交通事故の損害賠償額の決め方とは?交通事故の慰謝料の計算方法を弁護士が解説

「交通事故による損害賠償金はいくらもらえるんだろう?」
「保険会社から金額を提示されたけど、妥当なのかわからない…」
交通事故の被害に遭い、心身ともに辛い中、上記のように複雑な損害賠償金まで考えなければならず頭を抱えている人もいるのではないでしょうか。
交通事故の損害賠償額は、複数の損害項目を考慮しなければなりません。また、それぞれ計算方法が異なるため、適切な損害賠償額を請求するためには、計算方法の理解も重要です。
この記事では、交通事故の損害賠償額が、どのような流れと計算方法で決まるのかを専門家の視点から徹底的に解説します。また、計算の背景にある考え方や、保険会社との交渉における重要なポイントまで深く掘り下げていきます。
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交通事故における損害賠償額の決め方は?具体的な流れを解説
交通事故の損害賠償額は、当事者間の責任の度合いを考慮して調整するという、論理的かつ段階的なプロセスを経て決定されます。具体的には、以下の4つのステップで進められます。
損害賠償請求は、事故によって生じた全ての「損害」を正確に把握し、リストアップすることから始まります。この段階で見落としがあれば、その損害は永遠に補償されない可能性があるため注意が必要です。
損害とは、単に病院に支払った治療費だけを指すのではありません。事故が原因で発生した不利益のことをいいます。
例えば、治療のための通院交通費、仕事を休んだことによる減収、怪我によって受けた精神的な苦痛(慰謝料)などです。
事故直後から治療が完了するまでの間、支出した費用の領収書や、給与明細、医師の診断書といった客観的な証拠を漏れなく収集・保管しておきましょう。
全ての損害項目を洗い出したら、次にそれぞれの項目を具体的な金額に換算する作業に移ります。
このステップから、専門的な知識が求められるようになります。なぜなら、損害の種類によって計算方法が全く異なるからです。
治療費や交通費といった実際に出費した費用(積極損害)は、原則として実費が賠償の対象となります。一方で、精神的苦痛に対する慰謝料や、後遺障害によって将来得られなくなるであろう収入(逸失利益)などの損害は、特定の計算式や基準を用いて算出されます。
例えば、入通院慰謝料の計算一つをとっても、後述する3つの異なる算定基準が存在し、どの基準を用いるかで金額が大きく変動します。
この段階で正しい計算方法を適用できるかどうかが損害賠償額の多寡に直結するため、弁護士に相談して適切に対処することが大切です。
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ステップ2で算出した損害額の合計が、そのまま受け取れる金額になるわけではありません。交通事故では、被害者側にも一定の不注意があったと判断されるケースが少なくないためです。
その場合、「過失相殺(かしつそうさい)」という法的なルールに基づき、被害者の過失の割合に応じて賠償額が減額されます(民法第722条)。
例えば、算出された損害額の総額が1,000万円であったと仮定します。被害者に2割(20%)の過失が認められた場合、受け取れる賠償額は800万円(1,000万円×(100%−20%)=800万円)です。
この過失割合は、実務では「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版] 別冊判例タイムズ38号 別冊38号 」という、過去の判例などの蓄積をもとに過失割合の認定基準を示す書籍を参考に決められます。
保険会社が提示する過失割合は、必ずしもそのまま認定されるとは限らないため、その妥当性を慎重に検討することが重要です。
全ての損害額を計算し、過失相殺による調整を行い、損害賠償額を確定させ、加害者側の保険会社と「示談交渉」を行います。
交渉がまとまれば、名称は様々ですが「示談書」「免責証書」などの合意文書を作成・署名し、事件は解決となります。一度、合意文書を作成した後は、原則として後から追加の請求はできなくなるため、内容には細心の注意が必要です。
もし交渉が決裂した場合は、裁判外紛争処理機関(ADR)の利用や、裁判所に訴訟提起するといった法的手続きに移行することになります。

示談が成立すると、通常1〜3週間程度で指定の口座に損害賠償金が振り込まれ、一連の流れは完了します。
損害賠償額を構成する「損害項目」とは
交通事故の損害賠償金は、一見すると一つの大きな金額に見えますが、実際には法的に分類された複数の「損害項目」の合計で構成されています。
請求漏れを防ぎ、保険会社の提示額が全ての損害をカバーしているかを確認するためには、この分類を理解することが重要です。
一般に損害賠償額を構成する「損害項目」とは財産的損害と非財産的損害(精神的損害)に分けられ、財産的損害は、さらに積極的損害と消極的損害に細分されます。
以下、それぞれ具体的に解説します。
非財産的損害(精神的損害)|精神的な苦痛に対する損害(慰謝料)
精神的損害とは、交通事故によって被害者が受けた精神的な苦痛に対する賠償です。一般的に「慰謝料(いしゃりょう)」と呼ばれています。
これは、怪我の痛み、治療の辛さ、将来への不安、あるいは死に至った無念さといった、目には見えない心のダメージを金銭に換算して補償するものです。
慰謝料は、その発生原因に応じて、以下の3種類に大別されます。
入通院慰謝料 | 怪我の治療のために入院や通院を余儀なくされたことに対する慰謝料 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 治療を尽くしても完治せず、後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料 |
死亡慰謝料 | 被害者が亡くなられたことに対する、本人および遺族の慰謝料 |
これらの慰謝料は、損害賠償の中でも特に金額が大きくなりやすい項目です。
積極損害|事故によって実際に出費した損害(治療費・交通費など)、車の修理費や代車費用など
積極損害(せっきょくそんがい)とは、交通事故がなければ支払う必要のなかった、現実に支出を強いられた費用のことです。
積極損害には、数多くの項目が含まれます。代表的なものとしては、以下が挙げられます。
治療費 | 診察料、手術費、投薬料、入院費など |
---|---|
通院交通費 | 公共交通機関の運賃や、自家用車を使用した場合のガソリン代など |
付添看護費 | 入院中の付き添いや、通院の介助にかかった費用 |
入院雑費 | 入院中に必要となる日用品や通信費など |
器具・装具費 | 車椅子、松葉杖、義足、コルセットなどの購入費用 |
葬儀関係費 | 被害者が亡くなった場合の葬儀費用など |
これらの費用は、原則として必要かつ相当な範囲で、実費分が賠償されます。
また、人身への損害とは別に、事故によって損傷した「物」に対する損害も積極損害に含まれます。
一般的なのは自動車の損害ですが、事故の態様によっては家屋や店舗、積荷なども対象となります。
主な項目は以下の通りです。
車両修理費 | 損傷した自動車の修理にかかる費用 |
---|---|
買替費用 | 経済的全損の場合や、物理的に修理が不可能な場合に、同等の中古車を購入するための費用や、登録・車庫証明などの諸費用 |
代車使用料 | 修理や買い替えの期間中に必要となった代車の費用 |
評価損(格落ち損) | 修理しても事故歴が残ることで車両の市場価値が下がったことに対する損害 |
消極損害|事故がなければ得られたはずの利益(休業損害・逸失利益など)
消極損害(しょうきょくそんがい)とは、交通事故に遭わなければ本来得られるはずの収入や利益のことです。
積極損害が「出ていったお金」であるのに対し、消極損害は「入ってこなかったお金」に対する補償であり、被害者の財産が「プラス」にならなかった部分を補填します。
人身に関する消極損害は、主に以下の2つの項目から構成されます。
休業損害 | 事故による怪我の治療のために仕事を休んだ、あるいは労働時間を短縮したことによって生じた収入の減少分を補償するものです。 会社員だけでなく、自営業者やパート、アルバイト、さらには収入のない専業主婦(主夫)であっても、家事労働に支障が出たとして請求が認められます。 |
---|---|
逸失利益 | ・後遺障害逸失利益:後遺障害が残ったことにより労働能力が低下し、将来にわたって得られるはずだった収入が減少してしまうことに対する補償です。 ・死亡逸失利益:被害者が事故で亡くならなければ、将来生きて働いて得られたであろう収入に対する補償です。 |
特に後遺障害や死亡事故のケースでは、この逸失利益が損害賠償総額の中で最も大きな割合を占めることも少なくありません。
物損に関する消極損害としては、休車損害があげられます。
休車損害 | 営業用の車両が使用できなくなったことで生じた営業利益の損失 |
---|



これらの損害項目を正確に分類し、一つひとつ丁寧に積み上げていくことが、適正な賠償額を請求するための基礎となります。
損害賠償額を決める上で重要な「3つの算定基準」
交通事故の損害賠償、特に慰謝料の金額が交渉によって大きく変動する理由には、賠償額を算出するための「3つの異なる基準」が存在することが挙げられます。
保険会社が提示する金額と、弁護士が請求する金額が異なるのは、それぞれが依拠する基準が違うからです。
この構造を理解することは、適正な損害賠償金を得るために欠かせません。以下、それぞれ具体的に解説します。
自賠責基準|法律で定められた最低限の補償
自賠責基準とは、自動車損害賠償保障法に基づき、全ての自動車に加入が義務付けられている「自賠責保険」が保険金を支払う際に用いる基準です。
この保険の第一の目的は、交通事故被害者に対して、加害者の支払い能力に関わらず、迅速かつ公平に最低限の救済を提供することにあります。
そのため、自賠責基準によって算出される金額は、あくまで被害者保護のための「最低保障ライン」と位置づけられています。
治療費や休業損害、慰謝料などを合わせた傷害部分の支払限度額は120万円と定められており、3つの基準の中では最も低い金額となります。
任意保険基準|各保険会社が独自に設定する非公開の基準
任意保険基準とは、加害者が任意で加入している自動車保険会社が、示談交渉の際に内部的に用いる独自の支払基準です。
この基準は、法律で定められたものではなく、各保険会社が独自に設定しているため、その具体的な計算方法や金額は公表されていません。
一般的に、その金額は自賠責基準よりは多少高いものの、後述する弁護士基準(裁判所基準)よりは大幅に低い水準に設定されています。
保険会社は営利企業であり、保険金の支払いは支出にあたるため、自社の利益を確保する観点から、支払額を可能な限り抑制しようとする動機が働きます。
被害者が最初に保険会社から提示される示談金は、通常この任意保険基準に基づいて計算されています。
弁護士基準(裁判所基準)
弁護士基準は、過去の交通事故に関する裁判の判決例を蓄積・分析し、類型化して作られた基準です。裁判所が実際に損害賠償額を判断する際に用いる基準であるため、「裁判所基準」とも呼ばれます。
この基準は、3つの基準の中で最も高額になりやすいです。
弁護士が被害者の代理人として示談交渉を行う際には、この弁護士基準を基に損害額を算出し、保険会社に請求するのが特徴です。
ただ、被害者本人がこの基準の存在を知っていても、個人で保険会社に請求したところで、ほとんどの場合は応じてもらえません。
保険会社が弁護士基準での支払いに応じるのは、弁護士が介入し、「交渉が決裂すれば裁判も辞さない」という法的な圧力がかかった場合に限られるのが実情です。



つまり、弁護士基準による損害賠償金は、弁護士に依頼して初めて実現する権利といえるでしょう。
交通事故による損害賠償額の算定基準は、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:【交通事故損害賠償額算定基準】交通事故の損害賠償額が変わる3つの算定基準を詳しく解説
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【損害項目別】損害賠償額の具体的な計算方法
慰謝料や休業損害、逸失利益といった主要な項目は、計算方法や適用される基準によって金額が大きく異なります。
ここでは、上記で解説した「自賠責基準」と「弁護士基準」を中心に、その算出方法を解説します。
入通院慰謝料の計算方法
入通院慰謝料は、交通事故による怪我の治療期間や内容に応じて支払われる精神的苦痛への賠償です。その計算方法は、どの基準を用いるかによって全く異なります。
自賠責保険が用いる基準では、以下の計算式で算出されます。
慰謝料=4,300円/日×対象日数
この「対象日数」は、以下のうちいずれか少ない方の日数が適用されます。
- 治療期間(初診日から治療終了日までの総日数)
- 実際に入通院した日数×2
例えば、治療期間が3ヶ月(90日)で、実際に通院した日数が40日だった場合、「実際に入通院した日数×2」は80日となり、治療期間の90日より少ないため、対象日数は80日です。よって、慰謝料は4,300円×80日=344,000円となります。
一方、弁護士基準(裁判所基準)の場合は、上記のような単純な日額計算ではなく、過去の裁判例を基に作成された「入通院慰謝料算定表」を用いて金額を算出します。
この表は、入院期間と通院期間を基にしており、むち打ち等の比較的軽傷の場合と、骨折等の重傷の場合で別々の基準が設けられています。
以下の表は、通院のみの場合の慰謝料額を基準別に比較したものです。
通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準(軽傷) | 弁護士基準(重傷) |
---|---|---|---|
1ヶ月 | 129,000円 | 190,000円 | 280,000円 |
2ヶ月 | 258,000円 | 360,000円 | 520,000円 |
3ヶ月 | 387,000円 | 530,000円 | 730,000円 |
4ヶ月 | 516,000円 | 670,000円 | 900,000円 |
5ヶ月 | 645,000円 | 790,000円 | 1,050,000円 |
6ヶ月 | 774,000円 | 890,000円 | 1,160,000円 |
このように、同じ6ヶ月の通院でも、弁護士基準を用いることで自賠責基準の1.5倍以上の慰謝料が認められる可能性があることがわかります。
後遺障害慰謝料の計算方法
治療を継続しても症状が改善しなくなった状態(症状固定)に至り、身体に後遺障害が残った場合、その精神的苦痛に対して後遺障害慰謝料が支払われます。
この慰謝料を受け取るためには、まず自賠責損害調査事務所による「後遺障害等級認定」を受けなければなりません。
等級は、障害の部位や程度に応じて、最も重い第1級から最も軽い第14級までの14段階に区分されています。
そして、認定された等級に応じて、以下のように慰謝料の基準額が定められています。
後遺障害等級 | 自賠責基準(円) | 弁護士基準(円) |
---|---|---|
要介護1級 | 1,650万 | 3,000万 |
要介護2級 | 1,203万 | 2,580万 |
第1級 | 1,150万 | 2,800万 |
第2級 | 998万 | 2,370万 |
第3級 | 861万 | 1,990万 |
第4級 | 737万 | 1,670万 |
第5級 | 618万 | 1,400万 |
第6級 | 512万 | 1,180万 |
第7級 | 419万 | 1,000万 |
第8級 | 331万 | 830万 |
第9級 | 249万 | 690万 |
第10級 | 190万 | 550万 |
第11級 | 136万 | 420万 |
第12級 | 94万 | 290万 |
第13級 | 57万 | 180万 |
第14級 | 32万 | 110万 |
出典:国土交通省|自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準
例えば、むち打ち症などで認定されることが多い第14級の場合、自賠責基準では32万円ですが、弁護士基準では110万円となり、その差は歴然です。
等級が上がるほど差はさらに拡大し、被害者が受け取るべき正当な補償額がいかに高額であるかがわかります。
死亡慰謝料の計算方法
交通事故により被害者が亡くなられた場合、亡くなった本人に対する慰謝料と、近親者である遺族固有の慰謝料が支払われます。
自賠責基準の場合は、亡くなった本人の慰謝料として400万円が定められています。
これに加え、遺族(請求権者)の人数や被害者に被扶養者がいたかどうかに応じて金額が加算されるのが特徴です。
例えば、請求権者が3名以上で被扶養者がいた場合、遺族の慰謝料は950万円となり、合計で1,350万円が上限となります。
弁護士基準(裁判所基準)の場合は、被害者が家庭内でどのような立場にあったかを重視して、慰謝料の相場が設定されています。
一家の支柱 | 2,800万 |
---|---|
母親・配偶者 | 2,500万 |
その他(独身者・子供など) | 2,000万〜2,500万 |
このように、弁護士基準では被害者の実態に即した、より高額な慰謝料が認められる傾向にあります。自賠責基準の上限額1,350万円と比較しても、その差は歴然です。
死亡慰謝料については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:交通事故で死亡した場合の慰謝料は? 子どもや高齢者の死亡事故とその慰謝料相場について
休業損害の計算方法
休業損害は、事故による怪我の治療のために仕事を休んだことで失われた収入を補償するものです。
基本的な計算式は、以下のとおりです。
1日あたりの基礎収入(原則6,100円、19,000円が上限)×休業日数
「1日あたりの基礎収入」の算出方法は、以下のように職業によって異なります。
会社員(給与所得者) | 事故発生前3ヶ月間の給与(各種手当や賞与を含む総支給額)の合計額を、その期間の実稼働日数または暦日数(通常は90日)で割って1日あたりの基礎収入を算出します。 |
---|---|
自営業者・個人事業主 | 事故前年の確定申告書に記載された所得金額(売上から経費を差し引いた額)を365日で割って1日あたりの基礎収入を算出します。 休業中も支払いが必要な家賃などの固定費は、所得額に加算して計算できる場合があります。 |
主婦・主夫(家事従事者) | 実際の収入はありませんが、家事労働には経済的な価値があると認められています。 そのため、厚生労働省が発表する「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」を基礎収入として計算するのが一般的です。 |
学生・無職者 | 原則として休業損害は認められませんが、アルバイト収入があった場合や、就職が内定していた場合などは、その収入を基に請求が可能です。 |
どの職業に該当するかを確認し、適切に計算することが大切です。
後遺障害逸失利益の計算方法
後遺障害逸失利益は、後遺障害によって労働能力が低下し、将来にわたって得られるはずだった収入が減少することに対する補償です。
計算式は以下の通りです。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
それぞれの用語について、以下の表で解説します。
基礎収入 | 原則として事故前の年収額です。 |
---|---|
労働能力喪失率 | 後遺障害等級に応じて定められた、労働能力がどの程度失われたかを示す割合です。 第14級で5%、第12級で14%、第7級で56%、第1級では100%とされています。 |
労働能力喪失期間 | 原則として、症状固定日から67歳までの年数です。 |
ライプニッツ係数 | 将来にわたって受け取るはずの収入を、一時金として前倒しで受け取ることによる運用利益(中間利息)を差し引くための係数です。 労働能力喪失期間が長いほど、この係数の数値は大きくなります。 |
この計算は非常に専門的であり、基礎収入の認定や労働能力喪失期間の妥当性などを巡って保険会社と争いになることが多いため、弁護士による正確な計算が不可欠です。
治療費・交通費・その他実費の計算方法
治療費や通院交通費などの積極損害は、原則として、事故との因果関係が認められる「必要かつ相当な」範囲で実費が賠償されます。
治療費 | 健康保険や労災保険を利用した場合でも、自由診療の場合でも、必要性が認められればその実費が支払われます。 ただし、過剰診療や高額診療と判断された部分は対象外となることがあります。 |
---|---|
通院交通費 | 公共交通機関の利用が原則ですが、怪我の状況によりタクシーの利用が認められることもあります。 |
入院雑費 | 入院中の日用品購入費などに対する補償です。 自賠責基準では日額1,100円と定められていますが、弁護士基準では日額1,500円程度で計算されるのが一般的です。 |



これらの費用を請求するため、全ての領収書や記録を適切に保管しておきましょう。
出典:国土交通省|自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準
適正な損害賠償金を受け取るために知っておくべきこと
これまで解説してきた損害賠償の仕組みを理解した上で、被害者が適正な金額を受け取るためには、具体的にどのような行動をとるべきなのでしょうか。
ここでは、後悔しないために絶対に押さえておくべき4つの重要なポイントを解説します。
以下、それぞれ具体的に解説します。
保険会社から提示された金額で安易に示談しない
治療が一段落すると、加害者側の保険会社から示談金の提示があります。しかし、この最初の提示額を鵜呑みにして、安易に示談書に署名してはいけません。
前述の通り、保険会社が提示する金額は、自社の利益を考慮した「任意保険基準」に基づいて計算されています。「弁護士基準」よりも低い金額であることがほとんどです。
一度示談が成立すると、後から覆すことは困難です。提示された金額は、あくまで交渉の出発点であると認識し、その妥当性を専門家である弁護士に確認することが欠かせません。
医師の指示に従い、完治または症状固定まで治療を継続する
入通院慰謝料や休業損害は、治療期間を基に計算されます。
自己判断で通院を中断したり、保険会社からのプレッシャーに屈して治療を途中でやめてしまったりすると、本来受け取れるはずの損害賠償金が減額されかねません。
重要なのは、治療の終了時期を判断するのは保険会社ではなく、医師であるという点です。
保険会社から治療費の打ち切りを打診された場合でも、医師が治療の必要性を認めている限りは、健康保険などを利用してでも治療を継続しましょう。
症状が残った場合は「後遺障害等級認定」を受ける
症状固定の診断を受けてもなお、痛みやしびれ、可動域制限などの症状が残ってしまった場合は、必ず「後遺障害等級認定」の申請を行いましょう。
申請方法には、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」と、被害者自身(または代理人の弁護士)が必要書類を収集して申請する「被害者請求」の2種類があります。
手間はかかりますが、適正な等級認定を得るためには「被害者請求」を選択することが大切です。
被害者請求では、認定に有利となる医学的証拠や意見書などを主体的に添付できるため、むちうちや高次脳機能障害のように外側から判別しづらい後遺症について、より実態に即した等級が認定されやすくなります。
請求漏れがないか全ての損害項目を弁護士に確認してもらう
損害賠償には、これまで解説してきた項目以外にも、将来の介護費用や、家屋のバリアフリー化改修費用など、被害者の状況に応じて請求できる項目が数多く存在します。
しかし、これらの項目は専門家でなければ見落としがちであり、保険会社が親切に教えてくれることはありません。



示談交渉を始める前に、請求できる可能性のある損害項目が全てリストアップされているか、計算は適切に行われているかを弁護士に確認してもらうことが重要です。
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損害賠償額の決め方に関するよくある質問
ここでは、損害賠償額の決め方に関して、被害者の方々からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。具体的な疑問を解消し、理解をさらに深めていきましょう。
物損事故の場合、損害賠償額はどのように決まる?
人的な被害がなく、物の損害のみが発生した事故の場合、賠償の範囲は人身事故と異なります。
主な賠償項目は、車両の修理費用です。もし修理費用が事故直前の車両の時価額を上回る場合(経済的全損)は、その時価額と買い替えにかかる諸費用が賠償の上限となります。その他、修理期間中の代車費用や、レッカー費用なども請求可能です。
物損事故では、原則として「慰謝料」が認められません。物の損害による精神的苦痛は、財産的損害が賠償されることで回復されると考えられているためです。
ただし、ペットが死亡した場合や、自宅に車が突っ込んできた場合など、精神的苦痛を観念できる場合には、慰謝料が認められた判例も存在します。
自身のケースで慰謝料が請求できるかわからない場合は、一度弁護士に相談してみましょう。
保険会社からの提示額は必ず受け入れなければならない?
保険会社からの提示額は、受け入れる必要はありません。
保険会社から提示される金額は、あくまで保険会社側の基準に基づいた「示談の提案」であり、法的な決定事項ではないためです。
被害者には、その内容を精査し、不服があれば拒否して、より高額な賠償を求める交渉を行う権利があります。
むしろ、前述の通り、最初の提示額は低く抑えられていることが多いため、安易に受け入れるべきではありません。
提示額に納得できない場合は、その場で回答を保留し、弁護士基準で再計算してもらうことが重要です。
損害賠償額は増額できる?
増額が可能となる理由は、交渉の基準を保険会社が用いる「任意保険基準」から、裁判所が用いる「弁護士基準」へと引き上げられるためです。
弁護士が交渉の場に立つことで、保険会社は裁判に発展するリスクを考慮せざるを得なくなり、弁護士基準に近い金額での示談に応じる可能性が高まります。
特に後遺障害が残るようなケースでは、当初の提示額から2倍以上に増額されることも珍しくありません。
まとめ|損害賠償額の決め方について理解を深めて適切な金額を受け取ろう
この記事では、交通事故の損害賠償額がどのように決まるのか、その全体像と具体的な計算方法について詳細に解説しました。
保険会社が提示する金額は、営利目的から低く設定された基準に基づいています。一方、弁護士であれば、過去の裁判事例をもとに被害者が受け取るべき金額を提示することが可能です。
もし、保険会社から提示された金額に疑問や不安を感じているのであれば、示談書に署名する前に弁護士に相談しましょう。



専門家の視点からご自身の状況を客観的に評価してもらうことで、適切な損害賠償額を受け取れる可能性を高められます。
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