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不動産の借主に立ち退きを求めるのは、簡単な作業ではありません。
日本の法律では借主の権利が強く保障されているため、立ち退きを求めるには法律上の根拠が必要で、交渉や裁判が長引いてしまうケースも多いです。
この記事では、借主との立ち退き交渉を検討している方に向けて、次の3つの内容について詳しく解説しています。
立ち退き交渉を成功させるためにも、この記事の内容をしっかり理解するようにしてください。
立ち退き交渉・裁判では、法律の専門的な知識を求められる場面が多くあるため、弁護士に依頼した方がスムーズな解決へとつながります。
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自身が所有する不動産であっても、借主を無条件で立ち退かせることはできません。
借主の立ち退きを求めるには、次のいずれかの法律上の根拠が必要です。
それぞれの内容について、詳しく解説します。
賃貸借契約の合意解除とは、賃貸人と借主の合意で賃貸借契約を解約することを意味します。
合意解除については民法の明文はありませんが、契約自由の原則によって当然に認められます。
借主が立ち退きに同意して合意解除が成立すれば、他に借主の立ち退きを求める法律上の根拠は必要ありません。
実務上では、立ち退き交渉で立退料や退去までの猶予期間を決定したうえで、合意解除の契約が取り交わされるケースが多いです。
借主に賃貸借契約の契約違反がある場合には、契約違反を理由とする契約解除が可能です。借主の契約違反の例としては、次のようなものが挙げられます。
ただし、貸主の契約違反を理由とする賃貸借契約の解除は、軽微な違反があるだけでは足りず、当事者間の信頼関係が破壊されたと言えるほどの違反がなければ認められません(信頼関係破壊の法理)。
たとえば、家賃の不払いを理由に契約解除するには、1か月分の不払いでは足りず、少なくとも3か月以上の不払いが必要です。
信頼関係の破壊が認められるか否かは、契約違反の内容や程度、借主の対応、契約の経過などを総合考慮して個別具体的に判断されます。
貸主としては、契約違反があったからといって直ちに契約解除できるわけではないということを理解しておきましょう。
貸主の都合で契約解除する方法には、更新拒絶または解約申入れのいずれかの方法があります。
更新拒絶は、期間の定めのある賃貸借契約について、期間満了日の1年前から6か月前までの間に借主に対して契約を更新しない旨の通知を行い、期間満了日に契約を終了させる方法です(借地借家法26条1項)。
解約申入れは、期間の定めがない賃貸借契約について、借主に対して解約の申入れをしてから6か月後に契約を終了させる賃貸借契約の終了原因となります(借地借家法27条1項)。
更新拒絶や解約申入れを行うには、いずれの場合でも「正当の事由」が必要です(借地借家法28条)。「正当の事由」が認められるか否かは、条文に規定されているとおり、次のような事情で判断します。
借主の更新拒絶や解約申し入れに基づいて立ち退きを求める裁判では、「正当の事由」が認められるか否かが論点となるケースが多くなっています。
借主に立ち退きを求める法律上の根拠を決めたら、借主との立ち退き交渉を開始します。
立ち退き交渉は、次の順序で行います。
以下、順序に沿って詳しく解説します。
まずは、立ち退きを求める理由(法律上の根拠)を示したうえで、借主に対して立ち退きを求める通知を行います。
立ち退きを求める通知は、内容証明郵便を利用するのが通常です。
内容証明郵便を利用すると、送付した書面が相手方に届いたことが証明されますので、言った言わないのトラブルを防止することができます。
借主の契約違反を理由とする契約解除については、借主が通知を受け取った時点で契約解除の効力が発生します。
ただし、「〇月〇日に契約を解除する」として、契約解除までの猶予期間を設けることもあるでしょう。
更新拒絶については、契約期間満了の1年前から6か月前までに通知を行わなければ、契約が更新されてしまいます。
解約申入れについては、通知から契約解除まで6か月かかる点にも注意が必要です。
更新拒絶や解約申入れの通知を行う際は、できる限り早めに通知を行うことをおすすめします。
借主の立場では、契約解除までの期間が長い方が立ち退きに応じやすいと言えるでしょう。
内容証明郵便で通知を行ったあとは、立ち退き交渉を行いましょう。
文面だけでは伝えきれない具体的な事情や立退料の提示などを行う場合には、対面での立退き交渉を行うのでもよいでしょう。
立ち退き交渉を開始した後でも、交渉が長引くときには文面での交渉を併用するケースが多いです。
重要な内容については、証拠として文面でのやり取りも残しておくようにしてください。
借主が立ち退きの根拠について争い、信頼関係破壊の有無や「正当の事由」の有無が問題となる場合には、法律についての専門的な知識が必要となります。
個人で交渉するのが難しい場合には、法律の専門家である弁護士に交渉を依頼するのがおすすめです。
立ち退き交渉の結果、合意できたときは必ず合意書を作成してください。
合意書に記載すべき事項としては、次のようなものが挙げられます。
交渉が上手く進んだとしても、合意書に不備があると後にトラブルが起こる可能性もあります。
合意書の内容に不安のある方は、弁護士に相談してみてください。
立ち退き交渉で合意できないときは、裁判で決着をつけます。
立ち退き裁判の流れは、次のとおりです。
それぞれの内容について詳しく解説します。
立ち退きの裁判を開始するには、建物の住所地を管轄する地方裁判所もしくは賃貸借契約書に専属的合意管轄裁判所として記載されている地方裁判所に訴状を提出します。
訴状には、立ち退きを求める法律上の根拠や、交渉の経緯などを詳しく記載します。
さらに、賃貸借契約書や内容証明郵便、交渉の経過がわかる書類などを証拠として添付することになるでしょう。
借主の契約違反により立ち退きを求めるのであれば、借主の契約違反が分かる書類などの証拠も添付する必要があります。
立ち退きの裁判は、貸主本人で行うことも可能です。
しかし、借主が立ち退きを争っている状況で、法律上の根拠を的確に主張・立証するのは専門家でなければ難しいケースが多いでしょう。
訴状の作成に際しては弁護士に相談することをおすすめします。
立ち退きの裁判では、信頼関係破壊の有無や「正当の事由」の有無が争点となるケースがほとんどです。
立ち退きの裁判では、信頼関係の破壊や「正当事由」が認められるためのハードルは高く、貸主に不利な形で裁判が進行するケースも少なくありません。
その場合には、立退料を上乗せしたり、退去までの期間を延長したりなど、和解を成立させるための妥協点を見つけることが重要となります。
実際、立ち退きの裁判は、判決までに至らず和解で終結するケースも少なくありません。
借主の立ち退きまでには時間もかかりますし、交渉や裁判の経過に応じた費用も必要です。
ここでは、立ち退き交渉や裁判にかかる費用や期間の目安について解説します。
立ち退き交渉や裁判を自分自身で行う場合にかかる費用は、立退料や郵便代、裁判の印紙代などの実費のみです。
郵便代や印紙代などの実費は、裁判になった場合でも数万円程度で済むことが多いでしょう。
立退料の額は、事案によって数十万円から数百万円まで大きな幅があるでしょう。
立ち退き交渉や裁判を弁護士に相談・依頼する場合には、次の費用がかかります。
相談料は、弁護士に事件を依頼する前の法律相談にかかる費用です。
相談料の相場は、30分5,000円程度ですが、初回相談を無料としている法律事務所もあります。
着手金は、弁護士に事件を依頼する際にかかる費用です。
着手金の相場は、30万円から50万円ほどですが、依頼する法律事務所によって大きな差がある場合もあります。
着手金や報酬金の額については、法律相談の際に必ず確認しておくようにしてください。
報酬金は、事件が解決した際にかかる費用です。
報酬金の相場は、依頼者が得た利益の20%程度もしくは着手金の2倍程度となっています。
立ち退きの交渉や裁判では、報酬金の計算が複雑になるケースもあるので、報酬金の計算方法については弁護士との契約前にしっかりと確認しておくようにしましょう。
立ち退き問題の解決までにかかる期間は、事案によってさまざまです。
立ち退き交渉については、すぐに合意が成立するケースもあります。
一般的には、交渉開始から3か月ほど経過しても合意が成立しないときには、裁判に移行するケースが多いでしょう。
立ち退き裁判については、和解や判決までに少なくとも半年はかかります。
1年から1年半ほどかかるケースがほとんどで、それ以上に長引くケースも珍しくありません。
立ち退き交渉・裁判を行う際は、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
建物の賃貸借契約では、借主の権利が強く守られています。
なぜなら、契約解除を容易に認めると、借主は生活の基盤である住居を失ってしまうためです。
そのため、貸主の立場としては、立ち退きを求めるハードルはそもそも高いことを理解しておく必要があります。
立ち退き交渉や裁判では、立ち退きを求める法律上の根拠を認めてもらうのが難しいケースも多いでしょう。
その場合、貸主としては、自分が不利なことを理解したうえで妥協点を探すことが重要となります。
法律上の根拠について検討が不十分で、自分が不利なことに気付かなければ、妥協点を見つけられずに借主の言い分が一方的に通ってしまうこともあるので注意が必要です。
立ち退き交渉の経緯については、書面に残しておくことを意識しましょう。
立ち退きの問題については、更新拒絶の期間や解約申入れから解約までの期間など、期間が明確に定められているものがあります。
更新拒絶や解約申入れを口頭で行うと、言った言わないの問題や、いつ通知したのかという問題が起こる可能性があります。
最初の通知を内容証明で送ったあとでも、重要な事項についてやり取りする際は、後に無用な争いが起こらないように書面でやり取りすることを心がけましょう。
関連記事:【大家都合で退去を求める時の立退料】不要となるケースと過去の判例
立ち退きの問題については、信頼関係破壊の法理や「正当の事由」など、法律の専門的な知識を求められる場面が多くあります。
交渉や裁判を貸主自身で進めることもできますが、専門知識がなければ、本来は有利な場面でも知識がないことで不利に扱われる可能性もあるでしょう。
特に、立ち退き裁判にまで移行する場合に貸主自身が手続きを進めることは、おすすめできません。
借主がすんなりと立ち退きに応じてくれる場合でない限りは、専門家である弁護士に相談・依頼して手続きを進めるようにしてください。
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今回は、立ち退き交渉と裁判の流れ、費用や期間の目安、立ち退き交渉や裁判のポイントを解説しました。
民法や借地借家違法では借主の権利が守られているため、貸主にとって立ち退き交渉はハードルの高い手続きです。
交渉で解決せず裁判にまで発展したときには、解決までに1年以上は覚悟しなければなりません。
立ち退き問題でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
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