物損事故でも治療費は出る?内訳やデメリット・人身事故への切り替え方を徹底解説
「物損扱いのままだと、治療費は自分で払わないといけない?」
「適切に治療費を受け取れるか不安…」
事故直後は興奮状態で痛みを感じなくても、数日後に症状が出ることは珍しくありません。警察への届け出が「物損事故」のままだと、保険が下りないのではないかと不安になる人は多いでしょう。
実際に人身被害が発生している場合は、条件を満たせば、物損事故扱いのままでも保険会社から治療費を受け取ることが可能です。しかし、治療費の早期打ち切りや正当な賠償が受けられないといった、知っておくべきリスクも潜んでいます。
本記事では、物損事故でも治療費が出る仕組みや具体的な内訳、リスクを回避するための正しい対処法を解説します。本来受け取れるはずの補償を適切に受け取るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
物損事故でも治療費が出るケースはあるが例外的:警察の届出が物損事故のままでも、条件を満たせば保険会社から治療費の支払いを受けられる。ただし、あくまで保険会社判断による「救済措置」であり、恒常的に安心できる方法ではない。
最大の分かれ目は初動対応:早期受診・診断書の取得・保険会社への迅速な連絡ができていないと、事故と怪我の因果関係を否定され、治療費を一切受け取れなくなるリスクが高い。
物損扱いのまま治療費を受け取るのはリスクがある:物損事故のままだと、治療費の早期打ち切りや後遺障害等級の非認定など、治療費を受け取る際のリスクがある金銭面・交渉面のデメリットが多い。
痛みや違和感があるなら「人身事故への切り替え」が原則:手続きは想像より難しくなく、診断書があれば切り替え可能。将来の補償や紛争リスクを考えると、人身切り替えは自分を守る合理的な選択といえる。
迷った時点で専門家に相談するのがおすすめ最短ルート:物損のまま進めるか、人身に切り替えるかの判断ミスは取り返しがつかない。少しでも不安があれば、交通事故に強い弁護士へ早めに相談することが重要。
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そもそも物損事故と人身事故の違いは?
交通事故には大きく分けて物損事故と人身事故の2種類が存在し、警察への届出によって区分されます。最大の違いは、事故によって「負傷者が出ているかどうか」という事実と、それに伴う加害者への処分内容です。
物損事故はあくまでモノだけが壊れた事故であり、怪我人がいないため、加害者に行政処分や刑事処分は科されません。一方、人身事故はヒトが死傷した事故であり、加害者には点数加算や免許停止などの重い処分が下される可能性があります。
上記の区分の違いは、被害者が受け取れる補償の内容や、その後の示談交渉にも大きな影響を与えます。両者の違いを明確に理解するために、主な相違点を以下の表で比較・整理しました。
| 項目 | 物損事故 | 人身事故 |
|---|---|---|
| 定義 | 車やガードレールなど物の損壊のみ | 人の死傷が発生している事故 |
| 警察の処理 | 物件事故報告書のみ作成 | 実況見分調書・供述調書の作成 |
| 自賠責保険 | 適用されない(原則補償なし) 出典:e-Gov法令検索|自動車損害賠償保障法 | 適用される(治療費・慰謝料等) |
| 違反点数 | 原則加算なし(安全運転義務違反等は除く) | 負傷程度に応じ加算(免停等の可能性) |
| 刑事罰 | 原則なし(ただし報告義務違反、安全運転義務違反等は罰則対象) 出典:e-Gov法令検索|道路交通法 | 過失運転致死傷罪等の可能性あり |
| 損害賠償 | 車の修理費・代車費用など | 治療費・慰謝料・休業損害など |
特に重要なのは「自賠責保険」の扱いです。自賠責保険は本来、人身事故(身体への被害)を救済するための保険であるため、物損事故では原則として適用されません。
しかし、実務上は「警察への届出は物損だが、保険会社は人身事故として対応する(=人身賠償)」というケースも多々あります。形式上の区分と、実際の補償実務にはズレが生じることがあるため、次章で詳しく解説します。
弁護士 佐々木一夫監修者コメント
痛みがあるのに「物損のまま」で進めると、治療費の打ち切りや後遺障害の否認など、取り返しがつかない事態になる可能性があります。
早めに受診することはもちろん、必要であれば人身事故への切り替えも大切です。本記事を参考に、適切な行動が取れるよう準備しましょう。
物損事故扱いでも治療費は出る?仕組みや支払われる条件を解説
「警察に物損事故として届け出たら、もう治療費は請求できない」と誤解している人は多いです。
しかし、実際には警察の届出が物損事故のままでも、治療費や慰謝料を保険会社から受け取ることは可能です。これを実務上、人身社内処理や物損扱いでの人身賠償と呼びます。
具体的には、以下の条件を満たすことで、物損事故扱いのままでも治療費が支払われるケースが一般的です。
- 「人身事故証明書入手不能理由書」を提出する
- 事故直後から病院を受診し、医師の診断書がある
- 加害者側の保険会社が治療対応(一括対応)を認めている
とくに重要なのが人身事故証明書入手不能理由書です。この書類に加害者・被害者双方が署名・捺印し保険会社へ提出することで、自賠責保険の適用が可能になります。
警察の手続きをやり直さなくても、書類上の手続きだけで「実質的な人身事故」として扱ってもらうことが可能です。
しかし、あくまで保険会社が事故による怪我と認めた場合に限られる救済措置的な側面もあります。加害者が事故の事実を否認している場合や、怪我が極めて軽微で信用性が疑われる場合は、支払いを拒否されることもあるでしょう。
物損事故扱いで受け取れる可能性がある治療費の内訳
物損事故扱いのままであっても、保険会社が人身賠償として対応することを認めれば、人身事故と同等の補償が受けられます。
ここで支払われる費用は、怪我の治療に直接必要な実費だけでなく、通院に伴う諸経費も含まれる点が特徴です。
具体的にどのような項目が請求可能なのか、それぞれの費目について詳しく見ていきましょう。
病院(整形外科など)の治療費
交通事故による怪我の治療のために、整形外科や総合病院で支払った診察料や検査費、処置料などは全額請求の対象となります。初診時の診察代はもちろん、レントゲンやMRIなどの画像検査費用、経過観察のための再診料も含まれます。
請求可能な費用の具体例は、以下のとおりです。
- 診察料:初診料、再診料
- 検査料:レントゲン、MRI、ざCTスキャン、血液検査
- 処置・手術料:傷の縫合、ギプス固定、手術費用
- 入院料:入院基本料、室料(大部屋基準)
交通事故の治療は、健康保険を使わずに「自由診療」で行われることが多く、医療費が高額になりがちです。
しかし、加害者側の保険会社が病院に直接治療費を支払う「一括対応」を行ってくれる場合は、被害者が窓口で現金を支払う必要はありません。



医師が必要と判断した範囲内での治療であれば、物損事故扱いであっても問題なく支払われるのが基本です。
薬代(処方薬)
病院での診察に基づき、医師から処方された薬の代金(調剤薬局での支払い)も治療費の一部として全額補償されます。
補償対象になるものとならないものは、以下のとおりです。
| 補償対象となる医薬品・器具 | ・内服薬:鎮痛剤、胃薬、筋弛緩剤など ・外用薬:湿布、塗り薬 ・医療器具:松葉杖、コルセット、頸椎カラー、車椅子(レンタル) |
|---|---|
| 補償対象外になりやすいもの | ・医師の処方がない市販薬 ・サプリメント、健康食品 ・温泉治療費(医師の指示がない場合) |
痛み止めの内服薬や、患部に貼る湿布薬が処方されることが一般的です。これらは症状の改善や苦痛の緩和に必要不可欠な医療行為の一環とみなされるため、正当な請求権が認められます。
また、医師の指示により松葉杖やサポーター、コルセットなどの医療器具を購入・レンタルした場合も、その費用は補償の対象です。
しかし、自己判断で購入した市販薬や健康食品については、医師の指示がない限り治療費として認められない可能性が高いでしょう。自己判断で出費をする前に医師に相談し、処方薬として出してもらうことが大切です。
診断書作成費用
警察への提出や保険会社への請求のために、医師に作成してもらう診断書の費用も、必要経費として加害者側に請求可能です。
また、後遺症が残ってしまった場合に申請する「後遺障害診断書」の作成費用についても、後遺障害等級が認定されれば支払いの対象となります。
診断書の作成料は病院によって異なりますが、一般的には3,000円〜10,000円程度が相場です。治療そのものの費用ではありませんが、損害賠償請求手続きにおいて不可欠な出費であるため、損害賠償関係費用として認められます。
| 診断書の種類 | 提出先・目的 | 相場目安 |
|---|---|---|
| 警察提出用診断書 | 事故を人身扱いに切り替えるため | 3,000円〜5,000円 |
| 保険会社用診断書 | 毎月の治療状況を報告するため | 3,000円〜5,000円 |
| 後遺障害診断書 | 後遺障害等級認定を申請するため | 5,000円〜10,000円 |
| 診療報酬明細書 | 治療費の内訳を証明するため | 1,000円〜3,000円 |
領収書を受け取る際は、文書料や診断書料といった但し書きが明記されているかを確認し、大切に保管しておきましょう。
整骨院・接骨院の施術費
整形外科などの病院だけでなく、整骨院や接骨院で受ける柔道整復師による施術費用も、条件を満たせば補償の対象となります。
むちうちの治療では、病院のリハビリと並行して整骨院に通院したいと希望する被害者は多いです。しかし、整骨院での施術は医療行為ではないため、医師の許可や同意が必要となる可能性が高いでしょう。
トラブルを避けるためには、まず整形外科を受診して診断を受け、医師に「整骨院で施術を受けたい」と相談し、承諾を得ておくことが重要です。
整骨院通院が認められるためのポイントは、以下のとおりです。
- 最初に必ず整形外科(病院)を受診している
- 医師から整骨院通院の許可(同意)を得ている
- 定期的(月1〜2回以上)に整形外科も併用して受診している
- 漫然と長期通院せず、症状改善が見られる
医師の管理下で必要性が認められた施術であれば、物損事故扱いのままでも、治療費として保険会社から支払われる可能性が高まります。
通院交通費
怪我の治療のために病院や整骨院へ通う際にかかった交通費も、実費として加害者側の保険会社に請求可能です。
| 移動手段 | 請求の可否 | 計算方法 |
|---|---|---|
| 電車・バス | 原則認められる | 実費(領収書不要、経路申告のみで可) |
| 自家用車 | 認められる | ガソリン代(1kmあたり15円目安)+駐車場代 |
| タクシー | 条件付きで認められる | 歩行困難などやむを得ない事情が必要 |
| 徒歩・自転車 | 請求不可 | 実費が発生しないため対象外 |
基本的には、自宅から医療機関までの往復にかかる公共交通機関(電車・バス)の運賃が支払いの対象となります。もし自家用車で通院した場合は、自宅から病院までの距離に応じたガソリン代(1kmあたり15円程度が目安)と、病院の駐車場代が認められます。
以下のようにやむを得ない事情がある場合は、タクシー代が認められることもあるでしょう。
- 足の骨折などで歩行が困難
- 公共交通機関がない地域
しかし、タクシー利用は厳格に審査されるため、事前に保険会社の担当者に了承を得ておくことが大切です。通院交通費の請求には、通院した日付や経路、運賃を記録した「通院交通費明細書」の作成が必要になるため、日頃からメモを残しておきましょう。
物損事故扱いでも通院した方がいいケース
「大した怪我ではないし、物損事故だから病院に行かなくてもいい」と安易に判断するのは禁物です。事故直後は興奮状態で痛みを感じにくくなっているだけで、実際には体にダメージを負っている可能性が十分にあります。
自己判断で受診を見送ると、後から症状が悪化しても「事故との関係がない」とみなされ、一切の補償を受けられなくなるリスクもあるため注意が必要です。
とくに以下のようなケースでは、たとえ物損事故扱いで済ませる予定であっても必ず医療機関を受診しましょう。
以下、それぞれ具体的に解説します。
事故直後から違和感や痛みを感じる場合
事故直後に少しでも体の違和感や痛みを感じた場合は、我慢せずに即座に病院へ行きましょう。自己診断のままだと、微細な骨折や神経損傷を見逃す原因になります。
見逃してはいけない初期症状は、以下のとおりです。
- 首筋や肩の張り、痛み
- 手足のしびれ、脱力感
- 頭痛、めまい、吐き気
- 腰の鈍痛、背中の違和感
- 耳鳴り、視界のかすみ
交通事故における怪我の補償は、事故発生から初診までの期間が重要な判断基準です。事故当日または翌日に受診していれば、その痛みは間違いなく事故によるものだと医学的・客観的に証明しやすくなります。
逆に、痛みを我慢して数日間過ごすと、保険会社から「日常生活や仕事で生じたものではないか」と疑われてしまいます。たとえ軽微な痛みであっても、カルテに「事故直後からの症状」として記録を残しておくことが重要です。



迷うくらいなら整形外科を受診し、医師に「交通事故に遭った」と明確に伝えて診察を受けることが最優先の行動です。
後になって症状が出てきた場合
交通事故の怪我、とくにむちうち(頸椎捻挫)は、事故から数日〜1週間程度経過してから症状が顕著になることがよくあります。
後から症状が出てきた場合でも、気づいた時点ですぐに整形外科を受診すれば、事故との因果関係を認めてもらえる可能性は高いでしょう。「症状が出たら間髪入れずに受診する」というスピード感と、医師に「いつからどのような症状が出たか」を正確に伝えなければなりません。
後発症状が現れた際の適切なフローは、以下のとおりです。
- 症状に気づいたその日か翌日に予約を入れる
- 整形外科で「事故後○日目から痛みが出た」と伝える
- 保険会社に「痛みが出たので通院する」と連絡する
- 必要であれば人身事故への切り替えを検討する
「物損事故にしてしまったから」と遠慮して受診を遅らせれば遅らせるほど、事故との関連性を証明するのは困難になります。手遅れになる前に専門医の診察を受け、適切な治療を開始することが、体の回復と補償の確保の両面で不可欠です。
事故の衝撃が大きかった場合
車のバンパーが大きく凹んだり、エアバッグが作動したりするほどの強い衝撃を受けた事故であれば、自覚症状がなくても受診しましょう。
受診を推奨する車両損傷レベルは、以下のとおりです。
- エアバッグが作動した
- 自走不能になりレッカー移動した
- 窓ガラスが割れた
- 車体が大きく変形した(フレームの歪みなど)
- シートベルトで体を強く圧迫された
人間の体は、予期せぬ強い衝撃を受けると、脳や内臓、脊髄などにダメージを負う可能性があります。受傷直後は問題がなくても、数時間後〜数日後に容態が急変し、命に関わる事態になる可能性もゼロではありません。
保険会社も、車両の破損状況写真などから「この事故なら怪我をしていても不思議ではない」と判断しやすいため、治療費もスムーズに認定してくれるでしょう。



物損の規模と身体へのダメージは必ずしも比例しませんが、大きな衝撃を受けた場合はできるだけ医師に診てもらうことが大切です。
乳幼児・高齢者が同乗していた場合
言葉で痛みをうまく伝えられない乳幼児や、骨が脆くなっている高齢者が同乗していた場合は、本人の訴えがなくても必ず受診させましょう。
乳幼児・高齢者の場合、以下のようなリスクがあるためです。
| 乳幼児・小児 | ・首の筋肉が弱く、むちうちになりやすい ・脳への揺さぶりによるダメージを受けやすい ・言葉で正確な痛みを伝えられない |
|---|---|
| 高齢者 | ・骨密度が低く、軽微な衝撃で骨折しやすい ・既存の持病(腰痛など)が悪化しやすい ・回復に時間がかかり、寝たきりの原因になる可能性がある |
小さな子供は、恐怖で泣くだけだったり、逆に普段通り遊んだりと、親でも異変に気づきにくいことがあります。しかし、子供の体は頭部が重く首の筋肉が未発達なため、大人が軽いと感じる衝撃でもダメージを受けやすいです。



高齢者の場合も同様で、軽微な追突であっても圧迫骨折を起こしていたり、持病が悪化したりする可能性は高いです。
後になって怪我が判明しても、事故との因果関係を証明するのが難しくなります。同乗者の未来を守るためにも、物損事故扱いだからと軽視せず、一度医師の診察を受けておくことが大切です。
物損事故扱いで治療費が出ない・支払いを拒否されるケース
物損事故のままでも治療費が出るケースは多いですが、どのような状況でも無条件に支払われるわけではありません。保険会社は営利企業であるため、事故と怪我のつながり(因果関係)が不明確な場合、支払いをシビアに拒否します。
とくに以下のようなケースに該当すると、たとえ本当に痛みがあったとしても、治療費を受け取れない可能性が高くなります。
トラブルを未然に防ぐために、どのような行動がNGなのかを具体的に知っておきましょう。
事故から受診まで期間が空きすぎている場合
事故発生日から初診日までの期間が空きすぎていると、「その怪我は本当に交通事故が原因なのか」と疑われます。医学的常識として、交通事故で身体に損傷を負ったならば、直後あるいは数日以内に痛みや違和感が生じるはずだと考えられているためです。
一度因果関係を否定されてしまうと、それを覆して治療費を認めさせることは、弁護士が入っても極めて困難です。「仕事が忙しい」「様子を見ていた」などの事情は保険会社には通用しません。



痛みを感じたらすぐに受診するのが、補償を受けるために重要です。
極めて軽微な接触で因果関係がないと判断された場合
軽微な事故の場合も、治療費が出ない可能性が高いです。とくに、以下のような場合は、支払いが拒否されやすいでしょう。
- 車体に目立つ凹みがなく、擦り傷程度
- 修理費用が数万円以下、または修理不要レベル
- 衝突時の速度が時速数キロ以下(クリープ現象など)
- サイドミラー同士の接触など、衝撃が車内に伝わりにくい事故
このような場合、工学的な鑑定や過去の判例に基づいて「身体に怪我を負うほどの衝撃は発生していない」と判断されることがあります。
保険会社は車の修理見積もりや事故状況報告書を確認しているため、車両の損傷が皆無に近い場合は、治療費の支払いを拒否しがちです。
もちろん、構え方や体質によっては軽微な追突でも身体を痛めることはありますが、それを証明するには医師による詳細な所見と強い根拠が必要になります。
医師の診断なく整骨院のみ通院している場合
交通事故の治療において、医師(整形外科)の診断を受けずに、いきなり整骨院や接骨院だけに通い続けるのはリスクが高い行為です。
保険実務上、怪我の診断や治療の必要性を判断できるのは「医師」だけであり、柔道整復師には診断権がありません。
整骨院のみ通院するリスクは、以下のとおりです。
- 治療費(施術費)が全額自己負担になる可能性がある
- 通院慰謝料の対象期間として認められない場合がある
- 後遺障害認定が困難になる
- 怪我の治癒状況を客観的に証明できない
整形外科での診断書がない状態で整骨院に通っても、保険会社はその施術が「事故による怪我の治療」として有効か判断できません。「単なるマッサージ代」や「慰安行為」とみなされ、施術費の全額支払いを拒否される可能性があります。
また、後遺症が残った場合も、医師による治療経過の記録がなければ後遺障害等級の認定申請すらできません。



整骨院に通うこと自体は問題ありませんが、必ず最初に整形外科を受診し、その後も定期的に医師の診察を受けることが大切です。
関連記事:
後遺障害等級とは?等級一覧表から申請方法、慰謝料の相場まで弁護士が徹底解説
後遺障害等級認定とは?手続きの流れ・適切な等級獲得のポイントを弁護士が解説
保険会社への連絡が著しく遅れた場合
事故直後に保険会社への報告を怠って事後報告で連絡しても、認められないことがあります。連絡が遅れると、保険会社は事故状況の調査や医療照会をタイムリーに行えず、適正な損害額の算定ができなくなるためです。
保険会社への連絡が必要なタイミングは、以下のとおりです。
- 事故発生直後(事故報告)
- 病院を受診する前(通院の連絡)
- 転院や整骨院の併用を開始する前
- 治療が終了(治癒・症状固定)した時
また、「物損事故として当事者間で示談が成立した後に追加で治療費を請求する」といったケースも原則として認められません。
一度示談書にサインしてしまうと、「清算条項」によりそれ以上の請求権を放棄したとみなされるのが一般的だからです。
怪我の治療費を請求したいのであれば、事故直後の段階で保険会社に「怪我をしているため通院する」という意思を明確に伝えておく必要があります。
関連記事:交通事故で保険会社にはどう対応すべき?注意点・対応が悪い時の対処法を徹底解説
物損事故扱いのままで治療費を受け取るデメリット・リスク
前述の通り、物損事故扱いのままでも治療費を受け取ることは仕組み上可能です。しかし、この方法は「被害者にとってのリスク」が大きく、推奨できない側面が多々あります。
主なリスクは、以下のとおりです。
以下、それぞれ具体的に解説します。
1.治療費の「早期打ち切り」を打診されやすい
物損事故扱いのまま通院していると、保険会社から治療費の打ち切りを通常よりも早い段階で打診される傾向があります。
保険会社の担当者は警察の届出状況を確認しており、「物損事故=怪我はしていない」という前提で対応を進めるためです。



物損事故であるにも関わらず通院が長引くと、疑いの目を向けられやすくなるでしょう。
関連記事:
保険会社が治療の打ち切りを連絡してきた!治療費打ち切りが通達されたときの対応方法
交通事故で相手の保険会社の対応が悪いときの対処法と弁護士に相談するメリット
2.後遺症が残っても「後遺障害等級」が認定されない
交通事故の怪我が完治せず痛みやしびれが残ってしまった場合、「後遺障害等級」の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。
しかし、物損事故扱いのままだと、この後遺障害等級が認定される可能性は限りなくゼロに近くなるのが特徴です。
等級認定の審査機関は、警察が発行する「交通事故証明書」の記載内容を非常に重視します。物損事故の場合、「後遺症が残るほど激しい事故ではなかった」と判断されかねません。



将来的に数百万単位の賠償金を失うリスクがあるため、大きなデメリットといえるでしょう。
3.実況見分調書がないため過失割合で不利になる可能性がある
物損事故と人身事故では、警察が作成する書類の種類と詳細さに大きな差があります。
| 事故種別 | 作成される警察の書類 | 書類の特徴 |
|---|---|---|
| 物損事故 | 物件事故報告書 | ・事故の場所や当事者名など簡易な情報のみ ・詳細な状況図はない |
| 人身事故 | 実況見分調書 | ・現場検証に基づき、ブレーキ痕、衝突位置、双方の言い分を詳細に記録 |
決定的な違いとなるのが、事故の過失割合で揉めた場合です。
物損事故の場合、詳細な現場検証(実況見分)が行われないため、具体的な事故状況を記録した実況見分調書が作成されません。後になって加害者が嘘の証言を始めたとしても、反論する客観的な証拠を提示できない可能性があります。



本来なら10対0で被害者が悪くない事故でも、証拠不足で不利な過失割合を押し付けられるリスクが生じるでしょう。
関連記事:
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過失割合のゴネ得はどう防ぐ?応じる危険性や対処法・効果的な証拠を弁護士が解説
物損事故後に痛みやしびれが少しでもあるなら「人身切り替え」が基本
ここまで解説した通り、物損事故扱いのまま治療を続けることには多くのデメリットとリスクが潜んでいます。怪我があるなら、迷わず人身事故へ切り替えることが大切です。
「加害者が可哀想だから」「手続きが面倒だから」という理由で物損のままにすると、将来の自分を苦しめる選択になりかねません。
以下のような状況に一つでも当てはまる場合は、直ちに人身事故への切り替え手続きを進めましょう。
- 事故の翌日以降に痛みやしびれが出てきた
- 医師から「全治◯週間」といった診断書が出された
- 加害者の態度が不誠実で、揉める予感がする
- 事故の過失割合について、双方の言い分が食い違っている
- まだ治療が長引きそうだと感じている



手続きは難しくありません。次章では、具体的な手順をステップごとに解説します。
関連記事:交通事故の過失割合を徹底解説|ケース別の相場と納得できない時の対処法
【ステップで解説】物損事故から人身事故へ切り替える手順
物損事故として届け出た後でも、正規の手続きを経て人身事故に切り替えることが可能です。手続きを行うことで、警察による実況見分が行われ、自賠責保険の適用もスムーズになります。
切り替えを完了させるまでの流れは、以下の5つのステップです。
ステップ1|整形外科を受診し「診断書」を取得する
まずは、事故による怪我であることを医学的に証明するための「診断書」を取得する必要があります。整骨院の施術証明書ではなく、必ず整形外科などの医師が作成した診断書を用意しましょう。
受診の際は、医師に「警察に提出して人身事故に切り替えるための診断書が欲しい」と明確に伝えることが大切です。
警察提出用の診断書には、以下の項目を記載しましょう。
- 正確な傷病名(頸椎捻挫、腰椎捻挫など)
- 事故との因果関係(「交通事故により受傷」等の記載)
- 全治見込み期間(「約2週間の加療を要する」など)



診断書は、「ただの物損事故ではない」ことを証明する強力な材料となるでしょう。
不備のない診断書を作成したり、その後の手続きを適切に実施したりするためにも、この段階で弁護士に相談することが大切です。
物損事故に関する悩みは、弁護士法人アクロピースにお任せください。
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ステップ2|警察署の交通課へ連絡し予約を入れる
診断書を取得したら、いきなり警察署に行くのではなく事前に電話で連絡を入れましょう。連絡先は、事故当日に現場処理を担当した警察署の「交通課」です。
担当の警察官が不在の場合や、他の事故処理で出払っている場合があるため、アポイントなしで訪問すると長時間待たされることになります。
電話で伝えるべき内容は、以下のとおりです。
- 事故の日時と場所
- 自分の氏名と、物損事故として処理されていること
- 病院を受診し診断書を取得したこと
- 人身事故への切り替え手続きを行いたいこと
電話口で、持参すべき物や訪問可能な日時などが指定されます。メモの準備を忘れないようにしましょう。
この段階で、警察官から「なぜ今さら切り替えるのか」と聞かれることがありますが、「後から痛みが出て受診したため」と事実を伝えれば問題ありません。
ステップ3|警察署へ診断書を提出し「人身切り替え」を申請する
予約した日時に警察署へ向かい、正式に切り替えの申請を行います。
この際、診断書以外にもいくつか必要な持ち物があります。忘れ物をすると手続きができないため、出発前に以下のリストを確認しておきましょう。
| 持ち物リスト | 備考 |
|---|---|
| 医師の診断書 | 警察提出用(原本) |
| 運転免許証 | 本人確認のため必須 |
| 印鑑(認印) | 調書への押印に使用 |
| 事故車両 | 車の損傷状況を確認する場合がある(可能な限り) |
| 車検証・自賠責証書 | 確認を求められる場合がある |
警察署の窓口で「人身事故へ切り替えたい」と申し出れば、担当官が手続きを進めてくれます。
ステップ4|警察署で「実況見分」に立ち会う
人身事故への切り替え申請を行うと、原則として事故現場での「実況見分(現場検証)」が再度行われます。
事故当時の状況(衝突地点・スピード・ブレーキの位置など)を警察官立ち合いのもとで確認し、「実況見分調書」として記録する作業です。
実況見分に立ち会う際は、以下の3点に注意しましょう。
- 記憶があやふやな点は「わからない」と正直に答える
- 警察官の誘導尋問に乗らず、自分の認識と違う点は訂正を求める
- 相手方の主張と異なる場合は、はっきりと自分の主張を伝える
所要時間は通常30分〜1時間程度です。仕事などを休む必要がありますが、過失割合を適正に判断するために重要な場面であるため、必ず立ち会いましょう。
なお、怪我が軽微である場合や当事者の合意がある場合は、現場での見分が省略され、署内での聴取のみで済むケースもあります。
ステップ5|加害者と保険会社へ切り替えの連絡をする
警察での手続きが完了し、無事に人身事故として受理されたら、最後に加害者側の保険会社へ連絡を入れます。
「警察への届け出を人身事故に切り替えました」と報告することで、保険会社側の処理も正式に人身事故対応へと移行してくれるでしょう。
必要に応じて加害者本人にも連絡を入れるのがマナーですが、保険会社が間に入っている場合は、担当者経由で伝えてもらう形でも構いません。
人身事故への切り替えができなかった場合の対処法
「事故から時間が経ちすぎている」「警察が軽微な事故だとして切り替えを渋る」といった理由で、人身への切り替えができない場合もあります。
その場合でも諦める必要はありません。冒頭で触れた人身事故証明書入手不能理由書を活用することで、実質的な救済を受けられます。
人身事故証明書入手不能理由書の利用手順は、以下のとおりです。
- 保険会社の担当者に「警察での切り替えができなかった」と伝える
- 保険会社から送られてくる入手不能理由書の用紙を受け取る
- 「理由」欄に「警察へ届け出たが、期間経過により受理されなかったため」等と記載する
- 加害者にも署名・捺印をもらう(※重要)
- 保険会社へ返送する
書類を保険会社に提出すれば、警察の記録は物損のままでも保険会社内部で人身事故扱いとして処理してもらうことが可能です。
この書類には、原則として事故の相手方(加害者)の署名・押印欄がありますが、実務上の取扱いは保険会社により異なります。



被害者のみの署名で受理される場合もあるため、まずは加害者側の保険会社に相談することが重要です。
物損事故と治療費に関するよくある質問
加害者に「人身事故にしないでほしい」と頼まれたら?
加害者に「人身事故にしないでほしい」と頼まれた場合、安易に承諾すると、後に治療費や慰謝料を請求する際に不利になるリスクがあります。
加害者が人身事故を嫌がる主な理由は、以下のように保身である可能性が高いためです。
- 「免許の点数を引かれたくない」
- 「免停になりたくない」
- 「罰金を払いたくない」
情けをかけて物損事故のままにすると、以下のようなリスクを被害者が一方的に背負うことになります。
- 後で加害者が態度を変える可能性がある
- 自賠責保険が使えず、相手が無保険だった場合に治療費が回収できない
- 適正な過失割合の判断材料(実況見分調書)が作られない
自分の身体と生活を守るために、事実に基づいて警察に申告することが大切です。最終的な判断は被害者ご自身が行うものですが、迷った場合は弁護士に相談することをご検討ください。
物損事故から人身事故への切り替えに期限はある?
物損事故から人身事故への切り替えに法的期限はありません。
しかし、事故から時間が経過するほど、怪我と事故との因果関係の証明が困難になるため、警察が切り替えを受理しない可能性が高まります。
事故発生後できるだけ早く(数日以内が望ましい)医療機関を受診し、診断書を取得した上で警察に届け出ることが重要です。



具体的な対応については、管轄警察署に確認しましょう。
過失割合が10対0の場合、治療費はどうなる?
信号待ちでの追突など、被害者に過失がない「10対0」の事故でも、治療費は相手方の保険会社から支払われます。
しかし、被害者側の保険会社が示談代行を行えないという点に注意が必要です。法律上、被害者に過失がない場合、保険会社は交渉に介入できません(弁護士法第72条)。
被害者が自分で加害者側の保険会社とやり取りをする必要があり、プロ相手に治療費の交渉や過失割合の確認を行うことになります。



具精神的なストレスを避けるためにも、弁護士に相談することが大切です。
まとめ|物損事故の治療費は早めに弁護士に相談しよう
物損事故扱いのままでも治療費を受け取ることは可能ですが、あくまで例外的な措置であり、多くのリスクを伴います。
交通事故の対応は、初動の判断ミスが最終的な受取金額に多額の差を生むことも珍しくありません。とくに、「物損のままにするか、人身にするか」は、その後の運命を分ける重要な分岐点です。
もし、保険会社の対応に不安を感じていたり、警察への切り替え手続きで迷っていたりする場合は、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。適切な治療と賠償をしてもらうためにも、まずは無料相談などを活用して専門家のアドバイスを受けてみましょう。
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