共有物分割請求とは?| 流れ、メリット・デメリット、拒否はできる?訴訟とは?

共有物分割請求とは、複数人で共有している不動産などの共有状態を、法的手続きによって解消するための制度です(民法256条)。

相続や共同購入をきっかけに不動産を親族と共有名義のまま所有していると、売却や活用の際に共有者全員の同意が必要となり、「一人が反対して話が進まない」「連絡が取れない共有者がいる」といった悩みを抱えることになりかねません。共有物分割請求は民法で各共有者に認められた権利であり、原則として相手方が拒否することはできません。

本記事では、共有物分割請求の基本的な仕組みや現物分割・代償分割・換価分割といった分割方法、協議から調停・訴訟へと進む手続きの流れ、メリット・デメリット、弁護士に依頼する場合の費用相場まで詳しく解説します。共有不動産の問題でお悩みの方は、解決の参考にしてください。

目次

共有物分割とは?

共有物とは、一つの不動産や財産を複数人で所有している状態のものを指します。たとえば相続によって兄弟姉妹が同じ土地を受け継いだ場合や、夫婦で購入した不動産などが典型例です。

共有状態にある不動産は、全体を売却したり活用したりするために原則として共有者全員の同意が必要となります(民法第251条1項)。一人でも反対する者がいれば売却は進まず、誰も住んでいない物件でも固定資産税や管理費を払い続けなければならない、という不都合な状況が生まれます。

共有物に対する行為は、大きく次の3つに分類されます。

行為の種類 具体的な内容 必要な同意の範囲
保存行為 建物の修繕、不法占拠者への明け渡し請求など 各共有者が単独で可能
管理行為 新規の賃貸借契約(短期のもの)、賃料の改定など 持分価格の過半数
変更行為 不動産全体の売却、賃貸借契約(長期のもの)、建物の取り壊しなど 共有者全員の同意(※形状・効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」は持分価格の過半数で可能〔民法251条1項・252条1項〕)

このような制約から抜け出し、共有状態を法的に解消するための手続きが「共有物分割請求」です。

分割方法の3種類(現物分割・代償分割・換価分割)

共有物を分割する方法は、大きく以下の3種類があります。協議・調停・訴訟のいずれの段階においても、この3つの方法のいずれかが選択されます。

現物分割

現物分割とは、共有不動産を共有持分に応じて物理的に分割する方法です。たとえば、2人の共有者が2分の1ずつ持分を持つ土地を、2分の1ずつ2筆の土地に分けて各自の単独所有とします(土地の場合は「分筆」という登記手続きによって実現します)。

現物分割が困難なケース

  • 1棟の建物を物理的に分けることはできない(建物は対象外)
  • 分割後に土地が狭小化し、利用価値が著しく下がる場合
  • 接道義務や建ぺい率などの建築基準法上の制約がある場合

現物分割は、土地の広さや形状にゆとりがあり、分割後も十分な活用が見込める事案に適しています。

代償分割

代償分割とは、共有者の一人が不動産全体を単独で取得する代わりに、他の共有者に持分に応じた代償金(現金)を支払う方法です。不動産をそのままの状態で利用し続けられる点がメリットです。

適用されやすい条件

条件 詳細
支払い能力の有無 不動産を取得する側に代償金を支払うだけの十分な資力がある
取得の合理性 対象不動産に居住しているなど、特定の者が取得する理由がある

なお、2021年(令和3年)の民法改正(2023年4月1日施行)により、代償分割(「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」)が民法258条2項に明文化されました。

換価分割

換価分割とは、共有不動産を売却して、その代金を各共有者の持分割合に応じて分配する方法です。協議・和解で合意した場合は任意売却、訴訟判決の場合は競売によって実施されます。

現物分割も代償分割も適用できない事案において最終的に選択される方法であり、共有関係を金銭で完全に清算できる点がメリットです。ただし、競売を伴う場合は経済的リスクがあります(後述)。

民法第258条3項では、分割方法の検討順序が次のように明文化されています。

  1. 現物分割または代償分割
  2. 換価分割(競売)

遺産分割との違い

共有物分割と遺産分割はどちらも「複数人の財産を分ける手続き」ですが、対象と目的、そして管轄裁判所が異なります。

比較項目 対象・目的 管轄裁判所・手続き
共有物分割 不動産などの共有状態そのものを法的に解消するための手続き 地方裁判所(共有物分割請求訴訟)
遺産分割 被相続人の遺産全体を対象に相続人同士で分け合う手続き 家庭裁判所(遺産分割調停・審判)

相続開始後、遺産分割協議が終わるまでの共有状態を「遺産共有」と呼びます。この遺産共有を解消するには、地方裁判所での共有物分割請求訴訟ではなく、家庭裁判所での遺産分割調停や審判を利用するのが原則です。

ただし、相続開始から10年を経過したときは、遺産共有持分についても地方裁判所での共有物分割請求訴訟を利用できるようになります(民法258条の2第2項)。もっとも、他の相続人が訴訟の通知を受けた日から2か月以内に異議の申出をした場合には、共有物分割訴訟によることはできず、遺産分割の手続きによることになります(同項ただし書・同条3項)。

相続によって不動産が共有状態になった事案では、まず遺産分割を先行させ、その後に権利関係の解消が必要であれば共有物分割の手続きへ移行するのが一般的な流れです。

また、共有者の一人が亡くなり、その持分が相続人に引き継がれるなどして「通常の共有」と「遺産共有」が混ざり合う複雑な事案も存在します。このようなケースでは、共有物分割請求訴訟だけで遺産共有の問題まで完全に解消されるとは限らない点に注意が必要です。

共有状態の解消方法(全体売却・持分売却・分筆等)

相続等で不動産が共有状態となった場合、状況に応じた方法で共有状態の解消を図ることができます。主な解消方法は以下の7つです。

① 共有不動産の全体を第三者に売却する 共有者全員の同意があれば第三者に売却し、共有状態を解消できます。全体売却であれば通常の不動産売買と同様に手続きを進められ、市場価格での売却が可能です。

② 土地の分筆で単独名義にする(土地のみ) 共有不動産が土地のみの場合、分筆によって各共有者が単独名義を取得できます。ただし分筆には共有者全員の同意が必要で、接道条件や土地形状によっては均等分割が困難な場合があります。

③ 他の所有者の持分をすべて購入する 他の共有者全員の持分を買い取ることで単独名義にできます。ただし全員が売却に同意する必要があり、交渉が難航することもあります。

④ 自分の持分を他の共有者に売却する 他の共有者への売却は、他の共有者の同意は不要です。不動産をそのまま残しつつ共有状態から離脱できます。ただし価格面で合意が必要です。

⑤ 自分の持分を第三者に売却する 自己の共有持分は各共有者が単独で自由に処分できるため、他の共有者の同意なく第三者へ売却できます。ただし買い手が限定されるため、市場価格より大幅に低い価格での売却となるケースが多く、買取業者に流れるケースが多いです。また、他の共有者との関係悪化を招くリスクがあります。

⑥ 持分を放棄する 自分の持分を放棄することで、持分は他の共有者に帰属します。最も簡単に共有状態から離脱できる方法ですが、売却代金は得られません。また、他の共有者が登記手続きに協力しない場合は登記引取請求訴訟などの手間や費用がかかることもあります。

この方法は、例えば悪質な業者からリゾートマンションの共有持分権を詐欺的に売り付けられた場合などに有効な場合があり、当事務所でも持分放棄から登記引取請求訴訟を提起して共有関係から離脱した実例があります。

なお、持分の放棄により他の共有者に持分が帰属した場合(民法255条)、税務上は他の共有者への贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる可能性がある点にも注意が必要です(相続税法9条)。

⑦ 共有物分割請求を経て売却する 話し合いだけでは共有状態が解消できない場合、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起し、裁判所の判断にもとづいて換価分割・代償分割・現物分割などによって解消する方法です。持分のみを第三者へ売却するよりも高額で現金化できる可能性があり、大きなメリットが期待できる選択肢です。

競売のリスク(市場価格より低くなる)

訴訟判決によって換価分割(競売)が命じられた場合、一般市場での任意売却と比較して売却価格が低くなるリスクがあります。

競売のリスクと注意点

リスク 概要
売却価格の低下 市場での任意売却に比べ、5〜7割程度の低い価格で落札される傾向があり、状況によっては市場価格の半値程度になることもある
手続きの負担 判決が確定しても自動的に換価されず、別途「形式的競売」の申立てを要する
譲渡所得税の負担 不動産を譲渡したことによる税金(譲渡所得税等)が別途発生する

競売手続の流れは以下のとおりです。

  1. 裁判所の執行官が「現況調査報告書」を作成
  2. 不動産鑑定士が対象不動産を鑑定評価し「評価書」を作成
  3. 裁判所が評価書をもとに売却基準額を決め「物件明細書」を作成
  4. 入札期間と開札期日・売却決定期日を決め、入札・開札
  5. 最高価格で入札した人が購入権を取得
  6. 裁判所が売却許可を決定し、落札者が代金を納付
  7. 売却代金から共益費用を差し引いた残額を共有持分割合に応じて配当

このような経済的損失を防ぐ観点から、判決に至る前に当事者間で協力し、一般市場での任意売却を検討することが有効な選択肢となります。

共有者との関係悪化リスク

共有物分割請求は相手方に対して法的なアクションを起こす性質を持つため、共有者との関係が険悪になるリスクもゼロではありません。

特に親族間で不動産を共有している場合、感情的な対立が引き金となり、次のような影響を及ぼす事態も想定されます。

  • 冠婚葬祭などの親戚付き合いが困難になる
  • 将来発生する別の相続問題において協力が得られなくなる
  • 共有者以外の親族も巻き込んだ深刻なトラブルに発展する

このような事態を避けるためには、いきなり法的手続きに踏み切るのではなく、まずは代理人(弁護士)を立てた冷静な協議を試みるなど、摩擦を最小限に抑えるための配慮が求められます。

また、事務的で高圧的な文面の内容証明郵便をいきなり送付すると、感情的なしこりを残す原因になります。協議の申入れを内容証明郵便で行う場合でも、文面や送付のタイミングには配慮が必要です。まずは円満な話し合いの糸口を探る姿勢が、最終的な解決を早める鍵となります。

放置するリスク(共有状態を放置すると複雑化)

共有名義の不動産を放置することは大変危険です。時間の経過とともに、以下のような重大なリスクを抱え続けることになります。

① 金銭的な負担が継続する 誰も住んでいない物件でも固定資産税や管理費の支払いは続きます。また、共有者間で負担割合が明確でない場合は、費用をめぐるトラブルに発展することもあります。

② 資産価値の下落・倒壊リスク 建物の老朽化による資産価値の下落が進みます。倒壊によって第三者に損害を与えた場合は、民法第717条に基づく損害賠償責任を共有者全員が負う可能性もあります。

③ 権利関係がさらに複雑化する 数次相続(相続が繰り返されること)の発生により共有者が増加し、権利関係がさらに複雑化します。世代交代によって関係者が増えると合意形成は著しく困難になります。

④ 空き家問題への発展 誰も住んでいない共有の実家が空き家となり、近隣住民への迷惑や行政からの指導につながるリスクがあります。

売却の決断を先延ばしにしても、決して状況が好転するわけではありません。「自分の代で終わらせる」という強い決意を持って、早期に専門家へ相談することが重要です。

共有物分割請求とは

共有物分割請求とは、複数人で共有している財産の共有状態を解消するための法的手続きです。

民法第256条において、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定められています。不動産の一部を持分として所有している場合、単独で自由に売却したり活用したりすることはできません。共有物分割請求は、この不便な状態から抜け出し、単独所有や現金化を目指すための正当な権利です。

具体的には、共有者間の協議から始まり、解決しない場合は調停、さらに解決しない場合は裁判所への訴訟という流れで進みます。最終的には裁判所の判断によって強制力をもって共有状態が解消される仕組みとなっています。

協議や裁判所の判断により、対象不動産を売却して換価分割するケースでは、自身の共有持分だけを売るよりも実勢価格に近い適正価格で売却できるため、金銭的な不利益を最小限にとどめることも可能です。

共有物分割請求の手続きの流れ(協議→調停→訴訟)

共有物分割請求は、当事者間の協議から始まり、解決しない場合は裁判所を介した手続きへと段階的に進むのが原則です。

STEP 1:まずは共有者間で話し合う(協議)

共有物分割を進めるにあたり、最初に行うべき手続きは共有者全員による協議です。裁判所を介さずに話し合いで合意できれば、解決までの時間や費用を大幅に抑えることが可能です。

話し合いの主な論点は以下のとおりです。

  • 誰が不動産を取得するのか(または売却するのか)
  • 代償金を支払う場合、その金額と支払い期日はいつか
  • 各自が負担する手続き費用の割合

全員の合意が形成できた段階で、その内容を「共有物分割協議書」という法的な書面にまとめ、名義変更などの具体的な手続きへ移行します。

なお、後に共有物分割請求訴訟を提起するには「共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないとき」(民法258条1項)という要件を満たす必要があるため、協議を行ったことを証明できるよう、協議申入れは内容証明郵便で行うことが推奨されます。

STEP 2:話がまとまらない場合は共有物分割請求調停を行う

当事者間の協議で合意に至らない場合、簡易裁判所へ共有物分割請求調停を申し立てる方法が考えられます。

調停では、中立な立場である調停委員が当事者の間に入り、双方の意見を調整しながら解決の糸口を探ります。

調停のメリット

  • 第三者の介入により冷静な話し合いが実現しやすい
  • 合意内容をまとめた「調停調書」には確定判決と同等の法的効力がある
  • 訴訟と異なり、強制的な判断は下されないため、柔軟な解決が可能

ただし、次に述べる通り共有物分割請求については調停前置主義が採用されていないため、調停を経ずに直接訴訟を提起することも可能です。

STEP 3:調停でも解決しない場合は共有物分割請求訴訟を提起する

調停が不成立に終わった場合の最終手段として、地方裁判所に共有物分割請求訴訟を提起します。

なお、共有物分割請求訴訟は、共有者全員について合一に確定する必要がある訴訟(固有必要的共同訴訟)であるため、訴えを提起する共有者は、他の共有者全員を被告としなければなりません。一部の共有者を漏らして提起した訴えは不適法として却下されるため、訴訟提起前の共有者(相続人)の調査が極めて重要です。

訴訟では、裁判官が双方の主張や証拠を総合的に考慮し、法的な観点から分割方法を決定します。審理の過程では、判決前に和解の打診や不動産鑑定士による専門家調査が行われることもあります。

審理中の主な手続き 概要
和解協議(和解勧告) 判決に至る前に裁判官から譲歩による解決が提案される
鑑定手続き 適正な価格を判断するため不動産鑑定士による評価が行われる

提案された和解に応じない場合は、最終的に裁判所の判決が下されます。

このように共有物分割訴訟は極めて解決力が高いですし、訴訟手続きの中で調停と同様に話し合いもしますので、当事務所では調停は行わずに共有物分割訴訟を提起することが圧倒的に多いです。

「まず協議、次に調停」という基本フロー説明

共有物分割請求の手続きは、次の3段階で進みます。各段階の所要期間の目安は以下のとおりです。

段階 手続き 期間の目安
第1段階 共有者間での協議 3〜4か月程度
第2段階 簡易裁判所での調停 6か月〜1年程度
第3段階 地方裁判所での訴訟 6か月〜1年程度(判決まで)

協議段階は、内容証明郵便による申し入れと話し合いを経て、合意に至れば終了します。合意書(共有物分割協議書)を作成し、具体的な手続き(登記等)へと進みます。

調停段階は、家庭裁判所に申立てを行い、調停委員を仲介として話し合いを進めます。合意が成立すれば調停調書が作成されます。ただし、調停は強制力がないため、合意の見込みがない場合はスキップして訴訟に進むこともできます。

訴訟段階では、訴状を地方裁判所に提出し、複数回の口頭弁論を経て判決または和解で決着をつけます。

この「協議→調停→訴訟」という流れは、早い段階で解決できるほど時間・費用・関係者へのダメージを小さく抑えられます。弁護士への早期相談が、早期解決の最大のカギとなります。

共有物分割請求は原則拒否できない

共有物の各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法第256条1項本文)。したがって、共有者の誰かが共有物分割請求をした場合、原則として共有状態の解消を拒否することはできません。

共有物分割請求を受けた場合、協議や調停に応じないことは技術的には可能です。しかし、相手方の請求を無視していると、最終的には共有物分割請求訴訟を提起されることになります。訴訟では、裁判所の判決によって強制的に分割方法が決められてしまいます。

請求を無視することのリスク

  • 相手方に訴訟を提起される
  • 判決で換価分割(競売)が命じられるケースが多い
  • 競売では市場価格より低い価格での売却になりやすい
  • 裁判所が選任する不動産鑑定費用も発生する可能性がある
  • 長期化により精神的ストレスと手間・費用がかかり続ける

被請求側が取るべき対処法

  • まず「不動産を手放すか、手放さないか」の方針を早めに決める
  • 訴訟に発展する前に誠実に協議・交渉に応じる
  • 弁護士に相談し、法律上の根拠に基づいた交渉を行う

不利な判決とならないためには、交渉や調停の段階から積極的に対応して自分の意見を主張しておくことが重要です。

共有物分割請求訴訟のメリット・デメリット

メリット

メリット 詳細
分割に反対する共有者がいても解決できる 裁判所の判断で共有状態の解消へ進められる(民法258条)
適正価格での精算を目指せる 不動産鑑定士の評価など、客観的な基準を用いた公平な価格算定が可能
和解による早期解決の可能性 判決を待たず、裁判上の和解によって早期解決できる場合がある
関係悪化の防止 弁護士が代理人として交渉することで、当事者間の直接対立を避けられる
膠着状態を打破できる 長年解決できなかった共有関係を、判決や和解によって法的に整理できる

デメリット

デメリット 詳細
時間と費用がかかる 解決まで半年〜1年以上かかることが多く、弁護士費用・鑑定費用が発生する
期待した結果にならない場合がある 最終的な分割方法は裁判所が決定するため、希望がそのまま通るとは限らない
競売による価格低下リスク 換価分割(競売)が命じられた場合、市場価格より低い価格での売却となる可能性がある
追加手続きが必要になることがある 競売の場合、判決確定後に改めて形式的競売の申立てが必要で、代金分配まで更に期間がかかる

希望する分割方法と想定されるリスクの例:

希望する分割方法 想定されるリスク
不動産を単独で取得したい 相手の事情が考慮され、物件の競売を命じられるおそれがある
高値で売却して現金化したい 競売による市場価格より低い金額での処分となる可能性がある

共有物分割請求を検討すべきケース(具体的な状況例)・例外ケース(不分割特約/遺産共有/区分所有)

検討すべき具体的なケース

共有状態を放置すると権利関係がさらに複雑化し、将来的なトラブルの火種になりかねません。特に以下の状況に直面している場合は、早期に共有物分割請求を検討することが推奨されます。

  • 自分の持分だけを売却して現金化したいが買い手が見つからない
  • 不動産全体を売却したいが他の共有者が反対している
  • 誰も住んでいない共有の実家が空き家になり維持費だけがかかっている
  • 特定の共有者が不動産を独占し、不公平な利用状態が続いている
  • 共有者の高齢化により、将来的な相続で権利の細分化が懸念される
  • 離婚後も夫婦共有名義のまま残っている不動産の処理で揉めている
  • 相続で共有となった実家や土地の活用方法について、兄弟姉妹間で意見が割れている
  • 共有者の一人が単独で不動産を占有して話し合いに応じない
  • 一部の共有者と連絡が取れず行方不明になっている

これらのトラブルは当事者間の協議だけでは解決が長引く傾向にあるため、法的な観点から状況を整理していくことが大切です。

共有物分割請求ができない・制限される例外ケース

共有物分割請求は各共有者に認められた権利ですが、あらゆる状況で無条件に行使できるわけではありません。以下のケースでは、ただちに分割を求めることが認められにくい場合があります。

例外ケース 根拠法
共有者間で最長5年間の不分割特約を定めている期間中 民法第256条1項
境界線上の界標・塀やマンションの共用部分など、性質上分割が困難なもの 民法第257条・区分所有法
遺産分割協議が未完了で不動産が遺産共有の状態にある(相続開始から10年未満) 民法第258条の2第1項
マンション(区分所有建物)の専有部分と敷地利用権(原則として切り離して処分不可) 区分所有法第22条1項

マンション(区分所有建物)の場合の注意点: マンションなどの区分所有建物については、制度上は共有物分割を請求することが可能です。しかし、部屋の専有部分と土地の敷地利用権は一体化しており、原則として切り離して処分することは認められません。敷地のみの分割は建物の管理に支障をきたすため、裁判所でも否定される傾向にあります。そのため、物理的な分割ではなく、物件全体の売却や代償金の支払いによる清算を目指すのが現実的な対応となります。

訴訟期間(半年〜1年程度)

共有物分割訴訟の解決までの期間は事案によって異なりますが、おおむね以下が目安です。

ケース 期間の目安
比較的シンプルな事案(判決まで) 訴訟提起から約半年
競売になるケース(競売完了まで) 訴訟提起から約8か月〜1年程度
長期化するケース 訴訟提起から2年以上

期間が長引く主な要因

  • 共有者の人数が多く、意見の集約が困難な場合
  • 不動産の評価額や分割方法に関する主張が激しく対立している場合
  • 訴訟において不動産鑑定士による正式な鑑定手続きが必要となる場合
  • 途中で新たな相続が発生し、法定相続人の再調査が必要になった場合
  • 遺言書や遺産分割協議書の効力が争われ難航した場合
  • 控訴・上告に至った場合

また、換価分割(競売)が命じられた場合は、判決確定後にも形式的競売などの追加手続きが必要なため、代金の分配までにさらに期間がかかります。

訴訟の各ステップごとの所要期間(月単位の詳細)・競売申立て〜配当までの具体的手順と期間・控訴・上告の期間

訴訟提起前の準備

共有物分割請求訴訟を提起するには、訴状を作成し、証拠や必要書類を揃える必要があります。この準備段階に2〜3か月程度かかることが多いです。

訴訟提起に必要な書類

  • 訴状の正本・副本
  • 収入印紙・郵便切手代
  • 登記簿謄本
  • 固定資産税評価証明書
  • 協議を開始する内容証明郵便
  • 証拠書類写し 等

管轄裁判所

  • 被告の住所地などを管轄する裁判所
  • 不動産の所在地を管轄する裁判所(いずれか選択可)

訴訟費用(収入印紙代の計算式)

  • 土地:固定資産税評価額 × 持分割合 × 1/6
  • 建物:固定資産税評価額 × 持分割合 × 1/3

各ステップと所要期間の詳細

ステップ 内容 所要期間の目安
①訴え提起 訴状等を裁判所に提出・費用納付 準備含め2〜3か月
②訴状の送達・呼出状の送付 被告への特別送達 訴訟提起から約1か月後
③第1回口頭弁論期日 訴状・答弁書の陳述 訴訟提起から約1〜2か月後
④第2回以降の口頭弁論期日 双方の主張・立証(複数回) 約1か月おきに複数回(概ね3〜6回)
⑤審理終結・判決 裁判所による判決の言い渡し 審理終結後2〜3か月
⑥判決の確定または控訴・上告 不服申立ての手続き 判決書の送達を受けてから2週間以内
⑦競売申立て・配当(換価分割の場合) 地方裁判所への競売申立て〜代金分配 競売完了まで約半年

控訴・上告について: 判決に不服がある当事者は、判決書の送達を受けてから2週間以内に高等裁判所に対して控訴できます(民事訴訟法第281条1項・第285条)。高等裁判所の判決に対してはさらに最高裁判所への上告も可能です(民事訴訟法第311条1項・第318条1項)。控訴・上告を行う場合は、解決までの期間がさらに長期化します。

分割禁止特約(最長5年)

共有物の分割を避ける方法として、共有物分割禁止特約を締結する方法があります。

共有物分割禁止特約とは、共有者全員の合意によって、5年を超えない範囲で共有物の分割を禁止する特約のことです(民法第256条1項ただし書)。

特約の主なルール

  • 共有者全員の同意が必要(一部の共有者のみでは効力なし)
  • 有効期間は最長5年(これを超える合意は無効)
  • 特約の更新も可能だが、更新後の期間は、更新の時から5年を超えることができない(民法256条2項)
  • 更新を繰り返すことで、結果として当初から通算5年を超えて不分割の状態を維持することは可能

登記による第三者への対抗: 共有物分割禁止特約は、登記しておけば特定承継人(共有持分を譲り受けた人)にも特約の効力を主張できます(不動産登記法第59条6号)。逆に登記していない場合、持分を第三者が取得したとき、その第三者には特約を主張できない可能性があります。

注意点

  • 特約は共有者が共有物分割請求を行う前に締結する必要があります
  • 請求された後では特約を締結しても意味がありません
  • 当初から5年を超える特約を締結した場合、「5年以内の範囲で有効」となるのではなく、特約全体が無効となります

遺産共有と通常共有の管轄裁判所の違い(家裁・地裁)・調停前置主義の不適用・訴訟期日の詳細進行

管轄裁判所の違い

不動産が共有状態になる原因が相続である場合、通常の手続きとは異なる対応が求められます。

共有の種類 管轄裁判所と主な解決手続き
通常の共有(共同購入、離婚時の財産分与など) 地方裁判所(共有物分割請求訴訟)
遺産共有(相続開始から遺産分割完了まで) 家庭裁判所(遺産分割調停・審判)
相続開始から10年経過後の遺産共有 地方裁判所での共有物分割請求訴訟も可(民法第258条の2第2項)

相続由来のトラブルであっても、「何を解決したいか」によって使うべき手続きや管轄する裁判所が分かれます。また、共有者の一人が亡くなり持分が相続人に引き継がれるなどして、通常の共有と遺産共有が混ざり合う複雑な事案も見受けられます。このようなケースでは共有物分割請求訴訟だけで遺産共有の問題まで完全に解消されるとは限りません。

調停前置主義の不適用

裁判所の手続きには、「訴訟を提起する前に必ず調停を経なければならない」調停前置主義が採用されているものがあります。しかし、共有物分割請求訴訟については調停前置主義は採用されていません。

そのため、当事者間の協議が不調であれば、調停を経ずに直接訴訟を提起することも可能です。もっとも実務上は、事案に応じて前段階として調停による解決を試みるケースも多く存在します。

調停を経るかどうかの判断基準

  • 協議の段階で全く歩み寄りができなかった場合、調停に移行しても解決の可能性は低いことが多い
  • 一方で、調停では第三者(調停委員)が立ち会うため、当事者同士よりも話がまとまりやすくなることもある
  • 調停を拒否して訴訟に移行させることも可能(ただし相手方も訴訟の判決で不利になるリスクを認識することで歩み寄るケースもある)

訴訟期日の詳細進行

訴状の提出から1〜2か月後に第1回口頭弁論期日が開かれます。その後、1か月〜1か月半に1回のペースで口頭弁論期日や弁論準備手続期日が開かれ、双方からの主張・立証が繰り返されます。

共有物分割請求訴訟の訴訟手続きが1回で終わることはほとんどなく、概ね3〜6回程度の期日が実施されてから審理終結となります。

訴訟の過程では、不動産の適正な価格を査定するために、裁判所が選定した不動産鑑定士による鑑定評価が行われることもあります。双方の主張・立証が出尽くしたら、裁判所による和解勧告が行われるのが一般的で、双方が和解に応じた場合は判決前の和解で裁判が終結します。

被請求側の視点(受けた側の対処法)・分割禁止特約の登記による第三者対抗

被請求側として共有物分割請求を受けた場合の対処法

「突然、共有している不動産の分割を請求された」という場合、以下の流れで対処することが重要です。

① まず方針を決める:不動産を手放すか手放さないか

不動産を手放すか手放さないかによって、その後の対応が大きく変わります。

  • 手放す場合:共有持分を買取業者に売却すれば、他の共有者の同意なく共有状態から離脱できます。ただし買取価格は市場価値より大幅に低くなってしまいます。
  • 手放したくない場合:相手の持分を代償分割(買取)する方向で検討します。現物分割では不動産の有効活用が難しくなることがあるため、資金力があれば代償分割が望ましいでしょう。

② 訴訟に発展する前に解決することを目指す

共有物分割請求を受けたら、相手との交渉を拒否せずに、訴訟に発展する前に解決を目指すことが推奨されます。訴訟になると換価分割(競売)が命じられるリスクが高まり、市場価格より低い売却になる可能性があります。また、裁判所が選任する不動産鑑定費用も発生します。

③ 弁護士に相談する

共有不動産の争いを当事者間で解決するのは難しいケースが多いため、早期に弁護士に相談することが重要です。弁護士に依頼すれば、法律上の根拠に基づいた提案ができるため、相手方も交渉に応じてくれやすくなります。

弁護士に相談すべきタイミング

  • 不動産の分割に関して主張したいことがある場合(「不動産を手放したくない」「現状を維持したい」等)
  • 相手の提示条件に納得できない・交渉が難航している場合
  • 請求を受けてまだ状況がよくわからない初期の段階から

分割禁止特約の第三者対抗については前述のとおりです(民法第256条1項・不動産登記法第59条6号)。

相続手続きの7ステップ(遺言確認〜相続登記)・相続税の申告期限・相続登記の義務化・共有名義のメリット・特別縁故者・相続財産清算人

共有名義の不動産を相続する場合の基礎知識

共有名義の不動産の共有者が亡くなった場合、残りの共有者に自動移転するのではなく、亡くなった人の法定相続人が相続します。法定相続人とは、民法で定められた「遺産を受け取る権利がある人」のことです。配偶者は常に相続人となり、続いて子、父母・祖父母、兄弟姉妹の順で相続人になります。

共有不動産を相続する7ステップ

STEP 1:遺言書があるか調べる 相続手続きの最初は、遺言書の有無の確認です。遺言書が存在する場合、原則として遺言の内容に従って相続登記を行います。

  • 自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用していない場合):家庭裁判所での検認手続きが必要
  • 公正証書遺言:検認不要

STEP 2:相続人調査を行う(遺言書がない場合) 戸籍謄本・除籍謄本を取得し、法定相続人を確定して相続関係説明図を作成します。一部の相続人が未確定のままでは遺産分割協議が成立しないため、正確な調査が重要です。

STEP 3:相続財産調査を行う 現金・預貯金・不動産・有価証券のほか、借金やローンなどのマイナスの財産も含めて調査します。不動産については登記簿謄本・固定資産税の納税通知書を確認し、共有名義かどうか、持分割合も確認します。

STEP 4:遺産分割協議を行う 相続財産の分割方法を決定するために、法定相続人全員で話し合います。全員の合意が必須です。

STEP 5:遺産分割協議書を作成する 合意内容を遺産分割協議書にまとめます。不動産を共有名義で相続する場合は「誰がどの持分を相続するか」を明記し、相続人全員が署名・押印します。この書類は名義変更・銀行口座解約・相続税申告などに必要です。

STEP 6:相続税の申告・納付を行う(期限:10か月以内) 相続財産の課税対象額が基礎控除額(3,000万円+法定相続人1人あたり600万円)を超える場合、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付が必要です。期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため早めの対応が重要です。

STEP 7:相続登記をする(2024年4月から義務化) 不動産の共有者が亡くなった場合、法務局で相続登記を行い、名義を被相続人から相続人へ変更します。2024年4月から義務化されており、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科される可能性があります(同法164条1項)。

共有名義のまま相続する2つのメリット

① 公平性が生まれる 複数の相続人がいる場合でも、持分を分け合うことで全員が同等の財産を保有できます。「自分だけ何ももらえなかった」という不満が生まれにくく、相続手続きが円滑に進みやすいメリットがあります。

② 売却時の税負担を軽減できる(3,000万円の特別控除) 将来その不動産(居住用財産)を売却する際に、共有者それぞれが居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除を個別に適用できる場合があります。たとえば母と子の2名で共有名義にし、いずれもその家屋に居住しているなど、各自が適用要件を満たす場合には、合計最大6,000万円の控除が受けられる可能性があります。

特別縁故者・相続財産清算人について

共有者に相続人が一人もいない場合の相続先は、遺言書や特別縁故者の有無によって異なります。

  • 遺言書がある場合:遺言で指定された受遺者に持分が移ります
  • 相続人も遺言もない場合:家庭裁判所により相続財産清算人が選任され、財産の管理と清算が行われます
  • 特別縁故者(故人の介護をしていた人など)が申し出て認められれば、その人が財産を受け取れます
  • それでも該当者がいない場合、最終的には国庫に帰属します(民法第959条)

準共有持分(所有権以外の権利:借地権・抵当権等)の概念・定義・準共有に固有の法律上のルール

準共有持分とは

準共有持分とは、所有権以外の財産権を複数人で共有している場合の権利の割合です。通常の共有持分が物の所有権を分け合うのに対し、準共有は「権利そのもの」を分け合うことが特徴です。

準共有が認められる代表的な権利

  • 借地権・地上権・地役権
  • 賃借権
  • 抵当権
  • 特許権・著作権

共有持分と準共有持分の違い

共有持分 準共有持分
対象 物理的に存在する不動産・動産などの「物」 所有権以外の財産権など、物質が存在しない「権利」
土地・建物を兄弟で共同所有 借地権・抵当権を兄弟で相続
適用ルール 民法の共有規定 民法第264条により、共有規定が準用される

準共有に固有の法律上のルール

① 使用(民法第249条準用) 各準共有者は自己の持分に応じて準共有物を使用できます。使用方法は原則として準共有者間の合意で決まりますが、合意が得られない場合は持分の価格の過半数で決定します。

② 管理・保存(民法第252条準用)

  • 管理行為:各準共有者の持分価格の過半数で決定(短期の転貸など)
  • 保存行為:各準共有者が単独で可能(不法占拠者への明け渡し請求、修繕など)
  • 管理・保存にかかる費用は各準共有者が持分に応じて負担

③ 処分・変更(民法第251条準用) 準共有物全体の処分(売却・贈与など)や変更(内容の大幅な変更)には、原則として準共有者全員の合意が必要です。ただし軽微な変更は過半数で決定できる場合もあります。一方、自己の準共有持分については他の準共有者の合意なく自由に処分できます。

④ 相続(民法第896条準用) 準共有持分も相続の対象となり、相続人に引き継がれます。相続によって準共有者の数が増加し、権利関係が複雑化するリスクがあります。これを防ぐには、遺言や生前贈与などで準共有持分の相続人を限定することが有効です。

準共有持分の分割請求の流れ: 通常の共有物分割請求と同様に「協議→調停→訴訟」の流れで進みます。準共有物の性質や特別法により現物分割ができないことも多く(賃借権・抵当権等は物理的に分割不可)、換価分割や代償分割が選択されます。

共有者が音信不通の場合(不在者財産管理人)・認知症共有者(成年後見制度)・未成年共有者(特別代理人)・買取業者の目的・リスク

共有者が音信不通・行方不明の場合

他の共有者と長期間連絡が取れず居場所すらわからない場合、全体売却の同意を得ることができません。このようなケースでは、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任(民法254条)を申し立てる手続きが必要です。

手順

  1. 戸籍謄本・戸籍の附票を取得して住所履歴を確認する
  2. 捜索願受理証明書や「宛所尋ね当たらず」で返送された郵便物など、行方不明の事実を証する資料を収集する
  3. 家庭裁判所へ不在者財産管理人選任の申立てを行う
  4. 選任された管理人が、家庭裁判所から権限外行為の許可を得て不在者に代わり売却手続きを行う

この手続きには複雑な書類作成や裁判所とのやり取りが伴うため、弁護士のサポートが強く推奨されます。

2023年施行の新制度|所在等不明共有者の持分取得・持分譲渡

2023年4月1日に施行された改正民法により、所在等が不明な共有者がいる場合の新たな解決手段が設けられました。

  • 所在等不明共有者の持分取得制度(民法262条の2):地方裁判所の裁判により、他の共有者が、所在等不明共有者の持分を取得できる制度です。取得する共有者は、裁判所の定める時価相当額の金銭を供託します。
  • 所在等不明共有者の持分譲渡制度(民法262条の3):地方裁判所の裁判により、所在等不明共有者の持分を含めた不動産全体を、特定の第三者に譲渡する権限を他の共有者に付与する制度です。共有者全員で不動産全体を売却したい場合に有効です。

※不動産が遺産共有の状態にある場合、これらの制度は相続開始から10年を経過していなければ利用できません(民法262条の2第3項・262条の3第2項)。

従来の不在者財産管理人の選任と比べて、不動産の共有関係の解消に特化した簡便な手段として活用が期待されている制度です。どの手続きを選択すべきかは事案によって異なるため、弁護士にご相談ください。

共有者が認知症で意思確認ができない場合

共有者が重度の認知症などで判断能力を欠いている場合、そのままでは不動産の売買契約を有効に結ぶことができません。不動産の売却を進めるには成年後見制度を利用して、家庭裁判所に法定代理人(成年後見人)を選任してもらう手続きが必須です。

注意点

  • 申立てから後見人の選任まで通常2〜4か月程度(多くは4か月以内)かかる
  • 対象物件が本人の居住用不動産の場合、後見人の判断だけでなく家庭裁判所の売却許可が別途必要
  • 成年後見人は本人の財産を保護する立場のため、他の共有者の都合だけでは売却は認められない

共有者に未成年者が含まれる場合

相続などにより共有者の中に未成年者が含まれる場合、原則として親権者が法定代理人として手続きを行います。しかし、親権者と未成年者の双方が同じ不動産の共有者となる場合は利益相反に該当するため、以下の手続きが必要です。

  1. 家庭裁判所へ特別代理人の選任申立てを行う
  2. 特別代理人の候補者(子の叔父・叔母などの親族、または弁護士・司法書士などの第三者)を立てる
  3. 選任された特別代理人が未成年者に代わって遺産分割や売却に合意する

適正な手続きを踏まずに行われた売却は無効となる恐れがあります。

買取業者の目的とリスク

買取業者の主な目的: 取得した持分を基に共有状態を解消し、最終的に不動産や持分を現金化して利益を得ることです。業者が持分を買い取ると法的な共有者となるため、他の当事者に対して以下のような行動をとるのが一般的です。

  • 全体売却に同意するよう交渉を持ちかける
  • 他の共有者の持分を買い取って単独所有を目指す
  • 民法で認められた裁判手続き(競売による換価など)を活用する

利用する際のリスクと懸念点

  • 持分の理論値(市場価格×持分割合)と比べ、買取価格がさらに40〜90%程度割り引かれることが多く、半値以下になるケースが相当ある
  • 悪質な業者を選ぶと、他の共有者に強引な営業をかけられる恐れがある
  • 売却後に他の共有者から恨みを買うなど、親族間の関係性がさらに悪化しやすい

このように、買取業者にに売却するのは金額も大幅に安くなり、その他のリスクも大きくなります。買取業者に売却するよりも、弁護士に依頼して共有物分割請求をした方が、弁護士費用を考慮しても高額で売却することができる可能性が高いため、弁護士にご相談されることをおすすめします。

そのため、買取業者への売却は、短期間で売却せざるを得ないなど、他の手段がどうしても取れない場合の最終的な選択肢として検討されることになります。

共有物分割請求と持分権売却の比較(経済的損益の比較)

共有状態を解消する方法として、「共有物分割請求」と「持分のみの買取業者への売却」の2択で迷う方が多くいます。それぞれのメリット・デメリットを整理します。

比較項目 共有物分割請求 持分権売却(買取業者)
売却価格 適正価格(市場価格)に近い価格で売却できる可能性が高い 市場価格の10〜60%程度まで目減りするケースが多い
手続き期間 協議〜訴訟まで数か月〜1年以上かかる 最短数日〜数週間で現金化できる
費用 弁護士費用・訴訟費用・鑑定費用が発生 訴訟費用はかからない(ただし買取価格が低い)
他の共有者の同意 不要(訴訟に進めば強制解決が可能) 不要
関係悪化リスク 訴訟まで進むと関係悪化のおそれあり 業者が他の共有者に交渉することで関係悪化しやすい
トラブルの解消 共有に絡むトラブルをまとめて法的に解消できる 自分は離脱できるが、他の共有者の問題は残る

結論として: 急ぐ事情がある場合は持分権売却が有力な選択肢ですが、なるべく多くのお金を手元に残したい方、共有物に絡むトラブルをまとめて解消したい方は、時間をかけながらも共有物分割請求手続きを行ったほうが最終的に満足のいく解決が見込めます。訴訟費用の差額を、売却価格の増加分で十分カバーできるケースが多いためです。

弁護士に依頼するメリット

共有物分割請求を専門知識を持つ弁護士へ依頼することで、多くの利点が得られます。

メリット 詳細
関係悪化の防止 第三者が客観的視点で交渉するため、親族間の深刻な対立を避けられる
利益の最大化 適正な価格での持分買取や共同売却などを通じて経済的損失を防ぐ
手続きの円滑化 煩雑な法的書類の作成や裁判所とのやり取りをすべて一任できる
精神的負担の軽減 相手方と直接交渉するストレスから解放され、平穏な日常を保てる
早期解決 法律上の根拠に基づいた提案で相手が交渉に応じやすくなり、解決が早まる
訴訟での的確な主張・立証 万が一訴訟になった場合でも、不利な結果になりにくい
専門家ネットワークの活用 不動産鑑定士・司法書士・税理士・信頼できる不動産業者などを紹介してもらえる

また、弁護士への依頼により、資料の収集・作成、手続き代行など、協議・調停・訴訟の各段階で必要な作業をすべて一任できます。

弁護士費用・費用相場

共有物分割請求を円滑に進めるにあたり、手続きの段階に応じて各種費用が発生します。協議による解決であれば負担を抑えられますが、法的手続きへ移行するほど費用は増加します。

手続きの段階別・想定費用の目安

費用の種類 金額の目安 発生する主なタイミング
裁判所への実費(印紙・切手代等) 数千円〜数万円程度(不動産の固定資産税評価額を基に算出) 調停・訴訟の申立て時
弁護士費用(着手金・報酬金等) 数十万円〜経済的利益の一定割合 依頼時から事件解決時
不動産鑑定費用 約20万〜100万円程度 訴訟等で正確な評価額が必要な時

これら費用の総額は、対象となる不動産の評価額や事案の複雑さによって大きく変動します。

弁護士費用の内訳(着手金・報酬金・日当・実費の具体的算定方法)・旧規定と固定費の計算例・費用を抑える方法

弁護士費用の内訳と相場

① 法律相談料 依頼前の法律相談で発生する費用。相場は30分5,500円(税込)程度ですが、初回相談無料の事務所もあります。30分では時間が足りずに追加料金が発生するケースもあるため、初回60分無料の事務所を選ぶと安心です。

② 着手金 弁護士に手続きを依頼して委任契約を締結する際に支払う費用。結果に関わらず発生し、原則として返金されません。

  • 固定額で設定する事務所:22万〜33万円程度が相場
  • 調停・訴訟と段階が進むごとに追加着手金を設定する事務所もあり、その場合の追加額は11万円程度が多い
  • 旧日弁連規定をもとに算定する事務所もある(後述)

③ 報酬金 依頼が終了した段階で発生する成功報酬。共有物分割請求では、分割方法がまとまった段階もしくは代償金・売却代金が支払われた段階で発生します。

  • 対象となる持分の5.5〜11%程度に設定している事務所が多い
  • 持分を取得する場合と売却する場合で金額を分けて設定している事務所もあり、売却の場合の方が高め

④ 日当 事務所外での手続きが必要となった際に発生する費用(現地調査・遠方での交渉・裁判所への出頭等)。

  • 相場:1日あたり3万〜5万円程度
  • 拘束時間に応じて半日分の日当を設定している事務所もある

⑤ 事務手数料 顧客ファイル作成・事件管理のためのシステム登録等に係る費用。

  • 相場:1事件あたり1万〜5万円程度

⑥ 実費 郵便費用・交通費・印紙代など、手続きの過程で発生する費用。多くの事務所では最初に1万〜3万円程度を預かり、終了後に精算します。

  • 共有物分割請求調停の申立て費用:収入印紙1,200円+郵便切手代5,000円程度
  • 共有物分割請求訴訟の提起費用:訴額に応じた印紙代+郵便切手代5,000円程度

弁護士費用の具体的な計算例

パターン①:固定額の着手金+報酬金で設定している事務所の場合

【1,000万円の共有持分を買い取ったケース】

  • 固定着手金:22万円
  • 追加着手金(訴訟):11万円
  • 報酬金(5.5%):1,000万円 × 5.5% = 55万円
  • 合計目安:88万円程度

【2,000万円の共有持分を売却したケース】

  • 固定着手金:22万円
  • 追加着手金(訴訟):11万円
  • 報酬金(11%):2,000万円 × 11% = 220万円
  • 合計目安:253万円程度

パターン②:旧日弁連規定を基準に算定している事務所の場合

旧規定では、共有物分割請求の「経済的利益の額」は「対象となる持分の時価の3分の1の額」として計算します。

着手金の計算式(旧規定)

経済的利益の額 着手金
300万円以下 請求額の8.8%
300万円超〜3,000万円以下 請求額の5.5%+9万9,000円
3,000万円超〜3億円以下 請求額の3.3%+75万9,000円

報酬金の計算式(旧規定)

経済的利益の額 報酬金
300万円以下 請求額の17.6%
300万円超〜3,000万円以下 請求額の11%+19万8,000円
3,000万円超〜3億円以下 請求額の6.6%+151万8,000円

【旧規定・具体例①:1,000万円の共有持分を買い取ったケース】

  • 経済的利益:1,000万円 × 1/3 = 333万3,333円
  • 着手金:333万3,333円 × 5.5% + 9万9,000円 = 約28万2,000円
  • 報酬金:333万3,333円 × 11% + 19万8,000円 = 約56万5,000円

【旧規定・具体例②:2,000万円の共有持分を売却したケース】

  • 経済的利益:2,000万円 × 1/3 = 666万6,666円
  • 着手金:666万6,666円 × 5.5% + 9万9,000円 = 約46万6,000円
  • 報酬金:666万6,666円 × 11% + 19万8,000円 = 約93万1,000円

弁護士費用以外にかかる費用

不動産鑑定費用

  • 交渉・調停での個人依頼(不動産鑑定士・不動産会社):22万〜33万円程度
  • 訴訟での裁判所選任の不動産鑑定士による鑑定:50万円程度(最終的に持分割合に応じて各共有者が按分負担することが多い)

訴訟費用(収入印紙代の計算式)

  • 土地の訴額:固定資産税評価額 × 持分割合 × 1/6
  • 建物の訴額:固定資産税評価額 × 持分割合 × 1/3

例:3,000万円の建物について1/3の共有持分を持つ原告が訴訟提起する場合 → 訴額:3,000万円 × 1/3 × 1/3 = 333万3,333円(この金額をもとに印紙代を算出)

弁護士費用を抑える方法

① 初回の法律相談が無料の事務所を選ぶ 相談料の相場は30分5,500円程度ですが、30分では時間が足りず追加料金が発生するケースもあります。初回60分無料の事務所を選べば、費用を抑えつつ十分な相談ができます。相談の際に見積もりも依頼しておくと安心です。

② 着手金の分割払いに対応した事務所を選ぶ 着手金は決して安い金額ではなく、準備に時間がかかることで手続きの開始が遅れてしまうケースもあります。着手金の分割払いに対応した事務所を選べば、すぐに手続きを始めることができ、問題の早期解決にもつながります。

③ 着手金無料の事務所を選ぶ 事務所によっては、共有物分割請求を着手金無料で受け付けているところもあります。弁護士費用以外に鑑定費用・訴訟費用もかかるため、初期費用の負担を抑えられる着手金無料の事務所は経済的メリットが大きいです。

④ 共有持分を手放す(争いから離脱する) 共有物分割請求の争いに巻き込まれたくない場合は、自分の持分を売却・放棄して共有関係から離脱することも一つの選択肢です。

  • 買取業者への売却:他の共有者の同意不要で迅速に現金化できるが、市場価格より大幅に低くなることが多い
  • 持分の放棄:最も簡単に手放せるが、売却代金は得られない。また、名義変更に他の共有者の協力が必要なケースもある
  • 他の共有者への売却:交渉が必要だが、買取業者より適正価格に近い取引ができる可能性がある

⑤ 早期解決を目指す(手続きを長引かせない) 段階が進むほど費用が積み重なります。協議段階で解決できれば訴訟費用・追加着手金・鑑定費用がすべてかかりません。弁護士に早期から相談して迅速に動くことが、結果として総費用の削減につながります。

共有物分割請求に関するよくある質問(FAQ)

Q. 共有物分割請求に時効はありますか?

A. 共有物分割請求権は共有関係に伴って常に存在する権利であり、時効によって消滅することはありません。各共有者は、不分割特約がある場合を除き、いつでも分割を請求できます(民法256条1項)。

Q. 共有物分割請求をされたら必ず不動産を手放すことになりますか?

A. いいえ。相手方の持分を買い取る代償分割(賠償分割)により、不動産を単独所有として残す解決も可能です。ご自身に取得の合理性(居住している等)と資力があれば、訴訟でも代償分割が命じられる可能性があります。早期に方針を決めて交渉に臨むことが重要です。

Q. 調停を経ずにいきなり訴訟を起こせますか?

A. 可能です。共有物分割請求には調停前置主義が採用されていないため、協議が調わなければ直接訴訟を提起できます。ただし、事案によっては調停による柔軟な解決が適している場合もあります。

Q. 他の共有者と連絡が取れない場合でも分割できますか?

A. 可能です。不在者財産管理人の選任(民法25条)や、2023年に新設された所在等不明共有者の持分取得・譲渡制度(民法262条の2・262条の3)、あるいは共有物分割請求訴訟(協議をすることができないとき)など、複数の手段があります。事案に応じた最適な手続きの選択が重要ですので、弁護士にご相談ください。

Q. 弁護士費用は誰が負担しますか?

A. 弁護士費用は各自の自己負担が原則です。なお、訴訟費用(印紙代等)は判決で負担割合が定められますが、共有物分割訴訟では持分割合に応じて自担とされることが一般的です。

この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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