熟年離婚の財産分与はどうすべき?具体的な進め方や起こりやすいトラブルを解説【弁護士監修】
「熟年離婚したいけれど金銭面が不安……」「財産分与で損をしたくない」と悩んでいませんか?
特に生活資金をどう確保するかは、熟年離婚を考える方にとって大きな不安材料になるでしょう。
熟年離婚における財産分与は、資産の種類が多岐にわたるうえ、分け方をめぐるトラブルが起こりやすいのが特徴です。
婚姻期間が長いほど財産の評価や分け方が複雑になり、「何を、どう分けるべきか」が見えにくくなるケースも少なくありません。
特に退職金や年金、不動産などの扱いを誤ると、老後の生活設計に大きな影響が出るおそれもあります。
本記事では、熟年離婚における財産分与の特徴や手続きの進め方、注意点などを解説します。
熟年離婚の財産分与をどう進めればよいのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
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財産分与とは?種類や対象の財産を解説
財産分与にはいくつかの種類があり、対象になる財産や割合もケースによって異なります。
特に熟年離婚では財産の範囲が広く、分け方をめぐってトラブルになりやすいため、あらかじめ全体像を知っておくことが安心につながります。
離婚後に後悔しないためにも、「何が財産分与の対象になるのか」「どのように請求できるのか」を正確に把握しておくことが重要です。
まずはこの章で、基本的な考え方を整理していきましょう。
財産分与の種類
財産分与には、大きく3つのタイプがあり、目的や背景に応じて請求内容も変わります。
下記は財産分与の種類と内容を表にまとめたものです。
種類 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
清算的財産分与 | 婚姻期間中に夫婦で築いた財産を公平に分ける | 預貯金、住宅、車などの共有財産 |
慰謝料的財産分与 | 浮気やDVなど離婚について一方の配偶者に非がある場合の精神的損害への補填 | 不倫や暴力による精神的苦痛への補償 |
扶養的財産分与 | 離婚後の生活に不安がある配偶者に対して支援目的で支払われる | 高齢・病気・無収入などで生活困難な場合の支援 |
それぞれの分類には法的根拠や実務上の運用の違いがあるため、誤解のないよう注意しましょう。
種類ごとの性質の違いを把握し、自分の状況に合った請求内容を選ぶことが大切です。
財産分与の対象・割合
財産分与の対象となるのは、基本的に婚姻中に形成された夫婦の共有財産です。
「これは自分の財産だ」と思っていたものが、実は分与の対象だったというケースも珍しくありません。
特に退職金や名義上の問題などは、判断が複雑になりやすいため注意が必要です。
財産分与の対象と対象外の例を明確に整理すると、以下のようになります。
対象となる財産 | ・預貯金 ・夫婦で購入した不動産(自宅など) ・退職金(婚姻期間中に発生した部分) ・自動車、家具など共有で使用していた動産 |
---|---|
対象外とされる財産 | ・結婚前から所有していた個人資産 ・相続・贈与で個別に得た財産(特有財産) |
分与割合は基本的に「2分の1ずつ」が原則ですが、以下のような要素で調整されることがあります。
- 家事・育児を片方の配偶者が全面的に行っていた(専業主婦も正当に評価される)
- 片方配偶者が経営者で、独自の能力により財産が形成された部分が多い
ご自身の役割や貢献を客観的に整理して主張することが、納得のいく財産分与への第一歩となります。
関連記事:親に買ってもらった車は財産分与になる?離婚時の財産分与の相場とその対象
熟年離婚の財産分与の相場・平均額
熟年離婚の財産分与額は、夫婦の財産規模、共有・特有財産の範囲、評価方法などにより大きく異なりますが、
熟年離婚では、婚姻期間が長いほど共有財産が多くなる上に、退職金や住宅が大きな割合を占めることから、財産分与額も比較的高額です。
実際、裁判所の統計によると、離婚による財産分与額が「600万円以上」の夫婦のうち「婚姻期間20年以上」の割合は約1,900件で、全体の約6割を占めています。
また、婚姻期間20年以上の財産分与額には、1,000万円超〜2,000万円以上の高額帯も一定数みられるのが特徴です。(参照:最高裁判所|令和6年司法統計年報(家事編))
これらの金額はあくまで一例ですが、大きな金額が動く可能性がある点を理解しておきましょう。
熟年離婚で財産分与を進めるときの4つのポイント
熟年離婚の財産分与は、感情の問題とお金の整理が重なるため、進め方に悩む方も少なくありません。
財産分与を進めるときは以下のポイントをおさえましょう。
本章を参考に「財産分与の手続きはどこから手をつけるべきか」「困ったら誰に相談すればいいか」を明確にし、手続きを進めてみてください。
まず話し合いで合意できるかを確認する
財産分与はまず、当事者同士の話し合いで解決を目指すのが基本です。
以下のような情報を整理し、共有しておくと、財産分与をスムーズに進められるでしょう。
- 預貯金、不動産、退職金などの有無をチェックする
- 各財産の取得時期・名義・金額を調査し、リスト化しておく
夫婦間で財産の金額・評価に食い違いがあっても、まず全体像を出すことを優先しましょう。
また、合意できた内容については、「財産分与に関する合意書」を作成しておくと、後のトラブル防止に役立ちます。
財産分与を含む離婚の準備については以下の記事も参考にしてください。
関連記事:離婚に向けての準備!離婚の前にどう動くか、何を用意するべきか解説
合意できない場合は調停・審判・裁判での解決が必要
話し合いでの解決が難しい場合は、家庭裁判所での法的手続きに進みます。
法的手続きは「調停」「審判」「裁判」があり、それぞれの内容・特徴は以下のとおりです。
手続き名 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
調停 | 調停委員・裁判官が間に入り合意を目指す | 感情的な対立があっても話し合いやすい |
審判 | 家庭裁判所が判断を下す | 話し合いが決裂した場合裁判官が判断する |
裁判 | 双方が証拠や主張を出し合い、裁判官が判決を下す | 最終手段として法的拘束力のある判断が得られる |
財産分与の調停が不成立となったあとの流れは、「離婚前」か「離婚後」かによって異なります。
離婚前に調停が不成立となった場合
離婚前の段階で調停がまとまらなかった場合、当事者の選択肢は以下の3つです。
- 離婚を一時的に断念する
- 再度協議による解決を目指す
- 離婚訴訟(裁判)に進む
ただし、まれに裁判官の判断で審判に移行するケースもあります。
離婚後に調停が不成立となった場合
離婚後に財産分与の調停を申し立てた場合、調停が不成立になると原則として「審判」に自動移行します。
これは、すでに離婚が成立しており、財産分与のみが争点となるためです。
不服申し立て(即時抗告)をすることも可能です。
- 審理の結果、即時抗告が認められれば原審判が取り消され、高等裁判所が新たな審判に代わる裁判を行います。
- 即時抗告が認められなければ、原審判が確定する流れです。
法的手続きは、いずれも一定の時間と費用がかかりますが、公平な判断を得るための重要な手段です。
特に熟年離婚で財産規模が大きい場合や、話し合いが難航している場合は、早い段階で弁護士の力を借りることも検討しましょう。
相手に不信感がある場合は早めに弁護士へ相談する
「財産を開示してくれない」「まったく話し合いに応じない」など、相手との信頼関係が崩れている場合は、早めに弁護士へ相談しておくと安心です。
特に熟年離婚では、以下のような財産が問題になりやすく、専門的な判断が必要です。
- 評価の難しい不動産や株式、退職金
- 名義の扱いに注意が必要な財産
- 隠し財産の調査や証拠保全
後悔しないためにも、弁護士を味方につけて冷静に財産分与を進めましょう。
熟年離婚の財産分与に悩んでいる方は、弁護士法人アクロピースにご相談ください。
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不動産や退職金が絡む場合は分割方法の工夫が必要
特に揉めやすいのが、不動産や退職金といった高額資産の分け方です。
これらの資産は、現金のように単純に「半分に分ける」ことができません。評価額の算定や分割方法を巡って対立しやすい傾向があるため、分割方法を工夫する必要があります。
不動産や退職金の主な分け方は以下のとおりです。
不動産(自宅など) | ・売却して現金を分ける ・一方が住み続け、他方に代償金を支払う |
---|---|
退職金 | 将来受け取る予定の場合:支払時期・金額を踏まえて評価 既に受け取っている場合:現実の額を基に清算 |
資産の性質によって分け方が変わるため、早めに方針を整理しておくことが解決のカギです。
また、熟年離婚ではこれらが老後の生活資金に直結する可能性も高いため、感情的な争いに発展しやすい点にも注意しましょう。
ご自身で対応するのが難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
退職金の財産分与については以下の記事でも解説しています。あわせてチェックしてみてください。
熟年離婚の財産分与で起こりやすい5つのトラブル
熟年離婚では、財産分与をめぐるトラブルが起こりやすい傾向があります。婚姻期間が長い分、財産の種類や金額が多く、話し合いの難しさや認識のズレも生じやすいためです。
特に以下のようなトラブルは、熟年離婚の財産分与で起こる可能性があるため注意しましょう。
本章で熟年離婚の財産分与トラブルを理解し、必要に応じて対策を検討することが大切です。
専業主婦が「自分に権利はない」と誤解してしまう
長年家事や育児を担ってきた専業主婦の方が、「自分は収入がなかったから財産を受け取る権利がない」と誤解するケースがあります。
しかし実際には、以下のような貢献も評価されるため、原則「2分の1」の財産分与を受けられます。
- 家事や育児などの無償労働
- 配偶者のキャリアを支える生活支援
- 家庭の維持・継続的な管理
専業主婦は、経済的収入がなくても、共有財産の形成に寄与していれば公平な分与対象です。遠慮や誤解から請求をあきらめてしまうと、老後の生活設計に大きな影響が出る恐れもあります。
退職金をめぐって争いが起きる
熟年離婚で最もトラブルになりやすいのが、退職金の扱いです。「まだもらっていないから関係ない」と、話が平行線をたどることも少なくありません。
実際には、退職金も次のように分与対象になります。
- 婚姻中に形成された部分:財産分与の対象
- 将来受け取る予定:支給の蓋然性が認められる場合には「将来債権」として評価対象
評価の方法や分割の時期はケースごとに異なるため、弁護士の助言をもとに整理していくのが安心です。
退職金の財産分与については以下の記事でも解説しています。あわせてチェックしてみてください。
住宅ローン付きの持ち家が財産分与を難航させる
持ち家をどう扱うかは、熟年離婚で対立を招くことが多い問題です。
特にローンが残っている場合は、以下のようなポイントで話し合いが複雑化します。
- 不動産の名義が誰か
- 住宅ローンの残債があるか
- 誰が住み続けるか
- 売却して現金化すべきか
たとえば「妻が住み続けたいがローンは夫名義」といった状況では、法的・感情的な摩擦が生じやすくなります。
条件を整理し、柔軟な分割方法を選べるように備えることが重要です。
年金分割と財産分与を混同してしまうケース
「財産分与をしたから、もう年金分割はしなくていい」という誤解も見られるケースがあります。
しかし年金分割と財産分与は、制度の目的も対象もまったく異なります。それぞれの制度の違いは以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
年金分割 | 厚生年金の年金保険料の納付記録を分ける制度 |
財産分与 | 預貯金・不動産・退職金などの共有財産を分ける制度 |
たとえ財産分与が済んでいたとしても、年金分割を請求しなければ、将来受け取れる年金額に大きな差が生じる可能性があるため、注意が必要です。
両制度を正しく理解し、手続きを適切に行うことで、老後の経済的安定をより確実に確保できます。
財産分与だけでなく「年金分割」も必ず検討すべき項目として、忘れずに対応することが大切です。
「今さら揉めたくない」と話し合いを避けた結果損をする
熟年離婚を考える方の中には、「いまさら揉めたくない」と話し合いを避けてしまう人もいます。
しかし、熟年離婚は若年層の離婚よりも老後の資金確保の重要性が高いです。本来得られるべき財産を放棄すると、将来の生活が苦しくなるリスクもあります。
特に以下のような心理状態には注意が必要です。
- 「もう歳だから、争うのはつらい」
- 「早く離婚を成立させたい」
- 「相手と関わりたくない」
このような気持ちは大切にしつつも、将来の生活設計を第一に考えることが何よりも重要です。
どうしても自力で進めるのが難しいときは、弁護士など第三者の力を借りて冷静に整理を進めてみましょう。
熟年離婚の財産分与を弁護士に依頼すべき3つのケース
熟年離婚における財産分与は、財産の内容が複雑で、感情的な対立が生じるケースもあります。
次のような状況に心当たりがある方は、早めに弁護士への相談するのがおすすめです。
本章で、熟年離婚の財産分与を弁護士に依頼すべきか改めてチェックしてみましょう。
相手が財産を隠している・開示に応じない
財産分与を進めるうえで最も重要なのが、お互いの財産を正確に把握することです。
しかし、現実には「通帳や証券の開示を拒否される」「一部の資産を隠されているように感じる」「そもそも共有財産かどうか判断が難しい項目がある」など、さまざまな問題が生じがちです。
これらのケースでは、無理に話し合いを進めても不透明なままとなり、納得のいく分与ができない恐れがあります。
弁護士に依頼すれば、以下の対応が可能です。
- 財産開示を促す通知書の作成
- 弁護士会照会や調査嘱託の申し立てによる調査
- 財産調査や証拠収集の支援
相手の対応に不安がある方は、早めの相談で不利な状況を回避しましょう。
退職金や不動産など評価が難しい財産がある
熟年離婚では、以下のような「評価が難しい財産」が含まれることが多くあります。
財産の種類 | 評価の難しさ |
---|---|
退職金(将来受取) | 受給見込みや算定時期によって変動する |
自宅・土地などの不動産 | 売却価格・時価評価の把握が困難 |
株式・投資信託など | 時価の変動・証券会社との対応が必要 |
これらの財産は、正しく評価できなければ不公平な分け方につながるリスクがあります。
弁護士に依頼すれば、以下の対応・代行をしてもらえるのがメリットです。
- 財産ごとの評価方法についてのアドバイス
- 不動産鑑定士や税理士などとの連携支援
- 客観的な資料をもとにした交渉
財産の評価が難しい場合、ぜひ弁護士の意見を取り入れてみてください。
交渉がこじれて話し合いが進まない場合
熟年離婚では、長年の感情の積み重ねから話し合いが難航することもあります。
以下のような状況が見られる場合は、弁護士のサポートが効果的です。
- 一方が怒りっぽく、冷静な話し合いができない
- 一方的な主張ばかりで交渉にならない
- 会話のたびに感情的な衝突が起きてしまう
弁護士を介すると、法的根拠に基づいた主張で交渉が整理されやすく、感情的なやり取りを減らせるのがメリットです。
話し合いが平行線で「自分ではどうしようもない」と感じたら、早めに弁護士へ相談を検討しましょう。
熟年離婚における財産分与についてよくある質問
60歳や50歳で離婚すると、どんなデメリットがありますか?
50代から60代のいわゆる「熟年離婚」では、主に老後の経済的不安がデメリットです。
具体的には以下のリスクが考えられるでしょう。
- 再就職が難しい
- 住まいの確保が必要
- 医療・介護の備えが必要
定年後であれば収入が減少し、生活費や住まいの確保が難しくなることもあります。
年金や退職金を分けても老後資金が足りない可能性もあるため、離婚前に生活設計を見直すことが大切です。
離婚時にお金を下ろしておくとどうなりますか?
離婚前に相手に無断で預金を引き出すと、財産分与に影響する可能性があります。
財産分与への影響内容は、預金が「特有財産」か「共有財産」かによって異なります。内容は以下のとおりです。
- 相手の特有財産の場合:返還請求をされる可能性がある
- 共有財産の場合:下ろした時期や使途によっては財産分与時に考慮され、引き出し分も含めて公平に分配される
離婚時に多額のお金を下ろしておくとトラブルになる可能性が高いので、控えた方が良いでしょう。
離婚後の財産分与を拒否されたらどうなりますか?
財産分与は法的な権利なので、相手が拒否しても諦める必要はありません。
離婚後2年以内であれば、家庭裁判所に分与を求める調停や審判を申し立てることが可能です。
証拠をそろえて早めに行動すれば、正当な取り分を確保できる可能性があります。
離婚後の財産分与を拒否された場合は、弁護士への相談も検討しましょう。
まとめ|熟年離婚の財産分与で悩んだら弁護士への依頼も検討しよう
熟年離婚における財産分与は、婚姻期間の長さや資産の種類が影響するため、若年層の離婚とは異なる配慮が必要です。
特に退職金や年金、不動産などは評価や分け方が難しく、感情的な対立を生むことも少なくありません。
そのため、正しい知識をもとに冷静に状況を整理し、必要に応じて弁護士の力を借りることが大切です。弁護士に依頼することで、当事者の代わりに交渉を進めたり、財産調査をサポートしたりと、より有利でスムーズな解決が期待できます。
財産分与は、これからの人生を支える大切な土台です。納得のいく形で次の一歩を踏み出せるよう、安心できるサポートを上手に活用していきましょう。
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