立ち退きの正当事由として老朽化は認められるのか?トラブルを防ぐコツを紹介

この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
東京弁護士会・東京税理士会所属

アパートのオーナー様の中には「建物の老朽化を理由に入居者に立ち退いてもらいたい」と考える方も多いでしょう。

「建物の老朽化」が立ち退きの正当事由として認められれば、立ち退き交渉を有利に進められるかもしれません。

本記事について弁護士の見解
-佐々木 一夫-
  • 建物の老朽化による建て替えの必要性は年々増していますが、交渉の経過次第では、建物の老朽化を理由とする立ち退きには、オーナー側の「正当事由」を補完する高額な立ち退き料を求められることがあります。
  • 正当事由の判断は、建物の使用状況、賃貸人の必要性、立ち退き料など複数の要素を総合的に考慮するため、専門的な分析が必要です。
  • 不当な要求を避け、適正な立ち退き料で迅速に合意するには、交渉開始の早い段階で弁護士が介入し、戦略を立てることが有効です。

丁寧にお話をお伺いします。まずはお気軽にご連絡ください

【無料相談受付中】24時間365日対応

目次

立ち退きの正当事由として老朽化は当てはまるのか

老朽化した長屋


賃貸借契約中のアパートの入居者に立ち退いてもらう場合、その前提として、賃貸借契約を終了させなければなりません。

賃貸借契約を終了させる方法としては、契約期間満了時に契約の更新を拒絶する、もしくは期間満了前に解約を申し入れることが考えられます。

また、入居者との賃貸契約を終了させるためには、借地借家法26条により賃貸借契約期間満了の1年前から6か月前までの間に、入居者に対して契約を更新しない旨を通知します。

その通知期間が過ぎてしまうと契約が更新されるため、期間に遅れないよう注意しましょう。

さらに、借地借家法27条により、オーナーから賃貸借契約の解約を申し入れた場合は、解約の申入れの日から6ヶ月を経過したときに契約が終了します。

もっとも、法律上、契約の更新拒絶や解約の申入れが認められるためには、その「正当の事由」が必要となります借地借家法28条)。

そして、建物の老朽化は、契約の更新拒絶や解約申入れの正当事由に該当します

アパートなどの老朽化が進むことで、次の事態が考えられます。

  • 建物の倒壊
  • 雨漏り
  • 設備の故障
  • 高額な修繕費

これらが発生すると、入居者の生活に大きな影響が及ぶため、老朽化が気になる場合は早めに手を打たなければいけません。

ただし、建物の老朽化を理由に立ち退き交渉を行うためには、具体的に建物のどの部分が老朽化しているかを明確にする必要があります。

築40年を経過したアパートの立ち退きに関しては、以下の記事をチェックしてください。

関連記事:築40年アパートの立ち退きの正当事由と大家が払う退去費用

正当事由がある立ち退きにも立退料は必要になる

交渉に臨むビジネスマン

建物の老朽化は立ち退きの正当事由になると解説しましたが、老朽化だけでは賃貸借契約の更新を拒絶することは難しいとされています。

そのため、多くの事例では老朽化という正当事由だけでなく、立退料の支払いにより正当事由が認められています。

老朽化だけでは正当事由が弱い理由

借地借家法では借主の居住権が強く保護されており、倒壊の危険が切迫していない限り、老朽化のみでの立ち退きは認められにくい傾向にあります。

そのため、貸主自身がその建物を使用する必要性など、他の事情と合わせて総合的に判断し、それでも不足する場合に次項の立退料が補完要素として必要となります。

立退料が正当事由の補完として扱われる仕組み

借地借家法には立退料の支払義務についての明文規定はありませんが、実務上、立退料の提供は正当事由を補完する重要な要素として扱われています。

貸主側の「建物を明け渡してほしい事情」だけでは正当事由が不足する場合、借主が立ち退くことで被る経済的損失を金銭で補償することで、全体のバランスを取り、正当事由ありと判断させる仕組みです。

つまり、立退料は正当事由の「足りない部分」を埋めるための調整弁のような役割を果たします。

立退料の相場と金額が変動する要因

立退料の金額は、法律で明確には認められていません。

一般的には、入居者の引っ越し代や新居の契約金などを合わせた金額が支払われますが、個々の状況やケースにより異なります。

特に、建物の老朽化が進んでいても倒壊の危険性がまだ低く「まだ住める」と判断される場合は注意が必要です。

この場合、貸主の都合による立ち退きという側面が強くなり、立退料が高額になる傾向があります。

参考:国土交通省|住宅

立ち退きの正当事由として老朽化が挙げられる際の交渉の進め方

握手をするサラリーマン

建物の老朽化を正当事由として、立ち退き交渉を進める流れは以下のとおりです。

それぞれのステップを解説します。

入居者への立ち退きの通知と立退料を提示する

老朽化を正当事由として立ち退きを要求する場合、まずは契約期間満了の6か月前から1年前に更新しない旨の通知をする必要があります。

その際に重要なポイントは、建物の老朽化によって、いかに建て替えが必要なのかを丁寧に説明することです。

建て替えを行わなければ、入居者の安全が守られないことも付け加えると良いでしょう。

また、更新拒絶の通知をする際に立退料を提示することがありますが、このタイミングで提示するかどうかは賃貸人の考え方次第です。

立退料を支払わなくても退去の合意が取れる入居者もいるため、立ち退きの予算をできるだけ抑えたい場合は、入居者から立退料を請求されたときに、初めて立退料を提示する方法も考えられます。

また、もし書面で更新拒絶の通知をする場合、できれば内容証明郵便を利用しましょう。

内容証明郵便は「誰が、何を、いつ、誰に」郵便で送ったのかが証明される郵便のため、事前に更新を拒絶する通知をしたという公的な証明ができるからです。

参考:国土交通省|民間まちづくり活動促進・普及啓発事業

立ち退き合意書を作成する

入居者との立ち退き交渉が終了し合意が取れれば、合意した内容を立ち退き合意書にまとめます。

立ち退き合意書を作成することで、オーナーと入居者のトラブルを回避できるでしょう。

立ち退き合意書は、主に以下の内容が記載されます。

  • 立ち退きまでの猶予時期
  • 立退料の金額
  • 立退料を支払う時期
  • 残存物の取り扱い
  • その他立ち退きに関する条件

立ち退き合意書は自分で作成することが可能ですが、作成方法や記載内容がわからない場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。

参考:国土交通省|住宅・建築

転居のサポートを行う

立ち退きをスムーズに進めるためにも、入居者の転居サポートを行うと良いでしょう。

入居者からすると、老朽化が原因で仕方なく退去するとは言え、引越しを強いられるのは大きなストレスとなります。

そのため、オーナー側が転居先の物件探しや引越し業者の手配などをサポートすれば、入居者が協力的になることが期待できます。

転居先の物件探しは、不動産会社に相談すると効果的です。

入居者が希望する家賃や初期費用、エリアなどを考慮し、物件を提案しましょう。

参考:国民生活センター|引越サービスの事例

入居者へ退去してもらう

転居先が無事見つかれば、入居者に退去してもらいます。

荷物の整理や新居の家具家電の用意など、引っ越しの準備には相応の期間が必要なため、立ち退き合意書で定めた日程を基準に立ち退いてもらいましょう。

引越しが完了すれば、入居者立ち会いのもとで室内を確認します。

残存物の確認や鍵の返却など、最後まで気を抜かずに手続きを行うことが重要です。

丁寧にお話をお伺いします。まずはお気軽にご連絡ください

【無料相談受付中】24時間365日対応

立ち退きの正当事由が老朽化の場合にトラブルを避けるコツ

ベンチで悩む男性

老朽化による立ち退きの際、入居者とトラブルになることがあります。

トラブルを避けるためには、以下のポイントを心がけると良いでしょう。

ここからは、入居者とのトラブルを避けるコツを解説します。

日頃から入居者と良好な人間関係を築いておく

立ち退きのトラブルを回避する1つ目のコツは、日常的に入居者と良好な人間関係を築いておくことです。

日頃から入居者と積極的にコミュニケーションを取り、良い関係が築けていれば、老朽化による立ち退きを要求する際も、立ち退きの必要性に納得してもらえる可能性が高まります。

その反面、オーナーと入居者の人間関係が希薄な場合は、オーナーの立ち退き要求を聞き入れてもらえないおそれがあります。

その場合は、老朽化した建物に住み続ける危険性や事情を丁寧に説明し、立ち退きを受け入れてもらうために立退料を支払うなどの条件を提示すると良いでしょう。

早い段階から立ち退き交渉を始める

できるだけ早い時期から立ち退き交渉を開始することも、トラブルを避けるコツです。

入居者側からすると、生活の場所を変えることは大きな負担につながるので、立ち退き交渉をスムーズに進めるためにも、時間にゆとりを持つことが重要です。

立ち退きを進めるためには、以下のステップを踏む必要があります。

  • 新居探し
  • 荷物の整理
  • 新居で使用する家具家電の準備
  • 引越し業者の選定

上記の作業を行うためには、時間や気持ちにゆとりを持たなければいけません。

オーナーと入居者が納得して立ち退きを進めるためにも、少しでも早く立ち退き交渉を始めましょう。

余裕をもった予算で立ち退き交渉に臨む

老朽化による立ち退きでトラブルを回避する3つ目のポイントは、立ち退きに関する予算を多めに見積もっておくことです。

立ち退き交渉が難航した場合は、立退料の上乗せで立ち退きを目指すことが考えられます。

その際に予算が足りなければ、立退料を支払えず立ち退きの期間が伸びて、当初の計画が破綻してしまうおそれがあります。

そのため、入居者に立ち退きを要求する初期段階では、できる限り低い立退料を提示して立ち退きの合意を取っていくことが望ましいでしょう。

正当事由をもとにした立ち退き交渉を冷静に行う

立ち退き交渉を落ち着いて冷静に行うことも、トラブルを回避するコツです。

立ち退き交渉では、入居者が個人であるケースがほとんどのため、お互い感情的になることが多いです。

感情的になってしまうと落ち着いた議論ができないので、交渉の記録を残しながら丁寧に説明するようにしましょう。

もし「自分が建物のオーナーだから入居者が立ち退いて当然」という態度で交渉に臨むと、入居者側も感情的になり立ち退き交渉が難航しやすくなります。

入居者との関係性が良好でなく、冷静な交渉ができないと判断した場合は、弁護士などの専門家に依頼してスムーズに立ち退き交渉を進めてみましょう。

転居先のサポートを親身に行う

入居者とのトラブルを避ける5つ目のコツは、転居先のサポートを丁寧に行うことです。

引越しの際に親身になって転居の手伝いをすれば、入居者も納得して手続きに協力してくれるようになるでしょう。

オーナーが引越し代金を支払う条件の場合、引越し業者を選定する際に相見積もりを取れば費用を抑えられます。

中には、申込みフォームに情報を入力するだけで、複数社に見積もりを依頼できるサイトもあります。

また、引越し時期を閑散期である8月や12月にすれば、引越し代金を節約できるでしょう。

入居者に誠心誠意サポートする姿勢を見せるのと同時に、オーナー側の費用負担を軽減する工夫も忘れないようにすることが重要です。

早い時期から立ち退き交渉に関して弁護士に交渉しておく

立ち退きのトラブルを回避する6つ目のポイントは、立ち退き交渉の経験が豊富な弁護士に、早い時期から相談することです。

老朽化による立ち退きは不慣れなケースが多く、慣れないまま交渉を行うと入居者との関係が悪化してしまうおそれがあります。

弁護士にも得意・不得意分野があり、不動産法務に詳しい弁護士であれば立ち退きの分野に強いため、安心して任せられるでしょう。

また、個々の状況によって異なる立退料のアドバイスももらえるので、早い段階から堅実な資金計画を立てることができます。

立ち退き交渉には、オーナー側にも多大な時間や手間、労力がかかるため、立ち退き交渉のプロである弁護士に依頼すれば、ストレスなく手続きを進められるでしょう。

関連記事:老朽化等による解体や建て直しのためにスムーズに立ち退き依頼を行う手順

関連記事:立ち退き交渉を弁護士に依頼するデメリットについて解説

不動産問題で迷った際のお役立ちガイド

不動産における不公平や不動産関係者のトラブルでお悩みの方は、
ぜひ弁護士法人アクロピースにご相談ください。
まずは初回60分の無料相談をご利用ください。

立ち退き交渉が難航した場合の対処方法とは

書類にサインをするビジネスマン

立ち退き交渉が難航した場合は、次の2つを検討してみましょう。

それぞれの方法を詳しく解説します。

立退料を上乗せする

1つ目の対処方法は、立退料を増額して退去の合意を得る方法です。

入居者の中には、今住んでいる物件が気に入っているので退去を拒否している人がいます。

その場合は、転居先の家賃を上げれば、希望するレベルの転居先が見つかる可能性が高いため、丁寧に引っ越しのサポートをすると同時に、立退料の上乗せを提案してみましょう。

一方、転居先の家賃や初期費用が高額なため、立ち退きを拒否する入居者もいます。

その場合、今の家賃と転居先の家賃の差額を数年分負担するなどして、合意を得る方法が考えられます。

立退料の支払いでうまく立ち退きの合意を得るためには、初期段階で高すぎる立退料を提示せず、交渉とともに徐々に金額を上げていく方法を取りましょう。

関連記事:立ち退きを拒否された場合について解説

裁判を起こす

立ち退き交渉が難航する場合は、裁判を起こすことも考えられます。

裁判所がオーナーと入居者の間に入ることで、立ち退きの合意を得られる場合があります。

また、合意が得られない場合でも、判決により立ち退きが認められるケースがあるのです。

裁判を起こすと時間がかかるというイメージがありますが、難航する交渉を続けるよりは案外早く解決するケースもあります。

弁護士に相談すれば、裁判の必要性についてもアドバイスがもらえるので、早めに相談することをおすすめします。

立ち退きの裁判に関する内容は、以下の記事を参考にしてください。

参考:裁判所|裁判所を利用する

関連記事:【立ち退き交渉・裁判の流れ】費用・交渉するポイント

立ち退きの正当事由に関するよくある質問

大家からの退去命令の正当な理由は何ですか?

借地借家法上、大家さんからの立ち退きは大家側の正当事由が入居者の不都合を上回っている場合に認められます。

この正当事由は、単に「建物が古いから」という理由だけでは認められにくく、主に「貸主がその建物を使用する必要性」の有無で判断されます。

さらに、建物の老朽化具合、これまでの賃貸借の経緯、建物の利用状況、そして「立退料の提供」などを総合的に考慮して、退去が正当かどうかが決まります。

関連記事:立ち退きの正当事由について解説

立ち退き交渉を弁護士に頼むメリットは?

メリットとしては、主に「冷静な交渉による早期解決」、と「精神的・時間的負担の軽減」の2点があります。

特に、老朽化に伴う立ち退きは、「建物の危険性」の判断や「適正な立退料」の算定が難しく、当事者同士では感情的なトラブルになりがちです。

また、弁護士に依頼することで立ち退き交渉が長引くリスクを避け、無駄な費用をかけずに済みます。

関連記事:立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリット・デメリットについて解説

まとめ|老朽化による立ち退き交渉は早い段階から準備を行い誠心誠意対応する

解体途中のアパート

この記事では、立ち退きの正当事由として、老朽化が当てはまるのかについて解説しました。

建物の老朽化による立ち退きのまとめ
  • 立ち退きの正当事由として、建物の老朽化は当てはまる
  • 建物の老朽化という正当事由だけでなく、立退料を支払うことで退去の合意を得られるケースが多い
  • 正当事由による立ち退きの場合は、契約期間満了の6か月前から1年前に更新しない旨の通知をする必要がある
  • 立ち退き交渉のトラブルを避けるためには、日常的に入居者との人間関係を良好に保ることが欠かせない
  • スムーズな立ち退き交渉を行うには、経験豊富な弁護士に依頼することがおすすめ

建物の老朽化を理由に入居者に退去してもらうためには、まず全体の流れを把握することが重要です。

そして、立ち退きに対する準備を入念に行い、冷静かつ丁寧に交渉を進めていかなければいけません。

しかし、慣れない立ち退き交渉で入居者との関係が悪化し、立ち退き交渉が難航することが考えられます。

そうなると当初の計画がずれ込んでしまい、余計な出費がかかることもあるでしょう。

参考:国土交通省|住宅・建築物の耐震化について

関連記事:立ち退き料の相場に関する記事を見る

丁寧にお話をお伺いします。まずはお気軽にご連絡ください

【無料相談受付中】24時間365日対応

この記事がみなさまの参考になれば幸いです
  • URLをコピーしました!

この記事の監修者

弁護士 佐々木 一夫 KAZUO SASAKI

弁護士法人アクロピース 代表弁護士
東京弁護士会所属
明治大学法学部 卒業
明治大学法科大学院 修了

当事務所は家賃滞納や立ち退き交渉といった不動産トラブルの解決に注力しております。豊富な経験に基づき、ご依頼者様の正当な権利を迅速に守るサポートを提供します。初回のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

目次