸失利益がどのような補償なのかを整理したうえで、「慰謝料」との違いを具体的に解説します。

逸失利益とは「事故がなければ今後得られたはずの収入」

逸失利益とは、交通事故がなければ将来得られたと考えられる収入や利益のことです。

事故によって労働能力が落ち、収入が減ると見込まれる場合、その損失は加害者が補償すべきとされています。

たとえば、事故で利き腕が不自由になって以前のような業務ができなくなると、仕事が続けられなくなったり、又は得られるはずの昇給や賞与が得られなくなり、経済的な損失を受ける可能性があります。

本来得られたはずの経済的な利益を補うのが、逸失利益です。

逸失利益は、事故後の収入減を埋める役割をもち、生活の安定に直結する重要な補償といえます。

交通事故での補償対象

後遺障害が認定されると、請求できる補償は逸失利益だけではありません。

交通事故による損害賠償は、主に次の5つで構成されます。

交通事故での補償対象
  • 逸失利益:将来の収入が減ることに対する補償
  • 後遺障害慰謝料:後遺障害による精神的苦痛への補償
  • 治療費:通院や手術などにかかった医療費(すでに支払った分も含む)
  • 休業損害:仕事を休んだことで得られなかった収入に対する補償
  • 入通院慰謝料:治療のための入院・通院による精神的苦痛への補償

これらの補償は、自賠責保険や任意保険を通じて請求できます

中でも逸失利益は、事故後の生活を左右する重要な補償のひとつです。

まずは「自分にどの補償が適用されるか」を確認し、必要な手続きを整理することが大切です。

逸失利益と慰謝料との違い

逸失利益と慰謝料は、どちらも後遺障害が残った際に支払われる補償ですが、内容はまったく異なります。

結論から言えば、逸失利益は将来の収入減に対する補償(財産的損害)、慰謝料は障害による精神的苦痛に対する補償(精神的損害)です。

以下の表で違いを整理してみましょう。

項目補償の性質具体的な内容
逸失利益財産的損害の補填事故がなければ得られたはずの将来の給料、賞与、退職金など
慰謝料精神的損害の補填後遺障害によって感じる痛みや苦しみ、将来への不安など

補償の対象がはっきりと異なるため、別々に計算し、それぞれの適正な金額を請求することが大切です。

交通事故の慰謝料については、以下の記事をぜひ参考にしてください。

関連記事:【交通事故損害賠償額算定基準】交通事故の損害賠償額が変わる3つの算定基準を詳しく解説

後遺障害の逸失利益の計算方法

逸失利益は、以下の計算式で算出されます。

後遺障害の逸失利益の計算方法

逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数

計算に使われる各要素については、以下にまとめました。

要素内容
基礎収入・事故前の年収・会社員は源泉徴収票、自営業は確定申告書が基準
・主婦や学生は賃金センサス(平均賃金)を用いることが多い。
労働能力喪失率・後遺障害によって失われた労働力の割合
・等級により5〜100%までの目安がある例:14級=5%、1~3級=100%
ライプニッツ係数・将来の損害を現在価値で一括補償するための調整係数(中間利息控除と呼ばれます。)
・係数は「労働能力喪失期間」に応じて決まる
・期間が長いほど、係数の値は大きくなる

ただし、症状や職業内容によっては、個別に争われるケースもあります。ご自身のケースに応じた正確な算定が必要なため、専門家の助言を受けておくと安心です。

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後遺障害の逸失利益を請求する具体的な手順

逸失利益を確実に受け取るには、正しい手順で請求を進めることが重要です。流れを事前に把握しておくことで、必要な対応が明確になり、交渉も有利に進めやすくなります。

ここでは、症状固定から保険会社との交渉、補償の受け取りまでを、6つのステップに分けて解説します。

STEP

症状固定の診断後、後遺障害等級の申請を行う

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の回復が見込めない状態を指します。診断を受けたら、次は自賠責保険に対して後遺障害等級の申請を行います。

後遺障害等級の認定結果は、示談交渉や裁判でも重要な判断材料になります。まずは主治医に相談し、後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。

後遺障害等級の決め方については、以下の記事を合わせてご覧ください。

関連記事:後遺障害等級は誰が決めるの?症状固定と後遺障害等級認定(事前認定・被害者請求)に関して

STEP

請求資料の準備と時効の確認をする

次は、逸失利益の請求に必要な書類をそろえる作業に進みます。主な必要書類は以下の通りです。

逸失利益の請求に必要な書類
  • 後遺障害診断書
  • 交通事故証明書
  • 収入証明(源泉徴収票・確定申告書など)
  • 休業損害証明書
  • 診療報酬明細書 など

これらは、労働能力の低下や損害の根拠を裏付ける重要な資料です。スムーズな請求のためにも、早めの準備をおすすめします。

あわせて、時効の期限にも注意が必要です。

逸失利益の請求権は、原則として症状固定日から5年(※2020年3月31日以前の事故は3年)で時効となります。

(出典:法務省|2020年4月1日から事件や事故によって発生する損害賠償請求権に関するルールが変わります

準備に時間がかかることもあるため、できるだけ早く手続きを始めることが大切です。

STEP

自賠責保険に対して逸失利益を請求する

書類がそろったら、まずは加害者が加入する自賠責保険会社に対して損害賠償を請求します。

自賠責保険は、被害者救済を目的とした最低限の補償制度であり、後遺障害等級ごとに支払額の上限が定められています

後遺障害等級保険金の上限額(自賠責)
14級75万円
1級(別表第1)4,000万円
参照:国土交通省|自賠責保険・共済ポータルサイト

ただし、自賠責保険だけで逸失利益の全額が補償されることはまれです。そのため、多くのケースでは、任意保険会社との交渉へと進む必要があります。

STEP

任意保険・加害者と示談交渉を進める

自賠責保険でカバーしきれない分については、加害者が加入する任意保険会社や、加害者本人と示談交渉を行います。

任意保険会社は、独自の基準を使って実際より低い金額を提示するケースがほとんどです。提示額に安易に同意せず、自分側で算出した適正な金額と根拠をしっかり伝えることが大切です。

交渉がまとまらない場合は、以下の法的手段を検討する流れになります。

交渉がまとまらない際の法的手段
  • ADR(裁判外紛争解決手続)
  • 調停(家庭裁判所)
  • 民事訴訟(裁判)

いずれに進む場合も、早めに弁護士など専門家に相談しておくと安心です。

STEP

(必要に応じて)裁判所で請求権を行使する

示談交渉がまとまらなかった場合は、最終手段として地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。

裁判では、以下の点について証拠に基づく主張・立証が求められます。

証拠に基づく主張・立証
  • 後遺障害等級の妥当性
  • 基礎収入の根拠
  • 労働能力喪失率・喪失期間の正当性
  • ライプニッツ係数の適用妥当性

訴訟には時間や手間がかかりますが、弁護士のサポートを受けることで、保険会社の提示額よりも大幅に増額される可能性があります。

そのため、できるだけ早い段階で、示談交渉中から専門家へ相談しておくことを強くおすすめします

STEP

逸失利益の受取方法を選ぶ

逸失利益の受け取り方法は以下2つの選択肢があります。

逸失利益の受け取り方法
  • 一括で受け取る「一時金賠償」
  • 定期的に受け取る「定期金賠償」

2つの受け取り方の違いは、以下のとおりです。

受け取り方支払い形式メリット向いているケース
一時金賠償一括でまとめて受け取るまとまった金額を早期に使える自由度が高い資金の使途が明確な人
定期金賠償月単位・年単位で定期的に受け取るインフレなどの将来リスクを軽減できる生活保障に向いている長期の生活費が必要な人

定期金賠償が選択できるのケースは限られていますし、どちらがいいかは今後のライフプランによって異なります。

ライフプランによって異なります。選択に迷う場合は、弁護士をはじめとする専門家に相談しましょう。

後遺障害があるのに逸失利益がもらえないときの対処法

後遺障害等級が認定されたにもかかわらず、「逸失利益は支払えない」と言われた、提示額が非常にも低かったなどのケースは少なくありません。

後遺障害の逸失利益がもらえない場合の対処法は、以下のとおりです。

泣き寝入りしないためにも、本章の内容を理解しておきましょう。

等級認定に誤りがないか再確認する

まず確認すべきなのは、後遺障害等級の認定内容に誤りがないかです。

逸失利益は等級を基に算出されるため、実態より低い等級で認定されると、本来受け取れる金額より大きく減額されてしまいます。

実際に、当初後遺障害等級が14級と判断されたものが12級になったり、非該当とされたものが14級になったりする例はそれなりにあります。

誤認の例
  • 本来は12級に該当する他覚所見があるのに、14級と認定されている
  • 診断書に記載漏れがあった
  • 認定理由が実際の後遺症の程度と合っていない

認定結果に疑問がある場合は、提出した診断書や認定通知書の内容を見直しましょう。納得できないときは、自賠責保険に対して「異議申し立て」を行い、再審査を求めることが可能です。

この時、交通事故に精通した弁護士に依頼して、後遺障害等級認定の間違いや不足する資料などを指摘したり追加で提出できると、後遺障害等級認定が見直される可能性が高まります。

就労意欲や労働能力の低下を具体的に証明する

保険会社が逸失利益を否定する理由として、「収入が減っていない」「労働能力の低下が見られない」という主張があります。

このような場合は、事故による影響を裏づける客観的な証拠を示すことが重要です。

有効な証拠の例
  • 事故後の残業制限や業務変更を証明する勤務先の書面
  • 昇進・昇給が見送られた記録や人事評価資料
  • 就業先の代表者や上司の陳述書など
  • 就職活動に支障があることを示すメモや応募履歴
  • 家事労働が困難であることを記した日記・家族の陳述書

ご自身の状況を具体的な資料や記録で証明し、労働能力の低下を明確に主張しましょう。

保険会社の計算根拠を見直し再計算を依頼する

保険会社から逸失利益の計算書が提示された場合は、その内容をそのまま受け入れず、計算の根拠を細かく確認しましょう

特に見直すべき項目は以下のとおりです。

見直すべき主な項目
  • 基礎収入:主婦や学生の場合、平均賃金より低く設定されることがある。また昇給などが適切に考慮されれていない場合がある。
  • 労働能力喪失率:後遺障害等級よりも低く評価されていることがある
  • 労働能力喪失期間:本来よりも短く見積もられている場合がある

こうした不当な設定が見つかったら、具体的な根拠をもって再計算を求めることが大切です。

必要に応じて、弁護士や専門家にサポートを依頼するのも有効です。

過去の判例・事例と自分の状況と比較する

過去の裁判例を参考にすることで、保険会社との交渉を有利に進められる可能性があります。

職業によっては通常の後遺障害等級表に定められた労働能力喪失率よりも多い労働能力の喪失が認められることもあります。例えばプロサッカー選手が足に後遺障害を負った場合などです。

また、後遺障害の中には逸失利益が認められにくいものもあります。例えば顔に醜状瘢痕が残ったというようなものです。

醜状瘢痕は、見た目の問題に過ぎず、労働能力は喪失しないとされることもありますが、働き方によっては一定の割合で労働能力を喪失することを認める裁判例も多くあります。

た主婦(主夫)の後遺障害でも、パートの主婦や、ある程度高齢の主婦の場合には正当な基礎収入や期間が認定されていないことも多くあります。

逸失利益の請求時は、あらかじめ自身の状況と似た事例を調べ、交渉時の材料にしましょう。

交通事故案件に強い弁護士に相談する

上記の対処法は、専門知識がなければ対応が難しいものもあります。もっとも確実な方法は、交通事故に詳しい弁護士へ相談することです。

弁護士に依頼することで、次のようなサポートが受けられます。

弁護士からのサポート
  • 保険会社が提示した逸失利益の妥当性をチェック
  • 裁判例に基づいた「弁護士基準」で再計算
  • 保険会社との交渉をすべて代行
  • 異議申立てや訴訟の手続きも全面対応

多くの法律事務所では、初回の無料相談を実施しています。

示談書にサインする前に、必ず一度、弁護士に相談してみてください。

弁護士法人アクロピースでは、交通事故の賠償金のサポートもおこなっております。

後遺障害の逸失利益にも対応しており、保険の使いかたから後遺障害診断書の書き方まできめ細かなサポートが可能です。

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後遺障害の逸失利益についてよくある質問

逸失利益の上限はありますか?

逸失利益は、自賠責保険については上限があります。ただし任意保険や弁護士への依頼によって増額されるケースもあります

保険の種類上限内容備考
自賠責保険後遺障害等級ごとに支払限度あり
例:14級→75万円、12級→224万円(逸失利益+慰謝料等)
最低限の補償
任意保険・加害者本人自賠責で足りない分を請求可能弁護士基準で大きく増額されることも

必要に応じて弁護士に依頼し、適正な金額を再計算の上、正当な請求を行いましょう。

逸失利益はなぜ67歳までで計算されるのですか?

裁判実務で「就労可能年限の上限」を67歳とする運用が定着しているためです。ただし、以下のような場合、67歳を超えても認められることがあります。

67歳を超えても認められるケース
  • 医師・大学教授など、高齢まで就労が一般的な職業
  • 本人の健康状態・勤務実績などから、67歳以降も働く見込みが高いと判断される場合

つまり、67歳はあくまで目安であり、状況によってはそれ以降も逸失利益が認められる可能性はあるのです。

ニートや無職でも逸失利益を請求できますか?

事故当時に無職でも、将来的に働いて収入を得る可能性が客観的に認められれば、「賃金センサス(平均賃金統計)」に基づいた逸失利益の請求が可能です。

【認められる主な条件】
  • 就職活動の記録がある
  • 過去の職歴がある
  • 資格を保有している
  • 働く意欲や能力を示す証拠がある

証明のハードルはありますが、諦める必要はありません。

迷ったら、交通事故に詳しい弁護士に早めに相談するのが有効です。

まとめ|後遺障害の逸失利益について正しい知識を身につけよう

逸失利益とは、交通事故が無ければ本来得られるはずの将来収入を請求できる制度です。

保険会社の提示額に納得できない場合は、計算根拠を見直したり、過去の判例と比較したりすることで、適正な金額に修正できる可能性があります。

適切な逸失利益を受け取ることは、事故後の生活や将来の安心に直結します。少しでも不安や疑問がある場合は、示談に応じる前に、交通事故に詳しい弁護士へ相談することを強くおすすめします。

専門家のサポートを受けながら、正当な補償を受け取りましょう。

弁護士法人アクロピースでは、交通事故の賠償金のサポートもおこなっております。

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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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