成年後見人の不動産売却トラブルを回避!対処法や苦情の相談先を解説

成年後見人の不動産売却トラブルを回避!対処法や苦情の相談先を解説

成年後見人が成年被後見人の不動産を必要がないのに売却したり、相場より大幅に安い価格で処分したりするなど、親族の思いと異なる行動に不満を感じているかもしれません。

この記事では、成年後見人が成年被後見人の不動産売却でトラブルになった際の対処法や、苦情を受け付けている相談窓口についてお伝えします

成年後見人による不動産売却のトラブル事例についても解説していますので、最後までお読みください。

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目次

成年後見人は不動産を売却できるか

不動産売買契約書

民法第859条の定めにより、成年後見人は成年被後見人が所有する不動産の売却が可能です。

成年後見人には、認知症や精神障害、知的障害などで著しく意思能力が低下した人の財産管理や、本人に代わって契約の締結などの法律行為を行う権限があるからです。

ただし、成年後見人であっても、居住用不動産の売却には、裁判所の許可を得る必要があります。(民法第859条の3

成年被後見人が介護施設などに入居中で自宅が空き家になっていたとしても、将来居住する可能性のある不動産は居住用とみなされます。

介護費用などの成年被後見人にとって必要な資金を調達する目的であっても、居住用不動産は勝手に売却できません。

意思能力のない人の不動産を売却する流れ

親子

意思能力がない人の居住用不動産を売却するには、成年後見人が家庭裁判所に居住用財産処分の許可を申立てる必要があります

成年後見人が選任されていない場合は、成年後見開始審判を申立てて、居住用不動産の売却を進める手続きを行います。

民法第7条により成年後見開始審判の申立てができる人は、以下の通りです。

  • 本人
  • 配偶者
  • 4親等以内の親族
  • 未成年後見人
  • 未成年後見監督人
  • 保佐人
  • 保佐監督人
  • 補助人
  • 補助監督人
  • 検察官

成年後見制度を利用して、意思能力のない人の不動産を売却する流れは次の通りです。

1.成年後見制度開始の審判を家庭裁判所に申し立てる

意思能力のない人の成年後見人を選任するために、家庭裁判所に後見開始審判を申立てます

家庭裁判所に申立てる際は、必要書類をそろえて提出します。

後見開始審判の申立てに必要な書類には、以下のものがあります。

必要書類内容
審判申立書裁判所HP書申立書のひな型あり
本人の戸籍謄本(全部事項証明書)発行日から3カ月以内のもの
本人の住民票または戸籍附票発行日から3カ月以内のもの
成年後見候補者の住民票または戸籍附票(成年後見候補者がいる場合に提出)発行日から3カ月以内のもの
診断書医師に依頼(3カ月以内のもの)裁判所のHP診断書のひな型あり
本人情報シート普段本人に接している福祉関係者に作成を依頼裁判所のHPシートのひな型あり
健康状態に関する資料介護保険認定書、療育手帳、精神障害者福祉手帳、身体障害者手帳などの写し
本人が成年被後見人等の登記がされていないことの証明書発行日から3カ月以内のもの
財産に関する資料預貯金通帳の写し、残高証明書、不動産の登記事項証明書、ローン契約書の写し など
収支に関する資料年金額決定通知書、家賃、地代の領収書、介護施設利用料、納税証明書、国民健康保険の決定通知書など

成年後見開始審判には、次の費用がかかります。

費用項目金額
申立手数料収入印紙800円分
連絡用郵便切手家庭裁判所によって異なる
登記手数料収入印紙2,600円分

家庭裁判所に必要書類と費用を提出すると、審理が開始されます。

2.家庭裁判所で審理される

家庭裁判所は申立人から提出された書類や資料をもとに、本人や申立人、他の親族から聴取を実施します。

関係者からの聞き取りで調査する内容は、主に本人の意向や後見開始申立ての動機、親族間の対立の有無などです。

書類や聴取だけでは後見人をつけるべきか判断できないときは、家庭裁判所の判断で医師による鑑定が行われるケースがあります

鑑定は、診断書を作成した本人の主治医に依頼するのが一般的で、費用は5〜10万円程度かかります。

3.後見開始の審判

調査や鑑定が終わると、その結果を踏まえて家庭裁判所は後見開始の審判を下します

後見開始と後見人選任の結果は、審判書謄本が郵送され伝えられます。

もし、内容に不服があるときは、審判書謄本の受領から2週間以内であれば、不服申立てが可能です。

不服申立てが行われず審判が確定すると、後見が開始され、成年後見人の権限などを法務局のコンピューターシステムを用いて登記する「成年後見登記」が行われます。

選任された成年後見人は、本人の財産を調査して目録を作成し、おおむね1カ月以内に裁判所に提出します。

4.居住用の不動産を売却する場合は家庭裁判所の許可を得る

意思能力のない人の居住用不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要です。

成年被後見人にとって住まいは生きる上で重要な財産であるため、成年後見人の判断だけで売却できません。

居住用不動産を売却しなければ、成年被後見人の保護を図れないという切実な状況があり、家庭裁判所も同様の判断をしたときのみ認められます。

成年後見人が成年被後見人の居住用不動産を売却する際は、家庭裁判所に居住用不動産処分の許可を申立てます

居住用不動産処分の許可の申立てに必要な書類は、以下の通りです。

必要書類内容
居住用不動産処分許可申立書裁判所のHPにひな型あり
成年後見監督人の意見書成年後見監督人がいる場合
不動産の全部事項証明書法務局が発行する不動産の所在や権利関係を証明する書類
不動産売買契約書の案売買契約の内容、買主の氏名・住所などが記載された書類
固定資産税評価証明書土地や建物の固定資産の評価額が記載されたもので、市役所、町村役場、東京23区は都税事務所で取得できる
不動産業者の査定書物件の売り出し価格を決めるために作成された書類

参考:裁判所 居住用財産処分の許可の申立てについて

居住用不動産処分の許可の申立てにかかる費用には、次のものがあります。

費用項目金額
申立手数料収入印紙800円分
審判書謄本郵送代(郵送を希望する場合のみ)郵便切手110円分

成年後見人が居住用不動産処分の許可を申立て、家庭裁判所から許可の審判がでた場合に限り、売却が可能です。

5.売却する

家庭裁判所から審判が下され居住用不動産処分の許可がおりると、成年後見人は通常と同様の手続きで売買契約が進められます

一般的な不動産売却は、以下の流れで行います。

  1. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
  2. 不動産の売却活動を開始
  3. 買主と売買契約を締結する
  4. 物件の引渡し・決済

成年被後見人の居住用不動産の売却では、家庭裁判所の許可が出る前に売買契約を締結する場合もあります。

そのときは「裁判所の許可が得られた場合に契約の効力が発生する」旨の特約をつけて契約を結びます。

成年後見人の不動産売却で発生するトラブル事例

不動産仲介業者

成年後見人による不動産売却のトラブルは、後見人になった親族や職業後見人の不正によって発生する場合が多いです。

成年後見人による不動産売却のトラブルの事例には、以下のものが挙げられます。

事例1裁判所の許可を得ないまま居住用財産を売却した

成年後見人が起こす不動産売却トラブルの事例には、成年被後見人の居住用不動産を家庭裁判所の許可を得ずに勝手に売却してしまうというものがあります。

成年被後見人が長期間施設で生活しており、住む人がいないからという理由で居住用不動産を売却したとしても、裁判所の許可がない売買契約は無効です。

法令用語としての無効とは、契約などの法律行為の効力が最初から発生していないことを意味します。

なお、家庭裁判所の許可がないまま売買契約を締結し無効になった場合は、買主から成年後見人に対して損害賠償を請求されるケースもあります

事例2非居住用不動産を必要性や相当性がない状態で売却した

成年後見人が非居住用不動産を必要がないのに売却して、成年被後見人に損害が生じたという事例がありました。

また、相場に比べて大幅に安い価格で不動産を売却してしまい、他の親族が成年後見人に損害賠償を請求するケースも発生しています。

成年後見人が非居住用不動産の売買契約を結ぶのに、家庭裁判所の許可はいりませんが、売却には「必要性」と「相当性」が問われます

成年後見人は「売却が成年被後見人にとって必要か」「売却価格が相場と比較して相当であるか」について、十分検討しなければいけません。

裁判所は成年後見人によるトラブルを防ぐために、重要な財産を処分する際は、事前に相談するように促しています

成年後見人が裁判所に相談せずに「必要性」「相当性」を欠いた財産処分をしたときは、弁護士などの専門職後見人が追加されたり、後見監督人が選任されたりするケースがあります。

事例3居住用財産をリバースモーゲージする場合も裁判所の許可が必要

成年後見人が居住用不動産を担保にリバースモーゲージを契約して、成年被後見人が不利益を被ったケースがあります。

リバースモーゲージとは老後において自宅に住み続けたまま、自宅を担保に借入を行い、死亡時に自宅を売却して返済するものです。

成年後見人が成年被後見人の居住用住不動産を担保に、リバースモーゲージで生活資金を調達する場合でも、家庭裁判所の許可を得なければいけません

リバースモーゲージを利用して発生するトラブルには、以下のものがあります。

  • 土地の再評価時に価値が下落してしまい、当初の予定より融資枠が縮小してしまった
  • リバースモーゲージは変動金利型で、予想以上に金利が上昇してしまった
  • 長生きするほど借入期間が長くなり、支払利息が増えてしまった

リバースモーゲージは、成年被後見人にとって予想外の不利益を招く恐れがあるため、利用する際は十分な検討が必要です。

成年後見人が不適切な財産管理をした場合の対処法

業務上横領

成年後見人が成年被後見人の財産を不適切に管理した場合には、親族はどのような対処がとれるでしょうか。

不適切な財産管理を行った成年後見人への対処法は、以下の通りです。

成年後見人の財産管理に不正があった場合は解任できる

成年後見人に財産管理の不正行為や、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があった場合は民法第846条に規定された解任事由にあたります

財産管理の不正行為には、成年被後見人の財産の私的使用や、横領などが挙げられます。

また、財産の調査や財産目録の作成、報告などを怠ることも解任にあたる事由です。

成年後見人の解任には、不正行為などを立証する必要があるため、証拠を集め、その上で家庭裁判所に後見人等解任の申立てを行います

後見人等解任の申立てに必要な書類と費用は以下の通りです。

項目内容
後見人等解任申立書申立書にはひな型がないため自分で作成
申立手数料収入印紙800円分
連絡用郵便切手郵便切手2,990円分

参考:裁判所 後見人等解任の申立てについて

裁判所が審理して申立てが認められると、成年後見人は解任されます。

成年後見人が業務上横領した場合は刑事責任を問える

成年後見人が被成年後見人の財産を着服した場合の罪は、業務上横領です。

業務上横領で有罪になると、10年以下の懲役が科せられる(刑法第253条)可能性があります。

刑法第244条の親族間の犯罪に関する特例では、「配偶者や直系血族または、同居の親族の間で発生した横領などの罪は刑が免除される」と定められています。

しかし、成年後見人である親族が成年被後見人の財産を横領した場合は、この特例は適用されません

成年後見人である親族が、成年被後見人の財産を着服すると刑事責任を問われます。

参考:裁判所 最高裁判所第二小法廷 平成24年10月9日判決(平成24(あ)878号)

成年後見人への苦情の相談窓口

相談窓口

成年後見人の財産の使途に対する疑念や、収支報告を怠るなどの職務に対する不満がある場合、苦情の相談窓口には、以下のものがあります。

市町村の地域包括支援センター

市町村に設置されている地域包括支援センターでは、成年後見制度に関する相談を受け付けています

地域包括支援センターは、主に高齢者の健康や生活面での支援を行っています。

地域包括支援センターの業務は、以下の通りです。

業務内容詳細
権利擁護業務成年後見制度の活用促進や相談の受け付けなど
総合相談支援業務住民の各種相談を幅広く受け付け、制度横断的な支援を実施
包括的・継続的ケアマネジメント支援業務自立支援型のケアマネージメント支援など
介護予防ケアマネジメント業務介護予防ケアプランの作成など
介護予防支援要支援者に対するケアプランの作成など

高齢者の生活全般を支援する地域包括支援センターは、後見制度に関する相談にも親身にのってくれます。

公益財団法人成年後見センター

公益財団法人成年後見センターは、成年後見制度に関する相談窓口です。

成年後見センターの主な活動には、以下の内容があります。

  • 成年後見制度に関する相談の対応
  • 成年後見制度にかかわる申立書類作成のアドバイス
  • 成年後見制度の利用促進や周知啓発活動
  • 市民後見人の育成事業
  • 判断能力が低下した人の支援

成年後見人との間にトラブルが発生したときは、後見センターに相談してください。

弁護士

弁護士は後見制度についてよく理解しており、法律相談を利用することで、法律にのっとった適切なアドバイスが受けられます

成年後見人が行う財産管理に疑問があったり、収支報告や財産目録の作成などを怠りがちで不満があったりする場合は、弁護士に相談するのがもっとも賢明です。

弁護士への相談は費用が発生する場合もありますが、依頼者に寄り添って最善の解決策を一緒に考えてくれます

成年後見制度に関して困ったことがあれば、弁護士に相談して解決しましょう。

▼不動産売却のトラブルで弁護士に相談する際の費用について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:不動産にまつわるトラブル解決のための弁護士費用目安と依頼のメリット

成年後見人による不動産売却トラブルは弁護士に相談しよう

法律相談

本記事は、成年後見人の不動産売却に関するトラブルの事例と、対処法について解説しました。

  • 成年後見人は成年被後見人の財産管理や代わりに法律行為をする権限があり、不動産の売却が可能
  • 成年被後見人の居住用不動産を売却するためには、成年後見人が居住用不動産処分の許可の申立てを行い家庭裁判所から許可を得なければならない
  • 成年後見人の不動産売却に関するトラブルには、家庭裁判所の許可を得ずに売却するケースがある
  • 非居住用不動産であっても売却には「必要性」や「相当性」が問われる
  • リバースモーゲージなどの居住用財産を担保にする契約においても家庭裁判所の許可が必須
  • 成年後見人が不適切な財産管理を行ったときは、解任や損賠賠償請求、刑事責任が問える
  • 成年後見人に対する苦情窓口には「地域支援包括センター」「成年後見センター」「弁護士」などがある

後見制度の利用者の増加に合わせて、問題も増加しています。

成年後見人による不動産売却トラブルは、弁護士に依頼して早期に解決しましょう。

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この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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