共有名義の不動産売却にかかる税金はいくら?計算方法や確定申告・節税特例を徹底解説

共有名義の不動産売却にかかる税金はいくら?

「共有名義の不動産を売ると、税金はどう計算される?」
「共有名義の不動産売却で確定申告を忘れたらどうなる?」

共有名義の不動産売却は、単独名義とは異なり、持分に応じた複雑な税計算と個別の申告手続きが必要です。

利益の配分や控除の適用ルールを誤ると、本来払わなくて済む税金を負担したり、無申告によるペナルティを受けたりするリスクがあります。

本記事では、共有名義不動産の売却にかかる税金の計算式や、知っておくべき節税特例、確定申告の注意点まで詳しく解説します。

記事の要点・結論

共有名義の売却税は「持分」で分けて計算:印紙税・登録免許税は通数や不動産個数で決まる一方、譲渡所得税(住民税含む)は売却益を持分で按分し、共有者それぞれが税額を算出する。

納税は「連帯」ではなく「個別申告」が原則:共有者ごとに確定申告が必要で、代表者がまとめて納税すると肩代わり=贈与認定のリスクがある。売却代金も持分どおり各自の口座で受け取るのが安全。

譲渡所得の計算は3ステップで整理できる:まずは譲渡価額(固定資産税等の精算金も含む)を把握し、その後取得費・譲渡費用を差し引く(不明なら概算取得費5%も検討)。最後に、所有期間(5年超/以下)で税率を判定することで譲渡所得を計算可能。

特例は「共有者ごと」に効くため節税余地が大きい:3,000万円特別控除や10年超の軽減税率、買換え、相続空き家の特例などは、要件を満たせば各人が使える。世帯・相続人全体で効果が拡大するケースがあるため、確認が必要。

共有名義の売却は「持分・申告・入金方法」を誤ると損をする:申告漏れは無申告加算税・延滞税や特例否認につながる。早い段階で必要書類を揃え、ケースに応じて専門家へ相談して進めるのが最短ルート。

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目次

共有名義の不動産売却でかかる3つの税金

不動産を売却する際にかかる税金は、大きく分けて以下の3種類です。

共有名義の不動産売却でかかる3つの税金

売却のフェーズごとに発生タイミングが異なり、必ずかかるものと、利益が出た場合のみかかるものに分類されます。共有名義の場合でも、基本的な税目は変わりませんが、負担割合や計算の基礎が「持分」に基づく点が特徴です。

監修者コメント

共有名義の不動産売却は、税金の種類が同じでも、持分ごとの利益配分や各自での申告が原則になるなど、複雑なルールが存在します。適切に申告をするためには、制度への理解が必須です。

本記事では計算の流れや必要書類、特例の使い分けなどを整理しています。早めに共有者全員で段取りをそろえ、余計な税負担やトラブルを防ぐためにも参考にしてみてください。

まずは各税金の性質と、どのタイミングでいくら支払う必要があるのか全体像を把握しましょう。

印紙税(売買契約書に貼付)

印紙税とは、不動産の売買契約書を作成する際、文書に対して課される国税のことです。

売買契約書に記載された「契約金額」に応じて税額が決まり、収入印紙を契約書に貼付・消印することで納税完了となります。通常、売買契約書は売主用と買主用の2通を作成するため、売主と買主がそれぞれ1通分の印紙代を負担するのが一般的です。

印紙税額の目安は、以下のとおりです。

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契約金額(売却価格)本則税率軽減税率
500万円超 〜 1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超 〜 5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超 〜 1億円以下6万円3万円
1億円超 〜 5億円以下10万円6万円
※軽減税率は期間延長の可能性があります。最新情報は国税庁サイトをご確認ください。
出典:国税庁|No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
出典:国税庁|No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

共有名義の場合、売主が複数人いますが、契約書自体が1通(または買主分と合わせて2通)であれば、印紙税は契約書の通数分だけで済みます。「共有者の人数分」の印紙が必要になるわけではないため、売主全員で費用を按分して負担することが多いでしょう。

なお、令和9年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書には「軽減税率」が適用され、本則税率よりも安い金額で納税が可能です。

登録免許税(抵当権抹消などで発生)

登録免許税は、不動産の名義変更や権利の登記を行う際に国に納める税金です。売却時において、売主側が負担するのは主に「抵当権抹消登記」にかかる費用となります。

登録免許税の費用目安は、以下のとおりです。

登録免許税の費用目安
  • 計算式:不動産の個数 × 1,000円
  • 土地1筆+建物1棟の場合:2,000円

出典:法務局|抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税

この抵当権抹消登記にかかる税金は、不動産1個につき1,000円です。土地と建物は別々の不動産として数えられるため、一戸建ての場合は土地と建物の合計2,000円となります。

共有名義であっても、不動産の個数単位で課税されるため、共有者の人数によって税額が増えることはありません。

手続きを司法書士に依頼する場合は、別途報酬が発生します。

譲渡所得税・住民税(利益が出た場合に発生)

譲渡所得税と住民税は、不動産を売却して「利益(譲渡所得)」が出た場合にのみ課税される税金です。

売却代金そのものではなく、「売却代金から購入費用や譲渡にかかる費用を引いた残りの利益」に対して税率がかけられます。購入時よりも大幅に値下がりして損失が出た場合(譲渡損失)は、原則として課税されません。

共有名義の場合、利益を「共有持分」に応じて分配し、それぞれが個別に税額を計算する点が特徴です。夫婦で2分の1ずつ共有している物件を売って1,000万円の利益が出た場合、以下のように扱います。

  • 夫(1/2):500万円
  • 妻(1/2):500万円

納税は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納付、その後6月頃から住民税を納付する流れです。

関連記事:不動産の共有持分とは?所有するリスクや主なトラブル事例を解説

税金は誰が払う?「連帯納付」ではなく「個別申告」が原則

譲渡所得税(所得税・住民税)は「個人単位課税」が原則であり、共有者であっても納税義務は一人ひとりに発生します。たとえ夫婦や親子であっても、売却益はそれぞれの持分に従って配分され、申告書も個別に作成しなければなりません。

もし代表者が全員分の税金をまとめて支払うと、税金の肩代わりとみなされ「贈与税」の課税対象になるリスクがあります。売却代金を受け取る際も、必ず持分に応じた金額をそれぞれの口座に振り分けておくことが大切です。

確定申告の手続きは共有者の居住地を管轄する税務署でそれぞれ行う必要があり、管轄が異なる場合は別々の税務署へ提出することになります。

関連記事:共有不動産の放棄と譲渡による贈与税の課税

共有名義不動産の譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税を算出するためには、まず課税対象となる「譲渡所得(利益)」を正確に割り出す必要があります。

計算式は一見複雑に見えますが、要素を分解して順を追って計算すれば、それほど難しくはありません。

以下、計算方法をステップ形式で解説します。

STEP

ステップ1:譲渡価額(売れた金額)を確認する

まず、不動産がいくらで売れたかを示す「譲渡価額」を確認することから始めましょう。これは売買契約書に記載されている売買代金の総額を指します。

固定資産税や都市計画税の精算金(引渡日以降の分として買主から受け取った金額)も、税務上は譲渡価額に含まれるため注意が必要です。

共有名義の場合、まずは物件全体の売却価格を確認しましょう。

譲渡価額の計算例は、以下のとおりです。

譲渡価額の計算例
  • 売却価格:5,000万円
  • 持分割合:夫(2/3)、妻(1/3)
  • 夫の譲渡価額:約3,333万円
  • 妻の譲渡価額:約1,666万円

この金額が、後の計算すべてのベースとなるため、契約書や領収書を必ず手元に用意して確認することが大切です。

STEP

ステップ2:取得費(購入時の費用)と譲渡費用(仲介手数料等)を引く

次に、売却金額から差し引ける「経費」を算出しましょう。

経費には、不動産を購入したときの費用である「取得費」と、売却するためにかかった費用である「譲渡費用」の2種類があります。これらを漏れなく計上することで、課税対象となる利益を圧縮し、税金を安く抑えることが可能です。

取得費には、主に以下の要素が含まれます。

取得費に含まれる要素
  • 購入時の物件価格
  • 購入時の仲介手数料
  • 購入時の印紙代
  • 購入時の登記費用
  • リフォーム費用など

しかし、建物部分については経年劣化分(減価償却費)を差し引く必要があるため、購入金額がそのまま取得費になるわけではありません。購入時の資料が紛失して不明な場合は、「売却価格の5%」を取得費として計算する「概算取得費」という特例を使うこともできます。

一方で、譲渡費用には、以下の項目が該当します。

譲渡費用に該当する項目
  • 売却時の仲介手数料
  • 売却時の印紙税
  • 測量費
  • 建物の解体費用

譲渡費用も、共有持分に応じて按分して計上しましょう。

STEP

ステップ3:所有期間(短期・長期)に応じた税率をかける

最後に、算出された利益(譲渡所得)に対して、所有期間に応じた税率をかけ合わせましょう。

不動産の所有期間が「売却した年の1月1日時点で5年を超えているか」によって、税率は大きく2つに区分されます。所有期間が短いほど税率は高く設定されており、投機的な不動産取引を抑制する仕組みになっているのが特徴です。

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区分所有期間所得税率(復興税込み)住民税率合計税率
短期譲渡所得5年以下30.63%9%39.63%
長期譲渡所得5年超15.315%5%20.315%
※所得税率には復興特別所得税(2.1%)を含みます。
出典:国税庁|No.3211 短期譲渡所得の税額の計算
出典:国税庁|No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

共有名義の場合、共有者それぞれの所有期間で判定します。

たとえば、夫は10年前に購入、妻は3年前に贈与で持分を取得したというケースでは、夫は長期譲渡所得、妻は短期譲渡所得となる可能性があります(贈与により取得した持分の場合、所有期間は贈与者の所有期間を引き継ぎます)。

税率は住民税と合わせて約20%または約40%と倍近く違うため、自身の所有期間がどちらに該当するかを正確に把握することが極めて重要です。

出典:国税庁|譲渡所得の計算のしかた(分離課税)

【実例シミュレーション】3,000万円で売却した場合の税額計算

計算手順を理解したところで、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみましょう。

以下の条件で、夫婦共有のマンションを売却した場合、夫と妻それぞれにかかる税金を算出します。

税額計算の条件
  • 売却価格:3,000万円
  • 購入価格:2,000万円(減価償却後の取得費とする)
  • 譲渡費用:100万円(仲介手数料など)
  • 共有持分:夫 1/2、妻 1/2
  • 所有期間:10年(長期譲渡所得)
    ※特例控除は考慮しないものとする

まず、物件全体での利益を計算します。

3,000万円(売値) – 2,000万円(取得費) – 100万円(経費) = 900万円(全体利益)

次に、算出した全体利益を持分で分けましょう。

  • 夫の譲渡所得:900万円 ×1/2 = 450万円
  • 妻の譲渡所得:900万円 ×1/2 = 450万円

所有期間が5年超(長期譲渡所得)なので、税率は約20.315%です。

夫と妻の税額
  • 夫の税額:450万円 × 20.315% ≒ 91万4,100円
  • 妻の税額:450万円 × 20.315% ≒ 91万4,100円

結果、夫婦それぞれが約91万円、合計で約182万円の税金を納める必要があります。

このように、利益が出ると税負担も大きくなるため、次章で紹介する「控除・特例」が使えるかどうかが重要になります。

税金を大幅に抑えられる!共有名義不動産でも使える「控除・特例」

不動産売却には、要件を満たせば税金を大幅に減額したり、ゼロにできたりする特例措置が存在します。

とくに共有名義の場合、特例によっては「共有者一人ひとり」が控除枠を使えるため、単独名義よりも節税効果が2倍になる可能性も珍しくありません。

共有名義不動産でも使える「控除・特例」は、主に以下の4つです。

以下、それぞれ具体的に解説します。

居住用財産の3,000万円特別控除の特例

マイホーム(居住用財産)を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例です。

この特例のメリットは、共有者それぞれが適用を受けられる点にあります。たとえば夫婦共有であれば、夫3,000万円+妻3,000万円で、世帯合計最大6,000万円までの利益を非課税にすることが可能です。

非課税にできる上限
  • 単独名義:控除額は最大3,000万円
  • 夫婦共有:控除額は最大6,000万円(各自3,000万円)

適用するためには、売却した家屋に実際に住んでいたことが主な条件となります。夫婦のどちらかが単身赴任などで別の場所に住民票を移していても、生計を一にする親族として住んでいた実態が認められれば、適用できる可能性があります。

しかし、配偶者や親子間など「特別な関係」にある人への売却には適用できません。第三者への売却に限られる点には注意が必要です。

出典:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例

10年超所有の場合の軽減税率の特例

マイホームを売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合、通常の長期譲渡所得税率よりもさらに低い「軽減税率」を適用できます。

税金の種類通常の長期譲渡所得軽減税率適用後
所得税15.315%10.21%
住民税5%4%
合計20.315%14.21%

具体的には、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について、税率が約14%(所得税10.21%+住民税4%)まで下がります。

この特例も共有者それぞれに適用されるため、夫婦共有であればそれぞれの持分利益に対して軽減税率を使用可能です。

さらに、前述の「3,000万円特別控除」と併用できる点も大きな特徴です。3,000万円を引いてもまだ利益が残るような高額売却のケースでは、残った利益に対してこの軽減税率を適用することで、二重の節税効果を得られます。

所有期間が10年を超えている物件であれば、ぜひ併用を検討しましょう。

出典:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

特定居住用財産の買い換え特例

今のマイホームを売って新居に買い換える場合、売却益に対する課税を「将来に先送り(繰り延べ)」できる特例があります。

以下のような条件を満たすことで、使用可能です。

特定居住用財産の買い換え特例の条件
  • 国内にある居住用のマイホームを売却していること
  • 売却した年の1月1日時点で所有期間が10年超であること
  • マイホームの 売却価額が1億円以下であること
  • 親族など特別な関係者への譲渡でないこと
  • 売却の前年から売却の翌年までの3年の間に別のマイホームを取得していること
  • 買い換えた住宅に一定期間内に居住すること
  • 買換住宅が床面積や耐震性などの要件を満たすこと

税金が免除されるわけではありませんが、買い替え時の手元資金を多く残せるでしょう。

しかし、適用を受けた年の前後2年間(通算5年間)は、新たに取得した住宅について住宅ローン控除の適用を受けられません。新居で住宅ローン控除を受ける予定がある場合、どちらを使ったほうがトータルで得になるか、慎重にシミュレーションする必要があります。

「夫は買い換え特例、妻は3,000万円控除」といった使い分けもできないため、一度税理士などの専門家に相談しましょう。

出典:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

相続した空き家の3,000万円特別控除

親などが一人暮らしをしていた実家を相続し、その空き家を売却する場合に使える特例です。

耐震基準を満たすようにリフォームするか、更地にして売却することなどを条件に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。要件を満たす共有相続人がそれぞれ3,000万円の控除枠を利用可能です※。

相続発生から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があるため、遺産分割協議が長引くと期限を逃してしまうリスクがあります。使用したい場合は、早めに税理士などの専門家に相談することが大切です。

※令和6年1月1日以後の譲渡で、相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、控除額は最大2,000万円となるため注意が必要です。

出典:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

【ケース別】共有名義不動産の売却における税金の注意点

共有名義不動産の売却は、単なる資産の現金化だけではありません。

相続や離婚といった人生の節目と重なることが多く、状況に応じた適切な税務判断が求められます。

適用できる特例や注意すべきリスクがケースごとに大きく異なるため、自身の状況と照らし合わせて確認しましょう。

相続した共有不動産を売却する場合(取得費加算の特例)

相続税を納めて取得した共有不動産を売却する際には、「取得費加算の特例」が大きな節税効果を発揮します。支払った相続税の一部を「取得費(経費)」として譲渡所得から差し引ける制度です。

以下の要件を満たすことで、使用できます。

取得費加算の特例の条件
  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること
  • その財産を取得した際に相続税を課税されていること
  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から3年10か月以内に売却していること

通常、先代からの引き継ぎで取得費が不明な場合、売却価格の5%しか経費に計上できず、税負担が重くなる傾向があります。しかし、この特例を使えば実質的な利益を圧縮し、譲渡所得税を大幅に軽減することが可能です。

適用を受けるためには、相続開始の翌日から3年10か月以内に売却を完了させる必要があります。期限を1日でも過ぎると特例は使えなくなるため、共有者間での意思決定を早めることが重要です。

出典:国税庁|No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

関連記事:共有不動産はどうしたら売却できる?主な売却方法や流れ、発生する費用・税金を解説

離婚に伴い共有不動産を売却・財産分与する場合

離婚を機に共有不動産を処分する場合、単なる売却だけでなく「財産分与」という形式をとることがあります。

離婚時の財産分与における課税関係は、以下のとおりです。

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立場税金の種類課税の有無・条件
分与した側(渡す人)譲渡所得税購入時より値上がりしている場合に課税される可能性あり
分与された側(受取る人)贈与税原則非課税(過大な財産分与を除く)
分与された側(受取る人)不動産取得税原則非課税(清算的な財産分与の場合)
出典:総務省|不動産取得税
分与された側(受取る人)登録免許税課税(固定資産税評価額の2%)

財産分与で不動産の名義を相手方に移す際、受け取る側には贈与税などの税金は原則かかりません。一方で、渡す側(分与する側)には「譲渡所得税」がかかる可能性があるため注意が必要です。

購入時よりも不動産の価値が上がっている場合は、値上がり益に対して課税されます。しかし、売却益が出た場合でも、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例要件を満たせば、税金をゼロにできるケースもあります。

離婚届の提出前後で「配偶者控除」の適用可否が変わる点も考慮し、タイミングを見極めることが大切です。

「自分の持分だけ」を不動産会社等に売却する場合

他の共有者から売却の合意が得られない場合でも、自身の「共有持分のみ」であれば単独で売却可能です。共有関係から早期に離脱できます。

持分のみの不動産は利用価値が低いため、一般的な市場価格よりも大幅に安くなる傾向にあります。相場の50〜70%程度になることも覚悟しなければなりません。

売却価格が低くなる分譲渡益が出にくく、結果として譲渡所得税が発生しないケースも多く見られます。

しかし、親族間などで著しく低い価格(低廉譲渡)で売買を行うと、買主側に「みなし贈与」として贈与税が課されるリスクがある点には注意が必要です。

関連記事:共有持分は売却できる?同意なしで売れる理由やトラブル回避のポイントを弁護士が解説

共有名義不動産の売却で確定申告は必要?

不動産を売却した後の税務手続きは、会社員の年末調整とは全く別のルールで機能しています。

「誰が」「どのような時に」申告すべきかを正確に理解していないと、無申告によるペナルティを受ける可能性があるため注意が必要です。

ここでは申告の要否判断と、具体的な手続きについて解説します。

確定申告が必要なケース・不要なケース

不動産売却において確定申告が必要かどうかの判断基準は、以下の2点です。

確定申告が必要かどうかの判断基準
  • 利益が出たか
  • 特例を使用するか

以下の表に、確定申告の要否をまとめました。自身が申告の必要があるのか、チェックしてみてください。

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ケース利益(譲渡所得)の状態特例の利用確定申告の要否
通常売却プラス(利益あり)なし必要(納税あり)
通常売却マイナス(損失あり)なし不要
特例利用特例適用前はプラスあり必要(納税なしか減額)
損失繰越マイナス(損失あり)損益通算など推奨(還付あり)

計算上の利益(譲渡所得)がプラスであれば、原則として確定申告を行い納税しなければなりません。逆に、売却損が出て利益がマイナスの場合は、課税対象がないため申告義務はありません

しかし、「3,000万円特別控除などの特例を使って税額がゼロになる場合」は注意が必要です。特例は確定申告をすることを適用条件としているため、税金が出なくても申告手続きをしなければなりません。

自己判断で「税金ゼロだから申告しない」と放置すると、特例の適用が否認され、本来の税額に延滞税などを上乗せして請求される恐れがあります。

確定申告は「共有者それぞれ」が行う必要がある

共有名義の不動産に関する確定申告は、共有者全員が連名で行うものではありません。「申告・納税は個人の義務」との原則に基づき、共有者それぞれが個別に申告書を作成し提出する必要があります。

利益の額や適用できる特例も個人ごとに判定されるため、申告内容が全く同じになるとは限りません。夫は利益が出て納税が必要だが、妻は利益が出ず申告不要、というケースも起こり得ます。

一方が手続きをしたからといって、もう一方の手続きが完了したことにはならないため、必ず各自で進捗を管理しましょう。

確定申告に必要な書類と入手場所

確定申告をスムーズに進めるためには、必要書類を漏れなく揃える準備が欠かせません。

税務署で入手するもの、法務局で取得するもの、手元の契約書からコピーするものなど、入手経路は多岐にわたります。

主な必要書類と入手場所は、以下のとおりです。

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書類名称入手場所・保管場所備考
確定申告書B様式税務署・国税庁HP第一表、第二表を使用
確定申告書第三表税務署・国税庁HP第三表を使用
譲渡所得の内訳書税務署・国税庁HP土地・建物用を使用
売買契約書(写)自宅保管購入時と売却時の両方必要
登記事項証明書法務局全部事項証明書を取得
仲介手数料の領収書自宅保管経費計上のために必須
出典:国税庁|A1-1 申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)
出典:法務局|各種証明書請求手続

購入時の契約書や領収書は、「取得費」を証明する重要な証拠となります。紛失している場合は、購入当時のパンフレットや通帳の出金履歴などが代用できることもありますが、税務署との相談が必要です。

特例を利用する場合は、「除票住民票」や「耐震基準適合証明書」など、追加の書類が求められることもあります。

提出の直前になって慌てないよう、売却が決まった段階から書類の整理を始めておきましょう。

確定申告を忘れた場合のペナルティ

期限である3月15日までに確定申告を行わなかった場合、本来支払うべき税金に加えて重いペナルティが課されます。

確定申告を忘れた場合の主なペナルティは、以下のとおりです。

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制度名内容
無申告加算税【自主申告の場合】納付税額に一律5%

【税務署の調査事前通知後】
・納付税額のうち50万円までは10%
・50万円を超え300万円までは15%
・300万円を超える部分は25%

【調査後(決定予知後)】
・納付税額のうち50万円までは15%
・50万円を超え300万円までは20%
・300万円を超える部分は30%
延滞税・納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年7.3%等
・2か月を経過した日以後:年14.6%等
特例の不適用・青色申告特別控除の減額
・3,000万円特別控除などの適用除外リスク
出典:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき

まず、期限後に申告した場合は「無申告加算税」が発生します。税額に応じて15%から30%が加算されるため、これだけで大きな負担増となります。

さらに、納付が遅れた日数分だけ「延滞税」という利息も支払わなければなりません。

加えて、申告期限を守ることが適用の条件となっている「3,000万円特別控除」などの特例が使えなくなります。特例が否認されれば、数百万円単位で税額が跳ね上がるリスクがあるため、期限は厳守しましょう。

共有名義不動産の売却で避けるべきNG行動

売却代金の受け取り方や手続きの進め方ひとつで、予期せぬ税金トラブルや親族間争いに発展することがあります。とくに「贈与」とみなされる行為は、税務署からの指摘を受けやすいため注意が必要です。

共有名義の不動産を売却する際は、以下の行動は避けましょう。

以下、それぞれ詳細に解説します。

関連記事:共有名義の不動産売却はトラブルに要注意!回避策とスムーズに売る方法

売却代金の振込口座を代表者1人にまとめる

不動産の売却代金を受け取る際、代表者1人の口座に全額を振り込ませるのは避けましょう。

税務署は大きなお金の動きを常に監視しており、持分を持つ妻の分まで夫が受け取ると、「妻から夫への贈与」があったとみなされます。夫に対して高額な贈与税が課税される可能性が高いです。

一度夫の口座に入金された後に妻へ送金し直したとしても、一時的に夫が管理していた事実は変わりません。売却代金の受領時は、必ず決済の場において、各共有者の持分に応じた金額をそれぞれの名義口座へ直接振り込んでもらいましょう。

持分割合と異なる配分で代金を受け取る

登記されている持分割合と異なる比率で売却代金を分配することもNG行為です。

持分が「夫1/2、妻1/2」であれば、売却代金も必ず「半分ずつ」受け取る必要があります。持分以上に代金を受け取れば、その超過分は他の共有者からの贈与と認定されかねません。

どうしても配分を変えたい場合は、売却前に共有持分の移転登記(贈与や親族間売買)を行い、登記上の持分を実態に合わせて変更しておく必要があります。

しかし、登録免許税や不動産取得税などのコストがかかるため、慎重な検討が必要です。

関連記事:共有持分を譲渡する4つの方法とは?手続きや税金・注意点をプロが解説

弁護士など専門家に相談せず進める

共有者間で意見の対立がある場合や、離婚や相続が絡む複雑な権利関係にある場合、当事者だけで解決しようとするのは危険です。

以下のような状況の際は、すぐに弁護士などの専門家に相談しましょう。

弁護士などの専門家に相談すべきケース
  • 共有者の一人が行方不明、または認知症である
  • 離婚協議中で財産分与の割合が決まらない
  • 相続人間で売却の方針が全く合わない
  • 親族間売買の適正価格が分からない

とくに、「売りたい人」と「住み続けたい人」が感情的に対立すると、解決までの時間が長期化します。その間も固定資産税や維持管理費は発生し続け、建物の老朽化により資産価値も下落していきます。

また、万が一口約束で合意した場合、後から「言った言わない」のトラブルになりやすく、法的効力も曖昧です。

初期段階で弁護士や税理士といった専門家を入れ、客観的な視点から法的に正しい手順で調整を進めることが重要です。

丁寧にお話をお伺いします。まずはお気軽にご連絡ください

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共有名義不動産の売却・税金に関するよくある質問

共有者の一人が確定申告をしなかったらどうなる?

共有者の一人が申告を怠った場合、その本人に対して税務調査が入ります

無申告加算税や延滞税などのペナルティが科されるのは、あくまで申告しなかった本人のみです。連帯責任ではないため、正しく申告・納税を行った他の共有者に迷惑がかかることはありません。

しかし、特例の利用状況などを確認するために、税務署から他の共有者へ事実確認の連絡が来る可能性はゼロではありません。

トラブルを避けるためにも、売却完了後に「確定申告の準備は進んでいるか」など、共有者間で声を掛け合いましょう。

確定申告書の作成を代表者がまとめて行ってもいい?

確定申告書は、納税者本人がその内容に責任を持って作成・提出するものです。家族であっても、本人の意思を確認せずに勝手に作成したり、署名したりすることは認められません。

物理的な作成作業(パソコン入力など)を補助することは問題ありませんが、最終的な確認と提出は本人の名義で行う必要があります。

また、有償・無償に関わらず、税理士資格を持たない人が他人の確定申告書を代理で作成することは「税理士法」に違反する行為です(税理士法第2条)。

複雑で自分では作成できないと感じた場合は、必ず税理士に依頼しましょう。

売却益が出なければ確定申告は不要?

計算の結果、譲渡所得がマイナス(損失)であれば、税金は発生しないため申告義務はありません

しかし、一定の要件を満たすマイホームの売却であれば、損失額を給与所得などから差し引ける「損益通算の特例」を使える可能性があります。特例を使用する場合、「確定申告をすること」が適用の条件となるため、義務はなくても申告は必要です。

損失が出たからといって何もしないのではなく、「損益通算が使えるか」を一度確認することをおすすめします。

まとめ|共有名義の売却は税金の計算と分配方法に注意しよう

共有名義の不動産売却は、単独名義に比べて手続きや税金計算が複雑です。しかし、正しい知識を持って対策を行えば、特例による大きな節税効果を得られます。

まずは不動産会社に査定を依頼し、売却によって「いくら利益が出そうか(あるいは損失が出そうか)」を把握することから始めましょう。その後、税理士などの専門家と相談しながら、適切な売却プランを立てることが大切です。

また、売却価格などを巡って共有者間でトラブルになっている場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。交渉の代理を行ってくれるため、適切に手続きを進められるうえ、精神的負担も軽減できます。

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