遺産相続で寄与分に上限はある?上限まで寄与分を認めてもらうために必要な行動を解説

遺産相続で 寄与分に上限はある?
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弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
東京税理士会所属

「寄与分の金額に上限はあるの?」
「寄与分を主張したいけれど、どのくらいの金額が相場なのだろう?」

遺産相続の寄与分において、このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

結論から言えば、寄与分の金額は遺産の総額から遺贈の分を差し引いた金額を超えることはないため、上限が存在します。

本記事では、寄与分の上限の考え方を、相続問題に強い弁護士が解説します。

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目次

【結論】遺産相続で寄与分に上限はある

結論から言うと、実務上の相続手続きにおいては、寄与分の上限が存在します。本章では、遺産相続における寄与分の決まり方や仕組みを正しく理解しておきましょう。

寄与分よりも遺贈分が優先されるため、上限はある

民法では被相続人の「最終意思」を尊重するという原則に基づき、遺言による財産処分(遺贈)が最優先されます。

遺贈とは、遺言によって特定の個人や団体に財産を無償で与えることです。

寄与分は、遺贈された財産を差し引いた後の残りの財産(残余財産)を対象とするため、この「遺贈額を控除した残額」が上限となります。(参照:民法|第964条第904条の2

遺産分割における優先順位
  1. 遺言(遺贈):被相続人の「最終意思の尊重」という民法の基本原則に基づくため。
  2. 寄与分:遺言で処分されなかった残りの財産について、相続人間の「実質的な公平」を調整するために考慮されるため。
弁護士 佐々木一夫

よって、寄与分を計算する大元となる財産は、遺産総額そのものではなく、そこから先に遺贈分を差し引いた金額です。

寄与分が認められにくいケースと減額される理由 

被相続人への貢献は、すべてが寄与分として認められるわけではありません。

献身的な介護や経済的援助を行っていたとしても、その行為が法律で定められた「特別な貢献」に該当しないと判断されれば、法的には評価されないこともあります。

ここでは、寄与分が認められにくかったり、減額されたりする以下2つの具体的なケースを見ていきましょう。

家族の扶養義務の範囲内と判断される場合

民法では、夫婦や親子、兄弟姉妹には互いに助け合う扶養義務が定められています。この義務の範囲内で行われた行為は、「特別な貢献」とは見なされず、寄与分の対象外となるのが原則です。

扶養義務の範囲と判断される可能性が高いケースは、以下のとおりです。

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行為の例寄与分が認められにくい理由
日常的な家事手伝い親の生活をサポートするのは、子として自然な協力関係と見なされるため。
一般的な金額の仕送り親族間の扶養義務として、生活を助けるのは当然の範囲と判断されやすいため。
軽度の病気の際の看病一時的な身の回りの世話は、家族間の相互扶助の一環と評価されるため。
定期的な見舞いや連絡精神的な支えも重要ですが、財産の維持・増加への直接的な貢献とは見なされにくいため。

ただし、自分の仕事を辞めて24時間体制の介護を長期間続けた場合など、扶養義務を明らかに超えていれば、寄与分が認められる可能性があります。

証拠不足・貢献の期間が短い場合

寄与分を主張する際には、貢献した内容を客観的に証明できる証拠を揃える必要があります。

証拠が不十分な場合、貢献の事実が認定されず、寄与分が認められないか、大幅に減額される可能性があるでしょう。

寄与分の主張に有効な証拠の例は以下のとおりです。

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寄与分の主張に有効な証拠具体例
金銭的な援助を証明する証拠銀行の振込明細被相続人の医療費や施設費を支払った領収書送金記録
療養看護を証明する証拠医師の診断書介護サービスの利用明細介護の内容や時間を記録した日記やメモ
事業への貢献を証明する証拠決算書や確定申告書給与明細(無給で働いていた場合はその事実がわかるもの)取引先とのメールや契約書

また、貢献した期間の長さも判断材料の一つです。

数週間程度の短期間の看病や、一時的な資金援助だけでは「特別な貢献」とは評価されにくい傾向にあります。

弁護士 佐々木一夫

長期間にわたり、継続的に財産の維持・増加に貢献した事実を示すことが重要です。

遺産相続における寄与分の相場

遺産相続の寄与分に、定価のような明確な「相場」はありません。

貢献の内容や期間、被相続人の財産状況などが全く異なるため、最終的に個別の事情に応じて寄与分の金額は決定されます。

これから寄与分の主張を行う場合は、まずは相続人全員の話し合いで金額の合意を目指し、もし合意に至らない場合は、家庭裁判所の調停や審判で判断を仰ぎましょう。

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遺産相続で上限まで寄与分を認めてもらうために必要な5つの行動

寄与分は自動的に認めてもらえるものではなく「特別な貢献」を、他の相続人に納得してもらえるよう証明する必要があります。

本章では、遺産相続で寄与分を認めてもらうために必要な以下5つの行動を具体的に解説します。

被相続人への貢献内容・期間を具体的に整理する

まずは、被相続人への貢献内容や貢献した期間を、日記やカレンダー、古いメモなどをもとに、できるだけ詳細に整理するところから始めましょう。

貢献内容はリスト化し、以下の項目をできるだけ細かく書き出しておくことが大切です。

貢献内容の記録のポイント
  • いつからいつまで:貢献が始まった日と終わった日
  • どのような内容を:介護、資金援助、事業の手伝いなど、具体的な行動
  • どのくらいの頻度で:週に何日、1日に何時間など

また、「夜中に何度も病院に付き添った」「台風の日に屋根の修理を手配した」など、貢献内容に伴う具体的な出来事も、思い出せる限り記録しておきます。

自分の寄与分を客観的な金額に換算する

他の相続人に自分の寄与分を認めてもらうためには、感情的に「これだけ貢献した」と訴えるのではなく、客観的な数値で主張する必要があります。

自分が主張したい寄与分のパターン(類型)によっては、以下のような調査も行い、より具体的な金額を算出することをおすすめします。

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主張したい寄与のパターン(類型)調査内容
療養看護型近隣の介護サービスや施設のウェブサイトで料金を調べ、具体的な単価を算出する
家業従事型厚生労働省の賃金統計などを活用し、同業・同年代の平均給与を調べる
財産管理型近隣の不動産管理会社に、同様の管理を依頼した場合の見積もりを取る

この数字をもとに、自分の貢献がどれほどの経済的価値を持つのかを具体的に示し、主張に説得力を持たせることが大切です。

客観的な証拠の準備をする

寄与分の主張には、客観的な証拠が不可欠です。寄与分が認められれば他の相続人の取り分が減少することになるため、証拠なしで合意を得ることは難しいでしょう。

また、調停や審判など裁判所での手続きに進んだ場合、調停委員や裁判官が寄与分を認めるかどうかの判断をするためにも、客観的な証拠が必要になります。

寄与分の主張で有効な証拠の例は以下のとおりです。

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証拠の分類具体例
公的・医療関連書類要介護認定通知書(要介護度の推移がわかるもの)被相続人のカルテ診療明細書確定申告書の控え
金銭の動きがわかるもの仕送りや立て替え払いの銀行振込記録支払った医療費や施設利用料の領収書家計簿出納帳
貢献内容を示す私的記録介護や看病の内容を記録した日誌被相続人や関係者との手紙、メール、SNSのやり取り
第三者の証言ケアマネージャーやヘルパーからの報告書事情を知る他の親族や近隣住民による陳述書(書面)

一つ一つの証拠は小さくても、複数揃えることで有効な証拠となりうる場合があります。被相続人への貢献に少しでも関連があると思える資料は、全て手元に集めて整理しておきましょう。

他の相続人へ冷静かつ丁寧に主張を伝える

全ての準備が整ったら、遺産分割協議の場で他の相続人に寄与分を主張します。相続の話は感情的になりやすいため、伝え方には細心の注意を払いましょう。

話し合いの場では感情的に訴えるのではなく、被相続人への貢献の記録や証拠を提示し、事実をもとに説明しましょう。

高圧的な態度や、他の相続人の貢献を軽視するような発言は絶対に避け、相手の言い分にも耳を傾けつつ、尊重する姿勢を見せながら、粘り強く話し合いましょう。

必要に応じて弁護士へ相談する

寄与分の協議は、当事者の感情的な対立から進展しないケースも少なくありません。その場合は、早めに相続や寄与分の問題に強い弁護士へ相談することをおすすめします。

第三者である弁護士が代理人として交渉の窓口に立つことで、感情的な対立を避けられます。法的な事実と証拠に基づいた冷静な議論が可能になり、話し合いが建設的に進む可能性が高まるでしょう。

また、寄与分の主張には、専門的な知識が不可欠です。弁護士は、あなたの状況で寄与分が認められる可能性や、適切な金額の算定をしてくれます。

弁護士 佐々木一夫

スムーズに寄与分の主張を進めたいと考えている方や、すでにトラブルが発生している場合は、「無料相談」を活用し、弁護士へ相談しましょう。

遺産相続の寄与分と上限に関するよくある質問

寄与分を認めてもらえないのはなぜですか?

寄与分が認められない主な理由は、その貢献が「特別の寄与」と評価されない場合です。

親子間の通常の扶助の範囲内とみなされると、法的な主張は困難になります。

また、貢献を裏付ける介護日誌などの客観的な証拠がなければ、他の相続人に寄与分を認めてもらいにくい可能性が高いでしょう。

他の相続人から自分の貢献を認めてもらえず悩んでいる場合は、弁護士に相談し、主張や証拠集めのポイントをアドバイスしてもらうことをおすすめします。

関連記事:寄与分は弁護士に相談すべきかを解説

寄与分をもらえる人は誰ですか?

寄与分を主張できるのは、相続人に限られます。具体的には、以下のような法律上の相続権を持つ人です。

  • 被相続人の配偶者
  • 直系尊属(父母や祖父母)
  • 兄弟姉妹など

内縁の妻など相続人ではない場合は、どれだけ献身的に介護などをしても、寄与分を主張することはできません。

ただし、被相続人の親族である場合に限り、「特別寄与料」を請求できる可能性はあります。

特別寄与料とは?

「特別寄与料」とは、相続人ではない親族が、被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合に、相続人に対して金銭を請求できる制度で、2019年施行の民法より新設されました。

寄与分と特別寄与料は混同されがちですが、請求できる人や方法が全く異なります。

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項目寄与分特別寄与料
請求できる人相続人相続人ではない親族(例:子の配偶者)
請求する相手他の共同相続人相続人全員
主張する方法遺産分割協議の中で主張相続人に対し金銭を直接請求
根拠相続人間の公平の調整貢献に対する労働の対価
期限遺産分割協議が成立するまで相続開始を知った時から6ヶ月以内

被相続人と同居していた場合、相続の寄与分を主張できますか?

同居していたという事実だけでは、自動的に寄与分が認められるわけではありません。

同居することで家賃や光熱費、食費などを負担せずに済むという利益(扶養利益)を受けていると考えられるからです。

被相続人との同居で、寄与分が認められやすい例・認められにくい例は以下のとおりです。

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ケース詳細
被相続人との同居で寄与分が認められにくい例健康な親と同居し、身の回りの手伝いや家事の分担を行っていた。
被相続人との同居で寄与分が認められやすい例寝たきりの親と同居し、仕事を辞めて24時間体制で介護にあたっていた。
弁護士 佐々木一夫

寄与分を主張するためには、その扶養利益を上回る「特別な貢献」があったことを具体的に証明する必要があります。

まとめ|遺産相続の寄与分に上限はある!計算方法は弁護士にも相談しよう

寄与分については、遺産の総額から遺贈分を差し引いた額が実質的な上限となる点に注意が必要です。

もし、寄与分についてご自身のケースでの計算方法がわからない場合や、他の相続人との話し合いが難航しそうな場合は、できるだけ早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士 佐々木一夫

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