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特別受益に当たらない生前贈与とは?主張方法や必要な証拠も解説【弁護士監修】
「兄弟から過去の贈与を『特別受益だ』と指摘され、相続分を減らされそうで不安だ」
「親から受けた学費や生活費の援助は、遺産分割で差し引かれてしまうのか」
遺産分割を行う際、このような不安を抱いている方もいるのではないでしょうか。
被相続人からの生前贈与(援助)は、すべてが「特別受益(遺産の前渡し)」として扱われるわけではありません。法的に計算に含めなくてよいケースは数多く存在します。
しかし、誤った知識で交渉を進めると、本来守れるはずの財産を失うリスクがあるため、ご自身で判断が難しい場合は早めに相続に強い弁護士への相談がおすすめです。
本記事では、特別受益に当たらない生前贈与の例や、その証明方法、必要な証拠を解説します。
円満かつ有利な遺産分割を実現するためにも、ぜひ最後までご覧ください。
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特別受益に当たらない生前贈与とは?
親から子への金銭援助がすべて特別受益扱いされるわけではありません。社会通念上、妥当な範囲内であれば遺産分割の計算には含まれないためです。
ここでは、特別受益に該当しないとされる代表的な6つのケースを解説します。
扶養義務の範囲内である「生活費・医療費」
親子や夫婦の間には、互いの生活を助け合う「扶養義務」が存在します(参照:民法|877条)。
そのため、経済的に自立できていない子供に対し、親が必要な生活費や医療費を援助しても、原則として特別受益には当たりません。これは遺産の前渡しではなく、親として果たすべき当然の義務だとみなされるからです。
ただし、どのような援助でも無制限に認められるわけではありません。以下の表に挙げるような、常識的な範囲を超えない援助かどうかが判断の分かれ目となります。
| 項目 | 特別受益にならない例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 生活費 | 仕送り、家賃補助、光熱費の負担 | 親の収入に比して過大でないこと |
| 医療費 | 入院費、手術費、通院費の実費負担 | 通常の治療を超える美容整形等は別 |
表にある通り、親の収入状況と比較してあまりに高額な仕送りや、治療目的ではない美容整形費用などは、特別受益と判断される可能性があるため注意しましょう。
常識の範囲内である「結婚式の挙式費用・結納金」
結婚に伴う費用も、一般的には特別受益には当たらないと判断される傾向にあります。結納金や挙式費用は、親としての社会的儀礼や、新しい門出を祝うための支出としての側面が強いためです。
しかし、金額や用途によっては例外的に特別受益とみなされるケースも存在します。たとえば、以下のような状況では「遺産の前渡し」と判断される可能性が高まるでしょう。
- 新居の購入資金として渡された多額の現金
- 桁外れに豪華な挙式費用(親の資産状況に照らして過大な場合)
- 持参金として渡された高額な財産
親の支払い能力に見合った「大学等の学費」
現代社会において、大学などの高等教育を受けることは一般的になりつつあります。
そのため、親の資産収入や社会的地位に見合った範囲内であれば、学費の援助は扶養の一環とみなされ、特別受益には当たりません。
一方で、他の兄弟と比較して著しく高額な場合などは判断が分かれます。具体的には、以下のようなケースで特別受益の可能性が疑われます。
- 私立医学部の入学金など、著しく高額な場合
- 兄弟間で一人だけが海外留学費用を出してもらった場合
- 社会人になった後の専門学校費用など
このように、学費が特別受益になるかどうかは「親の資力」や「他の相続人とのバランス」を考慮して個別に判断されます。
受取人が相続人ではない「孫への贈与」
特別受益の持ち戻し制度は、あくまで「相続人の間」での公平を図るための仕組みです。そのため、原則として相続権を持たない「孫」への贈与は対象外となり、どれだけ高額であっても遺産分割の計算には含まれません。
ただし、例外的に孫への贈与が特別受益として扱われるパターンも存在します。
- 親(被相続人の子)が先に亡くなっており、孫が代襲相続人となっている場合
- 形式上は孫名義だが、実質的には親(相続人)への贈与と評価される場合(名義預金など)
特に「名義預金」のように、形式上は孫の名義でも実質的な管理を親(被相続人の子)が行っていた場合は、親への特別受益と認定されるリスクがあります。
わずかな金額の「小遣い・プレゼント・慰労金」
誕生日プレゼントや入学祝い、旅行のお小遣いといった金銭の授受も、特別受益には該当しません。これらは「遺産の前渡し」という性質を持たず、親族間の情愛に基づく儀礼的な贈り物だからです。
法律上で明確な金額の線引きがあるわけではありませんが、一般的には数十万円程度の一時的な贈与であれば問題視されることは少ないでしょう。
あくまで常識の範囲内であり、他の相続人の遺留分を侵害するような巨額の贈与でなければ、過度に心配する必要はありません。
死亡保険金(生命保険金)
死亡保険金は、契約に基づいて受取人が固有の権利として取得する財産です。そのため、被相続人の遺産そのものではなく、原則として特別受益の持ち戻し対象にはなりません。
しかし、保険金の額が遺産総額に対してあまりに大きく、他の相続人との間に「到底是認できないほどの不公平」が生じる場合には例外的な取り扱いがなされます。
弁護士 佐々木一夫最高裁判所の判例(平成16年)でも、著しい不公平がある場合に限り、死亡保険金も特別受益に準じて扱うべきだと示されています。
特別受益に当たる生前贈与とは?
明確に特別受益として扱われる可能性が高いのは、民法903条で定められた「生計の資本として」または「婚姻、養子縁組のため」に行われた贈与です。
単なる生活費の援助とは異なり、子が独立して生活基盤を築くために役立つ多額の援助は、「遺産の前渡し」であるとして持ち戻しの対象となります。
ご自身の受け取った金銭や利益が以下の具体例に該当しないか、確認してみましょう。
| 項目 | 具体例 | 特別受益となる理由 |
|---|---|---|
| 居住用不動産 | 土地・建物の贈与、マイホーム購入資金の援助 | 独立した生活基盤(生計の資本)の提供にあたるため |
| 事業資金 | 会社設立資金、営業用資産の贈与 | 経済的自立を助けるための多額の贈与とみなされるため |
| 借金の肩代わり | 親が子の借金を返済し、求償しない場合 | 返済義務の消滅という経済的利益を与えたことになるため |
| 土地の無償使用 | 実家の土地にタダで家を建てて住む(使用借権) | 土地の賃料相当額の利益を得ていると評価されるため |
これらの事例は金額が大きく、他の相続人と比較して著しく不公平な利益供与と判断されやすい典型的なパターンです。



より特別受益に当たる生前贈与について、詳しい判断基準や計算方法については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【弁護士監修】生前贈与は特別受益になる?認められるケースや持ち戻しの計算方法を解説
贈与があっても特別受益にならない「持ち戻し免除」とは?
たとえ受けた贈与が「特別受益」に該当しても、被相続人の意思次第では遺産分割の計算から除外できる場合があります。これを「特別受益の持ち戻し免除」といいます。
本来であれば相続財産に加算(持ち戻し)される贈与額を計算外とするため、贈与を受けた相続人の取り分が減らされずに済む重要な制度です。
この免除の意思表示は、必ずしも遺言書などの書面である必要はありません。以下の表のように、被相続人の態度や状況から推認されるケースも法的に有効とされています。
| 意思表示の種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 明示の意思表示 | 遺言書や贈与契約書に「持ち戻しを免除する」旨が記載されている |
| 黙示の意思表示 | 書面はないが、贈与の経緯や動機から「免除の意思があった」と推認される |
「黙示の意思表示」は、生前の言動や贈与の動機など、諸般の事情を総合的に考慮して判断されます。
また、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産が贈与された場合には、法的に免除の意思があったと推定される特例も存在し、配偶者の生活基盤が守られやすくなっています(参照:民法903条4項)。



特別受益の持ち戻し免除について、詳細は以下の記事で解説していますのであわせてチェックしてみてください。
関連記事:特別受益の持ち戻し免除とは?認められるケースや注意点を弁護士が解説
生前贈与が特別受益に当たらないことを証明する方法
他の相続人から「過去の贈与は特別受益だ」と指摘された場合、単に否定するだけでは主張は通りません。客観的な証拠に基づいた反論が必要です。
ここでは、特別受益に該当しないことを法的に証明するための方法として、以下3つを解説します。
「扶養義務の範囲内」であることを家計収支から立証する
まずは、その援助が「遺産の前渡し(生計の資本)」ではなく、親族として当然行うべき「扶養義務の履行」であったと主張する方法があげられます。
具体的には、当時の親の収入や資産状況に対し、援助額が過度な負担ではなかったことを示します。また、自身の失業や病気など、生活のために援助が必要不可欠だった事情を説明することも重要です。
| 立証のポイント | 具体的な主張例 |
|---|---|
| 親の資産状況 | 親の年収や資産に対し、援助額が少額であり負担になっていない |
| 子の経済状況 | 失業や病気療養中など、自力での生計維持が困難だった |
| 送金の性質 | 一時的な大金ではなく、毎月の生活費としての送金だった |
このように、当時の家計収支や生活状況を具体的に提示することで、単なる生活支援であったとの説得力が高まります。
当時の通帳記録や診断書などを整理し、客観的な事実を準備しておきましょう。
遺言書や贈与契約書にある「持ち戻し免除の意思表示」を提示する
生前贈与が特別受益に当たらないことを証明する際に、強力な反論材料となるのが、被相続人自身による「持ち戻し免除の意思表示」の存在です。
遺言書や贈与契約書に「持ち戻しを免除する」との記載があれば、原則としてその意思が優先されます。もし書面がない場合でも、贈与に至った経緯や動機から「黙示の意思表示」があったと主張できるケースも少なくありません。
特に黙示の意思表示を主張する際は、「なぜその贈与が行われたのか」という背景事情を詳細に説明する必要があります。
親との生前のやり取りや、家族間での合意形成の過程を具体的に示すことが求められます。
相続開始から「10年以上前」の贈与であることを客観的に証明する
民法改正により、遺産分割における特別受益の持ち戻しには期間制限が設けられました。相続開始(被相続人の死亡)から10年以上前になされた贈与については、原則として遺産分割の計算に持ち戻す必要がありません(参照:民法904条の3)。
つまり、贈与の時期さえ証明できれば、特別受益の議論そのものを回避できる可能性があります。
ただし、この期間制限には適用される範囲や例外が存在するため、以下の点に注意が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間制限の原則 | 相続開始から10年経過した贈与は持ち戻しの対象外 |
| 例外ケース | 遺留分侵害額請求では、相続人への贈与は10年以内が対象 |
制度ごとに「10年」の扱いが異なるため、混同しないよう注意しましょう。



ご自身のケースが期間制限の適用を受けられるか不明な場合は、弁護士への確認をおすすめします。
特別受益に当たらない生前贈与を主張するために必要な証拠
特別受益に該当しないことを法的に認めさせるには、単なる口頭説明ではなく、客観的な証拠資料の提示が不可欠です。
調停や審判の場では「言った言わない」の水掛け論は通用せず、裏付けのない主張は事実として採用されないリスクが高いためです。
以下のリストを参考に、資金の流れや当時の生活状況を証明できる資料を可能な限り収集しましょう。
| 証拠の種類 | 証明できること | 入手先 |
|---|---|---|
| 預貯金通帳・取引履歴 | 贈与の時期、金額、頻度 | 金融機関 |
| 不動産登記事項証明書 | 贈与日、移転原因 | 法務局 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産の当時の価値 | 都税事務所・役場 |
| 手紙・メール・日記 | 贈与の趣旨、親の感謝の言葉(免除の意思) | 自宅保管 |
| 源泉徴収票・確定申告書 | 当時の親と子の収入状況(扶養の必要性) | 勤務先・税務署 |
| 学費の領収書・パンフレット | 一般的な学費の範囲内であること | 学校・保管書類 |
これらの証拠は、贈与がなされた「時期」や「名目」、当時の「経済状況」を客観的に示すために重要な役割を果たします。
もし手元に資料が残っていない場合でも、あきらめる必要はありません。
弁護士に依頼すれば、「弁護士会照会(23条照会)」という公的な権限を利用し、金融機関から過去の取引履歴などを職権で取り寄せられる可能性があります。



どのような証拠を集めるべきかわからず悩んでいる方は、早めに弁護士へ相談しましょう。
特別受益に当たらない生前贈与に関するよくある質問
特別受益の証拠が見つからない場合はどうすればいいですか?
直接的な証拠がない場合でも、諦める必要はありません。当時の親の出金記録や自身の給与明細など、間接的な事実を積み上げることで立証できる可能性があります。
また、立証責任は原則として「特別受益があった」と主張する側にあります。そのため、証拠が一切ない場合は、相手方も事実を証明できず、結果として特別受益が否定されるケースも少なくありません。
特別受益の有無は誰が決めるのですか?
基本的には相続人同士の「遺産分割協議」で決定します。全員が合意すれば、どのような分け方でも問題ありません。
しかし、話し合いで決まらない場合は家庭裁判所の「調停」を利用し、調停委員を交えて協議します。
それでも合意に至らない場合は、最終的に裁判官が「審判」という手続で、証拠に基づいた法的な判断を下すことになるでしょう。
特別受益の主張には時効はありますか?
特別受益に厳密な「時効」はありませんが、令和3年(2021年)の民法改正(令和5年4月1日施行)により期間制限が設けられました。
相続開始から10年を経過した後に遺産分割を行う場合、原則として特別受益や寄与分の主張はできません。また、遺産分割協議自体を行わずに10年が経過すると、特別受益や寄与分を考慮しない「法定相続分」で画一的に分割されます。
ただし、相続人全員が合意する場合や、10年経過前に家庭裁判所に遺産分割請求をしていた場合などは、例外的に特別受益や寄与分を考慮した分割が可能です。
まとめ|特別受益の判断に迷ったら早めに弁護士へ相談を
特別受益の判断は、金額だけでなく目的や時期などを総合的に考慮する複雑なものです。
扶養義務や社会通念上、妥当な範囲内の生活費や学費は、原則特別受益に当たりません。また、持ち戻し免除や法改正による10年ルールを適用することで、不当な減額を回避できる可能性は十分にあります。
ただし、ご自身の生前贈与が特別受益に当たらないことを主張するためには、客観的な証拠が不可欠です。



ご自身のケースが本当に特別受益に当たるのか、反論の余地はあるのか、まずは相続に強い弁護士に相談し、正確な見通しを確認することをおすすめします。
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