追突事故でむちうちになったら?事故後の対応や慰謝料請求で損しない方法を弁護士が解説
「追突事故に遭ってから首が痛い……。これってむちうち?」
「追突事故のむちうちで慰謝料はどのくらいもらえるの?」
事故後、このような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
むちうちは、追突事故によって起こりやすいケガの1つです。首の痛みだけでなく、頭痛・めまい・しびれといった多様な症状が現れるため、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。
本記事では、追突事故によるむちうちについて、事故直後の対応から治療の進め方、慰謝料・損害賠償の相場を、交通事故案件に詳しい弁護士が解説しています。
追突事故のむちうちは、対応を誤ると慰謝料や補償額が大きく減額されるリスクがあります。損をしないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
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追突事故によるむちうち|まず知っておくべき症状と基礎知識
追突事故の被害で最も多いケガのひとつが「むちうち」です。
むちうちになると首の痛みだけでなく、神経や自律神経に影響が及ぶことで、めまいやしびれなど幅広い不調につながる可能性があります。
むちうちに関してとくに押さえておくべき基礎知識は次の3点です。
まずは、むちうちの仕組みと症状を正しく理解し、補償を受ける上で不利にならないための土台を整えておきましょう。
そもそも「むちうち」とは?
「むちうち」は一般的に使われる呼び方で、医学的な診断名ではありません。
むちうちは診断書に「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」と記載され、追突事故で多く見られる外傷です。
発生の原因は、事故の衝撃によって首がS字を描くようにしなり、筋肉や靭帯に強い負担がかかることにあります。頭が後方にのけ反る「過伸展」で首の前側が傷つき、その反動で前に振られる「過屈曲」で後ろ側も損傷するのです。
このとき、首の軟部組織が炎症を起こし、痛みや違和感を生じます。
時速10km程度の低速度下で起こった追突事故でもむちうちが発生するのは、防御姿勢をとれず衝撃がダイレクトに首へ伝わることが原因です。
医学的な詳細は医師の領域ですが、法的補償を受ける上では適切な診断を受けることと受診の早さが重要です。
首の痛みだけじゃない!むちうちの多様な症状
むちうちは「首の痛み」だけにとどまらず、神経や自律神経に影響を及ぼしてさまざまな症状を引き起こすのが特徴です。
下表にむちうちの代表的な症状をまとめました。
区分 | 主な症状 | 特徴 |
---|---|---|
中核的症状 | 首・肩・背中の痛み、肩こり筋肉や靭帯の炎症 | 最も多く現れる典型的な症状 |
神経系 | 腕や手のしびれ、筋力低下、頭痛 | 神経が刺激・圧迫されることで発生 |
自律神経系 | めまい、吐き気、耳鳴り、倦怠感 | 首の損傷によって自律神経のバランスが乱れることで発生 |
精神的影響 | 不安、不眠、集中力低下、うつ症状 | 長引く痛みや理解されにくさが原因になる |
むちうちは心身に幅広い不調をもたらすため、軽症だと自己判断せずに医療機関での診断を受けることが大切です。
むちうちは追突事故から遅れて発症することもある
追突事故では、事故直後は異常がなくても数日経ってから痛みやしびれが出ることがあります。これは、むちうちに遅延性があるためです。
事故直後はアドレナリンが大量に分泌されており、強い鎮痛作用で症状を感じにくい状態になります。しかし、時間が経つとアドレナリンの効果が切れ、隠れていた痛みが表面化するのです。
加えて、組織の炎症は数時間から数日にわたって進行し、後から腫れや熱感が強まることも少なくありません。
追突事故でむちうちになったら?事故直後にやるべき行動4ステップ
追突事故に遭った直後は、動揺や不安から冷静な判断が難しくなりがちです。しかし、このときの対応次第で、その後のむちうちの治療や補償の受けやすさが大きく変わります。
ここでは、事故直後に必ず押さえておきたい行動を4つのステップに整理して解説します。
対応を怠ると、受け取れるはずだった補償が認められないことにもつながります。冷静にひとつずつ確認していきましょう。
警察に届け出て「交通事故証明書」を取得する
追突事故に遭ったら、まずは必ず警察に届け出ましょう。警察への届け出は、道路交通法上の義務であると同時に、被害者の権利を守るための手段でもあります。
届け出をすることで事故の日時や場所、関係者が公的に記録され、その後の保険請求や示談交渉の基盤となります。
とくに重要なのが、申請によって発行される「交通事故証明書」です。これは保険請求の中核となる公的書類であり、証明書がなければ保険会社に治療費や慰謝料を請求できません。
証明書は自動車安全運転センターで申請でき、以下の方法で手続き可能です。
- 窓口(ゆうちょ銀行・郵便局、もしくは自動車安全運転センターの窓口)
- 郵送
- インターネット
多くの場合は保険会社が手続きを代行してくれるため、まずは事故後すぐ警察に事故の届け出を行い、証明書を入手しておきましょう。
整形外科を受診しむちうちの「診断書」をもらう(当日~3日以内)
事故直後は痛みを感じなくても、後からむちうちの症状が出ることは珍しくありません。できるだけ早く整形外科を受診し、診断書を取得することが大切です。
受診のタイミングは事故当日から翌日、遅くとも3日以内が望ましいとされています。受診の際は、接骨院や整骨院ではなく、医師のいる整形外科を選ぶようにしましょう。
診断書は、事故による傷害を医学的に証明する公的書類であり、レントゲンやMRIなどの検査を通じて症状の客観的な裏付けも可能です。
受診が遅れると「事故との因果関係がないのでは」と保険会社から疑われ、治療費や慰謝料の支払いを拒否されるおそれがあります。また、裁判を起こしても因果関係が否定され、一切補償を受けられない可能性も否定できません。
また、診断書は、物損事故から人身事故への切り替えにも必要になるため、早めに取得しましょう。
物損事故から人身事故への切り替え手続きを行う(10日以内目安)
物損事故として処理している場合、むちうちの診断を受けたら、診断書を持参して警察署に出向き、「人身事故」への切り替え手続きが必要です。
人身事故に切り替えることで、以下のような補償を受けられるようになります。
- 治療費
- 通院交通費
- 休業損害
- 慰謝料
事故現場でケガの申告がない場合、警察は通常「物損事故」として処理します。
物損事故のままでは車の修理代など物的損害しか補償の対象にならず、治療費や慰謝料などの人的損害を請求することはできません。
切り替えに厳密な期限はありませんが、期間が開くと警察が受け付けてくれないことがあるので、一般的には早期(事故後おおむね10日以内を目安)に行うのが望ましいでしょう。
加害者の保険会社と自分の保険会社に連絡する
事故後は、加害者側と自分側、双方の保険会社に必ず連絡しましょう。
加害者が加入する自賠責や任意保険会社には、事故の発生を報告し、治療費の支払い手続きや賠償交渉の手続きを進めます。ただし、過失割合などについては安易に同意せず、事実だけを伝えるようにしましょう。
あわせて自分が加入している保険会社にも連絡し、利用できる補償内容を確認しておきましょう。とくに弁護士費用特約の有無は重要なポイントです。
弁護士費用特約があれば、実質的な自己負担なく弁護士に依頼でき、保険会社との交渉や書類対応を有利に進めることが可能になります。

事故後は冷静に双方保険会社へ連絡を行い、補償の選択肢を確保しておくことが大切です。
関連記事:交通事故で相手の保険会社の対応が悪いときの対処法と弁護士に相談するメリット
追突事故によるむちうち治療の進め方
むちうちは放置すると悪化や後遺症のリスクがあるため、早期かつ適切な治療が欠かせません。治療の内容や通院の仕方は、身体の回復だけでなく損害賠償の金額にも直結します。
ここでは、治療先の選び方や通院頻度、保険会社からの打ち切り対応など、知っておくべき基本を整理します。
むちうちの治療は「整形外科」がメイン
むちうちの治療では、整形外科を中心に進めることが基本です。医師による診断や画像検査(レントゲン・MRI)は、治療方針を決めるだけでなく、後に保険請求や後遺障害等級認定を受ける際の重要な証拠にもなります。
整骨院や接骨院でもマッサージや電気治療などで痛みを和らげることはできますが、あくまで補助的な立ち位置です。
医師の許可や保険会社の事前承諾がないまま通院すると費用が支払われなかったり、慰謝料算定から除外されたりするリスクがあるため注意が必要です。
むちうちの治療は必ず整形外科への通院を主軸にし、整骨院を利用する場合も医師と保険会社の了承を得てからにしましょう。
平均治療期間は3~6か月
むちうちの治療は、症状や回復の度合いによって異なるものの、一般的には3か月前後が目安です。軽症であれば短期間で改善することもありますが、痛みやしびれが続く場合には6か月ほど必要になることもあります。
さらに、後遺障害等級認定を視野に入れる場合は、最低でも6か月間の治療実績が必要とされるケースが多く、通院の継続性が認定の判断材料になります。
治療期間が短すぎると「症状は軽微」とみなされ、補償の対象が狭まるおそれもあるため、医師の判断に従い適切な期間を確保することが大切です。
適切な通院頻度は週2~3回
むちうちの通院頻度は補償額に直結します。初期は週2~3回(月10回前後)が望ましく、この通院により、症状が存在していることと治療の必要性の裏付けが可能です。
一方で、通院頻度が月1~2回程度の場合、「症状は軽微」と判断され、保険会社から治療費の打ち切りを打診されるリスクが高まります。
自賠責基準では慰謝料額が実通院日数に連動するため、回数が少ないと慰謝料も減額されてしまいます。身体の回復と適正な補償を守るために、医師の指示に従って適切な頻度で通い続けることが大切です。
通院頻度の目安は以下のとおりです。
時期 | 通院頻度 | ポイント |
---|---|---|
初期(受傷直後~数週間) | 週2~3回 | 症状の存在を示す最重要期間 |
中期(症状が落ち着く頃) | 週1~2回 | 継続性が認定や慰謝料に直結 |
症状固定前 | 最低でも月1回 | 「治療中である証拠」として必須 |



整形外科での継続的な治療は、健康回復のためだけでなく、補償を受ける上でも不可欠です。
追突事故によるむちうちの損害賠償・慰謝料とは?【種類・相場・内訳】
むちうちの慰謝料には大きく分けて「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」があります。
慰謝料は自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準といった3つの基準をもとに計算されます。
適用される基準によっては、同じ通院期間でも数十万円の差が出ることが珍しくありません。適切な基準を理解し、どのように計算されるのかを知っておくことが大切です。
追突事故のむちうちで請求できる損害賠償とは?
追突事故によるむちうちで請求できるのは、慰謝料だけではありません。治療費や通院交通費、休業による収入減少など、事故によって発生した幅広い費用を損害賠償として請求可能です。
これらを正しく理解し、必要な証拠をそろえることが、最終的に受け取れる金額を左右します。
積極損害|治療費・通院交通費・入院雑費など
積極損害とは、事故によって実際に支出した費用を指します。
診察料や検査費用といった医療費はもちろん、通院のためにかかった交通費や入院時の日用品費まで、幅広い支出が補償の対象です。
積極損害の対象となるものを以下にまとめました。
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
治療費 | 診察検査投薬リハビリ など | 医療機関の領収書で証明 |
通院交通費 | 公共交通機関の運賃、自家用車のガソリン代 | 自家用車は「1km=15円」で計算されることが多い |
入院雑費 | 入院時に必要な日用品、通信費 など | 定額1日あたり1,500円程度で計算 |
その他 | 装具・器具の購入費、付添看護費 など | 領収書・証明書が必須 |
ただし、これらの費用を請求するには「証拠」が欠かせません。
たとえば、病院や薬局であれば領収書や診療明細書、電車やバスなら切符やICカードの利用履歴、自家用車の場合は走行距離メモやガソリン代のレシートといった書類です。
客観的な記録がなければ、保険会社に請求を認めてもらえないおそれがあります。事故直後から日々の支出を記録しておくことが重要です。
消極損害| 休業したことで失ったものを補償
追突事故によるむちうちでは、治療のために仕事を休まざるを得ないケースも少なくありません。その際に得られなかった収入は消極損害として賠償請求の対象になります。
休業補償の対象となるのは以下のとおりです。
- 正社員(有給休暇を使って休んだ場合でも「本来得られるはずの利益を失った」とみなされ、補償の対象)
- パート
- アルバイト
- 個人事業主
さらに、外で働いていない専業主婦(主夫)の家事労働も経済的価値が認められており、休業損害を請求することが可能です。
いずれのケースでも、医師の診断書や会社の休業証明書など、就労不能を裏付ける客観的な資料を整えることが不可欠です。事故によって働けなかった期間を正しく証明できるかどうかが、休業損害の認定を左右します。
損害賠償の範囲は慰謝料だけにとどまりません。領収書や証明書を残すことで、請求できる補償が大きく変わります。
関連記事:休業損害は主婦でももらえる?通院日数ごとの計算方法やパート勤務の場合も解説【弁護士監修】
追突事故における慰謝料の種類・位置づけ
追突事故によるむちうちで請求できる慰謝料には、大きく分けて「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類があります。
入通院慰謝料は、治療のために病院へ通ったり、入院を余儀なくされたりしたことによる精神的苦痛を補償するものです。むちうちの被害者であれば、ほぼ全員が対象となります。
一方、後遺障害慰謝料は、治療を続けても痛みやしびれが残り、後遺障害等級に認定された場合に支払われるものです。入通院慰謝料とは別枠で請求でき、賠償金全体の中で大きな割合を占めます。
これら2種類の慰謝料の違いを、以下にまとめました。
種類 | 対象 | 請求条件 | 金額の決定要素 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
入通院慰謝料 (傷害慰謝料) | 入院・通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛 | 人身事故として認定されれば原則支払われる | 治療期間の長さ・通院日数 | ほぼすべての被害者が請求可能 |
後遺障害慰謝料 | 治療後も残る症状(痛み・しびれ・めまい等)による精神的苦痛 | 後遺障害等級認定が必要 | 認定された等級 | 入通院慰謝料とは別枠で支払われ、金額は大きい |
慰謝料は「実際にかかった治療費」などの実損害とは別枠で請求できるため、被害者にとって賠償額の大きな柱となります。
入通院慰謝料の相場と計算方法(自賠責/任意/弁護士基準)
入通院慰謝料とは、追突事故によるむちうちで治療を受ける際に生じる精神的苦痛を補償するものです。金額は「どの基準で計算するか」によって大きく変わり、同じ通院期間でも差が数十万円以上になることがあります。
保険会社は通常、自賠責基準や任意保険基準で金額を提示しますが、これらは最低限の補償にとどまるケースが多いものです。弁護士に依頼すれば、弁護士基準(裁判基準)で交渉できます。
入通院慰謝料の基準ごとの特徴と、むちうちで3か月通院した場合の目安額は以下のとおりです。
基準 | 計算方法・特徴 | 慰謝料額の目安(3か月通院) |
---|---|---|
自賠責基準 | 最も低額な基準(最低限の補償)「日額4,300円×通院日数×2(もしくは治療期間の短い方)」で計算 | 約25.8万円(実通院30日の場合) |
任意保険基準 | 自賠責より高めだが、弁護士基準よりは低額保険会社ごとに独自の算定表あり(非公開) | 自賠責基準に近い金額提示にとどまることが多い |
弁護士基準 | 裁判例に基づいた最も高額な基準「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」算定表を使用 | 約53万円 |



同じ3か月通院でも、自賠責基準と弁護士基準では倍以上の差が生じます。提示された金額にそのまま応じるのではなく、どの基準が使われているのかを確認することが大切です。
関連記事:交通事故のむちうちで慰謝料はいくらもらえる?相場や計算例を弁護士が解説
追突事故によるむちうちの示談交渉で損しないための注意点
交通事故での示談交渉には、多くの落とし穴があります。
加害者側の保険会社の言い分に流されてしまったり、治療の記録をおろそかにしてしまうと、請求の権利を失う危険があるのです。
ここでは、追突事故によるむちうちの示談交渉でとくに注意すべきポイントを解説します。
保険会社の提示額にそのまま応じない
保険会社が提示する示談額は、被害者にとって最低限の補償しか含まれていないケースが多く見られます。
特に、治療が継続中であったり、後遺障害等級がまだ確定していなかったりする段階で合意してしまうと、その後に発生する治療費や後遺障害慰謝料、逸失利益などを追加で請求できなくなってしまいます。
示談は一度成立すると原則やり直しができないため、早期に応じるのは危険です。
安易に合意するのではなく、提示額が適正かどうかを慎重に判断し、必要であれば弁護士など専門家に相談することが重要です。
まずは「提示されたから受け入れる」のではなく、自分にとって本当に妥当かを冷静に確認する姿勢を持つようにしましょう。
示談交渉では「弁護士基準」を意識する
交通事故の慰謝料額には以下の3種類があります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
自賠責基準は最低限の補償、任意保険基準はそれに少し上乗せした程度にとどまる一方、弁護士基準は裁判例をもとにした最も高額な基準です。
しかし、保険会社は被害者に説明することなく、低額な基準で金額を提示してくるのが一般的です。
そのため、交渉の場では「どの基準で算定された額なのか」を意識して確認することが欠かせません。
弁護士基準を知っていれば、保険会社の提示額と比較し、不当に低い金額での示談を避けられます。適正な補償を得るためには、この「基準の違い」を理解することが重要です。
後遺障害等級認定を見据えて証拠を整える
むちうちが長引いた場合、後遺障害等級に認定されるかどうかで、受け取れる賠償額は数百万円単位で変わる場合があります。
初診の段階から後遺障害が残ってしまった場合のことを考えて、記録を残しておくことが大切です。
ただし、後遺障害認定は症状を訴えるだけでは不十分で、医学的な証拠や通院記録がそろっていなければ認められません。
特に、MRIなどの精密検査での所見や、初診から症状固定まで一貫した診療録の記録は極めて重要です。
また、通院の間隔が空くと「治療不要」と判断されるおそれがあるため、適切な頻度での受診を続けることも欠かせません。



提示額が妥当かどうかは専門知識がないと判断が難しいため、必要に応じて弁護士に相談することをおすすめします。
追突事故によるむちうちで後遺障害等級認定を受けるには?
むちうちは適切な治療を受ければ多くが回復に向かいますが、中には長期にわたって痛みやしびれなどの症状が残ってしまうことがあります。
こうした場合に関わってくるのが「後遺障害等級認定」です。
後遺障害等級が認定されるかどうかは、慰謝料や逸失利益といった賠償額に直結するため、被害者にとって極めて重要なポイントとなります。
詳しく見ていきましょう。
後遺障害とは?むちうちで認定可能性があるのは「14級9号」「12級13号」
後遺障害とは、治療を続けても痛みやしびれなどの症状が残り、日常生活や仕事に支障をきたす状態のことをいいます。
むちうちの場合、首の可動域が狭まったり、腕にしびれが残ったりと、事故前の状態に戻らないケースが少なくありません。
ただし、賠償の場面では「症状がある」だけでは不十分で、後遺障害等級認定が必要です。
等級認定があることで、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料や将来の収入減に対する補償(逸失利益)を請求できるようになります。
むちうちで認定されやすい等級は14級9号と12級13号です。
どちらに認定されるかによって、受け取れる賠償額は数百万円単位で差がつくこともあるため、認定を受けられるかどうかが大きな分岐点となります。
むちうちで多く見られる14級9号と12級13号の特徴を下表にまとめました。
等級 | 定義 | 要件 | 特徴 |
---|---|---|---|
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 自覚症状(痛み・しびれなど)が継続・画像に明確な異常がなくても、後遺障害の内容を書面で説明できれば可能 | むちうちで最も多い認定等級比較的軽度だが、慰謝料や逸失利益の補償を受けられる |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 画像検査で神経圧迫などの他覚的異常が必要・神経学的検査で異常が確認される | 14級よりも重度。認定されれば慰謝料・逸失利益は大幅に増額され、賠償額が数百万円規模に達することもある |
後遺障害認定によって受け取れるお金
後遺障害等級が認められると「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」を請求できます。後遺障害の認定は慰謝料だけでなく、将来の生活設計にも大きく影響します。
ここからは2つの補償内容を見ていきましょう。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、治療を尽くしても症状が残ってしまったことによる精神的苦痛に対して支払われる補償です。
むちうちで後遺障害が認められると、多くの場合は14級9号か12級13号に分類され、等級ごとに定められた金額が支払われます。
むちうちで多い「14級9号」と「12級13号」で、自賠責基準と弁護士基準それぞれの慰謝料の目安は以下のとおりです。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
また、後遺障害慰謝料は入通院慰謝料とは別枠で支払われます。治療中の精神的苦痛に対する補償に加えて、後遺障害慰謝料を上乗せできるため、賠償総額の中でも大きな割合を占めます。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下し、その分将来得られるはずだった収入が減ると評価された場合に支払われる補償です。
入通院慰謝料や後遺障害慰謝料とは異なり、後遺障害等級の認定を受けて初めて請求できます。
計算方法は次の式で表されます。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
算定の際に用いられる主な要素を、むちうちで多い14級・12級を例に整理すると次のとおりです。
要素 | 内容 | むちうちでの目安 |
---|---|---|
基礎収入 | 原則として事故前年の年収 | –(個別算定) |
労働能力喪失率 | 等級ごとに定められた割合 | 14級=5% 12級=14% |
ライプニッツ係数 | 将来の収入を一括前倒しでもらうことを想定し、割り引くための数字 | 年齢・期間に応じて変動 |
労働能力喪失期間 | 労働能力を失うと想定される期間 | 14級=原則5年 12級=原則10年 ※症状の内容や改善の見込みなどによっては、これより長い期間が認められるケースもあります。 |
国土交通省|労働能力喪失率表
ライプニッツ係数は「将来の収入を今まとめてもらうなら、利息分を差し引いて計算する」ための係数です。単純に年収に年数をかけるよりも、金額は少なめに算定されます。
等級の違いによって労働能力の喪失率や期間が変わるため、最終的な金額にも差が生じます。
また「基礎収入の設定」や「喪失期間の妥当性」をどう評価するかは、保険会社と被害者の間で争いになりやすいポイントです。
後遺障害慰謝料や逸失利益は、被害者の将来の生活を支える大きな柱です。
後遺障害等級認定を受けるためのポイント
後遺障害等級の認定では、症状を訴えるだけでは足りません。医学的な裏付けと、事故との関係を示す記録がそろっていることが重視されます。
ポイント1. 医学的証拠
とくに大きな意味を持つのが医学的証拠です。MRIなどの画像所見で異常が確認できれば、12級認定につながる可能性があります。
症状については神経学的検査をおこなうことで症状の程度がはっきりするでしょう。また、昨今は画像所見が重視されるので、精度の高いMRIによる画像所見が欠かせません。
ただ、検査画像に異常が見えなくても、診療経過や症状の一貫性が保たれていれば、14級が認められる場合もあるでしょう。
ポイント2. 通院の継続性
通院の継続性も評価対象です。少なくとも6か月ほどは適切な頻度で通い続けることが望ましく、途中で通院が途切れると治療不要と判断されやすくなってしまいます。
ポイント3. 後遺障害診断書
最終的な決め手となるのが後遺障害診断書です。症状の具体性や検査結果、日常生活への影響度が十分に書かれているかどうかで結果が左右されます。
診断書を依頼する際は、弁護士の助言を受けながら準備すると安心です。



後遺障害認定は医学的な証拠と通院記録の積み重ねが重要です。初診から一貫した対応を続けることが、適正な等級での認定につながります。
関連記事:後遺障害等級認定とは?手続きの流れ・適切な等級獲得のポイントを弁護士が解説
追突事故のむちうちでよくあるトラブルと対処法
追突事故によるむちうちの被害では、治療や補償の過程で思わぬトラブルが起こることがあります。トラブルに適切に対応できるかどうかが、最終的に受け取れる補償額を大きく左右するでしょう。
ここでは、むちうち被害で起こりやすいトラブルと、その対処法を解説します。
保険会社から治療費の打ち切りを告げられた場合
追突事故から3か月ほど経つと、加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されるケースが多く見られます。
しかし、これは医学的な判断ではなく、あくまで保険会社の都合によるものです。安易に同意してしまうと、治療の継続が困難になり、適正な補償を受けられなくなるおそれがあります。
保険会社から治療費の打ち切りを告げられたら、以下の手順を踏みましょう。
- 主治医に治療の必要性を確認し、その意見を保険会社に伝えてもらう
- それでも治療費を打ち切られてしまったら、健康保険を利用して治療を続け、後から加害者側へ費用を請求する
困ったときは弁護士に相談すると、治療継続の正当性を法的に主張できるため、適切な補償を守れる可能性が高まります。
「軽い事故だから補償は出ない」と言われた場合
追突事故でむちうちになっても、車の損傷が軽い、速度が出ていなかったといった理由で「補償の対象外」と保険会社に言われる場合があります。
しかし、衝撃の大きさや車の破損状況と、被害者の体への影響は必ずしも比例しません。時速10km程度の追突でも、首に強い負担がかかり、むちうちになるケースは十分考えられます。
小さな事故であっても、医師による診断書があれば、治療費や慰謝料は補償の対象です。
大切なのは、事故直後から整形外科を受診し、医学的な記録を残すことです。症状の訴えに一貫性を持たせ、診断書や通院記録をそろえておけば、保険会社の「軽い事故だから認めない」という主張を覆せます。
言われるままに諦めず、必要であれば弁護士に相談して補償の請求を進めることが大切です。
後遺障害等級が認められなかった場合
後遺障害が不認定となった場合でも、異議申立てが可能です。
痛みやしびれなど、むちうちの症状が残っているにもかかわらず、後遺障害等級が認められないケースは少なくありません。その多くは、必要な検査結果や通院記録が不足していたり、診断書の内容が不十分だったりすることが原因です。
MRIや神経学的検査を追加で受けたり、弁護士に依頼して診療録や画像の評価を整理したりすることで、認定される可能性は十分あります。
今後の生活を守るためにも、証拠を補強して再度挑戦することが大切です。
追突事故の過失割合を争われた場合
追突事故では「被害者に過失はない」というのが基本です。しかし、保険会社によっては「急ブレーキをかけた」「合図なしで車線変更した」などと主張し、過失割合をめぐって争いになる場合があります。
過失が少しでも認められると、その分損害賠償額が減額されてしまうため注意が必要です。
対処法としては、以下のような客観的な証拠を集めることが有効です。
- ドライブレコーダー映像
- 事故現場の写真
- 目撃証言 など
また、弁護士に依頼すれば、過去の裁判例や実務運用に基づいて適正な過失割合を主張でき、不当な減額を防ぎやすくなります。



追突事故後の補償交渉では、保険会社の対応に納得できない場面も少なくありません。安易に妥協せず、専門家に相談することで解決の道が開ける場合も多くあります。
追突事故でのむちうちにお悩みの方は、弁護士法人アクロピースにご相談ください。
交通事故の解決実績が豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせたサポートをご提案いたします。
初回60分は相談が無料です。ぜひお気軽にご相談ください。
\ 相談実績1,200件以上/
【無料相談受付中】365日対応
追突事故でむちうちになった場合に弁護士に相談するメリット
追突事故の被害者は、保険会社との交渉や後遺障害認定など、専門的で複雑な対応を迫られます。適切な補償を受けるためには、早い段階から弁護士に相談することが重要です。
慰謝料の増額が期待できる
弁護士に依頼する最大のメリットは、慰謝料や示談金が大幅に増額されることです。
交通事故の被害者が請求できる慰謝料は、算定基準によって金額が大きく異なります。
保険会社が最初に提示してくるのは「自賠責基準」か「任意保険基準」で、いずれも最低限の金額しか認められません。とくに自賠責基準では、3か月通院しても20~30万円程度しか慰謝料が支払われないこともあります。
一方、弁護士が交渉に入れば弁護士基準の慰謝料が適用されます。裁判所の判断例を基準とするため、最も高額で、慰謝料額がほかの基準の2倍以上になる可能性もあるでしょう。
被害者が正当な補償を得るためには、この弁護士基準での交渉が欠かせません。
後遺障害等級の認定をサポートしてもらえる
むちうちの症状が長引いた場合、後遺障害等級認定が受けられるかどうかでも、賠償額が大きく変わります。
14級や12級といった等級が認められれば、慰謝料だけでなく逸失利益まで請求できるため、数百万円単位の増額につながることもあります。
ただし、等級認定には医療記録や検査結果の提出が不可欠で、独力で準備するのは困難です。弁護士に依頼すると、どの検査を受けるべきか、診断書にどのような内容を記載してもらうべきかといったアドバイスを受けられます。
早い段階から弁護士の助言を受けて証拠を整えておくと、後遺障害等級認定を受けられる可能性を高められるのです。
将来の生活保障につながる正当な補償を獲得しやすくなるでしょう。
関連記事:後遺障害の悩みは弁護士に相談・依頼すべき?メリットや費用・タイミングを徹底解説
保険会社との交渉や書類対応を一任できる
交通事故後は、保険会社との連絡や書類の提出に追われることが多く、心身の負担は想像以上に大きいものです。
とくに被害者本人がケガで苦しんでいる最中に、複雑な手続きを理解しながら対応するのは困難です。
弁護士に依頼すれば、以下の対応をすべて一任できるので、手続き上のストレスから解放されるでしょう。
- 保険会社とのやり取り
- 治療費や休業損害の請求
- 示談交渉に必要な書類作成 など
被害者は回復に集中でき、精神的な安心感も得られます。交渉の専門家に任せることが、スムーズな解決へつながるのです。
交渉期間の短縮や不利な示談を避けられる
被害者本人が交渉を行う場合、専門知識の不足や心理的な疲労から、保険会社の提示額をそのまま受け入れてしまうケースが少なくありません。
本来受け取れるはずの補償額より大幅に低い金額で示談してしまうおそれもあります。
弁護士は交通事故案件の経験が豊富で、論点を整理しながら交渉を効率的に進められます。そのため、保険会社の交渉に惑わされず、早期解決につなげられるのです。
さらに、弁護士は相手の慰謝料提示額が適正かを客観的に判断し、不当な条件を交渉によって修正できます。
こうした弁護士のサポートがあれば、不利な示談を避けつつ、適正な解決を目指せるでしょう。
弁護士費用特約で実質的な費用負担なく依頼できる
「弁護士に頼みたいけれど、費用が高そうで不安…」という方も、弁護士費用特約を利用すれば、自己負担なく弁護士のサポートが得られます。
弁護士費用特約は自動車保険や火災保険に付帯していることが多く、相談料や着手金、報酬金を上限300万円程度まで補償してくれる制度です。
この特約を利用すれば、むちうちの案件で実質的な自己負担はゼロになるケースが大半です。しかも、この特約を使っても翌年以降の保険料が上がったり、等級が下がったりすることはありません。
事故後に補償を最大限受けたいなら、まずは自分や家族の保険証券を確認し、弁護士費用特約の有無をチェックすることをおすすめします。



交通事故後の交渉は、専門知識の有無で結果が大きく変わります。弁護士のサポートを受けることで、被害者が本来受け取るべき適正な補償を守れるでしょう。
関連記事:交通事故で弁護士特約は使った方がいい?トラブルで利用できる「弁護士費用特約」についてわかりやすく解説
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追突事故むちうちに関するよくある質問
軽い事故でもむちうちになる可能性はありますか?
軽い事故でもむちうちになる可能性はあります。
車の損傷度合いや速度の大小と、首への衝撃の大きさは必ずしも比例せず、身体が不意を突かれて防御姿勢をとれないことで首に強い負担がかかり、症状が出るケースがあります。
「車はほとんど壊れていないから大丈夫」と自己判断するのは危険です。
軽い事故でも必ず整形外科を受診し、診断書を取っておくことが後々の補償請求や治療継続の助けとなります。
通院15回や30回の場合、慰謝料の目安はいくらですか?
慰謝料は算定基準によって大きく変わります。
保険会社が提示するのは最低限の自賠責基準であることが多く、この場合と弁護士基準とでは金額に大きな差が出ます。
下表は慰謝料の目安額の比較です。慰謝料は通院日数や通院期間により変動します。
通院回数・期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
15回(約1か月) | 12.9万円 | 19万円~ |
30回(約3か月) | 25.8万円 | 53万円~ |
通院の回数や期間が長くなるほど慰謝料額の差は広がります。適正な慰謝料を受け取りたい場合には、弁護士に相談し、弁護士基準での交渉を進めることが大切です。
虚偽のむちうち症状を申告したらどうなりますか?
虚偽の申告は非常にリスクが高いものです。一時的に補償を得られたように見えても、虚偽が発覚すれば大きな不利益を被ります。
保険会社は診療記録や検査結果を細かく照合しているため、不整合があれば調査が入り、虚偽が露見してしまうでしょう。
申告の虚偽が発覚した場合、以下のようなリスクがあります。
- 保険会社に支払いを拒否される、または既に支払われた金額を返還請求される
- 信用を失うことで、その後の正当な請求も認められにくくなる
- 悪質と判断されれば保険金詐欺として刑事責任を問われ、処罰を受ける可能性がある
このように、虚偽の申告は金銭面・信用面・法的責任のすべてにおいて重大なリスクを伴います。
正当な補償を確実に受けるためには、医師の診断に基づいて正直に症状を伝え、通院記録や領収書など客観的な証拠を残しておくことが大切です。
まとめ|追突事故によるむちうち被害は弁護士への相談で解決しよう
追突事故によるむちうちは、首の痛みだけでなく、しびれやめまいなど多様な症状を引き起こす可能性があります。早期に整形外科を受診し、診断書や通院記録といった証拠を残すことが大切です。
慰謝料や休業補償の金額の基準は以下の3つで、どれで算定するかによって差が生じます。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
また、後遺障害等級認定を受けるかどうかで、賠償額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
こうした手続きや交渉を一人で進めるのは大きな負担ですが、弁護士に相談すれば適正な補償を受けられる可能性が高まります。
まずは弁護士への無料相談を活用し、安心して治療と生活再建に専念できる環境を整えることをおすすめします。
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