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一定の相続人(配偶者・子ども・父母)には、相続において最低限保障された「遺留分」が存在します。
しかし、なかには特定の相続人に対して「絶対に遺留分を渡したくない」、「遺留分を渡さなくていい方法があれば知りたい」という方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、遺留分を渡さなくていい方法はあるのか、どうしても渡したくないときの対策と注意点について解説します。
配偶者や子どもなど、一定の相続人には遺留分を受け取る権利が保障されています。
これは、民法で定められているものであり、たとえ遺言であっても奪うことはできません。
ただし、例外的に遺留分を渡さなくても良いパターンも存在します。
たとえば、以下のようなケースでは、遺留分を渡さなくていいとされています。
続いては、特定の相続人に遺留分を渡したくないと考えている方に向けて、生前にできる具体的な対策方法を説明します。
相続人に遺留分を事前放棄してもらうことができれば、当然ながら遺留分を渡す必要はなくなります。
ただし、遺留分の放棄には、相続人本人の同意と家庭裁判所の許可が必要です。
また、申し立ての手続きは相続開始前(被相続人の生前)に行わなければなりません。
なお、遺留分の放棄は、申し立てを行えば必ず認められるわけではなく、所定の条件を満たす必要があります。
一般的に、遺留分放棄の認可基準になると考えられているのは、以下の3つです。
さらに、遺留分放棄の申し立て手続きは、被相続人ではなく、相続人本人が行うことになっています。
参考:裁判所「遺留分放棄の許可」
つまり、本人の意思に基づく遺留分放棄の申し出があるか、または遺留分の代わりとなる財産を渡さなければ、遺留分放棄が認められる可能性は低いといえるでしょう。
先に紹介したとおり、遺留分請求権があっても請求されなければ遺留分を渡す必要はありません。
そこで、「遺留分を渡したくない」という願いを、遺言書の付言事項として記載する方法もあります。
付言事項とは、被相続人の気持ちや願いを伝える文章のことです。
相続の割合やその理由、「遺留分を請求してほしくない」という旨を遺言に記載することで、相続人に自分の思いを伝えることができます。
ただし、遺言書の付言事項に、法的拘束力はありません。
そのため、相続人から遺留分を請求されれば支払わなければいけません。
相続人が相続放棄をしていれば、遺留分を渡さなくていいパターンに該当します。
相続放棄は、プラス遺産だけでなく、マイナスの遺産(債務)も対象です。
そのため、一般的には被相続人の残した負債が多い場合に行われることが多く、プラスの遺産が多いにも関わらず、相続放棄をする人は少ないです。
また、相続放棄の手続きは、被相続人の死後に行われます。
相続人に対して相続放棄を強制することはできないため、あくまでもお願いにはなりますが、ダメ元で打診してみても良いでしょう。
相続人廃除の申し立てとは、被相続人の意思に基づいて、特定の人物から相続人としての地位を奪うことです。
相続人を廃除するためには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
具体的な申し立ての方法は、以下の2通りです。
遺言書で相続人廃除の手続きを行うには遺言執行者が必要ですし、次に紹介する廃除の理由を証明するのがより難しくなるため、特別な理由がなければ、生前に家庭裁判所で申し立て手続きをするほうが確実です。
相続人廃除の申し立てが認められる主なケースとしては、以下のようなものがあります。
ただし、相続人廃除が認められた場合も、代襲相続の権利は残ります。
つまり、相続人本人が死亡している場合、相続権は子どもや孫に受け継がれます。
相続人が相続欠格に該当する場合は、特別な手続きを行わなくても遺留分を渡す必要はありません。
民法891条で定められた相続欠格事由には、以下の5つがあります。
特定の相続人に渡す遺留分を減らしたいなら、そもそもの遺留分を減らしてしまうという方法があります。
具体的な方法をいくつか紹介しましょう。
養子縁組をして相続人の人数を増やせば、相続人1人あたりの遺留分が少なくなります。
ただし、その養子縁組が「遺留分を減らす目的で行われたものだ」と判断されてしまうと、養子縁組そのものが無効になる可能性もあるため、注意が必要です。
生命保険の死亡保険金は、相続財産ではなく「受け取った人の固有財産」として扱われます。
遺産にカウントされないため、遺留分侵害額請求の対象になることもありません。
つまり、遺産に含まれる金融資産をあらかじめ生命保険に変えておけば、遺留分そのものの額を減らすことができます。
たとえば、2,000万円をそのまま金融資産として保有していると、相続財産として遺留分侵害額請求の対象となります。
しかし、同額の2,000万円を生命保険の掛金にし、受取人を別の相続人にすれば、相続財産にはカウントされず、遺留分侵害額請求の対象にもならないのです。
ただし、生命保険金の額があまりにも大きいと、特別受益に該当し、遺留分の計算に組み込まれる可能性があります。
生命保険を活用した相続対策については、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
他の相続人や相続人以外の人への生前贈与も有効な対策方法の一つです。
ただし、以下の2つに当てはまるものについては、遺留分の基礎財産額に含まれるため、注意しましょう。
遺留分を減らすために生前贈与を行う場合は、できるだけ早めに行うことが大切です。
また、1年以上前に生前贈与を受けた相続人が相続放棄をすることで、遺留分侵害額請求を免れるケースもあります。
相続放棄をすれば、はじめから相続人ではなかったという扱いになるため、特別受益には該当せず、+遺留分侵害額請求の対象から外れる可能性が高いのです。
遺留分を渡したくないときに注意したいポイントを3つ解説します。
遺言書に付言事項として「遺留分を渡したくない」「請求しないでほしい」と記載したとしても、その文言に法的な効力はありません。
残念ながら、+相続人には遺留分侵害額を請求する権利が認められるため、「絶対に遺留分を渡したくない」という場合でも、成功するとは限りません。
相続人本人が民法891条で定められた相続欠格事由に該当する場合でも、代襲相続は認められます。(民法887条)
相続人本人が亡くなっている場合でも、その子どもには遺留分請求の権利が認められるため、注意しなければなりません。
ここまで「遺留分を渡さなくていい方法」について説明してきましたが、いずれも例外的な方法であり、現実的には、遺留分を渡さないことはかなり難しいです。
遺留分は、法律で認められた「最低限の取り分」なので、被相続人の死後に遺留分権利者から遺留分侵害額請求を受けた場合、正当な請求であれば支払う義務が生じます。
詳しくは、「遺留分を支払わないとどうなる?」の記事をご覧ください。
また、「相続を放棄してもらう」など生前にできる対策についても、相続人の意思や家庭裁判所の許可が必要なため、よほどの理由がない場合は相続人との交渉が必要になるでしょう。
どうしても遺留分を渡したくない場合は、弁護士に相談しながら進めるのがおすすめです。
弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。