被害者請求とは?手続きの流れや必要書類・注意点を弁護士が徹底解説
「保険会社から提示された金額が妥当なのか分からず不安だ」
「後遺障害の認定を保険会社任せにして損をしたくない」
交通事故の被害に遭った際、治療費や慰謝料の請求先は「加害者側の任意保険会社」だけではありません。被害者自ら加害者の自賠責保険へ直接請求を行う「被害者請求」は、適正な賠償金を得るための強力な手段です。
本記事では、被害者請求の仕組みから具体的な手続き、成功させるための重要ポイントを専門家が分かりやすく解説します。
被害者請求は「知っているかどうか」で結果が変わる制度:賠償金や後遺障害等級は、保険会社任せにすると不利になることがある。被害者請求は、自賠責へ直接請求し、審査の主導権を被害者が握れる正当な権利。
書類の透明性を把握できる点がメリット:どの診断書・検査結果・資料が提出されるかを把握し、必要に応じて追加できる点は、事前認定との決定的な違い。等級認定の納得感が大きく変わる。
等級確定後すぐにお金を受け取れる:示談成立を待たず、自賠責から先に保険金が支払われる。治療費や生活費の不安を早期に軽減することが可能。
適切な書類を準備することが大切:記載漏れや医学的根拠不足があれば、等級非該当や減額のリスクも高い。自由度が高い分、責任もすべて被害者側にある点は見落とせない。
被害者請求は最終解決ではなく戦略の一部:自賠責は最低限の補償にすぎない。先に自賠責分を確保し、その後に任意保険で上乗せ交渉を行うことで、全体として適正な賠償に近づける。
不安があれば早めに専門家を使うのが合理的:被害者請求は自分だけでもできるが、弁護士に相談することで適切なサポートが受けられる。後悔しないためには、要所で弁護士のチェックを入れることが大切。
交通事故の被害者請求について不安な場合は、弁護士法人アクロピースにお任せください。
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自賠責保険の被害者請求とは?基本情報を解説
被害者請求は、交通事故の被害者が自ら加害者の自賠責保険に対して賠償金を請求する公的な手続きです。
通常、任意保険会社が間に入るのが一般的ですが、被害者の権利を守るための独立したルートとして用意されています。
制度の仕組みを正しく理解し、他の請求方法との違いを明確にしましょう。
弁護士 佐々木一夫監修者コメント
保険会社の提示額や後遺障害等級は、任せておけば適正とは限りません。被害者請求は、自賠責へ直接申請して審査資料を自分でコントロールできる有効な手段です。
もっとも、診断書や検査結果の整合性など書類の質で結論が左右されます。この記事で流れと注意点を押さえ、納得できる補償につなげましょう。
被害者請求とは|自賠責保険に直接請求する仕組み
被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者の加入する自賠責保険に対して、直接損害賠償金を請求する制度のことです。自動車損害賠償保障法第16条に基づき運用されるため、「16条請求」とも呼ばれます。
自動車損害賠償保障法第16条
(前略)被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
被害者が自ら主体となって手続きを進めることで、認定プロセスの透明性を確保できる点が特徴です。
被害者請求の主な役割は、以下のとおりです。
- 加害者が非協力的な場合でも賠償金を確保できる
- 任意保険会社を介さず、公的な基準で審査できる
- 後遺障害等級認定の透明性を確保できる
本来、自賠責保険は被害者の救済を目的とした対人賠償の基礎部分を担う制度です。加害者が協力的でない場合や、賠償金の支払いが滞っている状況でも、被害者が権利を行使して最低限の補償を確保できるよう設計されています。
加害者請求(事前認定)との違い
被害者請求と対比されるのが、加害者の任意保険会社が窓口となる「加害者請求(事前認定)」です。
加害者請求は、被害者が書類を任意保険会社に渡すだけで手続きが完了するため、手間がかからないという利点があります。
しかし、保険会社がどのような医証(医学的証拠)を提出しているか、被害者側で把握できません。これに対して被害者請求は、すべての提出書類を被害者側で精査・コントロールできるため、納得感の高い結果を得やすい傾向にあります。
以下、両者の違いを表にまとめました。
| 比較項目 | 被害者請求(16条請求) | 加害者請求(事前認定) |
|---|---|---|
| 手続きの主体 | 被害者本人 | 加害者側の任意保険会社 |
| 提出書類の透明性 | 高い(自身で内容を把握可能) | 低い(保険会社任せになる) |
| 事務負担 | 重い(書類収集を自分で行う) | 軽い(保険会社が代行する) |
| 支払いのタイミング | 等級認定後、即座に支払われる | 最終示談時まで支払われないことが多い |



手続きの主導権を誰が握るかという点が、この2つの制度における決定的な相違点といえるでしょう。
被害者請求が可能な項目
被害者請求で受け取れる補償内容は、自賠責保険の規定に基づいた範囲に限定されます。
注意点として、自賠責保険はあくまで対人賠償を目的としているため、車両の修理代などの対物損害は含まれません。物損に関する賠償については、別途加害者本人や任意保険会社と直接交渉を進める必要があります。
請求可能な損害項目の一覧は、以下のとおりです。
| 傷害による損害 | ・治療費 ・看護料 ・休業損害 ・入通院慰謝料 |
|---|---|
| 後遺障害による損害 | ・後遺障害慰謝料 ・逸失利益 |
| 死亡による損害 | ・葬儀費 ・本人及び遺族への死亡慰謝料 ・死亡逸失利益 |



各項目の具体的な金額計算については、国の定める「自賠責保険支払基準」に基づき厳格に行われます。
被害者請求をするメリット
被害者請求の最大の利点は、手続きの透明性と納得感を自らの手で確保できる点にあります。
加害者側の保険会社に任せきりにせず被害者自身が主体となって動くことで、結果的に得られる賠償額や認定等級が有利に働く可能性が高まります。
ここでは、被害者請求を選ぶべき具体的な4つのメリットを深掘りします。
納得のいく等級認定が受けやすくなる
後遺障害の等級認定において、提出する資料の質は結果を大きく左右する重要な要素です。
被害者請求を選択すれば、医師が作成した診断書に加えて、症状の深刻さを補足する独自の資料を添付できます。
提出可能な追加資料の例は、以下のとおりです。
- 被害者作成の陳述書:日常生活での具体的な支障を説明
- 補助的な画像データ:レントゲン以外のMRIやCT画像
- 専門医の意見書:因果関係を医学的に補強する文書
加害者側の任意保険会社に任せきりにした場合、加害者に有利な資料を積極的に集めてくれるとは限りません。
被害者請求であれば、医学的な知見を盛り込んだ主張を直接審査機関に届けられるため、適正な評価を得るための最善策となります。自身で有利な証拠を揃えることで、認定の可能性を最大限に高められるのが大きな利点です。
関連記事:後遺障害等級認定とは?手続きの流れ・適切な等級獲得のポイントを弁護士が解説
加害者側の対応を待たずに補償を受けられる
交通事故の示談交渉は、治療期間や後遺障害の有無、過失割合の争いなどによって長期化することがあります。とくに後遺障害が争点になる場合は、解決までに相応の時間がかかることもあります。
加害者請求(事前認定)の場合、後遺障害の賠償金は示談が成立するまで支払われないのが一般的です。しかし、被害者請求であれば、等級が確定した段階で自賠責保険から直接、速やかに保険金が振り込まれます。
| メリットの側面 | 被害者請求の具体的な効果 |
|---|---|
| 経済的安定 | 等級確定後、数週間程度で現金が手に入る |
| 治療の継続 | 入金された資金を今後の治療やリハビリ費用に充当できる |
| 心理的余裕 | 生活費を心配せず、じっくり示談交渉に臨める |



金銭的な余裕を持つことは、加害者側との示談交渉を対等に進めるための心理的な安心材料にもなるでしょう。
任意保険会社の「社内基準」に左右されにくい
任意保険会社は、独自の「社内基準」を用いて賠償額を提示してくることが多々あります。これに対し、自賠責保険は国が定めた統一的な基準によって機械的かつ公平に審査が行われます。
被害者請求を行うことで、以下のように公的な基準に基づいた確実な補償額を確定させることが可能です。
- 公平性:国の定める一律の基準で判断される
- 客観性:審査機関が中立的な立場で書類を精査する
- 効率性:保険会社との金額交渉をスキップして受給できる
保険会社の担当者との主観的な交渉に振り回されることなく、客観的な評価を得られる点は大きなメリットです。
また、先に自賠責から支払いを受けておくことで、その後の任意保険会社との上乗せ交渉もスムーズに進みやすくなります。
後遺障害等級認定に向けて独自の対策が可能になる
被害者請求のプロセスでは、どの書類が審査に影響を与えるかを被害者自身が判断できます。
たとえば、主治医に対して「後遺障害診断書」の記載内容をより詳細にするよう依頼するなど、戦略的な準備が可能です。
一方、加害者側の保険会社は事務的に処理を進める傾向があるため、こうした細かな配慮は期待できません。
後遺障害等級認定に向けてできる準備の具体例は、以下のとおりです。
- 診断書の記載漏れや矛盾を事前にチェックできる
- 神経学的検査(ジャクソンテストなど)の実施を医師に依頼できる
- 事故状況と症状の整合性を示す図面を作成できる
自身の将来を守るための納得感を追求できるのは、被害者請求ならではの強みです。審査機関に対して、より説得力のある書類を提示できるでしょう。
関連記事:後遺障害等級認定とは?わかりやすく解説!申請の流れと適切な等級を得るポイントも
被害者請求のリスク・デメリット
多くのメリットがある被害者請求ですが、一方で無視できない負担やリスクも存在します。
とくに、専門的な知識がないまま進めてしまうと、期待した結果が得られないばかりか、かえって状況を悪化させてしまう可能性も否定できません。
手続きを開始する前に、以下のデメリットを十分に理解し、対策を練っておくことが重要です。
ここからは、それぞれ具体的に解説します。
書類収集や手続きに手間と時間がかかる
被害者請求のデメリットの代表例は、膨大な書類の収集と作成をすべて自分で行わなければならない点です。
以下のように、必要な書類は多岐にわたります。
- 交通事故証明書
- 診断書
- 診療報酬明細書など
平日の日中に病院の窓口へ足を運んだり、複雑な請求書を記入したりする作業は、怪我を負った被害者にとって大きな負担です。手間がかかる作業の例は、以下のとおりです。
| 手間がかかる主な作業 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 役所・警察対応 | 交通事故証明書や印鑑証明書の取得 |
| 医療機関対応 | 過去の全診断書と診療報酬明細書の取り寄せ |
| 書類作成 | 事故状況報告書などの手書き資料作成 |
手続きに慣れていない方が一人で進めようとすると、書類の不備で差し戻されるなどのタイムロスが発生する可能性もあります。この事務作業の煩雑さが、被害者請求を選択する上での大きなハードルとなることは否定できません。
書類に不備があれば減額になる恐れがある
被害者請求は自由度が高い反面、提出する資料の内容について全責任を負うことになります。提出した診断書の記載が不十分だったり、症状の整合性が取れていなかったりした場合、適切な等級が認められない可能性もゼロではありません。
不備の例として、主に以下の3つが挙げられます。
- 事実との乖離:自覚症状が正しく記載されていない
- 医学的根拠の不足:必要な検査結果が添付されていない
- 整合性の欠如:事故態様と怪我の程度が一致しない
また、「何を提出すべきか」だけでなく「何を出してはいけないか」を判断する力も求められます。
弁護士など専門家の視点によるチェックがない状態での申請は、自己責任という重いリスクを伴うことを理解しておく必要があるでしょう。
任意保険会社との交渉が複雑になる
被害者請求で自賠責保険から先に支払いを受けると、その分は後の任意保険会社との示談額から差し引かれるのが一般的です。これを既払金の控除と呼びますが、計算が複雑になり、示談の全体像を把握しにくくなる場合があります。
また、被害者が自ら動くことで、加害者側の保険会社が「被害者は知識がある」と警戒し、交渉が難航するケースもゼロではありません。
交渉上の懸念点は、以下のとおりです。
- 二重請求の回避:過払いが発生しないよう厳密な計算が必要
- 交渉の長期化:保険会社がより慎重な姿勢に転じる可能性
- 事務の重複:自賠責と任意保険のそれぞれに書類対応が必要
すべての損害をトータルで解決するためには、自賠責への請求と任意保険への請求をバランスよく管理する能力が求められます。個人でこれらすべてを並行して行うには、一定の法的知識と交渉力が必要です。
関連記事:交通事故の示談交渉は自分でできる?考えられるリスクや注意点を徹底解説
被害者請求をした方がいいケース
すべての場合で被害者請求が必須というわけではありませんが、特定の状況下ではこの方法が「最善の選択」となる場合があります。
とくに、加害者側との関係性が悪化している場合や、経済的に困窮している場合には、被害者請求が持つ仕組みが大きな助けとなるでしょう。
以下のケースに当てはまる方は、積極的な検討をおすすめします。
以下、それぞれ詳細に解説します。
加害者側の保険会社の対応に不信感がある場合
保険会社の担当者から高圧的な態度を取られたり、治療の打ち切りを早々に打診されたりした場合は、被害者請求を検討しましょう。
被害者が保険会社に対して不信感を抱くようになることが多いサインと、被害者請求によって解決できることは、以下のとおりです。
| 不信感を抱く主なサイン | 被害者請求によって解決できること |
|---|---|
| 強引な治療打ち切り宣告 | 自分のペースで後遺障害申請が可能 |
| 提出書類の中身を教えてくれない | 提出書類をすべて自分で管理・把握できる |
| 連絡が遅い、説明が不十分 | 保険会社を介さず直接自賠責とやり取り |
自身の権利を自分で守るという姿勢を示すことで、適正な解決への第一歩となります。不信感を抱いたまま手続きを進めるのではなく、自ら主体となって透明性の高い被害者請求を行うことが大切です。
関連記事:交通事故で相手の保険会社の対応が悪いときの対処法と弁護士に相談するメリット
透明性の高い等級認定を受けたい場合
後遺障害の等級認定は、紙の書類のみで審査される「書面審査」が原則です。加害者請求(事前認定)では、認定結果の通知書のみが届くことが多く、過程が見えにくい側面があります。
どのような証拠が提出され、どのような理由で判断されたのかを正確に把握したい場合は、被害者請求が欠かせません。
透明性を確保できるポイントは、以下のとおりです。
- 提出資料の全容把握:不適切な資料が混じるのを防げる
- 資料追加の自由度:独自の検査結果や写真を添付できる
- 結果の分析:認定理由に対して具体的な反論がしやすくなる
結果に対して納得がいかない場合でも、どの資料が不足していたかを分析しやすい点も魅力です。異議申し立てなど、次の一手が打ちやすくなるでしょう。
関連記事:後遺障害等級とは?等級一覧表から申請方法、慰謝料の相場まで弁護士が徹底解説
休業中で生活費が足りず早急に支払いを受けたい場合
怪我の影響で仕事ができず、当面の生活費に困窮している状況では、被害者請求が大きな助けとなります。
示談が成立する前であっても、自賠責保険の限度額内であれば、早急に支払いを受けることが可能です。
- 仮渡金制度:損害確定前に一定額を請求可能
- 内払金制度:確定した損害額から先に受給可能
- 等級確定後の即時払:示談成立を待たずに後遺障害分を受給
任意保険会社は、示談成立までまとまった金額を支払わないケースが多いため、このスピード感は大きな魅力です。生活の再建を優先しながら、じっくりと損害賠償の交渉に向き合うための環境を整えられます。



経済的な余裕を取り戻すことで、焦って不利な条件で示談に応じてしまう事態を防げるでしょう。
【ステップで解説】被害者請求のやり方と手続きの流れ
被害者請求は、正しい手順さえ踏めば個人でも進めることが可能です。
しかし、各ステップで求められるアクションは複雑なうえ、適切に把握していなければ満足のいく結果にならない可能性があります。
ここでは、加害者の自賠責保険会社の特定から、最終的な保険金の受け取りまでを5つの明確なステップに分けて解説します。流れを把握し、手続きの全体像をイメージしてみましょう。
ステップ1|加害者の自賠責保険会社を確認する
まずは相手方が加入している自賠責保険の会社名を特定する必要があります。事故直後に警察署などで取得できる「交通事故証明書」を確認すれば、把握可能です。
交通事故証明書には、加害者の車両番号だけでなく、自賠責保険の証明書番号や保険会社名が記載されています。
交通事故証明書の入手方法は、以下のとおりです。
- 自動車安全運転センターの窓口で申請
- ゆうちょ銀行・郵便局での振替申請
- インターネットからのオンライン申請
相手方が任意保険に加入している場合は、その担当者に問い合わせることでも確認できます。
ステップ2|必要書類を収集・作成する
次に、請求に必要な書類を一つずつ揃えていきましょう。
基本的なセットは、以下のとおりです。
- 保険金支払請求書
- 交通事故証明書
- 事故状況報告書
- 後遺障害診断書
- 休業損害証明書
とくに「後遺障害診断書」は等級認定の鍵を握るため、主治医と相談しながら丁寧に作成してもらう必要があります。また、源泉徴収票や確定申告書の控えなど、休業損害を証明するための資料も忘れずに準備しましょう。
自分自身の主張を補足する写真や陳述書など、任意で追加できる資料もこの段階で精査することが大切です。
被害者請求において、資料は金額を左右する重要な要素です。適切な書類がわからない場合は、弁護士に相談してアドバイスをもらいましょう。
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ステップ3|自賠責保険会社へ書類を郵送する
準備したすべての書類を、特定した自賠責保険会社の窓口へ郵送します。
紛失のリスクを避けるため、「書留」や「レターパック」など追跡可能な方法を利用することが大切です。
郵送時の注意点は、以下のとおりです。
- すべての書類のコピーを手元に残す
- 綴じる順番などの指定があるか確認する
- 追跡番号を控えて到着を確認する
もし不足や記入ミスがあれば連絡が来ますが、その対応にも時間を取られるため、発送前にチェックリストで再確認することが重要です。



発送した書類のコピーは、必ず手元に保管しておき、後で内容を確認できるようにしておきましょう。
ステップ4|損害保険料率算出機構による審査を受ける
自賠責保険会社に届いた書類は、中立的な審査機関である「損害保険料率算出機構」に送られます。
医学的な見地や事故の状況に基づき、損害額や後遺障害等級の妥当性が厳密に審査されます。審査の主な観点は、以下のとおりです。
| 審査の主な観点 | 内容 |
|---|---|
| 因果関係 | 事故と怪我に明確なつながりがあるか |
| 症状の固定性 | これ以上治療しても改善しない状態か |
| 等級の該当性 | 認定基準に定められた症状を満たすか |
審査には通常1〜3か月程度の期間を要しますが、複雑な事案では半年以上かかることも珍しくありません。被害者はこの期間、結果を待つことになりますが、追加の照会が来た場合には速やかに対応しましょう。
ステップ5|保険金を受け取る(振込)
審査が完了すると、結果に基づいた「認定通知書」が被害者のもとに届きます。内容を確認し、等級が認定されていれば、数日以内に指定した口座へ保険金が振り込まれます。
この際の確認事項は、以下のとおりです。
- 通知書に記載された等級に誤りがないか
- 振込金額が通知書と一致しているか
- 支払明細の内容は適切か
振り込まれた金額は、自賠責保険の基準に基づくものであるため、これで終わりではありません。認定された等級を根拠として、任意保険会社に対して不足分の「上乗せ請求」を忘れず行いましょう。
被害者請求に必要な書類一覧と入手先リスト
被害者請求の成否を分けるのは、提出する書類の正確さと網羅性です。不足している書類が一つでもあると、再提出の手間が発生し、支払いが大幅に遅れる原因となります。
必要な書類と入手先は、以下のとおりです。
| 書類名 | 主な入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 保険金支払請求書 | 自賠責保険会社 | 指定の様式を請求して入手 |
| 交通事故証明書 | 自動車安全運転センター | 郵便振替やネット申請が可能 |
| 事故状況報告書 | 自賠責保険会社 | 被害者自身が図解を含めて作成 |
| 医師の診断書 | 各医療機関 | 毎月分必要(後遺障害は専用様式) |
| 診療報酬明細書 | 各医療機関 | 治療内容と費用の詳細が記載 |
| 休業損害証明書 | 勤務先/本人 | 給与所得者は会社に作成を依頼 |
| 印鑑証明書 | 市町村役場 | 請求書に押印する実印の証明 |
| 通院交通費明細書 | 被害者自身 | 公共交通機関やタクシーの領収書 |



チェックリストとして活用し、不備のないよう準備を進めましょう。
被害者請求でいくらもらえる?自賠責保険の支払限度額
自賠責保険は国による最低限の補償を目的としているため、支払われる金額には明確な「限度額」が設けられています。
この限度額を超えた損害については、任意保険会社や加害者本人に直接請求しなければなりません。
自身の損害がどの枠に該当し、いくらまで支払われる可能性があるのかを確認しておきましょう。
傷害による損害の上限は120万円
治療費・休業損害・慰謝料などの傷害に関する補償は、被害者1人につき120万円が上限です。これには診察代や薬代だけでなく、通院のための交通費や、仕事を休んだことによる損害もすべて含まれます。
120万円に含まれる費用の内訳は、以下のとおりです。
- 治療費・薬代:実費分
- 休業損害:原則として1日6,100円(上限19,000円)
- 入通院慰謝料:1日につき4,300円
- 交通費:通院に要した公共交通機関の運賃等
出典:国土交通省|自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準
120万円という金額は、大きな怪我をした場合にはすぐ使い切ってしまう可能性があります。まずはこの「120万円の枠」をどのように活用するかを把握しておくことが大切です。
治療が長引く場合、120万円を超える分については任意保険会社や加害者に請求することになります。
後遺障害による損害の上限は4,000万円
後遺障害が残った場合、認定された等級(1級〜14級)に応じて賠償金の限度額が決まっています。最も重い1級(常時介護が必要な場合)では4,000万円が上限となり、最も低い14級では75万円です。
| 該当等級 | 支払限度額 | 代表的な症状例 |
|---|---|---|
| 第1級 | 4,000万円 | 常に介護が必要な状態 |
| 第7級 | 1,051万円 | 1足の足指の全部を失ったもの |
| 第14級 | 75万円 | 局部に神経症状を残すもの(むちうち等) |
なお、この金額は、「後遺障害慰謝料」と将来の収入減少を補う「後遺障害逸失利益」の合算となっています。
等級が一つ変わるだけで受け取れる金額が数百万〜数千万円単位で変動するため、適切な等級認定を得ることが大切です。
死亡事故による損害の上限は3,000万円
交通事故により被害者が亡くなった場合、自賠責保険からの支払限度額は3,000万円です。これには葬儀費用・死亡逸失利益、被害者本人および遺族の死亡慰謝料がすべて含まれます。
死亡損害の主な内訳は、以下のとおりです。
- 葬儀費:原則100万円
- 死亡慰謝料:本人分(400万円)+遺族分
- 死亡逸失利益:将来得られたはずの収入から生活費を控除
死亡事故の場合、実際の損害額は3,000万円を大きく超えることがほとんどです。3,000万円を超える分の賠償金については、任意保険会社との示談交渉や裁判を通じて解決を図ることになります。
被害者請求をする際に注意したいポイント
被害者請求を進める上で、知らないと損をしてしまう重要なルールがいくつか存在します。
とくに「時効」や「過失割合」の扱いは、受け取れる金額や権利そのものに直結する要素です。
後悔しないために、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 被害者請求には期限(時効)がある
- 自賠責は過失割合に原則左右されない(重過失を除く)
- 上限を超えた損害は保険会社や加害者に請求する必要がある
以下、それぞれ具体的に解説します。
被害者請求には期限(時効)がある
被害者請求には法的な期限があり、基本的には事故発生から3年で時効を迎えます。
後遺障害の請求については「症状固定の日から3年」とされています。この期限を過ぎてしまうと、どれだけ深刻な怪我であっても請求ができません。
| 請求内容 | 時効の起算点(カウント開始日) |
|---|---|
| 傷害(治療費等) | 事故発生日の翌日 |
| 後遺障害 | 症状固定日の翌日 |
| 死亡 | 死亡日の翌日 |
治療に専念するあまり、つい手続きを後回しにしてしまいがちですが、カレンダーに期限を明記しておくなどの管理が必要です。



もし時効が迫っている場合は、時効を中断させるための法的措置が必要になるため、早急に専門家へ相談しましょう。
自賠責は過失割合に原則左右されない(重過失を除く)
自賠責保険の大きな特徴は、被害者に多少の過失(落ち度)があっても、支払額が減額されない点です。任意保険の場合は、過失割合が10%あれば賠償金も10%カットされますが、自賠責は「被害者保護」を優先します。
しかし、被害者の過失が7割を超えるような「重過失」がある場合に限り、以下のような減額が行われます。
- 7割以上8割未満の過失:2割減額
- 8割以上9割未満の過失:3割減額(傷害部分は2割減額)
- 9割以上の過失:5割減額(傷害部分は2割減額)
出典:国土交通省|自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準
自身の過失が大きい事故であっても、自賠責の枠内であれば満額に近い補償を受けられます。自身に不利な過失割合を突きつけられている状況でも、一定の生活資金を確保することが可能です。
関連記事:交通事故の過失割合納得いかない!適正化を弁護士に任せるべき理由
上限を超えた損害は任意保険会社や加害者に請求する必要がある
自賠責保険はあくまで、最低限の補償を目的とした制度に過ぎません。前述の通り、傷害120万円などの上限があり、実際の損害額がこれを上回るケースは非常に多いです。
自賠責から支払いを受けた後は、超過分を任意保険会社へ請求しましょう。具体的な流れは、以下のとおりです。
- 自賠責分を回収:被害者請求により受領
- 差額を算出:総損害額-自賠責受領分
- 任意保険会社と交渉:差額分について示談を行う
「自賠責からお金が入ったから終わり」と誤解して示談書にサインしてしまうと、本来得られたはずの上乗せ分を放棄することになります。全体像を常に意識し、自賠責請求を「最終解決に向けたステップの1つ」と捉えることが肝要です。
被害者請求についてよくある質問
自分で請求しても不利になることはない?
制度上、個人で請求したからといって審査が不利になることはありません。しかし、提出する資料の「内容」が不十分であれば、結果として不利な認定を受ける可能性はあります。
とくに後遺障害の認定は、医学的な裏付けが不可欠な専門性の高い領域です。以下のポイントをチェックし、適切に請求できるよう準備を進めましょう。
- 医師が作成した診断書に記載漏れはないか
- 自覚症状が検査結果と整合しているか
- 過去の通院実績が等級認定の基準を満たしているか



不安がある場合は、申請書類の作成だけでも専門家のサポートを受けることをおすすめします。
書類の書き方がわからない場合はどこに相談すればいい?
書類の書き方がわからない場合の相談先は、以下のとおりです。
| 相談先 | 得られるサポート内容 |
|---|---|
| 自賠責保険会社 | ・基本的な記入方法 ・必要書類の確認 |
| 法律事務所 | ・診断書の添削 ・有利な証拠の収集 ・請求代行 |
| 日弁連交通事故相談センター | ・交通事故に関する法律相談(面談・電話等は地域の運用による) ・制度の概略説明(一般的な案内) |
書類の書き方がわからない場合は、加害者の自賠責保険会社の窓口に問い合わせることで、書き方の手引きを入手できます。
より踏み込んだアドバイスや、認定率を高めるための戦略を知りたい場合は、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。加入している自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯されていれば、実質無料で弁護士のサポートを受けることが可能です。
支払いまでにかかる期間はどれくらい?
書類を郵送してから振込が行われるまで、一般的には2〜3か月程度が目安となります。内訳としては、損害保険料率算出機構での審査が1〜2か月、その後の事務処理が数週間です。
しかし、場合によっては期間が伸びる可能性もあります。期間が延びる主な要因は、以下のとおりです。
- 書類の不備による差し戻し
- 医療機関への追加照会(医療照会)
- 事故状況の再調査が必要なケース
また、高次脳機能障害などの複雑な事案や、事故状況に争いがある場合も長期化しやすいでしょう。



早く支払いを受けたい場合は、書類の不備をゼロにし、医療機関からの回答を迅速に促すことが重要です。
まとめ|正当な補償を受けるためにも被害者請求を検討しよう
被害者請求は、交通事故の被害者が主導権を握り、透明性の高い補償を受けるための正当な権利です。手間や時間はかかりますが、納得のいく後遺障害等級を得るため、早期に生活費を確保するために有効な選択肢となるでしょう。
被害者請求は単なる事務作業ではなく、賠償額を最大化するために重要な戦略です。加害者側の保険会社任せにせず、自ら証拠をコントロールすることで、事故後の人生を守るための確かな基盤を築けます。
しかし、被害者請求をスムーズに進めるためには、適切な書類の準備が欠かせません。書類の記載方法や集め方に不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談し、サポートを受けましょう。
交通事故の被害者請求について不安な場合は、弁護士法人アクロピースにお任せください。
交通事故に精通した弁護士が、それぞれのケースに合わせてアドバイスいたします。
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