住宅ローンが残っていても売却できる任意売却とは?

家の住宅ローンが払えず3ヶ月以上の滞納が続くと、分割返済の権利がなくなり、一括返済を求められます。一括返済ができなければ、債権者(ローンの貸主)は裁判所を介して「競売」の手続きをおこない、家を差し押さえて強制的に売却されます。

競売は所有者の意思は全く組まれず、一般の不動産相場よりも安く取引されるのが一般的です。この競売を避ける方法が「任意売却」です。

任意売却であれば、通常の不動産売買とおなじように売却ができるため、競売よりも多くのメリットがある方法です。任意売却のしくみやメリット、おおまかな流れについて説明します。

目次

任意売却とは

住宅ローンが残っていても売却できる

任意売却は住宅ローンの残債があっても、家を売却することができる方法です。通常の不動産売買では、住宅ローンの残債(残高)がなくならなければ、新しい買い手に家を引き渡すことができないため、住宅ローンの残高より高い金額で家を売却しなければなりません。

しかし、任意売却は売却後に住宅ローンが残ってしまう、いわゆる「オーバーローン」の状態でも売却が成立する方法です。

任意売却が可能なタイミング

住宅ローンの滞納が3ヶ月~6ヶ月続くと、債権者である金融機関から「期限の利益喪失予告書」という通知が届きます。簡単にいうと、分割払いをする権利がなくなり、住宅ローン残高の一括払いを求める通知です。この段階で任意売却が可能になります。

注意が必要なのは、期限の利益喪失をしてから約2ヶ月後に競売が開始され、4ヶ月後に「期間入札通知」が届くと任意売却はできなくなります。期限の利益喪失予告書が届いた時点で、早急に任意売却への行動を起こさなければなりません。

金融機関(債権者)の同意が必要

任意売却をおこなうには、住宅ローンを借りている金融機関(債権者)の合意が必要になります。本来、家の「抵当権」は、住宅ローンを完済しなければ解除することはできません。

しかし、任意売却では、金融機関の承認を得て抵当権を抹消してもらい、売却をおこなうことができます。

【抵当権とは?】

住宅ローンを借りるときには、必ず「抵当権」が設定されます。抵当権は、住宅ローンを返済してもらえない場合に貸主である金融機関が強制的に家を売却して、貸したお金を回収する権利のことです。

つまり、抵当権が付いたままの家を購入した場合、前の所有者が住宅ローンを払えなくなれば、新しい所有者が住んでいても強制的に売却されてしまうことになります。そのため、家を売却するには必ず抵当権を抹消しなければならないのです。

任意売却をするには

弁護士に相談しながら進める

任意売却に至るケースでは、債務は住宅ローンだけにとどまらないことが多いものです。

弁護士に総合的に相談をしながら、任意売却も進めていきましょう。

不動産業者に販売を依頼する

任意売却で家を売る場合も、通常の不動産売買と方法は変わりません

任意売却に精通した不動産会社に依頼すれば、円滑に進めてもらえるので安心です。担当の弁護士を介して不動産会社を紹介してもらえる場合もあります。

任意売却の流れ

家の査定

不動産会社に家の査定をしてもらい、適正な売却価格を明らかにします。

査定の前にあらかじめ、金融機関で住宅ローンの残高証明を取得し正確なローン残高を把握しておきましょう。

金融機関(債権者)から任意売却の許可を得る

金融機関から任意売却の許可をもらうことが最も重要なポイントになります。売却によって少しでも多く残債を返済することが目的になるため、家の査定価格がローンの残高とあまりにもかけ離れている場合には、任意売却の合意を得るのが難しい場合もあります。

不動産会社と媒介契約を結ぶ

売却を依頼する不動産会社を決めたら媒介契約を結び、売却活動を始めてもらいます。

一般的な不動産売却と同様に、不動産業者間の情報システムへの登録、インターネット媒体、新聞折り込み、各種メディアへの掲載などの売却活動をしてくれます。

購入希望者決定・債権者に売却の承認をもらう

情報公開によって物件に興味がある人が内覧に訪れます。購入希望者が決まったら、債権者である金融機関に売却価格や売買代金の分配額、売却後の住宅ローン残債の返済計画の承認をもらいます。

決済・抵当権の抹消

債権者である金融機関から承認を得られたら、購入希望者と売買契約を結びます。

その後、購入者から売買代金を受け取り、抵当権の抹消、家の引き渡しをおこないます。

売買代金で金融機関に返済をし、返済しきれないローン残金は返済計画に基づいて、支払っていきます。

任意売却のメリット

競売よりも高値で売却できる

競売で不動産を売却した場合、売却額は市場相場の6割程度といわれています。理由としては、競売物件は購入前の内覧ができない、購入後の不具合が保証されていない(瑕疵担保責任を問えない)といったデメリットがあるためです。

しかし任意売却なら、市場相場に近い価格で売却ができます。自分で価格交渉もできるため、納得のいく売却が可能です。

自分の希望に合わせられる

競売の場合、売却価格から引き渡し日に至るまで、自分の意思とは関係なく強制的に決められてしまいます。

しかし任意売却であれば、契約日や引き渡しのタイミングなど、自分の希望に合わせることができます。

売却時の諸費用が要らない

任意売却をおこなった場合、売却したお金から抵当権抹消費用などの諸費用を支払うことが認められています。マンションで管理費や修繕積立金の滞納分がある場合も、売却金から支払うことができます。

債権者である金融機関との交渉次第では、売却金から引っ越し費用も融通してもらえるケースもあります。

まとめ

  • ①任意売却は売却後にローンが残る場合(オーバーローン)でも売却ができる。
  • ②任意売却はローンが残っても抵当権抹消をしてもらえる。
  • ③「期限の利益喪失予告書」が届いたタイミングで任意売却が可能になる。
  • ④債権者である金融機関の承認がなければ任意売却はできない。
  • ⑤競売よりも高値で売却ができる。
  • ⑥売却金から諸費用の支払いができる。

任意整理や個人再生などの債務整理の流れで任意売却をおこなう場合、手続きやプロセスは簡単ではありません。債権者である金融機関との交渉も必要です。

専門家である弁護士に、総合的なサポートや不動産会社との連携を任せれば安心です。

この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、借金問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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