不動産相続のよくあるトラブル例10選|揉める原因と解決方法・注意点を解説

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弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
東京弁護士会・東京税理士会所属

「親が遺した実家をどう分ければいいのか、兄弟で意見がまとまらない…」
「相続の話を始めた途端、今まで仲の良かった家族の関係が悪くなった…」

大切な家族を亡くした悲しみに暮れる間もなく、不動産という「分けにくい」財産を前に、途方に暮れる人は多いのではないでしょうか。

この記事では、不動産相続トラブルに直面している方・これから相続を控えている方に向けて、不動産相続でよくある10のトラブルを紹介します。また、その根本原因を深く掘り下げ、具体的かつ実行可能な解決策を解説します。

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目次

不動産相続でよくあるトラブル

ここでは、弁護士が実際に相談を受けることが多い、代表的な10のトラブルを挙げ、それぞれの問題の構造と解決策を具体的に解説します。

自身の状況と照らし合わせながら、問題の本質を掴んでいきましょう。

ケース1:遺産分割の方法で揉める(誰が相続するか、どう分けるか)

遺産分割において基本的な対立点が「誰が、どのように不動産を相続するか」です。不動産は現金のように簡単に分けることができないため、問題が複雑化しやすい傾向があります。

遺産分割の方法は主に4つの選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

現物分割分筆した上でそれぞれ単独所有とするなど、不動産そのものを物理的に分ける方法です。

しかし、建物に適用するのは困難で、土地も分割によって価値が下がる可能性があるため、現実的な選択肢とならない場合が多くあります。
代償分割相続人の一人が不動産を単独で取得し、他の相続人に対してその相続分に相当する現金(代償金)を支払う方法です。

不動産を残したい場合に有効ですが、不動産を取得する側に十分な資力がなければ成立しません。
換価分割不動産を売却して現金化し、その売却代金を相続人同士で分配する方法です。

金銭的に公平な分割が可能ですが、不動産に愛着がある相続人や、居住している相続人がいる場合には強い反対にあうことがあります。
共有分割複数の相続人が持分に応じて共同で不動産を所有する方法です。

一見、公平な解決策に見えますが、将来の売却や活用に全員の同意が必要となり、問題を先送りするだけで、より複雑なトラブルを生む温床となりがちです。

どの分割方法を選択するか議論をすることで、個々の相続人が不動産に対して抱く価値観の衝突が発生するケースは珍しくありません。

ケース2:不動産の評価額で意見が対立する(代償分割・現物分割時)

代償分割や現物分割を行う際、不動産の「評価額」も重要な争点となります。不動産の評価方法には、以下のように複数の基準が存在し、どの基準を用いるかによって評価額は大きく変わるためです。

  • 実際の取引価格に近い「実勢価格(時価)」
  • 相続税計算の基準となる「路線価」
  • 固定資産税の基準である「固定資産税評価額」

この評価額を巡る対立は、相続人間の直接的な利害の衝突を生みます。

不動産を取得する側は、支払う代償金を少なくするために可能な限り低い評価額を主張しがちです。一方で、代償金を受け取る側は、自身の取り分を最大化するために最も高い評価額を求めるでしょう。

この問題を解決するには、不動産業者による査定を集めるだけでなく、数字に付随する感情的な対立を鎮めるための冷静な交渉が不可欠です。

ケース3:相続税の納税資金が用意できない

相続財産に不動産が含まれる場合、「資産はあるのに現金がない」という状況に陥ることがあります。

相続税は、原則として相続開始を知った日から10か月以内に現金で一括納付しなければならないためです※。遺産の大部分が不動産である場合、この期限内に納税資金を捻出できず、相続人が途方に暮れるケースは少なくありません。

納税のためにやむなく不動産を安値で売却せざるを得なくなったり、資金力のある相続人が他の相続人の窮状を利用して不公平な条件で不動産を取得しようとしたりする事態も起こり得ます。

※特別な納税方法として「延納」と「物納制度」も存在します。

出典:国税庁|No.4205 相続税の申告と納税

ケース4:「共有名義」で相続してしまい活用・売却で揉める

遺産分割協議がまとまらない場合に、「とりあえず公平に」という理由で不動産を共有としてしまうことがあります。しかし、これは問題の解決ではなく、より複雑な問題の始まりに過ぎません。

不動産全体を売却するなどの「処分行為」には共有者全員の同意が、第三者に賃貸するなどの「管理行為」には持分の過半数の同意が必要です(民法第251条252条)。

つまり、一人でも反対する共有者がいれば、不動産を売却することはできず、実質的に「塩漬け」状態になってしまいます。

また、共有者の一人が亡くなると、その持分はさらにその人の相続人たちへと引き継がれます(数次相続)。兄弟3人の共有だった不動産が、次の世代では従兄弟6人の共有物になり、その次の世代では面識もない遠い親戚十数人の共有物になる事態も起こりかねません。

関係者が増えれば増えるほど合意形成は絶望的に困難になり、不動産は永久に動かせない「負の遺産」と化してしまいます。

共有名義という選択は目先の対立を避けるための一時しのぎであり、将来の世代にさらに大きな負担を押し付ける可能性があると覚えておきましょう。

出典:e-Gov法令検索|民法

以下の記事では、共有名義の不動産トラブルを解消する方法について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:共有名義を解消する方法とは?費用・手続き・リスクもわかりやすく解説

ケース5:相続した実家が「空き家」になり管理や処分で揉める

相続人の誰もが実家に住むことを希望しない場合、「空き家」となります。

空き家は、固定資産税や維持管理費といった経済的負担、そして建物の倒壊や火災、不法侵入といった法的責任のリスクを継続的に生み出す「負の資産」と化します。

特に、誰が管理費用を負担するのか、誰が定期的に見回りや草むしりをするのか、といった問題で意見が対立しやすいでしょう。売却しようにも、思い出の詰まった家を売ることへの抵抗感や、現実的な市場価格とのかい離から、なかなか話がまとまらないケースも多いです。

また、管理が不十分な空き家は行政から「特定空家」に指定され、固定資産税が跳ね上がる可能性もあります。

感情的な価値判断によって問題を先送りした結果、資産価値は下がり続け、最終的にはより不利な条件での処分を余儀なくされる可能性があるため注意が必要です。

出典:国土交通省|固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置

ケース6:長年、相続登記(名義変更)が放置されていた

かつて相続登記(不動産の名義変更)は義務ではなかったため、亡くなった祖父や曽祖父の名義のまま放置されている不動産も多数存在します。

このような不動産を相続した場合、現在の相続手続きを進める前に、過去に遡ってすべての相続関係を確定させ、名義変更を完了させる必要があります。

例えば、祖父名義の土地を相続する場合、まず祖父の相続人である父や叔父たちの間で遺産分割を確定させなければなりません。もし叔父が既に亡くなっていれば、その相続人である従兄弟たち全員の合意が必要になります(数次相続)。

関係者が数十人に及ぶことも珍しくなく、面識のない遠い親戚を探し出し、説得して実印をもらう作業は、途方もない労力を要するでしょう。

この問題を解決するため、2024年4月1日から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内の登記申請が必須となりました。違反した場合、10万円以下の過料が科される恐れがあります。

この法改正は、放置されてきた名義変更が必要な不動産を適正化し、これ以上問題が複雑化するのを防ぐための、国による強力な介入と言えます。

出典:法務省|相続登記の申請義務化について

ケース7:特定の相続人が無償で実家に住み続けている

被相続人と同居していた相続人が、相続開始後も無償で実家に住み続けるケースは、典型的な紛争要因です。ほかの相続人からは、共有財産である不動産の使用利益(家賃相当額)を一人が得ているとして、不公平を理由に対立が生じやすくなります。

不動産を使用できない相続人から不満の声があり、以下のようなトラブルになる可能性があるでしょう。

  • 賃料相当額の支払いを求められる
  • 共有物買取請求を起こされる
  • 共有持分買取専門の不動産会社に売却され強引な請求をされる

相続開始前から被相続人の承諾を得て無償で同居していた場合、遺産分割が確定するまでの間は、従前どおり無償使用を認める使用貸借関係が成立していると推認される可能性があります(最高裁判所判例集 平成5(オ)1946)。直ちに退去や賃料の支払いを求めるのは困難でしょう。

もっとも、これは暫定的な保護にとどまります。遺産分割協議において当該居住利益を特別受益等として評価し、金銭で調整する形で解決するのが一般的です。

出典:裁判所|最高裁判所判例集 平成5(オ)1946

ケース8:遺言の内容が不公平で納得できない

「全財産を長男に相続させる」といった内容の遺言が遺された場合、他の相続人にとっては到底受け入れがたいものです。このような不公平な遺言は、単なる財産配分の問題ではなく、親からの愛情や評価を測る最後のメッセージとして受け取られ、深い感情的な傷を残します

遺言は被相続人の最終意思として強い効力を持ちますが、万能ではありません。民法では、配偶者や子、親といった一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない最低限の相続分として「遺留分」を保障しています(民法第1042条)。

遺言によって遺留分を侵害された相続人は、財産を多く受け取った相続人に対して、侵害された額に相当する金銭の支払いを請求することが可能です(遺留分侵害額請求)。

ただ、不動産は価値が大きいため、遺留分侵害額請求に対して支払うお金が無いということも珍しくなく、支払いを巡ってトラブルになりかねません。

出典:e-Gov法令検索|民法

遺言については、以下の記事でも詳しく解説しています。遺言のトラブルに不安を抱えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:相続時にもめないように!効力のある遺言の書き方を解説

ケース9:生前贈与に偏りがあり不満が出ている(特別受益)

相続人の一人が、被相続人から生前に多額の援助(例えば、住宅購入資金や事業の開業資金など)を受けていた場合、他の相続人から不満の声が上がることがあります。

これは「特別受益」と呼ばれ、実質的な相続財産の前渡しと見なされるのが一般的です。民法では、相続人間の公平を図るため、この特別受益を相続財産に加算して(持ち戻し)、各相続人の具体的な相続分を計算する仕組みを定めています(民法第903条)。

つまり、生前に多くの贈与を受けていた相続人は、その分だけ相続で受け取る財産が少なくなります。

しかし、「どこまでが特別受益にあたるのか」「何十年も前の贈与を現在の価値にどう換算するのか」といった点で、相続人の主張が対立するケースは少なくありません。

出典:e-Gov法令検索|民法

ケース10:被相続人の介護の貢献度を主張される(寄与分)

長年にわたり被相続人の介護を一身に担ってきた相続人が、「自分の貢献によって親の財産が維持されたのだから、他の兄弟よりも多くの遺産をもらう権利がある」と主張することがあります。これが「寄与分」の主張です。

寄与分が認められるためには、以下の事実を証明する必要があります。

  • その貢献が親族間の扶養義務の範囲を超える「特別な」寄与であること
  • その貢献と財産の維持・増加との間に明確な因果関係があること

この証明は非常に困難であり、他の相続人からは「親の面倒を見るのは当たり前だ」「同居して生活費が浮いているのではないか」といった反論が出され、感情的な対立に発展しがちです。

そのため、寄与分の主張は、いわば「愛情や犠牲を金銭に換算する」試みといえます。介護に尽くした相続人にとっては正当な権利の主張ですが、他の相続人にとっては自分たちの相続分を減らすための要求のように映る可能性があるでしょう。

家族の歴史の中で行われた献身的な行為が、相続の場で厳しい法的評価の対象となり、兄弟間の絆を断ち切るほどの深刻な争いへと発展してしまうケースは珍しくありません。

弁護士 佐々木一夫

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不動産相続で兄弟・親族がトラブルになる3つの根本原因

これまで見てきた10のトラブルは、それぞれ異なる状況に見えますが、その根底には共通する3つの構造的な原因が存在します。

それぞれの原因を確認して、なぜ不動産相続はこれほどまでに揉め事を引き起こすのかの本質を理解しましょう。

原因1:不動産は現金と違い物理的に「分割しにくい」

不動産相続トラブルの最も根源的な原因は、その物理的な性質にあります。預貯金であれば1円単位で正確に分けられますが、土地や建物は物理的に分割することが極めて困難です。家を半分に切り分けることはできず、土地を分筆すればそれぞれの価値が大きく損なわれる可能性があります。

この「分割のしにくさ」が、単純な「いくらもらえるか」という量の問題ではなく、「誰がこの資産そのものを手に入れるか」という質の問題に直面することになります。

実際、司法統計年報によると、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件の総数7,903件のうち、不動産を含む遺産分割事件は3,678件です。約50%は不動産を含んだトラブルであることがわかります。

量の問題は数学で解決できますが、質の問題は主観的な価値観や感情がぶつかり合う交渉でしか解決できません。誰かが不動産そのものを諦め、代わりに現金を受け取るという大きな妥協をしなければならず、この妥協点の探り合いこそが、対立の直接的な引き金となるでしょう。

出典:最高裁判所事務総局|令和6年 司法統計年報 3家事編

原因2:評価額が高額で「公平な分割」が難しい

不動産は、価値の高い資産です。評価額を巡るわずかな見解の相違が、数百万円、時には数千万円の差となって現れるため、容易に妥協できなくなります。

もし争いの対象が数十万円の美術品であれば、家族の和を優先して譲歩する人も多いでしょう。しかし、対象が数千万円の不動産となると、譲歩による経済的損失は無視できないほど大きくなります

この高額な利害は相続人に「戦う価値がある」と判断させ、時間と費用、そして精神的な消耗を伴う争いにつながりかねません。

不動産の価値の高さは、単なる家族間の意見の相違を、簡単には後戻りできない本格的な紛争へとエスカレートさせる強力な要因です。

原因3:相続人それぞれの「感情や想い」が複雑に絡む

不動産、特に家族が暮らした「実家」は、単なる経済的価値を持つ資産ではありません。家族の歴史や個人のアイデンティティ、思い出が凝縮されたものです。

そのため、相続の場で争われるのは、登記簿上の所有権だけではありません。親からの愛情、長年の貢献への正当な評価、厄介な物件を誰が引き受けるか、家族の中での自分の立場といった、目に見えない無形の価値を巡る闘いともいえます。

法廷は、土地の評価額や寄与分の金銭的価値を算定することはできますが、こうした一人ひとりの「感情や想い」に値段をつけることはできません。

これこそが、法的な解決がなされた後も、家族の心には深い溝が残り、関係が修復不可能になってしまうケースが後を絶たない原因といえるでしょう。

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不動産相続トラブルを放置するとどうなる?

不動産の相続トラブルは、単に「誰が相続するか」だけの問題ではありません。

解決を先延ばしにすると、金銭的な負担や不動産そのものの価値、大切な親族関係にまで深刻な悪影響が及ぶ可能性があります。

具体的にどのようなリスクがあるのか、5つのポイントに分けて解説します。

固定資産税の負担が増加する

遺産分割協議がまとまらず不動産の登記名義を変更できない状態でも、固定資産税の納税義務は法定相続人全員に発生します。

この場合、相続人全員が連帯して納税する義務を負うため、誰か一人が代表して支払うか、あるいは誰も支払わないといった状況に陥りがちです。

もし滞納すれば延滞金が加算され、最終的には不動産が差し押さえられるリスクもあります。

特定の相続人が立て替えても、後から他の相続人に請求する際に新たなトラブルの火種になることも少なくありません。

不動産の価値が下落する

相続人の間で所有権が確定しない不動産は、実質的に誰も管理しない「塩漬け」状態になりがちです。適切なメンテナンスが行われなければ、建物は急速に老朽化し、庭は荒れ放題になるでしょう。

その結果、資産価値は時間とともに下落していきます。いざ売却しようと話がまとまった時には、想定よりずっと低い価格でしか売れなくなったり、買い手がつかなかったりする事態も起こり得ます。

管理責任の所在が曖昧になることで、不動産は価値を生むどころか、価値を失うだけの「負動産」と化す可能性があるでしょう。

売却や活用ができず、機会損失を生む

相続した不動産を売却したり、賃貸に出して収益化したりするためには、原則として相続人全員の同意と実印、印鑑証明書が必要です。

一人でも反対する人がいれば、たとえ市場のタイミングが良く、高値で売れるチャンスがあっても、その機会を逃してしまいます。

活用できない間も固定資産税や維持管理費はかかり続けるため、収益機会を失うだけでなく、マイナスのコストだけが増え続けるという二重の損失(機会損失)につながりかねません。

親族間の関係が悪化・断絶する

相続のトラブルは、これまで良好だった親族関係にも深刻な亀裂を生じさせる恐れがあります。

不動産という高額な資産が絡むと、「他の兄弟より親の面倒を見たのに」「昔、資金援助してもらったはずだ」といった過去の不満が噴出し、感情的な対立に発展しがちです。

話し合いがこじれるうちに、お互いに不信感を募らせ、次第に連絡すら取らなくなり、最終的には関係が断絶してしまうケースも珍しくありません。

問題を次世代に先送りしてしまう

相続トラブルを解決しないまま当事者が亡くなると、その権利と義務はさらにその子どもたち、つまり次の世代へと引き継がれます(数次相続)。

すると、関係者はネズミ算式に増えます。もともと関係のなかったいとこ同士などで、さらに複雑な遺産分割協議をしなければなりません。

話し合いはより困難を極め、解決までの時間も費用も増大します。

自分たちの代で解決すべき問題を先送りすることは、子どもや孫により大きな負担と争いの種を残してしまうことにもつながります。

なお、共有名義人が死亡した場合の手続きや注意点については、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:不動産の共有名義人が死亡したらどうなる?誰が相続するか、手続きの流れなどを解説

弁護士 佐々木一夫

不動産相続トラブルを放置することは避け、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。

相続問題で迷った際の
お役立ちガイド

相続における不公平や相続関係者のトラブルでお悩みの方は、
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不動産相続トラブルが発生した際の解決方法

予防策を講じられず、実際にトラブルが発生してしまった場合でも、冷静に対処することが重要です。法的な解決プロセスは、当事者間の話し合いから始まり、段階的に公的な手続きへと移行していきます。

各ステップの特徴を理解し、適切な対応を選択しましょう。

STEP

ステップ1:まずは相続人全員で話し合う(遺産分割協議)

解決の第一歩は、相続人全員による話し合い、「遺産分割協議」です。裁判所などが関与せず、当事者だけで交渉します。

この段階で相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる自由な内容で遺産を分けることが可能です。

遺産分割協議を成功させるためには、まず全ての相続人と全ての相続財産を正確に確定させることが不可欠です。一人でも相続人が欠けていたりすると、協議が無効になったり、やり直しになったりする可能性があります。

遺産分割協議で合意することができれば、家族が自分たちの手で遺産分割の問題を解決することができます。ここで合意できないと、第三者(調停委員や裁判官)が介入する手続きを利用することになります。感情的な対立を乗り越え、全員が納得できる着地点を見出す努力を最大限に行うべき段階といえるでしょう。

合意に至った場合は、その内容を法的に有効な「遺産分割協議書」として書面に残すことが重要です。

STEP

ステップ2:話がまとまらない場合は「遺産分割調停」を申し立てる

当事者間の話し合い(遺産分割協議)が決裂した場合、次のステップとして、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。

調停とは、裁判官1名と民間の有識者から選ばれた調停委員2名で構成される調停委員会が中立的な立場で当事者の間に入り、話し合いを仲介する手続きです。

調停では、当事者が直接顔を合わせるのではなく、それぞれが個別に調停委員と話し合いを進めるのが一般的です。これにより、感情的な衝突を避け、冷静に自身の主張を伝えられます。調停委員は、双方の意見を聞いた上で、法的な観点や過去の事例に基づいた解決案を提示し、合意形成を促します。

調停は、あくまで話し合いによる解決を目指す場であり、裁判所が一方的に結論を押し付けることはありません。もし全員が合意に至れば、その内容は「調停調書」にまとめられ、これは確定判決と同じ法的効力を持ちます。

調停は、専門家の助けを借りて、交渉による平和的解決を目指す手続きといえるでしょう。

遺産分割調停については、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:遺産分割調停を起こす際の流れや注意点、弁護士費用を解説

STEP

ステップ3:調停不成立の場合は「遺産分割審判」に移行する

調停でも話し合いがまとまらなかった場合(調停不成立)、手続きは「遺産分割審判」へと移行します。審判とは、話し合いではなく、裁判官(審判官)が法的な判断を下す手続きです。

遺産分割審判では、当事者双方が提出した主張書面や証拠資料に基づき、裁判官が、法律に則って最も公平妥当と判断する分割方法を決定します。決定事項は「審判」として当事者に告知され、不服申し立てがなければ確定します。

遺産分割審判については、以下の記事でも詳細に解説しています。

関連記事:遺産分割審判の流れは?弁護士費用や審判確定時の対処についても紹介

遺産相続のトラブルについては、以下の記事でも詳しく解説しています。トラブルについてより詳細に情報を収集したい人は、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:遺産相続トラブルが起こったらどうする?よくある原因や相談先を紹介【弁護士監修】

弁護士 佐々木一夫

不動産相続トラブルの解決は、自分一人では難しい場合があるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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不動産相続のトラブル解決を弁護士に依頼するのがおすすめ

不動産相続のトラブルは、法律・税務・感情が複雑に絡み合うため、当事者だけで解決するのは極めて困難です。専門家である弁護士に依頼することで、多くのメリットが得られます。

以下、それぞれ具体的に解説します。

感情的な対立を避け、冷静に交渉してもらえる

家族間の争いは、どうしても感情論になりがちです。過去の不満や恨みが噴出し、本来の争点である遺産分割から話が逸れてしまうことが少なくありません。

弁護士が代理人として交渉の窓口に立つことで、このような感情的な消耗戦を避けられます。弁護士は、依頼人の主張を汲み取り、相手方と冷静かつ論理的に交渉するためです。これにより、相手方との直接的な衝突を回避し、依頼人は精神的なストレスから解放されます。

問題が法的な争点に絞られることで、客観的な事実に基づいた建設的な話し合いが可能となり、解決への道筋が見えやすくなるでしょう。

適切な解決策を提案・実行してもらえる

相続問題に直面した当事者は、目の前の対立に視野が狭まりがちです。

弁護士は、豊富な知識と経験に基づき、依頼人にとって最善となる選択肢を提示してくれます。

例えば、不動産の分割方法について、それぞれのメリット・デメリットや税務上の影響を具体的にシミュレーションし、適切な案を提案してくれます。

また、「特別受益」や「寄与分」といった主張が可能かどうかを的確に判断し、証拠に基づいて説得力のある主張を組み立ててくれるでしょう。

複雑な手続きや書類作成を一任できる

相続手続きには、戸籍謄本の収集から相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、最終的な不動産の相続登記まで、膨大で専門的な事務作業が伴います。

これらの手続きには厳格なルールがあり、一つでも不備があれば、手続きが滞ったり、最悪の場合、合意そのものが無効になったりしかねません。

弁護士に依頼すれば、これらの煩雑な手続きを全て正確かつ迅速に代行してもらえます。

慣れない事務作業の負担から解放され、時間と労力を大幅に節約することが可能です。適切な書類を作成することで、将来再びトラブルが蒸し返されるリスクを防ぐことにもつながるでしょう。

以下の記事では、相続に強い弁護士の選び方や費用相場について具体的に解説しています。これから弁護士への相談・依頼を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:相続に強い弁護士の選び方とは?確認すべき8つのポイントや費用相場を解説

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不動産相続について知っておきたい注意点

不動産相続を巡る法律や制度は、社会の変化に対応して改正されています。

特に近年、全ての相続人が知っておくべき重要な変更がありました。

これらの注意点をしっかり理解し、思わぬ不利益を被るリスクを減らしましょう。

2024年4月から相続登記が義務化されている

これまで任意とされてきた不動産の相続登記が、2024年4月1日から法律上の義務となりました。これは、所有者不明の土地が社会問題化していることを受けた措置です。

具体的には、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、法務局へ相続登記を申請しなければなりません。法改正前に発生した相続にも適用され、過去に相続した未登記の不動産は、2027年3月31日までに登記する必要があります。

正当な理由なくこの義務を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。

これまでのように問題を先送りすることは許されず、全ての相続人に対して、速やかな権利関係の確定を強く促すものとなっています。

出典:法務省|相続登記の申請義務化について

相続放棄した場合も空き家の保存義務は継続する

遺産に価値のない空き家や、多額の負債がある場合、「相続放棄」を選択することがあります。しかし、相続放棄をすれば全ての責任から解放されるわけではない点には注意が必要です。

2023年4月に改正された民法により、相続放棄をした人でも、その不動産を「現に占有していた」場合には、保存する義務が残ることが明確化されました(民法940条)。

例えば、亡くなった親と同居していた子が相続放棄をした場合、その子は次の相続人や相続財産清算人に不動産を引き渡すまで、その家を適切に管理・保存する義務(保存義務)を負い続けます。

この義務を怠り、空き家が倒壊して隣家や通行人に損害を与えた場合などは、損害賠償責任を問われる可能性があります。

相続放棄は権利を放棄する手続きですが、社会に対する一定の責任までが自動的に免除されるわけではないことを、深く認識しておきましょう。

弁護士 佐々木一夫

より詳細に注意点を把握したいなら、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

出典:e-Gov法令検索|民法

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不動産相続のトラブルに関するよくある質問(FAQ)

ここでは、不動産相続に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。

相続放棄すれば、空き家の管理責任はなくなる?

相続放棄しても、空き家の管理責任はなくなりません

相続放棄をしても、その空き家を「現に占有していた」場合は、次の相続人や家庭裁判所が選任する「相続財産清算人」に管理を引き継ぐまで、建物の現状を維持する「保存義務」が残ります。

もし、被相続人とは別に暮らし、空き家の管理に全く関与していなかった場合は、この保存義務を負いません。

相続で揉める家族にはどのような特徴がある?

全てのケースに当てはまるわけではありませんが、相続トラブルに発展しやすい家族には、いくつかの共通した特徴が見られます。

  • 兄弟仲が悪い、または疎遠
  • 複雑な家族構成
  • 生前の不公平感
  • 財産管理の不透明さ

普段からコミュニケーションが不足していると、相続を機に不満が爆発しやすくなります。また、前妻の子など、関係性の薄い相続人がいることも感情的な対立が起きやすくなる要因の一つです。

さらに、特定の子供だけが多額の生前贈与を受けていたり(特別受益)、親の介護負担が一人に偏っていたり(寄与分)すると、他の相続人の不満の原因となります。

相続で一番揉めやすい金額はどれくらい?

最高裁判所の司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件のうち、実に75%以上が遺産総額5,000万円以下の家庭で起きています。特に1,000万円超5,000万円以下の層が最も多いのが特徴です。

これは、富裕層は相続税対策の必要性から生前に専門家へ相談し、遺言作成などの準備をしていることが多いのに対し、一般家庭では「うちは財産が少ないから大丈夫」と対策を怠りがちであることが一因です。

結果、遺産の中心が「分けにくい実家」のみといった状況で相続が発生し、感情的な対立が深刻化しやすくなっています。

出典:最高裁判所事務総局|令和6年 司法統計年報 3家事編

相続で「負けるが勝ち」とはどういう意味?

相続における「負けるが勝ち」とは、目先の金銭的な利益に固執して争い続けるよりも、ある程度の譲歩(負け)をすることで、結果的により大きな利益(勝ち)を得るという考え方です。

ここでの「勝ち」とは、金銭だけを指すものではありません。以下の要素も含んでいます。

  • 家族関係の維持
  • 時間と費用の節約
  • 精神的平穏の確保

裁判で徹底的に争えば、たとえ金銭的に勝ったとしても、兄弟や親族との縁が切れてしまう可能性は高いでしょう。円満な関係を維持することは、お金には代えがたい価値があります。

また、相続争いが長引けば、数年にわたる弁護士費用や裁判費用で、得られるはずだった遺産が大きく目減りしてしまいます。早期に解決することは、経済的にも合理的です。

終わりが見えない争いは、心身も著しく疲弊します。争いから解放され、穏やかな日常を取り戻すこと自体が、大きな「勝ち」といえるでしょう。

まとめ|不動産相続トラブルは一人で悩まずに専門家へ相談しよう

この記事では、不動産相続を巡る複雑な問題について、10の典型的なトラブルを紹介しました。また、その根底にある3つの根本原因や、生前にできる予防策、発生後の解決ステップまで解説してきました。

不動産相続を円滑に進めるためには、単なる「法律」や「お金」の問題ではなく、「家族の心理」が深く関わる複合的な課題であると理解することが大切です。成功裏に相続を終えるには、これら3つの側面すべてに目配りした戦略が欠かせません。

もし今、不動産相続の問題に直面している、あるいは将来の不安を感じているのであれば、まずは、客観的かつ専門的なアドバイスを求めることが重要です。

弁護士 佐々木一夫

交渉を始める前に、自身の法的な権利を正確に把握しておきましょう。

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この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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