不倫で裁判が行われるケースとは?手続きの流れやよくある敗訴のケースを弁護士が解説

「不倫相手が事実を認めず、話し合いが一向に進まない」
「配偶者の不倫で、示談交渉が決裂してしまったが、裁判をすべきか迷っている」 

不倫トラブルの解決策が見えず、精神的な限界を感じている方もいるのではないでしょうか。

不倫の慰謝料請求において、裁判(訴訟)は最終的な解決手段です。 しかし、裁判には時間や費用がかかるだけでなく、証拠の有無によっては「敗訴」するリスクも伴います。 感情だけで突き進むのではなく、勝てる見込みやリスクを冷静に見極めることが重要です。

本記事では、不倫で裁判に発展する具体的なケースや手続きの流れ、費用相場を詳しく解説します。

不倫問題を法的に決着させ、新しい人生の第一歩を踏み出すための判断材料としてお役立てください。

不倫問題で裁判への移行を検討されている方は、弁護士法人アクロピースにご相談ください。

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目次

不倫で裁判が行われるケースとは?

前提として、「不倫」という言葉はあくまで一般的に使われる俗語です。法律上の損害賠償請求においては、配偶者以外と肉体関係を持つ「不貞行為(ふていこうい)」があったかどうかが問われます。

不倫の慰謝料請求において、すべての事案が裁判に発展するわけではありません。多くのケースは当事者間の話し合い(示談)で解決に至ります。

しかし、話し合いでは決着がつかない特定の状況下では、法的手段である「不倫裁判(不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟)」への移行が必要です。

ここでは、示談交渉から裁判へ踏み切るべき4つの主要なケースについて解説します。

当事者間の話し合い(示談交渉)が決裂し、平行線をたどる場合

裁判に移行する理由として最も一般的なのは、慰謝料の金額や支払い条件で折り合いがつかないケースです。被害者側が提示した金額に対し、加害者側が「高すぎる」と反論して支払いを拒否する事態は珍しくありません。

また、金額の多寡だけでなく、不倫の事実認識や謝罪の有無などで意見が対立し、交渉が長期化することもあります。

交渉が決裂する主な要因として、以下のような認識のズレや感情的な対立が挙げられます。

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交渉が決裂しやすい主な理由具体的な状況
金額の乖離請求額300万円に対し、相手が50万円しか出さないと主張している
事実認識の相違「既婚者とは知らなかった」「婚姻関係は破綻していた」と反論されている
感情的な対立謝罪の言葉がなく、相手の態度が不誠実で許せない

これ以上話し合っても合意に至る見込みがない場合は、第三者である裁判所の判断を仰ぐのが適切です。

相手が不貞の事実を認めない、もしくは無視されている場合

相手が「肉体関係はない」と頑なに否定したり、連絡を完全に無視したりする場合、当事者同士での話し合いは成立しません。このようなケースでは、裁判(提訴)に踏み切ることが最も有効な解決策です。

裁判所を通じて訴状が届けば、相手は法的な対応を余儀なくされます。もし訴状を無視して裁判を欠席した場合、被告である相手側には以下のような致命的なリスクが生じます。

訴状を無視することによる被告(相手)側のリスク
  • 原告(こちら)の主張が全面的に事実として認められる
  • 反論の余地なく、強制的な支払い命令(判決)が下される

つまり、相手が無視を決め込めば、自動的にこちらの勝訴判決が確定することになります。逃げ得を許さず、法的な責任を強制的に負わせられる点が裁判の最大の強みです。。

口約束では信用できず、法的拘束力のある「判決」や「和解調書」が欲しい場合

不倫の慰謝料請求において、口頭や個人間の覚書による約束だけでは、万が一支払いが滞った際に法的な強制力を持たせることができません。

通常、裁判を起こさずに強制執行(差し押さえ)を可能にする方法として、公証役場で「公正証書(強制執行認諾文言付き)」を作成するのが一般的です。しかし、相手がこの公正証書の作成を拒否した場合や、手続きへの協力を拒んだ場合には、裁判を行うケースがあります。

裁判手続を経ることで、以下のような「債務名義」の取得が可能です。

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債務名義の種類内容
判決書裁判所が法的な結論を下した文書
和解調書裁判所で双方が合意した内容を記録した公文書(参照:民事訴訟法|267条

これらは強力な法的効力を持ち、相手に対する支払いの確実な担保となります。

公正証書による解決が望めない場合、将来的な未払いリスクに備えて裁判手続きを選択することは、賢明な防衛策といえるでしょう。

慰謝料請求の時効(3年)が迫っている場合

不倫の慰謝料請求における時効が迫っている場合、裁判を提訴するケースがあります。

不倫の慰謝料請求権には消滅時効が存在し、原則として「不倫の事実および相手を知った時」から3年が経過すると権利が消滅してしまいます。(参照:民法|724条)もし示談交渉が長引いて3年の期限を過ぎれば、相手に時効を援用され、一円も請求できなくなる事態になりかねません。

裁判所へ訴えを提起すれば、この時効の進行を一時的に停止(完成猶予・更新)させることが可能です。(参照:民法|147条

時効成立が目前に迫っている状況では、悠長に交渉を続ける猶予はありません。権利を失わないためにも、速やかに提訴の手続きへ移行する必要があります。

不倫で裁判を起こすメリット・デメリット

裁判は、示談交渉が行き詰った際に、法的な強制力によって最終的な決着をつけられる強力な手段です。しかし、その強力な効力がある反面、時間や費用、精神的な負担といった決して無視できないリスクも伴います。

不倫問題で裁判を起こす主なメリットとデメリットは、以下のとおりです。

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項目裁判を起こすメリット裁判を起こすデメリット・リスク
解決力相手が無視しても判決で決着がつき、強制執行(給与等の差し押さえ)が可能になる敗訴すれば請求できないことが確定する。希望額より低い判決が出る可能性がある
真実の解明証拠に基づき、裁判官が事実を認定する相手の嘘や言い逃れが通用しにくい厳密な証拠(肉体関係の証明)が必要プライベートな尋問を受ける精神的負担がある
コスト弁護士費用の一部を相手に請求できる場合がある弁護士費用(着手金・報酬)がかさむ解決まで時間がかかる(半年〜1年以上)
波及効果相手に対し、より強い心理的圧力を与えられる自分の不倫の事実が公的な記録に残り、傍聴人に内容を聞かれる可能性がある

特に注意すべきは、裁判記録は原則公開されるため、不倫の事実が第三者に知られるリスクが示談よりも高まる点です。

また、勝訴しても弁護士費用の全額を相手に請求できるわけではないため、費用倒れにならないよう慎重な判断が求められます。感情だけで突き進むのではなく、経済的な合理性や費やす時間を総合的に見極めましょう。

不倫問題で裁判を提訴すべきか迷っている方は、弁護士法人アクロピースにご相談ください。

あなたの状況に合わせ、精神的・経済的負担を最小限に抑えた解決策を提案します。

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不倫で裁判をするときの流れ【6ステップ】

不倫の裁判は、書面による主張の応酬が中心です。実際の裁判がどのように進行するのか、提訴から判決までの一般的な流れを6つのステップで解説します。

全体像を把握し、解決までの道のりをイメージしましょう。

STEP

訴状の作成・提出(提訴)

まず、原告(請求する側)が「訴状」を作成し、管轄の裁判所へ提出するところから始まります。訴状には、以下の内容を論理的に記載しなければなりません。

訴状に記載する内容
  • 不倫があった事実関係
  • 請求する慰謝料の額
  • 上記を裏付ける法的な根拠

提訴のタイミングで、証拠となる資料(写真、LINEの履歴など)の写しもあわせて提出します。

裁判所が訴状を受理すると、第1回目の期日が指定され、被告(相手方)に訴状が送達されることで、正式に裁判がスタートします。

STEP

第1回口頭弁論期日

提訴から約1ヶ月〜1ヶ月半後に、第1回の法廷(口頭弁論期日)が開かれます。

ここでは、原告が訴状の内容を陳述し、被告側がそれに対する反論を記載した「答弁書」を提出・陳述するのが一般的です。

実務上、第1回期日は顔合わせ的な意味合いが強く、形式的な手続きで終わることがほとんどです。双方が弁護士に依頼している場合、当事者本人が裁判所に行く必要はありません。

被告側は欠席し、事前に提出した答弁書を法廷で「陳述した」とみなして終了するケースも多く見られます。

STEP

続行期日(争点の整理・反論)

第2回目以降は、およそ1ヶ月に1回のペースで期日が開かれます。ここでは法廷での議論ではなく、「準備書面」と呼ばれる書類の提出による主張の応酬がメインです。

以下のように双方が書面で主張と反論を繰り返し、争点を明確にしていきます。

  • 原告側の主張:「被告の反論は事実と異なる。なぜなら〜」
  • 被告側の主張:「原告の主張は事実誤認である。事実は〜」

裁判官は「準備書面」と証拠を確認し、事実関係を整理します。このプロセスが数ヶ月から半年程度続くのが一般的です。

STEP

尋問(当事者・証人)

書面でのやり取りだけでは事実認定が難しい場合、当事者本人や証人を法廷に呼んで話を聞く「尋問」が行われます。この段階になると、原則として当事者本人の出廷が必要です。

尋問は、大きく分けて以下の3つの形式で行われます。裁判官はこれらのやり取りを通じて、供述の信用性を慎重に判断します。

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尋問の種類内容
主尋問自分の依頼した弁護士からの質問。主張を裏付ける事実を話す
反対尋問相手方の弁護士からの質問。矛盾点を突き、信用性を崩しにかかる
補充尋問裁判官からの質問。不明点や最終的な確認事項を聞かれる

尋問等の最中に嘘をついていると判断されれば、判決に大きく不利に働きます。裁判のクライマックスともいえる手続きであり、非常に高い緊張感を伴います。

STEP

和解勧告

裁判の進行中、裁判官から「和解」を勧められることは珍しくありません。これを「和解勧告」と呼び、実際には判決まで行かず、途中で和解して終了するケースが非常に多いのが実情です。

裁判官から「判決だと慰謝料は〇〇万円くらいになる見込みです。この条件で和解しませんか」と具体的な心証が開示されます。

双方がこの条件に納得すれば、和解調書が作成されて裁判は終了となります。判決を待つよりも早期に解決でき、敗訴のリスクを回避できる点が大きなメリットです。

STEP

判決・強制執行

和解に至らない場合、最終的に裁判官が「判決」を下します。通常、結審から1〜2ヶ月後に判決が言い渡され、原告・被告双方に結論が示される流れです。

判決内容に不服がある場合、2週間以内に控訴を行わなければなりません。双方が控訴せず期間が経過すれば判決は「確定」し、結果が法的に固定されます。

なお、勝訴判決が確定しても相手が支払いに応じない場合は、「強制執行」によって回収を図ることになります。任意の支払いが期待できない場合の最終手段として視野に入れておきましょう。

不倫裁判を起こす前に確認したい5つのチェックポイント 

不倫裁判は相手に責任を追及する強力な手段ですが、準備不足のまま踏み切ると「費用倒れ」や「敗訴」といった手痛い結果を招きかねません。

裁判の提訴を決断する前に、必ず以下の5つのポイントをチェックしておきましょう。

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チェック項目補足
1. 決定的な証拠はあるか肉体関係を立証できないと請求が棄却されるリスクが高い
2. 時効は迫っていないか不倫の事実と相手を知ってから3年が経過すると請求権を失う
3. 相手に資産はあるか勝訴しても相手に支払い能力がなければ回収できない
4. 費用対効果は合うか獲得できる慰謝料額より弁護士費用が高くなる(費用倒れ)恐れがある
5. 負担に耐えられるか裁判は長期戦となり、記録は原則として閲覧可能(閲覧制限の申立ては可能)

特に見落としがちなのが「相手の支払い能力」と「費用体効果」です。いくら裁判で勝っても、相手が無一文であれば慰謝料を手にすることはできず、弁護士費用の負担だけが残る事態になりかねません。

感情だけで突き進むのではなく、これらの要素を総合的に見極め、勝算とメリットが十分にある場合のみ裁判を選択すべきといえるでしょう。

不倫の裁判にかかる平均期間はどれくらい?

不倫裁判にかかる期間は、個別の事情や争点の多寡によって大きく変動するため一概には言えません。

しかし、一般的には提訴から解決まで1年近くを要することが多く、決して短期間で終わる手続きではないと認識しておきましょう。

解決までのプロセスや状況に応じた一般的な期間目安を、以下の表にまとめました。

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状況期間の目安
全体の平均期間10ヶ月〜1年半
途中で和解が成立する場合半年〜1年
判決まで徹底的に争う場合1年〜2年以上

相手が不倫の事実を素直に認めており、争点が慰謝料の金額のみであれば比較的早期に収束します。これに対し、「肉体関係はない」と真っ向から事実を争う場合や証人が複数いるケースでは、尋問などの手続きが必要となり審理が長期化する傾向にあります。

裁判は即座に白黒がつくものではなく、およそ月に1回の期日を積み重ねていく地道なプロセスです。長期戦になることを前提に、精神的な負担にも備えておくことが大切です。

不倫裁判にかかる費用はいくら?

不倫の裁判を検討する際、避けて通れないのが費用の問題です。裁判を進める際に必要となる費用は以下の2種類です。

裁判で勝訴しても費用倒れになるリスクを防ぐため、事前に相場を理解し、トータルの収支をシミュレーションしておきましょう。

裁判所に納める費用(実費)

裁判を起こすために必ず必要となるのが、裁判所へ納める手数料などの実費です。これらは弁護士をつけずに本人訴訟を行う場合でも発生する費用であり、請求する慰謝料の金額に応じて変動します。

裁判所におさめる費用の種類と主な内訳は以下のとおりです。

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費目概要金額の目安(請求額300万円の場合)
収入印紙代請求金額に応じて変動2万円(請求額300万円の場合)
予納郵券代書類送付用の切手代6,000円程度(裁判所により異なる)
その他住民票取得費や交通費など数千円程度

例えば、300万円の慰謝料を請求する場合、印紙代として2万円が必要です。また、住民票や戸籍謄本の取得費、裁判所への交通費なども実費として計上しておく必要があります。

収入印紙代は請求額が上がるほど高額になる仕組みです。予納郵券代は管轄の裁判所によって異なりますが、余った分は手続き終了後に返還されます。

いずれも手続きを進めるための必要経費であり、一般的な目安をあらかじめ確認しておきましょう。

弁護士費用

弁護士に依頼する場合、実費とは別に弁護士費用が発生します。

現在は弁護士報酬が自由化されているため、事務所ごとに料金体系は異なりますが、一般的な相場は以下のとおりです。

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費目相場
相談料無料~5,000円(30分あたり)
着手金10万円〜30万円程度
報酬金弁護士の関与によって得られた金額の10〜20%
実費数千円〜数万円
日当1日あたり1万円〜2万円程度

費用は主に、依頼時に支払う「着手金」と、解決時に成果に応じて支払う「報酬金」の2段階で発生します。その他、出廷ごとの日当や実費がかかる場合もあります。

なお、不倫裁判で勝訴判決を得た場合、相手方に弁護士費用の一部(認容額の10%程度)を請求できるケースが一般的です。ただし、全額が補填されるわけではないため、最終的な自己負担額を見積もっておく必要があります。

着手金は結果に関わらず発生し、原則として返金されない費用です。報酬金は「経済的利益の何%」という形で設定されることが多いため、契約前によく確認しましょう。

不倫の裁判で勝つために必要な証拠とは?

裁判において勝敗を分ける決定的な要素は、客観的な「証拠」の有無です。

裁判官は当事者の感情的な訴えではなく、提出された資料のみに基づいて事実認定を行います。そのため、いくら事実であっても裏付けとなる証拠がなければ、請求は棄却されてしまうでしょう。

証拠には単体で効力を持つものと、複数を組み合わせることで事実を補強するものとがあります。不倫の裁判で勝つために集めておきたい証拠の例は以下のとおりです。

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証拠の分類特徴具体的な証拠の例
強力な証拠(直接証拠)肉体関係を直接推認させる決定的な資料ラブホテルへの出入り写真(滞在時間を含む)不貞を認める念書や音声データ探偵の調査報告書
補助的な証拠(間接証拠)状況証拠として事実を補強する資料親密なLINEやメールの履歴ホテルや飲食店の領収書、クレカ明細手帳や日記、交通系ICカードの履歴

特にLINEの履歴だけでは、「相談に乗っていただけ」「プラトニックな関係だった」といった反論を許す可能性があります。決定的な証拠を確保し、相手の逃げ道を塞ぐことが勝利への鍵です。

不倫裁判でよくある失敗(敗訴)ケース

明らかに不倫の事実があったとしても、裁判で敗訴してしまうケースは決して珍しくありません。法的な主張や立証が不十分であれば、時間と費用をかけたにもかかわらず請求が棄却されるリスクがあります。

裁判を起こして逆に傷つく結果を避けるために、敗訴のリスクが高い典型的な3つのパターンを事前に把握しておきましょう。

証拠不十分で「肉体関係はない」と逃げ切られるケース

裁判で請求が棄却される最大の要因は、不貞行為を立証するための客観的な証拠が不足していることです。法的な不貞行為とは原則として「肉体関係」を指すため、単に親密にしているだけでは不貞行為として認められません。

たとえば、以下のような状況証拠だけでは、「ただの相談相手だった」「部屋で休憩しただけ」という相手の反論を覆すことは困難です。

証拠不十分のケース
  • 二人きりで食事に行っている
  • LINEで「好き」「会いたい」と送り合っている
  • 手をつないで歩いている
  • ビジネスホテルに入ったが滞在時間が極端に短い

裁判官に肉体関係を推認させるには、ホテルへの出入り写真や性行為そのものを示すデータなど、言い逃れのできない強力な証拠が不可欠です。

もっとも肉体関係がなく不貞行為にあたらない場合でも、それが夫婦関係を破壊する程度であれば慰謝料請求できる余地はあります。

「既婚者とは知らなかった」と反論されるケース(故意・過失の否定)

慰謝料請求が認められるには、不倫相手に「既婚者であることを知っていた(故意)」、または「注意すれば知ることができた(過失)」という事情が必要です。

もし、配偶者が独身だと偽って交際していた場合、不倫相手もまた被害者であると判断され、請求が認められない可能性があります。

ただし、すべてのケースで「知らなかった」という反論が通るわけではありません。二人の関係性や出会いのきっかけによって、以下のように裁判所の判断は分かれます。

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ケース詳細
故意・過失が否定されやすいケースマッチングアプリ(独身限定)での出会い
婚活パーティーでの出会い
相手が偽造した独身証明書を見せていた
故意・過失が認定されやすいケース同じ職場の同僚・上司部下の関係
既婚者の指輪を認識できる状況だった
自宅に出入りしており家族の私物を見た

同じ職場であれば「知らなかったはずがない」と判断される傾向にあります。相手の主張を崩すには、既婚者であることを伝えていた記録や、知る機会があった状況を立証しなければなりません。

「婚姻関係はすでに破綻していた」と認定されるケース

不倫が始まった時点で、すでに夫婦関係が冷え切っていた(破綻していた)と裁判所に認定された場合、慰謝料請求は認められません。

法律は「平穏な夫婦生活」を保護法益としているため、すでに壊れている関係については保護する必要がないと解釈されるためです。

裁判では、相手側が慰謝料の支払いを逃れるために「夫婦仲は悪かった」と主張してくることが一般的です。具体的には、以下のような事情があると破綻が認められる可能性があります。

夫婦仲が破綻していると認められる可能性があるケース
  • 長期間にわたり別居状態にあった
  • 離婚協議が具体的に進行していた
  • 家庭内別居状態で会話や交流が断絶していた

これに対し、請求する側は「夫婦関係は円満だった」ことを証明しなければなりません。家族旅行の写真や日常的なLINEのやり取りなどを証拠として提出し、破綻の事実を否定していきましょう。

不倫で「裁判より示談」を選んだ方がよいケース 

裁判は強力な解決手段ですが、すべてのケースにおいて最適解とは限りません。状況によっては、柔軟な交渉が可能な「示談」を選択した方が、結果的にメリットが大きくなる場合があります。

具体的に、裁判よりも示談を優先すべき典型的なパターンは以下のとおりです。

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示談を選ぶべきケースの例理由
証拠が弱い裁判で敗訴(請求棄却)となるリスクが高いため
相手に資産がない勝訴しても回収できず、弁護士費用で赤字になる恐れがあるため
公にしたくない裁判は公開法廷で行われ傍聴される可能性があり、また訴訟記録も一定の範囲で閲覧可能となるため(※当事者は裁判所に閲覧制限を申し立てることも可能)
費用対効果が低い獲得予定額より裁判費用や時間がかかる場合、割に合わないため

特に「不倫の事実を職場や周囲に知られたくない」という事情がある場合、公開法廷での審理や訴訟記録の閲覧リスクを避けられる示談交渉は大きな利点となります。裁判手続きは原則公開であり、第三者が傍聴したり、一定の範囲で訴訟記録を閲覧したりすることが可能です。

また、相手に支払い能力がない場合も、裁判で判決を得ることにこだわるより、分割払いなどで現実的な回収を図る方が賢明な判断といえるでしょう。

不倫の裁判に関するよくある質問

不倫の裁判で相手が和解を拒否したらどうなりますか?

相手が和解を拒否した場合、裁判手続きはそのまま進行し、最終的に裁判官が「判決」を下すことになります。

和解は双方の合意が必要なため強制はできません。しかし、こちらに有利な証拠が揃っていれば心配は不要です。

判決によって勝訴すれば、相手の財産を差し押さえる強制執行の手続きに進むことができるため、法的な解決という点では問題ありません。

不倫(不貞)裁判の尋問では何を聞くのですか?

尋問では、不貞行為の核心に触れる質問が繰り返されます。公開の法廷で、以下のような極めてプライベートな内容について詳細に証言しなければなりません。

尋問の例
  • 出会いのきっかけや交際に至った経緯
  • 初めて肉体関係を持った具体的な日時・場所
  • ラブホテルの利用回数や滞在時間
  • 避妊の有無や配偶者に対する当時の心境

精神的な負担が大きいため、感情的にならず冷静に回答できるよう、事前に弁護士と綿密なリハーサルを行っておくことが重要です。

不倫の裁判をしない方がいいケースはありますか?

裁判には多くのコストと時間がかかるため、状況によってはデメリットが利益を上回ることがあります。

特に以下の3つのケースでは、提訴を慎重に検討すべきです。

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裁判すべきか慎重に判断すべきケース詳細
証拠が弱すぎる場合敗訴して弁護士費用などの出費だけが残るリスクが高い
相手に支払い能力がない場合勝訴しても慰謝料を回収できず、費用倒れになる
不倫の事実を公にしたくない場合裁判記録は原則公開されるため、第三者に知られる恐れがある

不倫慰謝料の相場はどのくらい?

慰謝料の金額は、不倫が原因で「夫婦関係がどのような結末を迎えたか」によって相場が大きく変動します。

裁判上の一般的な目安は以下のとおりです。

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夫婦関係への影響慰謝料の相場
離婚する場合50万円〜300万円程度
同居・修復する場合50万円〜100万円

この金額をベースに、不倫期間の長さや回数、相手の悪質性などが加味され、最終的な支払額が決定されます。過去の判例でも、離婚に至り家庭が崩壊したケースほど、賠償額が高額になる傾向があります。

まとめ|不倫裁判で後悔しないためにまずは専門家の見解を

不倫裁判は相手に責任を追及する強力な手段ですが、時間や費用がかかるうえ、証拠次第では敗訴するリスクも伴います。

「許せない」という感情だけで突き進むのではなく、勝てる見込みや費用対効果を冷静に見極めることが重要です。

不倫トラブルで裁判を提訴すべきかどうか迷う場合は、ご自身で判断せず、早めに弁護士に相談しましょう。

不倫問題で裁判を提訴すべきか迷っている方は、弁護士法人アクロピースにご相談ください。

あなたの状況に合わせ、精神的・経済的負担を最小限に抑えた解決策を提案します。

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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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