過失割合のゴネ得はどう防ぐ?応じる危険性や対処法・効果的な証拠を弁護士が解説

過失割合のゴネ得はどう防ぐ?

「相手が事故の過失割合でゴネて、交渉が進まない」
「加害者の主張が二転三転して、不当な割合を押し付けられそうだ」

交通事故の被害に遭ったうえ、加害者に不誠実な対応をされるのは大変な苦痛です。

とくに過失割合に関する「ゴネ得」を許してしまうと、受け取る賠償金が大幅に減る危険があります。

この記事では、交通事故でよくある「ゴネ得」の手口と、それに応じる危険性、そしてゴネ得を防ぐための具体的な対処法を、法律の専門家が分かりやすく解説します。

弁護士 佐々木一夫

不当な要求に屈せず、適正な賠償を受けるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

交通事故でよくある「過失割合のゴネ得」とは

交通事故における「過失割合のゴネ得」とは、加害者が事実と異なる主張や不当な要求を繰り返し、被害者側に不利な過失割合を認めさせようとすることです。

加害者が強硬に主張を続けることで、被害者が「これ以上揉めたくない」と精神的に疲れ、根負けして不利な条件で示談してしまうケースを指します。

ゴネ得は正当な交渉ではなく、被害者の弱みにつけ込む不誠実な行為です。正当な賠償金を受け取るためにも、過失割合のゴネ得を許さない姿勢を持っておきましょう。

加害者が過失割合でゴネる理由

加害者はなぜ、過失割合について執拗にゴネるのでしょうか。

その背景には、主に3つの理由があります。

以下、それぞれ具体的に解説します。

支払う賠償額を減らしたいため

ゴネ得を狙う理由の一つに、「自身の経済的負担を減らしたい」というものが挙げられます。

賠償金には「過失相殺」という制度があり、加害者が被害者に支払う賠償金の額には、過失割合が関係します。(民法第722条第2項)。過失割合に基づく賠償金の計算は、以下のとおりです。

被害者の損害額 ×(1 − 被害者の過失割合)

たとえば、被害者の損害額が1,000万円だったとすると、過失割合に応じた賠償金の額は以下のとおりです。

スクロールできます
過失割合が「加害者10:被害者0」の場合加害者は1,000万円全額を支払う
過失割合が「加害者8:被害者2」の場合加害者の支払額は800万円に減る

このように、自分の過失を1割でも2割でも減らせれば、支払う金額を数百万円単位で減らせる可能性があります。

賠償金が高額になるほど、「少しでも支払う金額を減らしたい」と考える加害者も現れやすくなるため注意が必要です。

また、交通事故では加害者側にも損害が出ている場合があり、その場合には過失割合が加害者側に有利に決まれば、それだけ加害者側の損害が填補される金額が増えます。

そのために、過失割合を少しでも自分に有利にしたいと思う加害者もいるでしょう。

交通事故の過失割合については、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:交通事故の過失割合を徹底解説|ケース別の相場と納得できない時の対処法

自分の自動車保険料が上がるのを防ぎたいため

加害者が任意保険を使うと、翌年から等級が下がり、その結果、保険料が上がります

保険を使うと等級がダウンし、月々の保険料負担が重くなるのが一般的です。

事故の過失割合を低くできれば、「保険を使わずに済む」「等級ダウンの影響を最小限に抑えられる」と考える人は少なくありません。

とくに、過去にも事故を起こしていて等級が低い加害者は、保険料アップを極度に恐れてゴネる傾向があるため注意が必要です。

事故の事実認識が被害者と異なっているため

過失の割合についてゴネられる場合、悪意なく、純粋に「自分は悪くない」と思い込んでいるケースもあります。

事故の瞬間は一瞬であり、双方がパニック状態になることも少なくありません。

加害者にとっては「自分が見た景色」がすべてであり、以下のような認識を持っていることがあります。

また、弊所の経験では、高齢者が相手の事故の場合には、その高齢者の事故状況の認識が、高齢者の主観では客観的な事故状況と違うということもあります。見間違い、記憶違いなどです。

  • 「相手が急に飛び出してきた」
  • 「自分は速度を守っていたはずだ」
  • 「相手も脇見をしていたに違いない」

このような主観的な思い込みがあると、客観的な事実(証拠)と異なっていても、本人は自分の意見を「真実」として主張する傾向があるため注意が必要です。

弁護士 佐々木一夫

加害者が過失割合でゴネている場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

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過失割合のゴネ得を狙う加害者によくある主張

ゴネ得を狙う加害者は、自身の過失を小さく見せるために、さまざまな主張を展開します。

典型的な4つのパターンを知っておきましょう。

以下、それぞれ詳細に解説します。

「相手も悪い」と被害者の注意義務違反を強調する

加害者は、自分の非を認めるどころか、被害者側の落ち度を執拗に指摘することがあります。

これは、被害者側にも一定の過失があったと認めさせ、先述した過失相殺を狙う手口です。

  • 「あなたも前方を見ていなかったのではないか」
  • 「もっと早くブレーキを踏めたはずだ」
  • 「クラクションを鳴らすなど、回避する義務があった」

このように、被害者のわずかな行動を「注意義務違反だ」と大げさに主張し、過失割合を操作しようとします。

「見えなかった」と前方不注意や確認義務違反を認めない

「見えなかった」は、交差点での出会い頭の事故や右折時の事故などでよくある主張です。

このような主張をする加害者は、以下のように主張して自身の前方不注意や安全確認の義務違反を認めません。

  • 「電柱が邪魔で歩行者が見えなかった」
  • 「対向車線のトラックの陰から急に出てきた」

しかし、運転者には「見えにくい場所こそ慎重に確認する義務」があります。

弁護士 佐々木一夫

「見えなかった」という主張は、多くの場合、単なる確認不足の言い訳に過ぎません。

「軽い接触だから大げさ」と損害や被害を軽視する

「軽い接触だから大げさ」は、物損事故や「むちうち」などのケガ(外傷が見えにくいケガ)でよく使われる手口です。

事故の規模が小さいことを理由に、以下のように損害や被害そのものを軽視しようとします。

  • 「バンパーが少しへこんだだけだ」
  • 「こんな軽い事故でケガをするはずがない」
  • 「通院しすぎではないか。大げさだ」

これは、修理費や治療費の支払いを値切ろうとする典型的なゴネです。

事故の衝撃とケガの程度は、必ずしも比例しません。軽い接触でも、首などに深刻なダメージが残ることは十分にあり得ます。

「事故現場では違うことを言っていた」と後になって主張を変える

事故直後は動揺して「すべて私が悪いです」と非を認めていた加害者が、後になって保険会社や弁護士を介し、主張を一変させるケースもよくあります。

事故現場での発言は、録音でもない限り証拠として残りません。証拠がないことを逆手に、後になって以下のように主張することもあるでしょう。

  • 「あの時は気が動転していた」
  • 「よく考えたら、相手にも非があった」
  • 「そんなことは言っていない」

被害者としては「話が違う」と憤りを感じますが、加害者は「言った・言わない」の水掛け論に持ち込み、交渉を長引かせようとするため注意が必要です。

また、裁判所では、仮に事故直後には自分が全面的に悪いといっていても、それだけで加害者側が100%過失があることにもならないことに注意が必要です。

あくまでも交通事故の過失割合は、客観的な事故状況を基に決定されるからです。

実際の過失割合とは異なる過失の主張をする

事実関係についての争いとは別に、過失割合について実際の認定と異なる主張をすることがあります。

たとえば、事実関係から、本来裁判をした場合には10:0の過失が認められる追突事故において、「車の運転をしている以上10:0はない」と主張して8:2の過失割合を譲らないような場合です。

事実の認定も重要ですが、認定された事実からどのような過失割合が妥当なのかの法的評価についてもきちんと調査すべきでしょう。

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過失割合のゴネ得に応じる危険性

加害者のゴネに根負けし「少し不利でも早く終わらせたい」と応じてしまうと、取り返しのつかない事態を招きます。

ゴネ得に応じることには、2つの重大な危険性があります。

以下、それぞれ具体的に解説します。

過失割合が1割違うだけで賠償金が大幅に減少する

被害者に過失がつくと、その割合分、受け取れる賠償金が減額されます。これを過失相殺といいます。

とくに、後遺障害が残るような大きな事故の場合、過失割合が1割違うだけで、賠償金が数百万円、場合によっては1,000万円以上減ることもあります。

後遺障害等級14級の場合を例に、代表的な賠償金基準ごとの過失相殺による影響を見てみましょう。

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賠償金基準慰謝料の目安過失割合 0割(被害者)過失割合 1割(被害者)過失割合 2割(被害者)
自賠責基準約32万円32万円28.8万円25.6万円
弁護士基準約110万円110万円99万円88万円
※上記は後遺障害慰謝料のみの比較です。実際には休業損害や逸失利益なども加算されます。
※弁護士基準は、書籍『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準|(公財)日弁連交通事故相談センター東京支部編集』から引用


出典:国土交通省|自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準

弁護士 佐々木一夫

表の通り、弁護士基準で110万円得られるはずが、ゴネ得を許して過失が2割つけば88万円に減額されます。

これがもし、等級12級などより重い後遺障害であれば、弁護士基準290万円の2割過失で58万円も減額される計算です。

一度示談が成立すると原則として覆せない

最も恐ろしいのは、一度「示談書」にサインしてしまうと、その内容を後から覆すことは原則としてできない点です。

示談は法的な「和解契約」であり、強い拘束力を持ちます(民法第696条)。

  • 「やっぱり納得できない」
  • 「証拠が後から見つかった」

このような事情があっても、示談をやり直すことは困難です。詐欺・錯誤・重大な事実誤認があった場合など、例外的に認められる場合もありますが、覆せるだけの証拠の提出が求められます。

加害者のゴネに負けて不利な条件でサインすることは、本来受け取るべき正当な権利を、その場で放棄してしまうことと同じだと覚えておきましょう。

関連記事:交通事故の示談金に納得できない!保険会社に低すぎる額を提示されたときの対処法【示談金の基礎知識】

【ステップで解説】過失割合のゴネ得を防ぐための対処法

加害者のゴネ得を防ぐには、感情的にならず、冷静かつ論理的に対処することが不可欠です。

以下の4つのステップで進めましょう。

STEP

ステップ1:相手の主張の根拠を明確にする

まずは、相手(加害者本人またはその保険会社)がなぜそのような過失割合を主張するのか、その「根拠」を具体的に確認します。

以下のように質問するとよいでしょう。

  • 「なぜ、こちらに2割の過失があると主張されるのですか?」
  • 「その主張の根拠となる証拠(ドラレコ、目撃者など)はありますか?」
  • 「過去のどの判例に基づいていますか?」

相手の主張が単なる「思い込み」や「感覚」なのか、それとも何らかの(間違った)証拠に基づい

STEP

ステップ2:客観的な証拠を収集・提示する

相手の主張が曖昧であれば、こちらが収集した「客観的な証拠」を提示します。

過失割合の交渉は、感情論ではなく証拠がすべてです。

「自分は悪くない」と叫ぶよりも、一つの証拠を示す方がはるかに強力です。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 警察が作成した「実況見分調書(じっきょうけんぶんちょうしょ)」
  • 事故直後に撮影した現場や車の損傷写真

上記の証拠を示し、事故態様を客観的に確定させます。

STEP

ステップ3:過去の判例に基づき冷静に反論する

交通事故の過失割合は、過去の膨大な裁判例(判例)に基づいて、事故類型ごとに「基本割合」が決められています。

相手の主張が判例とかけ離れている場合は、以下のようにその点を冷静に指摘します。

  • 「あなたの主張は、過去の判例(別冊判例タイムズ38号など)の基準と異なります」
  • 「この事故類型では、基本割合は10対0が妥当です」

ただし、この作業は専門知識を要するため、被害者本人が行うのは困難です。

どのように主張すべきかわからない場合は、この段階で弁護士などの専門家に相談するのが賢明です。

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STEP

ステップ4:ADR(裁判外紛争解決手続)の利用を検討する

当事者間(または保険会社間)での交渉が平行線で進まない場合、ADR(裁判外紛争解決手続)の利用も効果的です。

これは、裁判(訴訟)をせずに、中立的な第三者機関の仲介によって紛争解決を図る手続きのことを指します。

主な機関として、以下の2つが挙げられます。

交通事故紛争処理センター無料で弁護士が仲介に入り、和解案を示してくれます。
日弁連交通事故相談センターこちらも弁護士が相談や示談あっせんを無料で行っています。

ADRを利用したい場合は、「交通事故紛争処理センター」の各地支部に電話または公式サイトから予約できます。

手続きは無料で、弁護士が中立的な立場から和解案を提示します。

申立てには、事故証明書・修理見積書・診断書・保険会社とのやり取り記録などを準備しておくとスムーズです。

過失割合の交渉でゴネ得を防ぐために効果的な証拠一覧

相手のゴネ得を封じる最大の武器は、「客観的な証拠」です。

とくに以下の3点は、過失割合を決定づけるうえで重要です。

以下、それぞれ具体的に解説します。

ドライブレコーダーの映像記録

ドライブレコーダーの映像記録は、強力な証拠の一つです。

事故の瞬間が映像と音声で記録されているため、信号の色・速度・衝突の状況など、加害者が嘘をつけない事実を証明できます。

事故後は、上書き保存によって消去しないよう、すぐにSDカードを抜いて保管しましょう。

また、相手方保険会社や加害者側が「改ざんされた」「上書きされた」などと争点を出す場合もあるため、日時・映像の内容が分かるように記録しておきましょう。

警察が作成する「実況見分調書」

実況見分調書(じっきょうけんぶんちょうしょ)は、事故直後に警察が現場で行う「実況見分」の結果をまとめた書類で、人身事故の場合に作成されます(物損事故の場合は「物件事故報告書」)。

実況見分調書には、主に以下の内容が記載されています。

  • 事故現場の見取り図
  • 車両の停止位置、ブレーキ痕の長さ
  • 双方の当事者や目撃者の供述内容

事故状況を客観的に再現するための公的な資料として、交渉や裁判で非常に重視される書類です。

事故現場や車両の損傷状況がわかる写真・動画

事故直後の現場の状況は、時間の経過とともに失われてしまいます。

警察の到着を待つ間にも、スマートフォンなどで以下の点を撮影しておきましょう。

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車両の状態・衝突部分のアップ
・損傷の程度
・車両全体の写真(双方の車)
現場の状況・道路の状況(信号、標識、一時停止線)
・ブレーキ痕(スリップ痕)
・散乱物
周辺の環境・見通しの良し悪し
・時間帯(明るさ)
・天候
弁護士 佐々木一夫

車両のどの部分がどの程度の強さで衝突したかは、事故時の速度や角度を推測する上で重要な情報となります。

信号サイクル表

信号での交通事故においては、何色の信号で交差点に進入したかが過失割合に大きく影響します。ドライブレコーダーなどで証明できない場合には、信号サイクル表を取得することも検討しましょう。

信号サイクル表とは、信号サイクル(信号が青・黄・赤と一巡すること)についての周期を記録したものです。

これにより、どの信号で交差点に進入したか証明できることがあります。

信号サイクル表は、各都道府県の警察本部等に対し、「信号サイクル表」の開示を請求すれば取得できます。通常の場合には、弁護士が弁護士会照会等を通じて取得します。

過失割合のゴネ得を防ぐために事故直後にやるべきこと

将来のゴネ得を防ぐための戦いは、事故直後から始まっています。

動揺している中でも、以下の5つの行動を実行するようにしましょう。

以下、それぞれ具体的に解説します。

事故現場の証拠を確保する

まずは、事故現場の証拠を確保することが大切です。

前述の通り、スマートフォンで写真や動画をあらゆる角度から撮影しましょう。

また、自分のドライブレコーダーからSDカードを抜き取り、映像を確保することも重要です。

目撃者がいれば、その場で氏名と連絡先を聞き、可能であれば証言をメモしておくとよいでしょう。

相手の情報を正確に記録する

次に、相手の情報を正確に記録することも大切です。

とくに、以下の内容を押さえておきましょう。

  • 相手の氏名、住所、電話番号
  • 相手の車のナンバープレート
  • 相手が加入している自賠責保険・任意保険の会社名と証明書番号

必ず相手の運転免許証や車検証を見せてもらい、その場でメモを取るか、写真を撮らせてもらうことが重要です。

自分の発言・行動に注意する

事故直後、動揺して相手に「すみません」「私にも非があるかも」などと、安易に謝罪や非を認める発言をしないことが重要です。

たとえ社交辞令のつもりでも、後で「相手も非を認めた」とゴネる材料に使われる危険があります。

事実関係について、その場で相手と「どちらが悪いか」の議論をすることは避けましょう。示談の約束も口頭でしないことが大切です。

ケガがある場合は必ず病院を受診する

少しでも体に痛みや違和感があれば、たとえ軽くてもその日のうちに病院(できれば整形外科)を受診しましょう。

「たいしたことはない」と放置すると、後から痛みが出ても事故との因果関係を疑われ、治療費の支払いをゴネられる原因になります。

また、人身事故となると実況見分を行い、実況見分調書を作成してくれるので、過失割合の証拠にできます。

弁護士 佐々木一夫

医師には、事故に遭った経緯と、痛む箇所をすべて正確に伝えることが大切です。

また、「人身事故」として警察に届け出るために必要な「診断書」をもらうことも忘れないようにしましょう。

相手と直接交渉せず保険会社に連絡する

事故現場での応急措置(警察への連絡、負傷者救護)が終わったら、すぐに自分が加入している任意保険会社に事故報告をします。

その後の示談交渉は、すべて保険会社の担当者に任せるのが原則です。

相手(加害者本人やその保険会社)から連絡があっても、直接交渉には応じないようにしましょう。

「すべて保険会社に任せているため、そちらに連絡してください」と伝えることが大切です。

当事者同士で直接話すと感情的になりやすく、相手のゴネるペースに巻き込まれやすくなるため注意が必要です。

関連記事:交通事故の示談交渉の流れは?押さえておきたい重要ポイントや注意点を解説

被害者側のNG対応|「ゴネ得」を助長する言動・対応を避ける

交通事故の過失割合を巡る交渉では、被害者側の対応ひとつで相手に「この人は強く出れば譲ってくれる」と思わせてしまうことがあります。

正当な権利を主張するためにも、以下のような対応は避けましょう。

  • 感情的に反論する・相手の言葉に反応してしまう
  • 根拠のない譲歩・安易な妥協をする
  • 直接交渉を続けてしまう

「自分は悪くない!」と感情的に反論すると、冷静な話し合いが難しくなり、相手に交渉の主導権を握られることがあります。証拠と第三者(保険会社や弁護士)のサポートをもとに、冷静に対応する姿勢が重要です。

「早く終わらせたい」「面倒だから」といった理由で、過失割合に納得してしまうのもNGです。一度同意してしまうと、後から覆すのは難しくなります。

相手方やその保険会社と直接やり取りを続けると、専門的な知識や交渉力の差から不利な条件を飲まされることがあります。早い段階で自身の保険会社や弁護士に対応を任せるのが賢明です。

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交通事故の過失割合で相手と揉めている場合の相談先は?

保険会社に任せてもなお、相手のゴネ得によって交渉が難航する場合は、専門家や第三者機関に相談することが大切です。

主な相談先は4つあり、それぞれ特徴が異なります。

以下、それぞれ詳細に解説します。

保険会社の示談担当者

まずは、ご自身の保険会社の担当者に、相手のゴネ得で困っている状況を具体的に伝えましょう。

担当者は交渉のプロであり、判例に基づいて相手の保険会社と協議してくれます。

ただし、あなたに過失が全くない「0対10」の事故(もらい事故)の場合、保険会社は法律上、あなたに代わって示談交渉ができません。

弁護士 佐々木一夫

その際は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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関連記事:右直事故の過失割合10対0は可能?被害者が有利な場合が認められるケースを紹介

交通事故紛争処理センター

交通事故紛争処理センターは、交通事故の当事者間で発生した「過失割合」や「賠償額」に関するトラブルを、公正かつ中立的な立場から解決へ導くための機関です。

交通事故に精通した弁護士が常駐しており、無料で相談に応じてくれるほか、必要に応じて和解のあっせんや裁定を行ってくれます。

相談者は、自分の意見や証拠をもとに客観的なアドバイスを受けられるため、「保険会社に押し切られてしまうのでは」といった不安を軽減できます。

保険会社同士の話し合いで過失割合が決着しない場合、有効な手段といえるでしょう。

自動車事故対策機構(NASVA)交通事故相談所

自動車事故対策機構(NASVA)は、国土交通省が所管する独立行政法人であり、交通事故の被害者支援や安全対策を専門的に行う公的機関です。

全国各地に設置された「交通事故相談所」では、交通事故に関するあらゆる相談を無料で受け付けています。

交通事故相談所では、過失割合や損害賠償に関するアドバイスを中立的な立場で受けることが可能です。法的根拠に基づいた見解を提示してもらえるため、感情的な対立を避けつつ冷静に状況を整理できます。

ただし、紛争処理センターとは異なり、直接相手方との交渉やあっせんは行いません。示談や和解を代わりに進めてもらうことはできない点に注意が必要です。

弁護士

弁護士は、以下のような場合に正当な解決を目指せる「最後の砦」ともいえる存在です。

  • 保険会社が交渉できない「もらい事故」の場合
  • 保険会社の提示額に納得できない場合
  • 裁判も辞さないと考えている場合

弁護士は、唯一あなたの代理人として、相手方や保険会社と直接交渉ができます。

一般の人や保険会社の担当者には認められていない強力な権限であり、正当な賠償金を主張するために全面的に行動できる重要な存在です。

また、弁護士が介入することで、賠償金の算定は最も高額になる「弁護士基準」で請求できるようになります。

弁護士 佐々木一夫

裁判例をもとに導かれた公正な相場であり、自賠責基準と比べると大きな差になる点が特徴です。

過失割合のゴネ得に悩んでいるなら、専門的な知識と交渉力を持つ弁護士を味方につけ、適正な解決を目指しましょう。

関連記事:交通事故の過失割合納得いかない!適正化を弁護士に任せるべき理由

過失割合のゴネ得に関するよくある質問

ここからは、過失割合のゴネ得に悩む人によくある質問に回答します。いざという時に適切に対応できるよう、ぜひ参考にしてみてください。

弁護士に相談する最適なタイミングはいつ?

事故直後、できるだけ早い段階がベストです。交通事故のトラブルは、初期対応の一つひとつが後の示談金額や過失割合に大きく影響します。

実際には「もう少し様子を見てから」と考える人も多いでしょう。その場合でも、遅くとも以下のいずれかのタイミングで相談を検討してください。

  • 相手の主張が不当だと感じた時点
  • 自分の保険会社が示談交渉を代行できない「もらい事故」だと判明した時点
  • 治療が長引きそうとわかった時点
  • 後遺障害が残りそうだと医師から言われた時点
  • 相手の保険会社から示談金額(賠償額)が提示された時点(サインする前)

弁護士への相談は「トラブルが深刻化してから」ではなく、「不安を感じた時点」で動くのが鉄則です。早めの相談が、結果的に時間・お金・精神的負担を最小限に抑えることにつながります。

相手が過失を認めない場合、車の修理はできない?

相手が過失を認めない場合でも、修理自体は可能です。

ただ、過失割合が確定する前に修理を進めると、相手から「その修理は過剰だ」「事故と関係ない部分も直している」とゴネられ、修理費の支払いを拒否されるリスクがあります。

修理に出す前に、損傷箇所の写真を撮っておきましょう。その後、修理工場に見積書を作成してもらい、そのコピーを相手の保険会社に送付します。

相手の保険会社が「修理の必要性」を確認する(アジャスターが調査に来る)のを待ってから修理を始めるのが安全です。

過失割合のトラブルで弁護士費用特約は使える?

過失割合のトラブルでも、弁護士費用特約は使えます

「弁護士費用特約」は、自動車保険や火災保険などに付帯しているオプションです。

この特約があれば、交通事故の被害者になった際、弁護士への相談料や依頼費用(着手金・報酬金)を、保険会社が通常300万円まで負担してくれます。

なお、弁護士費用特約を使っても保険の等級は下がらず、保険料は上がりません。

弁護士費用特約は「契約者本人」だけでなく、同居の家族や別居の未婚の子にも適用されることがあります。

また、自分が加入していなくても、家族の自動車保険・火災保険の特約を使えるケースがあるため、契約内容を確認しましょう。

相手がゴネていて弁護士に依頼したい場合、まずはご自身やご家族が加入している保険に、この特約が付いていないかを確認してください。

まとめ|不当な過失割合にならないよう、ゴネ得には専門家と連携して対抗しよう

交通事故の加害者が主張する「過失割合のゴネ得」は、被害者の精神的な疲れに期待した、不誠実な交渉戦術です。

これに根負けして応じてしまうと、あなたが受け取るべき正当な賠償金が、理不尽に減額されてしまいます。

ゴネ得を防ぐためには、ドラレコや実況見分調書など、客観的な証拠を冷静に確保することが大切です。また、当事者間で交渉せず、保険会社や弁護士に任せることも忘れないでおきましょう。

弁護士 佐々木一夫

自身の保険に「弁護士費用特約」が付いている場合は、費用の心配なく弁護士に交渉を依頼できます。

相手の不当なゴネ得を許さず、適正な過失割合と賠償金を獲得するためにも、ためらわずに専門家の力を借りましょう。

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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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