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土地トラブルは訴訟で解決すべき?費用や期間・手続きの流れを弁護士が徹底解説

「土地トラブルを抱えているが、訴訟をすべきか悩んでいる」
「訴訟をする場合、どのように手続きをすればよいかわからない」
土地に関するトラブルは、財産と感情が絡み合うため解決が困難です。ただ、いざ「訴訟」を考えても手続きが複雑で、何から手をつければよいか分からず悩んでいる人は少なくありません。
この記事では、訴訟に踏み切るべきケースや具体的な流れを解説します。訴訟にかかる期間や費用なども解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
弁護士 佐々木一夫本記事を参考に自身の状況に合った解決手段を見極め、後悔のない解決を目指しましょう。
土地トラブルの訴訟について悩んでいる方は、「弁護士法人アクアピース」にお任せください。
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訴訟に発展しやすい主な土地トラブル
土地に関するトラブルは、財産価値に直結するため深刻化しやすい傾向があります。放置すると権利関係が複雑化し、さらに解決が困難になることも少なくありません。
ここでは、特に訴訟に発展しやすい代表的な土地トラブルを4つの類型に分けて解説します。
自分のケースがどれに当てはまるかを確認しておきましょう。
土地の「境界線」をめぐる対立(境界標の紛失・越境など)
土地トラブルの中でも多いのが、隣地との「境界線」に関する対立です。とくに、以下のようなケースでは対立が激化する傾向があります。
- 境界標が不明確、または紛失している
- 相手の塀やブロック、建物の庇が境界線を越えている(越境)
- 相手の敷地から木の枝や根が越境している
これらは財産権の侵害に直結する問題です。
当事者双方の主張がぶつかりやすく、感情的なしこりも残りやすいため、訴訟に至るケースが多く見られます。
土地の「所有権」に関する争い(二重譲渡・時効取得など)
土地の「所有権」そのものの帰属をめぐって争いになることもあります。これは、土地取引の安全性に関わる重大なトラブルです。
代表的なケースとして「二重譲渡」や「時効取得」が挙げられます。
| 二重譲渡 | 売主が同じ土地を、複数の異なる買主に売却すること |
|---|---|
| 時効取得 | 他人の土地であっても、一定期間占有を続けることで所有権を得られる制度 |
いずれも「自分の土地だ」と信じる者同士の争いとなるため、話し合いでの解決は困難です。最終的に、所有権の有無を裁判所に判断してもらう「所有権確認訴訟」などに発展しやすくなります。
「通行権(囲繞地通行権など)」に関する問題
公道に出るために他人の土地を通らなければならないケースが存在します。この場合、法律では一定の要件下で他人の土地を通行する権利「囲繞地通行権」を認めています(民法第210条)。
しかし、この権利をめぐり、以下のようなトラブルが発生しがちです。
- 通行する場所や幅をめぐる対立
- 通行料(償金)の金額に関する対立
- 通行権の有無そのものに関する争い
- 自動車の通行を認めるかどうか
通行は日常生活に不可欠なため、対立が深刻化しやすい問題です。通行を妨害された場合、妨害排除を求めて訴訟になるケースもあります。
出典:e-Gov法令検索|民法
騒音・悪臭・木の枝の越境などの近隣トラブル
いわゆる「近隣トラブル」も、我慢の限度を超えると法的な問題に発展します。これらは法律上「相隣関係」の問題と呼ばれます。
とくに、以下のような行為が続く場合、差し止めや損害賠償を求めて訴訟が検討されることが多いです。
| 騒音・振動 | 近隣の工場や店舗、居住者が出す音が受忍限度(社会生活上我慢すべき限度)を超えている |
|---|---|
| 悪臭 | ゴミ屋敷やペットの多頭飼育、事業活動による悪臭が漂ってくる |
| 日照・眺望 | 隣地に高層建築物が建ち、日当たりや眺望が著しく阻害される |
| 木の枝の越境 | 隣地の木の枝が越境し、落ち葉や害虫に悩まされている ※2023年4月1日施行の改正民法により、一定の要件下で枝の切り取りが可能になりました(出典:法務省|相隣関係規定等の見直し) |
これらは生活実感に直結するため、感情的な対立を生みやすいのが特徴です。行政や保健所に相談しても改善しない場合、最終的に訴訟で解決を図るしかなくなることがあります。
土地トラブルに関する「訴訟」の主な種類
土地トラブルを裁判で解決する場合、争いの内容に応じて適切な「訴訟」の種類を選択する必要があります。
ここでは、土地トラブルで利用される主な3つの訴訟形態について、その目的と特徴を解説します。
自身のトラブルがどれに該当する可能性があるかを確認しましょう。
境界を確定させる「境界確定訴訟」
「境界確定訴訟」は、隣地との境界線が不明確な場合に利用されます。主な目的は、公法上の境界(登記所に記録されている境界線)、すなわち「筆界」を裁判所に確定してもらうことです。
境界確定訴訟では、裁判所が証拠に基づき職権で境界を定めます。筆界は当事者の合意によって変更できない性質を持つため、当事者が和解で境界を決めることはできず、必ず判決によって境界が示される点が特徴です。



ただし、実務上は「境界の確定」ではなく「所有権の範囲の確認」として和解が成立する場合があります。
出典:法務省|筆界特定制度
所有権の帰属を争う「所有権確認訴訟」
「所有権確認訴訟」は、土地の所有権が誰にあるのかを裁判所に確認してもらう訴訟です。境界線そのものではなく、「その土地は誰のものか」を争います。
この訴訟が利用される主なケースは、以下のとおりです。
| 時効取得を主張する場合 | 長期間、他人の土地を占有してきた側が、所有権の取得を主張する |
|---|---|
| 二重譲渡が発生した場合 | ・先に登記を得た買主に対し、もう一方の買主が登記の無効と所有権を主張する ・どっちも登記を得ていないような段階だと、所有権の帰属を所有権移転請求訴訟で争う |
| 登記名義の回復を求める場合 | 何らかの理由で他人の名義になっている登記を、真の所有者として自分に戻すよう主張する |
この訴訟で勝訴判決を得ることで、自分の所有権を法的に確定させ、登記手続きなどを行うことが可能になります。
妨害物の撤去などを求める「妨害排除請求訴訟」
「妨害排除請求訴訟」は、自分の所有権が何らかの形で妨害されている場合に利用されます。妨害状態を取り除き、完全な所有権の行使を回復することが目的です。
具体的な請求内容は以下のように多岐にわたります。
| 越境物の撤去 | 隣地の塀や建物の一部が境界を越えている場合に、その撤去を求める |
|---|---|
| 通行妨害の排除 | 通行権があるにもかかわらず障害物が置かれている場合に、その撤去を求める |
| 不法占有者への明渡し | 土地を権限なく占有している者に対して、土地の明け渡しを求める |
境界確定訴訟や所有権確認訴訟とあわせて提起されることも多い、実効性の高い訴訟手続きです。
関連記事:貸してる土地は返してもらえるか?正当事由や立退料などをわかりやすく解説
土地トラブルで訴訟をする前に検討すべきこと
土地トラブルが発生したからといって、すぐに訴訟を起こすのは賢明ではありません。
訴訟は多大な費用と時間、そして精神的な負担を伴う最終手段です。裁判所の判決は白黒をはっきりさせますが、近隣関係に決定的な亀裂を生む可能性もあります。
訴訟に踏み切る前に、まずは以下のような「裁判外」の解決手続きを検討しましょう。
以下、それぞれ具体的に解説します。
当事者間での話し合い
円満な解決をするためには、当事者間での話し合いが欠かせません。感情的にならず、冷静にこちらの主張と根拠を伝えることが重要です。
話し合いをする際は、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- 客観的な資料の準備:登記簿謄本や公図、測量図など、法的な根拠となる資料を揃える
- 合意書の作成:話し合いで合意に至った場合は、必ずその内容を書面(合意書や覚書)に残す
- 弁護士の同席:当事者だけでは冷静な話し合いが難しい場合、弁護士を代理人として交渉を依頼する
相手が話し合いに応じる姿勢を見せている段階であれば、まずはこの方法で着地点を探るようにしましょう。
法務局の「筆界特定制度」の利用
境界トラブルの場合、訴訟よりも簡易で迅速な行政サービスとして「筆界特定制度」があります。これは法務局に申請し、専門家である筆界特定登記官が筆界を特定する制度です。
境界確定訴訟に比べて費用が安く、手続き期間が比較的短い点が魅力です。裁判所の判決のような法的拘束力や強制力は持ちませんが、公的機関による専門的調査に基づく判断として、証拠資料としての価値を有します。
相手が筆界特定の立ち会いや調査に協力しなくても手続きは進みますが、結果に納得してくれない可能性もゼロではありません。
相手が特定結果に納得しない場合や、所有権の範囲についても争いがある場合は、別途境界確定訴訟などの裁判手続きが必要になります。
出典:法務省|筆界特定制度
ADR(裁判外紛争解決手続き)・民事調停
当事者間での話し合いが難しい場合、中立的な第三者を介した解決方法も有効です。
代表的なものに「ADR」と「民事調停」があります。
| ADR | 弁護士会や土地家屋調査士会などの専門機関が、中立的な立場で仲介し、紛争解決を図る手続き |
|---|---|
| 民事調停 | 裁判所の調停委員が間に入り、当事者双方の主張を聞きながら、話し合いによる合意を目指す手続き |
これらの手続きは非公開で行われるため、プライバシーが守られる点が特徴です。また、裁判とは異なり、法律論だけでなく実情に即した柔軟な解決(例:金銭での解決など)ができます。
ただ、これらの手続きは相手方が出席を拒否したり、合意に至らなかったりした場合は「不成立」となり、解決には至りません。
土地トラブルで訴訟を検討すべきケース
話し合いやADR、筆界特定制度などを試みても解決しない場合に、初めて「訴訟」が現実的な選択肢となります。
とくに以下のようなケースでは、訴訟による解決を積極的に検討すべきといえるでしょう。
自身の状況がこれらに当てはまるか、冷静に判断してみてください。
話し合いや調停でも合意できない場合
以下のようなケースでは、これ以上話し合いを続けても解決の見込みは低いでしょう。
- 当事者間で直接交渉しても、お互いの主張が平行線のまま進展しない
- 民事調停を申し立てたものの、合意に至らず「不成立」となった
お互いの溝が埋まらない以上、残された手段は司法の判断を仰ぐことだけです。裁判所の判決という形で、法的に白黒をつける必要があります。
相手方が測量や立ち会いに一切応じない場合
境界トラブルの解決には、現地の確認や正確な測量が不可欠です。しかしなかには、相手方が以下のように非協力的な態度を取り続ける場合があります。
- 境界確認のための立ち会いを拒否する
- 測量士の敷地への立ち入りを拒否する
- 法務局の筆界特定手続きへの協力を拒否する
このように、話し合いの前提となる事実確認すらできない状況では、裁判外での解決は不可能です。訴訟になれば、裁判所の権限で測量(鑑定)を実施できます。
放置すると権利が失われる可能性がある場合
土地トラブルの中には、時間をかけることが不利になるケースがあります。その典型が「時効取得」のリスクです。
相手があなたの土地の一部を「自分の土地だ」と信じて占有を続けている状態が一定期間(善意無過失で10年・それ以外で20年)経過すると、相手にその土地の所有権が移ってしまう可能性があります(民法第162条)。
権利を失うのを防ぐためには、時効が完成する前に訴訟を提起しなければなりません。訴訟を提起すると、訴訟手続が終了するまで時効の完成が猶予され、確定判決を得ることで時効が更新されます(民法第147条)。



「そのうち何とかなる」と問題を先送りにすると、取り返しのつかない事態になりかねません。
土地トラブルの訴訟にかかる主な費用
訴訟をためらう理由の一つが「費用」です。土地トラブルの訴訟では、複数の費用が発生し、高額になることもあります。
具体的にどのような費用が必要になるのか、事前に把握しておきましょう。土地トラブルの訴訟にかかる主な費用は、以下の3つです。
以下、それぞれ具体的に解説します。
裁判所に納める費用
訴訟を提起するためには、まず裁判所に手数料を納める必要があります。主な費用は、「収入印紙代」と「郵便切手代」の2種類です。
| 申立手数料(収入印紙代) | 訴訟で得ようとする経済的利益(訴額)に応じて金額が決まります。 土地に関する訴訟では、対象となる土地の固定資産税評価額などを基準に訴額を算出します。 |
|---|---|
| 予納郵券(郵便切手代) | 裁判所から相手方(被告)へ訴状などを送達するために使われる切手代です。 数千円程度を事前に納めます。 |
ここで注意すべき点は、収入印紙代の料金です。収入印紙代は、訴額が高くなるほど高額になります。
主な費用は、以下のとおりです。
| 訴額 | 収入印紙代 |
|---|---|
| 100万円までの部分 | その価額10万円までごとに1,000円 |
| 100万円を超え500万円までの部分 | その価額20万円までごとに1,000円 |
| 500万円を超え1,000万円までの部分 | その価額50万円までごとに2,000円 |
| 1,000万円を超え10億円までの部分 | その価額100万円までごとに3,000円 |
※具体的な費用を知りたい方は、裁判所の手数料額早見表を参考にしてみてください。
出典:裁判所|別表(民事訴訟費用等に関する法律別表第1(第3条,第4条関係))
測量・鑑定費用
境界線の特定や越境の事実、土地の適正な価格などを明らかにするため、客観的な証拠が必要となります。その際に必要な測量・鑑定費用は、土地トラブルの訴訟において高額になりやすい費用です。
金額は事案の複雑さや土地の広さによって異なります。数十万円から、場合によっては100万円を超えることも珍しくありません。
裁判所は、中立的な専門家(土地家屋調査士・測量士・不動産鑑定士など)を選任し、測量や鑑定を命じます。この費用は、訴訟の当事者が予納(前払い)しなければなりません。



この費用負担の大きさが、訴訟へのハードルとなるケースも多いです。
弁護士費用
土地トラブルの訴訟は、法律的な主張や証拠の提出には専門的な知識が必要です。そのため、弁護士に依頼することが一般的となっています。
弁護士費用は、法律事務所によって料金体系が異なりますが、主に以下の費用で構成されます。
| 費用の種類 | 概要 |
|---|---|
| 相談料 | 弁護士に法律相談をする際にかかる費用(時間制。初回無料の場合もある) |
| 着手金 | 訴訟を正式に依頼する時点で支払う費用。結果にかかわらず返金されないのが原則 |
| 報酬金 | 事件が解決した(勝訴した)場合に、得られた経済的利益に応じて支払う成功報酬 |
| 日当・実費 | 弁護士が裁判所に出廷するための日当、交通費、印紙代、鑑定費用などの実費 |
着手金や報酬金は、訴額や事件の難易度に応じて変動します。また、訴訟が長期化すれば、その分だけ日当などもかさみます。



弁護士に依頼する前に一度相談し、費用の見積もりを明確にしてもらうことが重要です。
関連記事:不動産にまつわるトラブル解決のための弁護士費用目安と依頼のメリット
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土地トラブルの訴訟費用は誰が負担する?
訴訟にかかる費用が高額になる場合、費用を誰が負担するのかは気になるポイントです。もし訴訟に勝てば、かかった費用をすべて相手に請求できるのでしょうか。
ここで重要なのは、「訴訟費用」と「弁護士費用」を分けて考えることです。
| 訴訟費用の負担(印紙代・郵便切手代・鑑定費用など) | 原則として「敗訴者負担」 |
|---|---|
| 弁護士費用の負担(着手金、報酬金など) | 原則として「自己負担」 ※不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の場合に限り、例外的に弁護士費用の一部(認容額の約10%程度)を相手方に請求できることがあります。 なお、債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟では、原則として弁護士費用の請求は認められません(最高裁令和3年1月22日判決)。 |
訴訟費用(印紙代・郵便切手代・鑑定費用など)の負担は、民事訴訟法に基づき、原則として「敗訴者負担」となります。つまり、全面的に勝訴すれば、立て替えていた印紙代や高額な鑑定費用を、相手方に請求できる可能性があります。
ただ、和解で解決した場合、和解条項の中で訴訟費用の負担について特別の定めをしなかったときは、法律上当然に「その費用は各自が負担する」こととなります(民事訴訟法第68条)。
弁護士費用(着手金、報酬金など)の負担は、たとえ勝訴しても、原則として相手方に請求できません。そのため、自分が支払った弁護士費用は、原則として自己負担です。



鑑定費用などは取り戻せる可能性がありますが、弁護士費用は戻ってこない可能性が高いことを理解しておきましょう。
【ステップで解説】土地トラブルで訴訟をする際の流れ
土地トラブルで訴訟を決意した場合、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。訴訟は専門的な手続きが多く、一般の方には分かりにくい部分も多いです。
ここでは、訴訟の提起から終結までの大まかな流れを4つのステップに分けて解説します。全体像を把握し、見通しを持って準備を進めましょう。
ステップ1|弁護士への相談・証拠収集
訴訟を決めたら、まずは弁護士に相談することが大切です。土地トラブルに精通した弁護士を選び、これまでの経緯や相手方の主張を詳細に伝えましょう。
弁護士は、法的見地から「勝訴の見込み」や「訴訟以外の解決策」を検討してくれます。また、正式に依頼すると、訴訟に向けて本格的な証拠収集を開始してくれるでしょう。
この段階でどれだけ客観的な証拠を集められるかが、訴訟の行方を大きく左右します。弁護士と緊密に連携し、主張を裏付ける証拠を揃えましょう。
ステップ2|訴訟提起(訴状の提出)
証拠が揃い、法的な主張が固まったら、裁判所に「訴状」を提出します。訴状とは、裁判所に「誰に」「何を」「どのような理由で」請求するのかを記載した書面です。



この訴状の提出によって、正式に訴訟が開始されます。
訴状は、被告(相手方)の住所地、または土地の所在地を管轄する地方裁判所などに提出するのが基本です。
その後、裁判所が訴状の形式的な不備をチェックし、不備がなければ、裁判所から相手方(被告)へ訴状が送達されます。
訴状が送達されると、第1回の裁判期日(口頭弁論期日)が指定されます。通常、訴訟提起から約1〜1.5か月後に設定されることが多いです。
ステップ3|口頭弁論・証拠調べ
訴訟が始まると、「口頭弁論」が約1か月に1回程度のペースで開かれます。口頭弁論では、原告(訴えた側)と被告(訴えられた側)が、お互いの主張を記載した書面(準備書面)と証拠を提出し合います。
主な流れは、以下のとおりです。
| 1.準備書面での主張・反論 | 以下のように、書面での議論が繰り返されます。 原告が「訴状」で主張、被告が「答弁書」で反論、原告が「準備書面」で再反論、被告が「準備書面」で再々反論 |
|---|---|
| 2.争点整理 | 裁判所は、双方の主張から、何が法的な争点なのかを整理します。 |
| 3.証拠調べ | 争点を判断するために必要な証拠調べが行われます。 これには、測量や鑑定の実施(鑑定)、関係者の証言(証人尋問)、当事者本人への質問(当事者尋問)などが含まれます。 |
ステップ4|和解または判決
すべての主張と証拠調べが終わると、裁判所は弁論を終結させます。弁論終結後、裁判所は判決期日を指定し、法的な判断を下します。
ただし、判決に至る前に「和解」で解決するケースも多いです。裁判所は、訴訟の進行中、適切なタイミングで双方に和解を勧めることが多くあります。判決で白黒つけるよりも、お互いが譲歩して柔軟な解決を図る方が望ましいと判断されるためです。
この段階で双方が和解案に合意すると、「和解調書」が作成されます。この調書は、確定判決と同じ法的効力を持つ点が特徴です。
それでも和解が成立しない場合、裁判所が「判決」を下します。判決内容に不服がある場合は、判決書の送達から2週間以内に高等裁判所に「控訴」することが可能です。



控訴がなければ、この時点で判決が確定します。
土地トラブルの訴訟にかかる期間の目安
土地トラブルの訴訟にかかる期間は、請求する内容(訴訟の類型)や争点の複雑さによって大きく変動します。第一審判決が出るまでのおおまかな目安は、半年から長いもので3年程度です。
主な期間は、以下のとおりです。
以下、それぞれ具体的に解説します。
境界確定訴訟:1.5〜3年
境界確定訴訟は、第一審判決までに1.5年〜3年程度と、土地トラブル訴訟の中でも特に時間がかかる類型といえます。
期間が長期化する具体的な理由は、以下のとおりです。
- 専門家による鑑定が必須なため
- 調査対象が複雑で時間がかかるため
- 鑑定プロセス自体が長期化するため
最大の理由は、裁判所が選任した土地家屋調査士や測量士による専門的な「鑑定」手続きが不可欠だからです。当事者の主張だけでは客観的な境界線は定まらず、裁判所が中立な専門家の調査結果(鑑定書)に基づいて判断を下す必要があります。
鑑定人は、法務局に保管されている資料(公図・地積測量図・登記簿など)や、過去の沿革、現地の状況などを詳細に調査します。
調査対象となる公図が古かったり、過去の測量図が不正確であったりする場合、歴史的な証拠の解釈と精密な測量に多大な時間がかかるのが特徴です。



鑑定手続きだけで半年から1年以上を要することも珍しくありません。
所有権確認訴訟:1〜2年
所有権確認訴訟は、第一審判決までに1年〜2年程度かかるのが目安となります。
主な争点は、「時効取得が成立するか」「過去の売買契約は有効か」「遺産分割は適法か」といった過去の事実です。審理では、以下のような証拠を収集し、裁判所が事実認定を行います。
- 契約書、領収書
- 固定資産税の納税通知書(誰が税金を払っていたか)
- 関係者の証言
境界確定訴訟のような大規模な測量鑑定が必須ではないケースが多いため、その分、審理期間が比較的短くなる傾向があります。
ただし、相続が絡むなどで当事者が多数にわたる場合や、事実関係が非常に複雑な場合は、2年以上かかることも珍しくありません。
妨害排除:半年〜1.5年
妨害排除請求訴訟は、第一審判決までに半年〜1.5年程度と、土地トラブル訴訟の中では比較的短期間で結論が出やすい類型です。
期間が比較的短い理由として、争点が「現在の状況」に絞られることが挙げられます。妨害排除請求訴訟における具体的な争点は、以下のとおりです。
- 妨害の事実認定
- 排除方法の決定
まず、越境している建造物(塀・物置など)や、不法投棄された廃棄物、無断駐車されている車両などの存在を確認します。その後、「塀を撤去せよ」「土地を明け渡せ」といった判決を求めるのが特徴です。
事実認定が比較的容易なため、審理期間も短くなる傾向があります。ただし、この妨害排除の前提として「そもそも境界線はどこか」「相手にも所有権があるか」といった点で争いが生じた場合、審理は複雑化します。



審理が複雑化した場合は、2年以上かかることも珍しくありません。
土地トラブルで訴訟をする際に集めておきたい証拠一覧
土地トラブルの訴訟は「証拠」がすべてといっても過言ではありません。自分の主張が正しいことを客観的に証明する資料がなければ、裁判所に認めてもらうことは困難です。
弁護士に相談する前に、可能な範囲で証拠を集めておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
以下、土地トラブルの訴訟で重要となる主な証拠を一覧で紹介します。
| 証拠のカテゴリ | 具体的な証拠の例 |
|---|---|
| 土地の権利関係 | ・登記簿謄本(全部事項証明書) ・公図・地積測量図・建物図面(法務局で取得) ・土地の売買契約書・重要事項説明書 ・固定資産税評価証明書・納税通知書 |
| 境界に関する資料 | ・境界確認書・筆界確認書(過去に作成したもの) ・境界標の写真(設置状況が分かるもの) ・過去の測量図(民間業者が作成したもの) ・占有の経緯が分かる資料(古い写真・航空写真など) |
| トラブルの経緯 | ・相手方との交渉記録(メール・LINE・手紙など) ・交渉時の録音データ ・内容証明郵便の写し ・近隣住民の証言(陳述書) |
| 被害状況 | ・越境されている部分の写真・動画 ・騒音や悪臭の測定データ ・損害箇所の修繕見積書 |
これらの証拠は、あくまで一例です。どのような証拠が必要かは、トラブルの内容によって大きく異なります。
「こんなものも証拠になるか」と迷う資料でも、法的には重要な意味を持つことがあります。自己判断で捨てずに、すべて弁護士に見せて相談しましょう。
関連記事:不動産売買契約書を個人間で取り交わすには?必要書類と登記・税金も解説
土地トラブルの訴訟に関するよくある質問
ここからは、土地トラブルの訴訟に関して、多くの方が抱く疑問について回答します。費用面や相談先について、不安を解消しておきましょう。
土地のトラブルはまず誰に相談すればいい?
トラブルの内容によって、最初の相談先は異なります。それぞれの専門家が対応できる範囲を理解し、適切な相手を選ぶことが重要です。
| 相談先の専門家 | 主な相談内容 |
|---|---|
| 弁護士 | ・相手方との交渉・調停・訴訟全般 ・法律的な権利主張・損害賠償請求 ・トラブル全般に関する法的な見通し |
| 土地家屋調査士 | ・土地の測量・境界標の設置 ・境界線の特定・地積の更正登記 ・法務局の筆界特定制度の申請代理 |
| 司法書士 | ・土地の登記(所有権移転、抵当権設定など) ・簡易裁判所での代理(訴額140万円以下) |
| 市区町村役場 | ・無料の法律相談(弁護士が担当) ・建築基準法に関する相談(建築指導課など) ・騒音や悪臭などの近隣トラブル |
境界線が不明確な場合は「土地家屋調査士」に相談します。すでに相手と揉めていて交渉や訴訟を考えている場合は「弁護士」に相談するのが一般的な流れです。
どこに相談すべきか迷った場合は、まず法律の専門家である弁護士に相談しましょう。弁護士に相談すれば、必要に応じて適切なアドバイスをしてもらえます。
訴訟費用を相手に全額負担させることは可能?
訴訟にかかった費用には、相手に請求できるものとできないものが存在します。具体的な内容は、以下のとおりです。
| 相手に請求できる費用(訴訟費用) | ・裁判所に納めた収入印紙代 ・郵便切手代 ・裁判所が命じた鑑定費用 ・証人の日当・旅費 など これらは「訴訟費用」と呼ばれ、判決で「敗訴者負担」とされるのが原則です。全面的に勝訴すれば、これらの費用は相手に請求できます。 |
|---|---|
| 相手に請求できない費用(原則自己負担) | ・弁護士費用 ・自分で測量会社に依頼した測量費用(裁判所の鑑定ではないもの) ・裁判所に行くための自分の交通費 など |
高額になりがちな弁護士費用は、原則として自己負担となります。この点を理
経済的余裕がなくても弁護士に依頼する方法はある?
弁護士費用がネックとなり、訴訟をためらう方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合でも、利用できる制度があります。
主な制度は、以下のとおりです。
| 法テラス(日本司法支援センター)の利用 | 経済的に余裕のない方のために設立された公的な機関です。 一定の資力基準(収入や資産が基準以下)を満たせば、無料法律相談や民事法律扶助(立て替え)を利用できる可能性があります。 ※具体的な資力基準や制度内容については、法テラスの公式資料をご確認ください。 |
|---|---|
| 弁護士保険の利用 | 弁護士保険に加入している場合、その保険を使って弁護士費用を賄えることがあります。 自身やご家族が加入している保険の内容を確認してみましょう。 |
経済的な理由だけで泣き寝入りせず、まずは法テラスや弁護士会の相談窓口で、利用できる制度がないかを確認することが重要です。
まとめ|土地トラブルが深刻化する前に、訴訟について弁護士に相談しよう
土地トラブルは、財産と生活の基盤に関わる重大な問題です。感情的な対立が絡むため、当事者間での解決は難しく、放置すればするほど問題は深刻化します。
訴訟は、境界線の対立・所有権の争い・越境問題などで話し合いでの解決が困難になった際の強力な解決手段です。しかし、訴訟には多大な費用と時間がかかり、専門的な知識も求められます。
手遅れになり、大切な権利を失ってしまう前に、まずは土地トラブルに強い弁護士に相談し、法的な見通しと適切な解決策についてアドバイスを受けましょう。
土地トラブルの訴訟について悩んでいる方は、「弁護士法人アクアピース」にお任せください。
土地トラブルの解析実績が豊富な弁護士が、個々のケースに合った解決策をご提案します。
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