熟年不倫とは?発覚後に取るべき行動や慰謝料請求のポイントを解説【弁護士監修】
熟年不倫は単なる裏切り行為に留まらず、夫婦の生活設計を大きく変える可能性もある問題です。
感情に任せて行動すると、関係の悪化を招く可能性もあるため、慎重に行動する必要があります。
この記事では、熟年不倫の法的な定義から、発覚直後に取るべき冷静な初動、そして慰謝料や財産分与で損をしないための具体的なステップまで、専門家の監修のもと徹底解説します。
熟年不倫について正しく理解し、今後の人生をより良くするための方法を一緒に考えていきましょう。
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熟年不倫とは?
熟年不倫とは、長年連れ添った夫婦の一方が、配偶者以外の異性と不貞行為に及ぶことを指す一般的な用語です。
「熟年」が何歳を指すかに法律上の決まりはありませんが、40代から60代を指すのが一般的です。
ここからは、熟年不倫に至る原因やよくある行動について解説します。
熟年不倫をする割合
一般社団法人家族計画協会がおこなった調査によると、浮気・不倫の経験率は全体的に増加傾向にあることがわかります。
同調査では、「2017年の同調査で浮気・不倫経験があると答えた男性は、全体で37.0%、女性全体では24.4%でした。それに対し、今回の調査では、それぞれ67.9%、46.3%と大きく増加していました。」と報告されています。

このように、熟年世代といえる40~60代男性の6割以上、40代・50代女性の4割以上が不倫を経験しています。また、50代では男女ともに約4人に1人が、現在も特定の相手と不倫関係にあることがわかります。
つまり、熟年不倫は珍しいものではなく、誰の身に起きてもおかしくない身近な問題であるといえるでしょう。
熟年不倫をしてしまうきっかけ
熟年世代の不倫は、長年の夫婦生活における環境の大きな変化がきっかけになるケースが少なくありません。特に「役割を失った」と感じる出来事が、心の隙間を生むと考えられます。
熟年不倫のきっかけとなる出来事の例を、以下に紹介します。
| きっかけ | 概要や不倫のきっかけとなる理由 |
|---|---|
| 子の独立(空の巣症候群) | 子育てという共通の目標がなくなり、寂しさや喪失感を抱えるため |
| 定年退職 | 仕事というアイデンティティを失い、家庭での居場所を見失いやすいため |
| コミュニケーション不足 | 言わなくてもわかる」というすれ違いが不満として蓄積し、外に理解者を求めるようになる |
| 家庭内ストレス | 親の介護疲れや、配偶者からのDV・モラハラからの逃避として不倫を選ぶケースもある |
| SNSでの再会 | 同級生や昔の恋人と簡単につながれるようになったため |
| マッチングアプリの一般化 | 外出しなくても、手軽に異性と知り合う機会が増えたため |
これらの多くには、熟年世代特有の「自身の存在価値が揺らぐ」という心理や出来事が背景に見られます。その心の隙間を埋めるために、新たな人間関係を求めてしまうのかもしれません。
熟年不倫をしている人によくある行動
不倫をしている方には、以前とは異なる行動の変化が見られるものです。典型的な行動は、以下のとおりです。
- スマホにロックをかけたり隠したりするようになり、どこに行くにも持ち歩くようになる
- 残業や休日出勤、友人や職場との付き合いが急に増える
- 特定の時間に連絡が取れなくなる
- こちらのスケジュールを細かく知りたがる
- 服装の趣味が変わり、下着を含めて新調する
- 急に香水を使う、ハンカチにアイロンをかけるなど身だしなみを気にするようになる
- 見覚えのないホテルやレストランのカード明細がある
これらの変化は、不倫相手との時間を作ったり、相手によく見られたりするためと考えられます。
もちろん、一つ当てはまるだけで不倫と決めつけることはできません。しかし、複数の兆候が重なる場合は、少し注意深く様子を見ることをおすすめします。
弁護士 佐々木一夫当てはまる項目が複数ある場合、まずは状況を冷静に整理してみましょう。
熟年不倫をすると発生する法的問題
熟年不倫は、単なる道徳的な問題に留まりません。場合によっては法律上の問題を生じさせる可能性があります。
具体的には以下2点の大きな問題につながります。
配偶者の熟年不倫が発覚した際は、感情的にならず、法的にどのような責任を問えるのかを正確に理解しておきましょう。
慰謝料請求の対象となる
配偶者が熟年不倫をした場合、その精神的苦痛に対して慰謝料を請求できます。 これは、民法第709条および第710条に基づく権利です。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。引用:民法|第709条
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。引用:民法|第710条
また、熟年不倫の慰謝料は、不倫をした配偶者だけでなく、その不倫相手に対しても請求することが可能です。
ただし、不倫相手に請求するには「故意または過失」(=相手が、あなたの配偶者について既婚者だと知っていた、または知ることができた)が必要です。
熟年不倫の場合、婚姻期間が長いため、慰謝料の金額は高額になる傾向があります。
離婚原因となる
熟年不倫で不貞行為がある場合、裁判で離婚を認めてもらうための法的な理由(法定離婚事由)の一つになります。
これは、民法第770条第1項に定められています。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。引用:民法|第770条1項
ここでいう「不貞な行為」とは、配偶者以外の異性と自由な意思で肉体関係(性交渉)を持つことを指します。
不貞行為にあたるかどうかの例は、以下のとおりです。
| 不貞行為にあたるか | 具体例 |
|---|---|
| あたる | 性交渉、性交類似行為(手淫、オーラルセックスなど) |
| あたると判断される例が多い | ラブホテルへの二人での出入り |
| 原則あたらない | キス、ハグ、手をつなぐ |
熟年不倫でも肉体関係が無い場合、不貞行為を主張して離婚請求をすることはできません。
ただし、夫婦関係を破綻させるほどの親密な交際がある場合は、肉体関係がなくても離婚原因の存在が認められるケースがあります。
不貞行為がなくても離婚原因になるケース
配偶者の熟年不倫において、肉体関係がなくても離婚請求できるケースがあります。具体的には以下のような例です。
| 肉体関係がなくても離婚請求できるケース | 該当する法律 | 詳細 |
|---|---|---|
| 悪意の遺棄に該当する | 民法第770条第1項第2号 | ・熟年不倫をしていて家に生活費を入れない ・不倫相手と同棲している など |
| その他婚姻を継続し難い重大な事由がある | 民法第770条第1項第5号 | その他、熟年不倫が原因で婚姻関係が破綻しているケース |



まずは現在の状況を正確に把握し、法的な離婚原因として認められる可能性があるかを弁護士へ相談することをおすすめします。
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熟年不倫が発覚したら今すぐすべき2つの行動
パートナーの不倫が発覚した直後は、怒りや悲しみで冷静になれない方は少なくありません。
しかし、この段階でどのような行動を取るかが、将来の慰謝料請求や離婚協議の結果を大きく左右します。感情的に相手を問い詰める前に、まずはご自身に有利な状況を作る行動が最優先です。
ここでは、パートナーが熟年不倫をしていると分かった際に取るべき、2つの行動を解説します。
手元にある証拠を集める
まずは、相手が証拠を消してしまう前に、集められる証拠を確保しましょう。
集めたい証拠の種類や具体例、証拠力の強さを、以下にまとめました。
| 証拠の種類 | 具体例 | 証明力の目安 |
|---|---|---|
| 直接的な証拠 | 肉体的な関係を証明する写真・動画 | 非常に強い |
| 準直接的な証拠 | ラブホテルに複数回出入りする写真・動画、不貞行為を認める自白の録音や念書 | 強い |
| 間接的な証拠 | 肉体関係を推測させるLINE・メール、ホテルの領収書、クレジットカード明細、探偵の調査報告書 | 中程度:複数組み合わせることで証明力が増す |
| 状況証拠 | 二人きりの旅行写真、プレゼント、頻繁な通話履歴、第三者の目撃証言 | 弱い:単体では不十分だが、他の証拠を補強する |
ひとくちに「証拠」と言っても、種類によって熟年不倫の存在を証明できる強さが異なります。「弱い」証拠であっても、複数を組み合わせれば全体の信憑性を高められます。諦めずに、できる範囲で証拠を集めておきましょう。
なお、証拠集めをする際は、相手に気づかれないよう慎重に行動することも大切です。
事実関係をメモしておく
もし決定的な証拠が集まりきらなかった場合も、感情的な思い込みを除いた客観的な事実を時系列で記録することは大切です。
ここで作成したメモは、手元の証拠を補完したり、今後追加でおこなう証拠収集の助けとなります。また、事実を書き出す作業は混乱した思考を整理し、冷静になる助けにもなるでしょう。
記載すべき内容の例を、以下に紹介します。
| 記載すべき内容 | 具体例 |
|---|---|
| パートナーの不審な行動 | 〇月〇日23時に帰宅。「友人と食事した」と言っていた |
| 不倫を疑わせる出来事 | 〇月〇日、車から見知らぬイヤリングを発見 |
| ご自身の精神的な苦痛 | 「眠れない日が増えた」「食欲がない」など |
ポイントは、「きっと〜したはず」といった推測や感情は含めず、「いつ、どこで、何があったか」という事実だけを客観的に記録することです。



こうした記録の積み重ねが、交渉を有利に進める大きな助けとなります。
熟年不倫の発覚直後にしてはいけない3つの行動
不倫が発覚した直後は、冷静でいることのほうが難しいかもしれません。しかし、怒りに任せた行動は、ご自身の立場を不利にしてしまう可能性があります。
将来の交渉で後悔しないため、発覚直後にしてはいけない3つのNG行動を解説します。
相手を感情的に問い詰める
相手を感情的に問い詰めるのは、絶対に避けるべき行動です。
なぜなら、疑われていると知った相手は、スマホのデータを消したり不倫相手と口裏を合わせたりして証拠を隠そうとするからです。そのうえ、感情的な話し合いをしても、相手を逆上させたり巧みに言いくるめられたりするだけで、状況が悪化する一方になりかねません。
問い詰めるのは、言い逃れのできない客観的な証拠を確保した後におこないましょう。
不倫相手に直接連絡する
証拠や準備が不十分な状態で不倫相手に直接連絡することも、避けるべきです。
なぜなら、相手を問い詰めるケースと同様に、相手に警戒されて証拠隠滅や配偶者との口裏合わせの時間を与えてしまう可能性があるからです。また、感情に任せて取った過剰な行動が、法に触れる可能性も考えられます。
不倫相手に直接連絡する際によくある行動と、犯しやすい罪の例を以下にまとめました。
| やってはいけない行動 | 問われる可能性のある罪 |
|---|---|
| 自宅や職場に押しかける | 住居侵入罪、威力業務妨害罪 |
| 「不倫を会社にばらす」と告げる | 脅迫罪 |
| 実際に言いふらす(SNS含む) | 名誉棄損罪 |
(参照:刑法|第130条、刑法|第234条、刑法|第222条、刑法|第230条)
慰謝料を請求する側であるにもかかわらず、こうした過剰な行動は、将来の交渉や裁判でご自身に不利な事情として考慮される可能性があります。
違法な手段で証拠を集める
違法な手段で証拠を証拠を集めるのも、やってはいけない行動です。
以下のような方法で証拠を集めると、熟年不倫の慰謝料を請求できる立場であるご自身が、逆に損害賠償を請求されたり、刑事罰を受けたりする事態になりかねません。
- 相手のスマホに無断で監視アプリを入れる
- 盗聴器を仕掛ける
- 相手のSNSやメールに無断でログインする
- 相手の車に無断でGPSを設置する
証拠収集は、あくまで合法的な範囲で行う必要があります。ご自身での収集に限界や不安を感じる場合は、探偵や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。



「やり返したい」という気持ちが、ご自身の不利につながることもあります。行動を起こす前に、一度立ち止まる勇気が大切です。
やってはいけないことについては、以下の記事でも解説しています。
関連記事:慰謝料請求でやってはいけないこととは?脅迫罪にあたるケースや不利にならない方法を弁護士が解説
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熟年不倫されたらどうする?発覚後の選択肢
熟年不倫には、婚姻期間が長いために財産分与が複雑になる一方、子どもが成長しているため親権問題は発生しにくいなど、特有の事情もあります。
ここでは、熟年離婚を選ぶ際の選択肢として以下3つを解説します。
まずはどのような選択肢があり、それぞれにどんなメリット・デメリットがあるかを知ることが大切です。順番に見ていきましょう。
熟年離婚する
「熟年離婚」は、長年連れ添ったパートナーとの関係を清算し、新たな人生を歩む選択です。熟年離婚を選ぶメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | ・パートナーへの不信感や「裏切られた」という精神的なストレスから解放される ・パートナーに気兼ねすることなく、自分の時間やお金を使えるようになる ・パートナーの親の介護や親戚付き合いなどから解放される |
|---|---|
| デメリット | ・ご自身の経済基盤が弱い場合、離婚後の生活水準が下がるおそれがある ・病気をしたり介護が必要になった時に、自分1人で対処する必要がある ・生活環境が大きく変わるため、新たな生活を立ち上げる必要がある |
とくにご自身が長年専業主婦(主夫)だった場合、財産分与や年金分割があっても生活水準が低下するリスクは十分に考えられます。
しかし、ご自身も仕事をして経済基盤がある場合や、不倫の慰謝料などをしっかり受け取れる見込みがある場合は、そのデメリットも軽減されるでしょう。
また、熟年離婚は子どもが成長して独立しているケースも多いため、養育費や親権の問題が発生しにくい点は、精神的な負担を軽くする要素です。
離婚を選ぶ場合は、精神的な解放というメリットと、経済面や健康面というデメリットを具体的にシミュレーションするとよいでしょう。
熟年離婚については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:熟年離婚したらどうなる?知っておきたい知識や後悔しないポイントを現役弁護士が解説
関係の再構築を目指す
「再構築」は、一度は壊れた信頼関係を時間をかけて修復し、夫婦としてやり直す道です。
再構築のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | ・これまでの生活水準や住環境を大きく変えずに済む ・世間体への影響を抑えられる ・今回の件をきっかけに、以前より絆が深まる可能性もある |
|---|---|
| デメリット | ・「また裏切られるかも」という不安やフラッシュバックに苦しむ可能性がある ・パートナーへの信頼を取り戻すには時間がかかり、お互いの努力が必要になる ・再度関係が破綻した場合、「あの時に離婚しておけばよかった」と後悔が大きくなる可能性がある |
関係の再構築を選択すれば、今までと基本的な生活を大きく変えずに済みます。また、「熟年になってからの離婚は世間体が悪い」という考え方もあるため、世間体への影響を抑えられることもメリットです。
しかし、裏切られた側の精神的な負担が非常に大きく、夫婦関係を継続するにはお互いの努力が欠かせません。関係の再構築を検討する際は、パートナーが再度不倫をする可能性はないか、夫婦関係を続けるメリットが大きいかなどを冷静に考えることをおすすめします。
「別居」という選択肢もある
別居は、すぐに離婚や再構築のどちらかを決めるのではなく、一度物理的に距離を置いて冷静になる期間を設けることです。
別居のメリット・デメリットは以下のとおりです。
| メリット | ・お互いに頭を冷やす期間を置ける ・パートナーが離婚に同意していない場合、別居期間が長ければ離婚が有利になる ・「子どもが成人するまでは夫婦でいたい」といった希望を叶えやすい |
|---|---|
| デメリット | ・根本的な問題解決にはならない ・離れて暮らすためパートナーの行動が把握しにくくなり、不倫の証拠をつかみにくくなる ・別居中の生活費をパートナーが払わない可能性もある |
別居中も婚姻関係は続くため、ご自身の収入がパートナーよりも少ない場合「婚姻費用」という生活費を請求できます。
そのため、経済力がご自身に無いことを理由に別居を諦める必要はありません。
ただし、別居は問題の先送りにしかならないケースも多く、長い目で見ればできるだけ早い時期に新しい生活基盤を築いた方が良い可能性も考えられます。



「不倫されて悲しい」「腹立たしい」といった感情だけでなく、ご自身の将来の生活を具体的に考えることが大切です。
婚姻費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:婚姻費用分担請求とは?計算方法から手続きの流れ、払わない相手への対処法まで解説【弁護士監修】
熟年不倫で離婚して慰謝料を請求する方法【3ステップ】
離婚を決意した場合、法律にもとづいた着実な手続きが、ご自身の正当な権利を守ることにつながります。
特に熟年離婚では、慰謝料に加えてその後の生活を支える財産分与や年金分割が極めて重要になるのも大きな特徴です。ここでは、離婚と慰謝料請求を有利に進めるための流れをステップ方式で解説します。
「熟年不倫の証拠」を集める
証拠集めは、慰謝料請求と裁判を有利に進めることの両方の土台となるため、非常に大切です。証拠がなければ、相手が不倫を否定した場合に対抗できません。慰謝料請求が認められない可能性も高くなるでしょう。
法的に有効とされやすい証拠の例を、以下に紹介します。
| 証拠の例 | なぜ有効か |
|---|---|
| ラブホテルに出入りする写真・動画 | 肉体関係の存在を推測する強力な証拠となるため |
| 不貞行為を認める音声記録・念書 | 本人の自白であるため、言い逃れできないため |
| 性交渉を明確に示すLINE等の履歴 | 具体的な文脈がわかるものに限られるものの、強力な証拠となる |
証拠の質と量が、その後の交渉や法的手続きの行方を大きく左右します。ご自身での証拠収集が困難な場合や、法的に有効か不安な場合は、探偵や弁護士に相談するのも一つの方法です。
不倫の証拠集めについては、以下の記事もぜひ参考にしてください。
熟年不倫の慰謝料を請求する
証拠が揃ったら、具体的な慰謝料請求手続きに進みます。まずは話し合い(交渉)から始め、合意できない場合は法的な手続きに移行するのが一般的です。(参照:裁判所|慰謝料請求調停)
請求の流れを、以下に紹介します。
- 内容証明郵便で請求の意思を伝え、交渉を開始する
- 交渉がまとまらなければ、家庭裁判所での「調停」へ進む
- 調停でも合意できなければ、最終的には「裁判」で争う
不倫が原因で離婚する場合の相場は、50万円~300万円程度です。熟年離婚は婚姻期間が長いことが多いため、慰謝料の増額要因となりやすい傾向があります。
ただし、慰謝料の金額は、不倫の悪質性や婚姻期間など個別の事情によって大きく変動します。請求額を決める際は、専門家のアドバイスを受けるのが望ましいでしょう。
不倫の慰謝料相場や、請求の流れについては以下の記事もあわせてご覧ください。
財産関連の協議を進める
熟年離婚において将来の生活を支える大きな助けとなるのは、「慰謝料」よりも「財産分与」や「年金分割」です。
慰謝料は精神的苦痛への一時金ですが、財産分与や年金分割は、未来の生活を支える経済的基盤そのものになります。
「財産分与」や「年金分割」に関する重要な項目やその制度説明、重要である理由は以下のとおりです。
| 重要な項目 | どのような制度か | 重要な理由 |
|---|---|---|
| 財産分与の権利 | 婚姻中に夫婦で築いた財産を、原則として2分の1ずつ分ける権利 | 婚姻期間が長いため、慰謝料の額よりもはるかに多いケースが少なくないため |
| 退職金・企業年金 | 財産分与の一部で、将来もらう退職金や企業年金の、婚姻期間に対応する部分 | 将来支払われる金銭であるが、財産分与の対象となり、将来の生活に役立つため |
| 年金分割 | 婚姻期間中の厚生年金(共済年金)の納付実績を分割する制度 | 老後の継続的な収入源につながるため |
財産分与の計算は非常に複雑です。特に複雑な不動産や年金・退職金などの計算は、専門家のサポートなしに進めると、本来得られるはずの権利を見逃し、老後の生活設計に大きな支障をきたすリスクがあります。
老後の生活を安定させるため、財産を漏れなく正当に分与されるよう、専門家の力を借りて慎重に協議を進めることをおすすめします。



特に熟年離婚は財産分与が複雑なため、焦りは禁物です。
熟年離婚の財産分与については、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:熟年離婚の財産分与はどうすべき?具体的な進め方や起こりやすいトラブルを解説【弁護士監修】
熟年不倫の慰謝料請求で失敗しがちな5つのポイント
ここからは、熟年不倫の慰謝料請求で多くの方が陥りがちな以下5つのポイントを解説します。
知識がないまま感情的に進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまり、本来得られるはずの権利を失うことがあります。損をしないために、ぜひ覚えておきましょう。
証拠が不十分で「不貞の事実はない」と反論される
よくある失敗パターンが、証拠が不十分なまま交渉を始めてしまうことです。
決定的な証拠がないまま相手を問い詰めても、「食事に行っただけ」「相談に乗っていただけ」などと言い逃れをされてしまうでしょう。そのため、交渉や請求を始める前に、第三者が見ても肉体関係があったと推測できる客観的な証拠を固めるのが鉄則です。
感情的な追及よりも、証拠に基づいた事実の提示をおこなうようにしましょう。
相場から離れた慰謝料を請求してしまう
感情的になり、相場とかけ離れた金額を請求すると、交渉決裂の原因になります。
| 請求の例 | 生じる不利益 |
|---|---|
| 請求額が高すぎる | 相手が態度を硬化させ、話し合いに応じなくなる恐れがある |
| 安すぎる額で請求・合意する | 本来貰えるはずだった権利を逃すことになる |
高すぎる請求をするとスムーズな解決ができません。また一度合意書(示談書)にサインすると、後から金額を変更することは困難です。
請求前に弁護士に相談し、ご自身のケースでどの程度の慰謝料を請求できるかを確認することをおすすめします。
慰謝料請求については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
関連記事:慰謝料請求は自分でできる?手続きの流れや弁護士なしで進めるリスクを解説【弁護士監修】
関連記事:不貞行為で慰謝料1000万円は請求できる?高額になるケースや二重取りの可否を弁護士が解説
熟年不倫で慰謝料請求をお考えの方は、弁護士法人アクロピースにご相談ください。
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慰謝料請求の時効を知らずに機会を逃す
慰謝料を請求できる権利には、法律上の期限(時効)があります。この事実を知らず、「いつか請求しよう」と考えているうちに権利そのものが消滅してしまうケースは少なくありません。
原則的な時効のルールは、以下のとおりです。(参照:民法|第724条)
- 不倫の事実と不倫相手を知った時から3年
- 不倫があった時から20年
時効の進行を止める(時効の完成猶予・更新)には、法律に従った手続きが必要です。不倫が発覚したら、時効を意識して速やかに行動を開始しましょう。
慰謝料請求の時効については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:慰謝料請求の時効は?猶予・更新の方法や時効が過ぎた際の対処法を徹底解説
相手に資金力がなく、約束どおり支払われない
慰謝料の金額に合意したものの、相手に支払い能力がなく、分割払いが途中で滞ってしまうケースもあります。
支払いが滞ると、合意した金額を回収できずに泣き寝入りする結果になるケースが少なくありません。この失敗を避けるには、合意内容を「公正証書」にしておくことが重要です。(参照:日本公証人連合会|公正証書)
また、支払いが滞った際に相手の給与や財産を差し押さえられる「強制執行認諾文言」がついた公正証書があれば、裁判なしに強制執行をすることができます。
支払い能力を見極め、万が一に備えた法的な担保を確保しておくことが、確実な回収につながるのです。
財産分与に退職金を含め忘れたり、年金分割を忘れたりして損をする
慰謝料や目先の預貯金の分割に意識が集中するあまり、老後の生活基盤となる「退職金」や「年金分割」の取り決めを忘れてしまうケースがあります。先ほど解説したとおり、これらは制度が複雑なため、当事者同士の話し合いでは抜け落ちがちです。
最も注意すべきなのは、一度、財産分与について離婚協議書などで合意してしまうと、後から「忘れていた」という理由で追加の請求をするのが、原則として極めて困難になる点です。
離婚協議の初期段階で、請求すべき財産等を漏れなくリストアップしておくことを忘れないようにしてください。



「証拠」「相場」「時効」「回収方法」「財産分与」の5つが、慰謝料請求で後悔しないための重要チェックポイントです。
熟年不倫に関するよくある質問
一度きりの不貞行為でも熟年不倫といえますか?
法的には一度きりの肉体関係でも「不貞行為」にあたり、慰謝料請求の対象・離婚原因となり得ます。
ただし、この不貞行為によって慰謝料の支払い請求や離婚が認められるかについては、状況によって異なります。
| 項目 | 判断のポイント |
|---|---|
| 慰謝料の金額 | 不倫の期間や頻度が考慮されるため、一度きりの場合は継続的な関係より低額になる傾向がある |
| 離婚の原因 | その一度の行為で婚姻関係が回復不可能なまでに破綻していない場合には民法第770条第2項を適用することによって離婚請求を認めない場合がある。 |
一度きりでも離婚原因に該当すると判断される可能性はありますが、継続的な不倫とは異なる評価を受ける可能性もあるのです。
熟年不倫した夫(妻)から離婚を切り出されたら応じなければなりませんか?
不倫をした側(法律用語で「有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)」と呼びます)からの離婚請求に、原則として応じる必要はありません。
裁判所は、自ら夫婦関係を壊しておきながら離婚を要求することは、信義に反する(身勝手である)と考えます。そのため、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められません。
ただし、ごく稀ではあるものの、以下の条件がすべて揃う場合には離婚が認められる可能性もあります。
- 夫婦の別居期間が相当長い
- 経済的に自立していない子がいない
- 離婚される側が、離婚後に経済的に困らない
もし相手から離婚を切り出されても、ご自身が同意しない限り、すぐに離婚が成立することはありません。焦って応じる前に、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
パートナーが不倫したにもかかわらず離婚を求めるのは、法的には「非常に不利な立場からの要求」だと覚えておきましょう。
まとめ|熟年不倫を疑う場合は弁護士へ相談しよう
熟年不倫は、長年の信頼関係を損なう非常に大きな問題です。
もし離婚という決断をする場合は、老後の生活を左右する「財産分与」や「年金分割」といった重要な判断も必要になります。
一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で離婚問題に精通した弁護士に相談することが、あなたの権利を守り、後悔のない未来を選択することにつながります。
弁護士法人アクロピースでは、初回60分の無料相談を実施しています。熟年不倫を疑い、今後の方向性に悩む場合はどうぞ気軽にご相談ください。
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