贈与契約書はあとからでも作成できる?贈与契約の効力や作成する際の注意点を解説

子どもや孫に財産を贈与している人の中には、贈与契約書を作成していない人もいらっしゃるでしょう。

  • 贈与契約書はあとからでも作成できるの?
  • あとから契約書を作成する際には、どのような点に注意すべき?

贈与契約書を作成せずに贈与を続けていると、相続人間でのトラブルが発生したり、想定外の贈与税が課せられたりする可能性があります。

この記事では、下記3つの内容について詳しく解説しています。

過去の贈与について契約書の作成を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

贈与に関することは専門家に相談するのがおすすめです。

贈与契約書の作成や生前贈与などについてお悩みの方は、ぜひ弁護士法人アクロピースにご相談ください。

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目次

契約書がない場合の贈与契約の効力

贈与契約


贈与契約は、契約書がなくても口頭での当事者間の合意があれば成立します。

民法に規定された多くの契約は、当事者の合意があれば成立する「諾成契約」です。

諾成契約における契約書は、契約成立の条件ではなく契約の存在を証明する証拠となります。

贈与契約書がなくても贈与契約は成立しますが、契約書がないと贈与契約の日付や内容などを証明できずに困る可能性があります。

たとえば、祖父が孫に複数回に渡って現金を贈与していたのが事実であったとしても、契約書も通帳の記録もなければ、贈与契約があったことを体外的には証明できないのです。

贈与の有無は、相続財産や贈与税の計算などで問題となるケースが少なくありません。

贈与の有無・内容を証明するためには、贈与の度に契約書を作成しておくべきです。

贈与契約書を作成しなかった場合の問題点

贈与契約書


贈与契約書を作成しなかった場合、贈与契約の存在を証明できずにさまざまな問題が発生する可能性があります。

具体的には、次の問題点が挙げられます。

それぞれの問題点について、詳しく解説します。

贈与契約の当事者間で認識のずれが生じる

贈与契約書は、贈与契約をした日・贈与する財産の内容や金額などを証明するものです。

贈与契約書を作成しなかった場合、契約内容が不明確なものとなるため当事者間で認識のずれが生じる可能性があります。

たとえば、「不動産の移転登記手続きをいつするのか?」、「贈与の金額はいくらか?」などの点でずれが生じる可能性があるでしょう。

また、契約書のない贈与契約は、履行前であればいつでも解除できます民法550条)。

契約の内容を明確にして贈与が確実に履行されるようにするためには、贈与者と受贈者が内容を確認した贈与契約書を作成しましょう。

相続人間でのトラブルが発生する

相続人の中に生前贈与を受けた人がいるときには、遺産分割協議の際にその生前贈与が特別受益として問題になることがあります。

たとえ生前贈与が特別受益に当たることについて争いにならなかったとしても、贈与契約書を作成していなかった場合、生前贈与の内容が不明確となるため、他の相続人から「もっと多くの贈与を受けているのでは?」「他にも隠している贈与があるのでは?」などの疑惑を向けられてしまう可能性があります。

遺産分割協議は、相続人全員の同意がなければ成立しません。

裁判では、贈与の存在を主張する人に贈与の内容を立証する責任があるものの、受贈者にとっては、相続トラブルで裁判に巻き込まれること自体が不利益と言えるでしょう。

無用な相続トラブルを避けるためには、贈与契約書を作成しておきましょう。

特別受益と生前贈与の問題については、こちらの記事もぜひご覧ください。

関連記事:相続財産の範囲に生前贈与は含まれる?特別受益に当たらない場合やみなし相続財産も解説

税務署に贈与の内容を説明できない

生前贈与は、相続税対策としておこなわれるケースもあります。

ところが、贈与契約書と契約書に合った贈与の実態がなければ、税務署に贈与を否認されて高額の税金を課される可能性があるのです。

たとえば、祖父が孫名義の通帳でお金を積み立てていた場合、贈与契約書がなければ贈与を否認される可能性が高いでしょう。

贈与契約は、当事者間の合意があって成立する契約であるため、孫が贈与の存在・内容を認識していなければ契約は成立しません。

孫が贈与の存在を認識していたと言えるためには、通帳の記載だけでは足りず、祖父と孫が取り交わした贈与契約書が必要となるのです。

相続税対策として生前贈与をおこなう際には、贈与の度に贈与契約書を作成しておかなければ、せっかくの相続税対策がムダになってしまうでしょう。

あとから贈与契約書を作成することはできるのか

手続き


贈与契約は口頭の合意で成立する契約で、契約書は契約の存在を証明するものに過ぎません。

そのため、贈与契約書を契約の当日に作成しなければならないという決まりはないです。

贈与契約の当日に契約書を作成していなくても、あとから契約書が必要となればその時点で契約書を作成することもできます。

ただし、次の項目で解説する注意点を守らなければ、契約書が無効となるばかりか、犯罪が成立する可能性もあります。

あとから契約書を作成する際は、事実に反する内容とならないよう注意してください。

贈与契約書の書き方については、こちらの記事も併せてご覧ください。

関連記事:贈与契約書の書き方は?現金・土地贈与の場合のひな形や注意点もわかりやすく解説

あとから贈与契約書を作成する際の注意点

注意点


あとから贈与契約書を作成するときは、次の3つの注意点を必ず守ってください。

注意点を守らなければ、契約書として意味のないものになるだけでなく、犯罪となったり、重加算税を課されたりする可能性もあります。

ここからは、それぞれの注意点について詳しく解説していきます。

契約書の日付は契約書の締結日に合わせる

契約書の日付は、贈与契約の日ではなく契約書を締結した日に合わせてください。

あとから契約書を作成する場合、契約書の日付を贈与契約締結日に遡らせることがあります。

これをバックデイトと言います。

たとえば、贈与契約を締結したのが令和5年5月1日で、契約書を作成したのが令和5年6月1日のときに、契約書の日付を6月1日ではなく5月1日にするのがバックデイトです。

バックデイトで契約書を作成すること自体は、違法ではありません。

しかし、内容まで虚偽の契約書を作成すると犯罪が成立する可能性もあります。

また、バックデイトした契約書は、契約書の作成日を偽っている点で契約書としての信用力が低いと言えるでしょう。

そのため、あとから契約書を作成する場合でも、バックデイトではなく契約書の日付は実際に契約書を取り交わした日に合わせるようにしてください。

そのうえで、次のとおり契約書に効力の発生を贈与契約の日に遡らせる条項を記載すれば、効力発生時期についても何ら問題のない契約書となります。

「本契約書の効力は、贈与契約の締結日に遡って発生するものとする。」

贈与者・受贈者ともに内容を確認し各自1通保管する

贈与契約書を作成したら、贈与者・受贈者ともに内容を十分に確認したうえで、各自が署名押印し、1通ずつ保管してください。

あとから急に贈与契約書が必要になったケースでは、当事者の一方が勝手に契約書を作成してしまうことがあります。

契約相手の同意を得ることなく署名・押印を偽造して契約書を作成する行為は、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)に該当します。

贈与契約書を作成する際は、必ず契約者本人の署名・押印をもらうようにしましょう。

事実と異なる契約書を作成しない

契約書の内容は、実際におこなわれた贈与の内容に合わせてください。

贈与の日付や金額などについて事実と異なる内容の契約書を作成すると、重加算税を課される可能性もあります。

たとえば、実際は同じ年に200万円を贈与したのに、贈与税を免れるために年をまたいで100万円ずつ贈与したという内容の契約書を作成すると、悪質な税金逃れとして重加算税を課される対象となるでしょう。

あとから贈与契約書を作成する目的は、事実をごまかすことではありません。

あくまでも実際におこなわれた贈与を証明するために、事実に沿った内容の契約書を作成するようにしてください。

相続税対策としての生前贈与をおこなう際の注意点

贈与税


生前贈与は、相続税対策としておこなわれるケースが多いでしょう。

相続税対策として生前贈与をおこなう際には、事実に合わせた贈与契約書を作成するとともに、次の4つの点に注意してください。

ここからは、4つの注意点について詳しい内容を解説します。

贈与の記録を残す

贈与の内容については、贈与契約書を作成するのはもちろんのこと、銀行振込や移転登記など、客観的に明らかな記録(証拠)を残すようにしましょう。

現金の贈与は、手渡しでおこなわれることもあります。

しかし、現金の手渡しは、客観的な記録が残りませんし、内容虚偽の契約書を作成するのは難しくありません。

そのため、契約書だけでは、税務署に贈与の内容を否認されてしまう可能性もあるのです。

生前贈与加算の改正に注意

これまでの制度では、相続開始前の3年以内におこなわれた贈与については、相続税の対象とされていました。

たとえば、相続開始前の3年間で暦年贈与をしていたとしても、その間の贈与については相続税が課されます。

これを生前贈与加算と言います。

さらに、2023年の税法改正によって、生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されました。

2024年1月1日以降におこなわれた生前贈与については、相続開始前の7年以内におこなわれたものが生前贈与加算の対象となります。

生前贈与加算の期間が延長されたことで、相続税対策として生前贈与を活用するのが難しくなることもあるでしょう。

従来の考えで生前贈与を続けていると思わぬ相続税が課される可能性があるため、改正による影響には十分に注意してください。

出典:国税庁 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

暦年贈与を定期贈与と見なされないように注意

暦年贈与のつもりで贈与をしていても、定期贈与を見なされると高額の贈与税を課されてしまいます。

暦年贈与
贈与税の1年間の基礎控除(110万円)を有効活用した贈与のこと。

定期贈与
一定期間に、一定の財産を贈与する契約のこと。

暦年贈与を活用すると、年間110万円までの贈与には贈与税がかかりません。

一方、定期贈与については、贈与契約に合意した時点で全額に対する贈与税が課税されます。

たとえば、500万円を5年にわたり100万円ずつ贈与する契約を締結した場合、贈与契約を締結した時点で500万円に対する贈与税が発生します。

暦年贈与を活用したいときには、毎年の贈与の日付や金額をずらして、贈与のたびに契約書を作成するようにしてください。

贈与の額が一定であったり、まとめて契約書を作成したりすると、定期贈与と見なされる可能性があります。

相続時精算課税制度や小規模宅地等の特例を意識する

相続税対策としては、相続時精算課税制度や小規模宅地等の特例も活用できます。

相続時精算課税制度
60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫に対しておこなわれた贈与について、2500万円+基礎控除年間110万円までは贈与税を納めるのではなく、相続時に相続税として計算することを認める制度

出典:相続時精算課税の選択|国税庁

小規模宅地等の特例
配偶者、同居親族などの相続人が被相続人の自宅を相続したときに、一定の要件のもとで、相続税の計算における宅地の評価額を減額できる制度

出典:相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

暦年贈与や相続時精算課税制度など、どの制度を利用するのが節税につながるかは、財産の状況によって異なります。

生前贈与の方法にお悩みの方は、専門家に相談したうえでベストの選択を目指しましょう。

贈与契約書の作成について不安のある人は弁護士に相談しよう

弁護士に相談
本記事のまとめ
  • 贈与契約書はあとからでも作成できる
  • あとから契約書を作成するときはバックデイトはせずに事実に合った契約書を作成する
  • 相続税対策として生前贈与をおこなう際は、贈与契約書以外にも記録を残す

贈与契約書は、あとから作成することも可能です。

あとから贈与契約書を作成するときには、日付や内容などが事実とずれることがないように注意しましょう。

贈与契約書の内容によっては、契約書が無効となるだけでなく、犯罪が成立してしまうこともあります。

贈与契約書の内容にお悩みの方は、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士法人アクロピースでは、贈与契約書の作成はもちろんのこと、贈与の方法などについてもご相談を受け付けております。

贈与の手続きに不安のある方は、お気軽にお問い合わせください。

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この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

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