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アパート建て替え時の立ち退き交渉の流れは?拒否された場合の対処法や注意点を弁護士が解説
「老朽化したアパートを建て替えたいが、入居者に立ち退き料を払う義務はある?」
「立ち退き交渉がこじれて、計画が進まなくなったらどう対処すべき?」
アパートの建て替えにおいて、入居者に退去してもらうための「立ち退き」はトラブルになりやすいため、慎重な対処が求められます。
立ち退き料が必要になるケースがほとんどですが、金額に法律上の定価がないため、相場を見誤ったり手順を間違えたりすると交渉が泥沼化しやすくなるでしょう。最悪の場合、訴訟トラブルに発展して計画自体が頓挫する可能性もゼロではありません。
本記事では、トラブルを未然に防ぎ円満退去を実現する交渉方法や立ち退き料が必要となる法的根拠・相場を解説します。適切な知識と交渉のコツを身につけ、建て替え計画の成功を目指しましょう。
- アパート建て替えによる立ち退きは「正当事由+立ち退き料」が原則
建物の老朽化や建て替えの必要性だけでは、借地借家法上の正当事由として不十分なケースが多い。実務では、立ち退き料の支払いによって正当事由を補完し、合意解約を目指すのが基本となる。 - 立ち退き交渉は「法定期限を守った段階的な手順」が不可欠:解約申し入れは原則6か月前までに行う必要がある。通知→個別交渉→合意書締結→明け渡しという流れを踏まなければ、交渉自体が無効になるリスクがある。
- 立ち退き料に定価はなく、相場は家賃6〜12か月分が目安:立ち退き料は、引越し費用・新居の初期費用・家賃差額補填・慰謝料などの合算で決まる。相場は存在するものの、入居者の事情や交渉姿勢によって金額は大きく変動する。
- 拒否された場合は「再交渉→内容証明→調停→訴訟」の順で対応:感情的な対立を避け、話し合いを尽くしたうえで、内容証明郵便や民事調停など法的手続きを段階的に進めることが重要。いきなり訴訟に踏み切るのは、時間・費用の両面でリスクが高い。
- 鍵交換や荷物搬出などの「自力救済」は絶対にNG:強引な退去要求や実力行使は違法となり、刑事責任や高額な損害賠償を負うおそれがある。立ち退き交渉は、常に法律と証拠を重視して進める必要がある。
- 成功のカギは「早期対応」と「専門家の関与」:交渉がこじれる前の段階で弁護士に相談すれば、適正な立ち退き料の算定や法的に有効な通知・交渉が可能になる。建て替え計画を確実に進めるためにも、初期段階から専門家を活用することが最善策といえる。
アパートの建て替えによる立ち退きに悩んでいるなら、弁護士法人アクロピースにお任せください。不動産トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、状況に応じて適切なアドバイスを提供します。初回60分の無料相談も実施しているので、まずはお気軽にご相談ください。
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【ステップで解説】アパート建て替えに伴う立ち退き交渉の進め方
立ち退き交渉は、法律で定められた手順と期限を守って進めなければ、申し入れ自体が無効になるリスクがあります。
ここからは、アパート建て替えに伴う立ち退き交渉の進め方を解説します。円満な明け渡しを実現するためには、計画的にステップを踏むことが大切です。
ステップ1|解体・建て替え計画の策定と資金計画
まずは、なぜ建て替えが必要なのかという根拠を明確にし、具体的な事業計画を練ることから始めます。
建物の老朽化診断や耐震診断を行い、客観的なデータとして「住み続けることのリスク」を証明できる資料を準備しましょう。
同時に、解体費用・建築費用に加え、立ち退き料や弁護士費用を含めた余裕のある資金計画を立てることが重要です。
立ち退きが完了してからの着工となるため、銀行からの融資を受ける場合はつなぎ融資などの相談も事前に行っておく必要があります。
ステップ2|入居者への通知(法的期限は6か月前)
借地借家法第26条により、貸主から解約の申し入れをする場合は、期間満了の「1年前から6か月前まで」に行わなければなりません。契約期間の定めがない場合でも、解約申し入れから6か月を経過しなければ契約は終了しないとされています。
借地借家法第26条
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする
したがって、退去してほしい時期の遅くとも6か月前、余裕を持って1年程度前には入居者へ書面で通知しましょう。
最初は「建て替えの予定があるため、契約の終了をお願いしたい」という丁寧な案内文を送付し、入居者の反応を見ることが一般的です。
弁護士 佐々木一夫いきなり「退去命令」のような高圧的な文面を送ると、入居者の反発を招く可能性があるため避けましょう。
この段階で弁護士に相談しておくと、後の交渉に必要なアドバイスを受けられます。もし入居者への通知や交渉に不安を感じるなら、できるだけ早めに弁護士に相談しておきましょう。
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ステップ3|個別面談と条件提示・交渉
通知を送付した後、入居者一世帯ごとに個別の面談を行い、具体的な事情をヒアリングします。転居に対する不安や希望条件を聞き出し、それぞれの入居者に合わせた立ち退き条件を提示しましょう。
交渉のポイントは、以下のとおりです。
| 交渉のポイント | アクション |
|---|---|
| 傾聴 | まずは相手の不満や不安を徹底的に聞く |
| 記録 | 面談の日時、内容、相手の発言を記録に残す |
| 譲歩 | 相手の要望の中で、受け入れ可能なものは柔軟に対応する |
この段階で、立ち退き料の金額や支払時期、引っ越しのサポート内容などを具体的に提案し、合意点を探ります。すべての入居者と一律の条件で合意できるとは限らないため、相手の事情に応じた柔軟な交渉姿勢が重要です。
ステップ4|合意書の締結と引越し・明け渡し
交渉がまとまったら、「合意書(覚書)」を作成して署名・捺印を取り交わします。
合意書には、以下の内容を明記しましょう。
- 退去期日
- 立ち退き料の金額
- 支払い時期(前払いか後払いか)
- 原状回復の免除範囲 など
口約束だけでは、後になって「言った言わない」のトラブルになりかねないため、書面化は必須です。
入居者が新居を決めて引っ越し作業を行い、部屋が空になった状態で鍵の返却を受ければ、明け渡し完了となります。
ステップ5|原状回復確認と立ち退き料の支払い
部屋が空になった後、室内の状況を確認して残留物がないかをチェックします。
通常、建て替えに伴う立ち退きの場合、借主の原状回復義務は免除されることが一般的ですが、ゴミ屋敷状態などの場合は別途協議が必要です。
問題がなければ、合意書に基づいて立ち退き料を支払います。立ち退き料は、引越し費用に充てるために半額を前払いし、明け渡し完了後に残額を支払うという分割払いのケースも多いです。
【実例つき】アパート建て替えに伴う立ち退き交渉のコツ
立ち退き交渉は、相手の事情や建物の状況によってアプローチが異なります。画一的な対応ではなく、ケースバイケースで戦略を立てることが大切です。
ここでは、よくある3つのシチュエーション別に、交渉をスムーズに進めるための実践的なコツを紹介します。



アパート建て替えでの立ち退きは、老朽化だけでは足りず、立ち退き料の設定や手続きの進め方が重要になります。
紛争を避けつつ円満な建て替えを目指す際の指針として参考にしてみてください。
老朽化により耐震性に問題がある場合
築年数が古く、耐震強度不足を理由に立ち退きを求める場合は、客観的なデータの提示が効果的です。
単に「古いから危険」と伝えるだけでは、長年住んでいる入居者には危機感が伝わりにくい傾向があります。専門家による耐震診断を実施し、倒壊の危険性を数値や判定書として可視化しましょう。
交渉の際は、「皆様の命を守るためには、建て替え以外の選択肢がない」など、安全配慮の姿勢を強調することが大切です。行政から是正勧告が出ている旨や、近隣での災害事例などを併せて説明すると納得感が深まります。



協力的な関係を構築するためには、「追い出す」のではなく「安全な場所へ避難してもらう」という共通認識を作ることが重要です。
建て替えによって収益向上を図る場合
土地の有効活用や収益改善を目的とする場合は、誠意ある補償の提示が必須です。法的な「正当事由」が弱くなるため、入居者にお願いをして退去してもらう立場であることを忘れてはいけません。
相場通りの立ち退き料に加え、引っ越し費用の全額負担や、新居の敷金・礼金等の初期費用もオーナー側で持つ提案が求められます。また、建て替え後の新築物件への「優先入居権(再入居特約)」を提案するのも有効な手段の一つです。
「工事期間中は仮住まいに移っていただくが、完成後は優先的に戻ってこられる」という条件なら、地域に愛着がある入居者の合意を得やすくなります。
交渉材料の具体例は、以下のとおりです。
- 立ち退き料の上乗せ(相場+1〜2か月分)
- 新築物件への再入居確約書
- 仮住まい期間中の家賃差額補填
ただし、新築後の家賃設定や部屋の仕様については、トラブル防止のために事前に明確な書面で合意しておく必要があります。
入居者が容易に引っ越しできない状況の場合
高齢者や身体的な事情で引っ越し作業自体が困難な入居者には、実務面での手厚いサポートが大切です。以下のようなサポートを行いましょう。
| 対象者 | 効果的なサポート内容 |
|---|---|
| 高齢者 | 高齢者歓迎物件のリストアップ、行政サービスの紹介 |
| 身体障がい者 | バリアフリー物件の探索、福祉タクシーの手配 |
| 単身者 | 引越し・梱包作業の完全代行、不用品処分の手配 |
また、自身で物件を探したり、引越し業者を手配したりすることが難しいため、代行を提案することも大切です。荷物の整理や不用品の処分についても、業者を手配し、費用をオーナー負担とすることで心理的なハードルを下げられます。
場合によっては、入居者の親族やソーシャルワーカーにも同席してもらい、周囲の協力を得ながら進めることも必要です。「面倒な手続きや作業はすべてこちらで引き受ける」という安心感を提供することで、退去への抵抗感を和らげられるでしょう。
立ち退きを拒否された場合の対応と解決策
どれほど誠意を尽くしても、立ち退きを拒否されてしまうケースは存在します。感情的な対立を深めずに解決するためには、法的な手続きを段階的に踏んでいくことが重要です。
立ち退きを拒否された場合は、以下の方法で解決を目指しましょう。
以下、それぞれ詳細に解説します。
1.借主側が拒否する理由を聞いて再交渉する
交渉が行き詰まった際は、まず相手がなぜ拒否しているのかを丁寧にヒアリングすることから始めましょう。
借主側が拒否する理由は全員同じではなく、以下のように多種多様です。
- 「今の場所が気に入っている」
- 「引っ越し費用が足りない」
- 「環境が変わるのが怖い」
単なる金銭的な不満であれば金額の調整で解決できますが、精神的な不安であれば物件紹介などのサポートが必要になります。相手の主張を頭ごなしに否定せず、「どうすれば退去が可能になるか」を一緒に考える姿勢を示しましょう。
この段階での交渉記録は、後の調停や裁判において「貸主側は十分な誠意を尽くした」という証拠になります。日時・場所・会話の内容・提示した条件などを詳細にメモに残し、交渉の経緯を可視化しておきましょう。
関連記事:立退料を払ってくれない場合の理由とは?基礎知識や交渉の流れも解説
2.内容証明郵便で正式に通知する
口頭での交渉が進展しない場合は、内容証明郵便を利用して解約申入れの通知と明け渡しの請求を正式に行います。
内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に・どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるサービスです。貸主側の「契約を終了させたい」という確固たる意思と、法的措置も辞さない姿勢を相手に伝えられます。
内容証明郵便の文面には、以下の要素を記載しましょう。
- 解約の根拠(正当事由)
- 立ち退き料の提示内容
- 明け渡しの期限 など



脅迫的な文言にならないよう、あくまで法律に基づいた事務的な通知に留めることが大切です。
3.調停(民事調停)の申立てをする
当事者間での話し合いが限界に達したら、簡易裁判所に民事調停を申し立てます。
民事調停では、裁判官や一般市民から選ばれた調停委員が間に入り、双方の意見を聞きながら解決策を探ります。第三者が介在することで、感情的な対立が緩和され、冷静な話し合いができるようになるでしょう。
調停で合意に至れば「調停調書」が作成され、判決と同じ効力を持ちます。費用も数千円程度と安価で手続きも比較的簡易なため、訴訟を起こす前に利用しておきたい手段です。
出典:裁判所|民事調停
4.調停でも合意できない場合は明渡し請求訴訟をする
調停が不成立となった場合は、地方裁判所へ「建物明渡し請求訴訟」を提起することになります。
訴訟では、貸主側の「正当事由」が十分にあるかどうかが厳格に審理されます。建物の老朽化状況を示す証拠資料や、立ち退き料を提示した経緯があるかどうかが重要です。
証拠資料の例は、以下のとおりです。
- 耐震診断報告書
- 修繕履歴
- 立ち退き料提示案 など
裁判の過程で、裁判官から「和解」を勧められる可能性は高く、判決まで行かずに和解金(立ち退き料)で決着することも少なくありません。
判決まで進むと、勝訴か敗訴かの白黒がはっきりつきますが、裁判所に「正当事由」があると認めてもらうには、適切な主張立証が不可欠です。弁護士に依頼すると弁護士費用はかかりますが、法的な観点から正当事由が認められるよう主張立証をしてくれます。
関連記事:立ち退き裁判とは?手続きの流れや費用・期間についても解説【弁護士監修】
5.判決が出ても借主が退去しない場合は強制執行に移る
裁判で勝訴判決が出たり、和解が成立したにもかかわらず借主が居座り続けたりする場合は、「強制執行」を行います。裁判所の執行官が現地に赴き、強制的に荷物を搬出し、鍵を交換して建物を明け渡させる手続きです。
執行の申し立てから実際の断行までには1〜2か月程度の期間が必要で、予納金や執行補助業者への費用も発生します。
荷物の搬出費用や保管費用は、原則として債務者(借主)の負担ですが、現実には回収困難なケースも珍しくありません。
大家にとって精神的・経済的な負担が非常に大きくなりやすいため、強制執行に至る前の段階で解決することが望ましいでしょう。
関連記事:強制退去の流れを7つのステップで解説!注意点やかかる費用を確認
アパートの建て替えに伴う立ち退き交渉をする際の注意点
立ち退き交渉は、一歩間違えると違法行為とみなされ、逆に損害賠償を請求されるリスクがあります。感情的にならず、法律とモラルを守って進めることが大切です。
交渉時に絶対に守るべき鉄則は、以下の4つです。
以下、それぞれ詳しく解説します。
交渉は「早期・丁寧・書面ベース」が重要
立ち退き交渉の成否は、初動の早さと丁寧さによって大きく左右されます。
法律上の通知期限(6か月前)ギリギリに伝えるのではなく、計画が決まった段階で早めに情報を共有しましょう。十分な準備期間を与えることで、入居者から不信感を抱かれにくくなります。
また、「言った言わない」のトラブルは、交渉を長期化させる要因となります。交渉の経過を記録に残し、重要な合意事項は書面化することが大切です。
書面化が必要な項目は、以下のとおりです。
- 面談記録
- メールの履歴
- 合意書 など



客観的な証拠を残しながら進めることで、後の法的紛争リスクを回避できる可能性が高まるでしょう。
立ち退き料は「妥当性+柔軟性」が大切
立ち退き料の提示額には、相場という基準はあっても正解はありません。
「相場はこれくらいだから」と一方的に押し付けるのではなく、相手の事情に合わせて柔軟に調整する姿勢が必要です。
たとえば、どうしても予算の上限がある場合は、金銭以外の条件(引越し手配や不用品処分など)でカバーできないか検討しましょう。
「こちらの事情でご迷惑をおかけする」という謙虚な姿勢を持ちつつ、お互いが妥協できる着地点(落とし所)を粘り強く探すことが大切です。
鍵の交換や荷物の搬出など「自力救済」はしない
交渉が難航しても、実力行使によって無理やり退去させることは法律で厳しく禁じられています。
これを「自力救済の禁止」といい、違反すると住居侵入罪や器物損壊罪などの刑事罰に問われる可能性があるため、注意が必要です。
具体的には、以下のような行為は絶対にしてはいけません。
- 勝手に部屋の鍵を交換して入れなくする
- 留守中に荷物を勝手に搬出・処分する
- 電気・ガス・水道などのライフラインを止める
- 早朝や深夜に押しかけて執拗に退去を迫る



民事上でも多額の損害賠償や慰謝料を請求されることになり、貸主側が圧倒的に不利な立場に追い込まれます。
できるだけ早い段階で弁護士に相談する
立ち退き交渉は、法律知識と交渉テクニックの両方が求められる高度な業務です。
当事者同士で感情的な対立が残ってしまうと、その後の修復は困難になります。こじれてから弁護士に依頼するのではなく、計画段階や交渉の初期段階で相談することが大切です。
弁護士が入ることで、以下のようなメリットを得られます。
- 法的に適正な立ち退き料の算定
- 法的リスクのない通知書の作成
- 代理人として交渉の矢面に立ってもらえる
また、代理人として交渉の矢面に立ってもらえる うことで、オーナー自身の精神的なストレスを大幅に軽減できるでしょう。
弁護士費用が必要になりますが、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな事業遂行を実現するための必要経費として捉えることが大切です。なかには、初回相談を無料で受けられる弁護士事務所も存在しているので、気軽に相談してみてください。
不動産問題の相談はアクロピース
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関連記事:立ち退き交渉の代行は弁護士に頼むべき?費用相場や依頼先の立ち退きに強い弁護士の選び方を解説
アパートの建て替えで「立ち退き料」は必要?法的根拠と正当事由を解説
貸主側の都合で賃貸借契約を終了させるには、借地借家法に基づく「正当事由」が必要不可欠です。
しかし、建物の老朽化や建て替えの必要性だけでは、法的な正当事由として認められることは稀といえます。「立ち退き料」を支払うことで、不足する正当事由を補完し、入居者の合意を得ることが可能です。
ここでは、立ち退き料が必要になる要件を解説します。
借地借家法における「正当事由」とは
借地借家法第28条において、貸主からの契約更新拒絶の通知または解約申し入れには、正当事由が必要であると定められています。
正当事由の判断は、単に「建物が古いから」という理由だけで認められるものではありません。貸主が建物を必要とする事情や、借主がその建物に住み続ける必要性など、複数の要素を天秤にかけて総合的に判断されます。
主な判断要素は、以下のとおりです。
| 判断要素 | 具体的な考慮ポイント |
|---|---|
| 貸主・借主の使用の必要性 | 貸主が自己使用する必要性と借主の居住の必要性 |
| 建物の現況 | 老朽化の進行度合い、耐震性、修繕の可否 |
| 建物の利用状況 | 借主が契約違反なく平穏に使用しているか |
| 立ち退き料の申し出 | 正当事由を補完する財産上の給付があるか |
過去の判例でも、老朽化の事実だけで即座に立ち退きが認められたケースは少なく、慎重な法的判断が求められるのです。
正当事由が不十分な場合は「立ち退き料」が必要
貸主側の「建て替えたい」という理由だけでは正当事由として不十分である場合、立ち退き料の支払いが必須となります。
借地借家法では借主の権利を強く保護しており、貸主の一方的な都合で住まいを奪うことを容易には認めていません。そのため、貸主側の事情と借主側の事情を比較した際、貸主側の理由が弱い場合は金銭的な補償でバランスを取る必要があります。
正当事由が弱いとされるケースは、主に以下のとおりです。
- 単なる収益改善目的の建て替え
- 修繕で住み続けられるレベルの老朽化
実務上、アパートの建て替え案件の多くは、「立ち退き料」を提示することで正当事由を補完し、合意解約を目指す形になります。立ち退き料なしでの退去要請は、法的紛争に発展した際に認められない可能性が高いため注意が必要です。
関連記事:立ち退きの正当事由として老朽化は認められるのか?トラブルを防ぐコツを紹介
正当事由として認められる場合は「立ち退き料」が不要
限定的ではありますが、立ち退き料を支払わずに契約解除が認められるケースも存在します。
たとえば、建物が物理的に朽廃しており、いつ倒壊してもおかしくないような危険な状態にある場合です。居住を継続すること自体が借主の生命を脅かすため、貸主の使用収益の義務が消滅したと考えられます。
立ち退き料が不要になる可能性が高い特殊な状況は、以下のとおりです。
| 建物の朽廃 | 建物が社会経済的効用を失い、修繕によっても建物としての存在価値を回復できない状態にある場合 (独立して存在し人が居住可能な状態であれば朽廃には至らない) 出典:裁判所|最高裁昭和42年7月18日判決 |
|---|---|
| 重大な契約違反 | 借主による長期の家賃滞納や、無断転貸などの信頼関係破壊行為がある場合 |
| 定期借家契約 | 契約期間満了により確定的に契約が終了する場合(更新がない契約) |
しかし、単に「築年数が古い」「耐震基準を満たしていない」という程度では、朽廃とは認められない可能性が高いでしょう。
アパート建て替えに伴う立ち退き料の内訳・相場
立ち退き料には法律で定められた定価が存在せず、個別の事情や交渉によって金額が大きく変動します。
基本的には、入居者が退去して新しい住居に移るために必要な「実費」と、精神的な負担に対する「慰謝料」の合計で構成されるのが特徴です。
ここでは、交渉の目安となる内訳項目と、一般的な相場観について詳しく解説します。
立ち退き料の計算に含まれる費用項目
立ち退き料を算定する際は、入居者が引っ越しをするために具体的にいくらかかるかを計算します。
もっとも大きな割合を占めるのは、新居を確保するための初期費用や引越し業者への支払いです。これに加え、現在の家賃と新居の家賃に差額が生じる場合の補填分や、慣れ親しんだ環境を離れることへの迷惑料が加算されます。
具体的な内訳は、以下のとおりです。
| 費目 | 内容・計算の目安 |
|---|---|
| 新居の初期費用 | 敷金、礼金、仲介手数料、保証会社利用料、火災保険料など |
| 引越し費用 | 引越し業者への支払実費(荷物量や時期により変動) |
| 移転雑費 | インターネット工事費、電話移転費、エアコン移転費など |
| 家賃差額補償 | 新居の家賃が高くなる場合、その差額の1年〜2年分程度 |
| 慰謝料(迷惑料) | 貸主都合での退去に対する精神的苦痛への対価 |



インターネット回線の移転工事費や、エアコンの脱着費用などの細かな実費も見落とさないようにしましょう。
一般的な立ち退き料の相場|家賃の6か月〜12か月分
実務における立ち退き料の相場は、一般的に「家賃の6か月〜12か月分」程度といわれています。家賃6万円のアパートであれば、36万〜72万円程度がひとつの目安となるでしょう。
しかし、上記はあくまでスムーズに交渉が進んだ場合の平均的な数値であり、絶対的な基準ではありません。
都市部か地方か、単身者かファミリー世帯かによっても必要な転居費用は異なるため、個別の事情を考慮する必要があります。
関連記事:立ち退き料の算出要素に基づく相場と過去の判例に見える特徴
アパート建て替えに伴う立ち退き料を安く抑える方法
立ち退き料を適正範囲に抑えるためには、金銭以外のサポートを組み合わせた交渉が効果的です。
現金の支給だけでなく、入居者の「手間」や「不安」を取り除く提案を行うことで、結果的に総額を圧縮できる可能性があります。
主な方法は、以下のとおりです。
- 代替物件の斡旋
- 引越し業者の手配
- フリーレントの活用
- 不用品処分の代行
自社が所有する他の物件や、提携する不動産会社を仲介手数料無料で紹介すると、引っ越し費用を抑えられた分、立ち退き費用も抑えられます。指定の引っ越し業者を利用することで費用をオーナー負担とし、実費を抑えることも効果的です。
また、退去までの家賃を無料にしたり、新居の家賃発生月まで現住居の家賃を免除したりする方法も考えられます。入居者が置いていく不用品の処分費用をオーナー側で負担し、処分の手間を省く提案をすることも有効です。
アパートの建て替えに伴う立ち退きに関するよくある質問
立ち退き交渉にかかる期間はどのくらい?
一般的には、入居者への通知から退去完了まで、半年から1年程度かかるケースが多いです。
入居者が協力的であれば数か月で完了することもありますが、反対する入居者がいる場合や裁判に発展した場合は、数年単位の時間が必要になることもあります。
建て替え計画を立てる際は、交渉が長引くリスク(予備期間)をあらかじめ組み込んでおくことが重要です。
立ち退き交渉の期間については、以下の記事でも詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。
店舗や事務所が入居している場合、補償は変わる?
店舗や事務所が入居している場合は、営業補償や移転補償が必要となるため、立ち退き料は高額になる傾向があります。
以下のように、専門的な算定が必要です。
- 休業中の利益補償
- 得意先喪失への対価
- 内装や設備の移設費用 など
金額の合意が難しいため、公認会計士や税理士、弁護士などの専門家による算定書を根拠に交渉することをおすすめします。
契約書に「建て替え時は退去する」と記載すれば有効?
通常の賃貸借契約(普通借家契約)の場合、契約書に「建て替え時は退去する」と記載することは借地借家法に反します。借主に不利なものとして、無効となる可能性が高いです(借地借家法第30条)。



借主保護の観点から、契約書に書いてあっても正当事由なしでの解約は認められません。
しかし、「定期借家契約」として契約している場合は、契約期間満了とともに確実に契約が終了し、立ち退き料も不要となります。
まとめ|法律や手続きの流れを理解し、アパート建て替えに伴う立ち退きの成功を目指そう
アパートの建て替えに伴う立ち退き交渉は、貸主側の都合だけで進められるものではなく、借地借家法に基づく「正当事由」と適切な「立ち退き料」が必要です。
立ち退き問題は、初期対応を誤ると長期化し、建て替え計画全体を頓挫させるリスクがあります。交渉をする際は、入居者の生活を守るという視点を忘れず、誠意を持って早期から対応することが大切です。
自身の物件状況に合わせた適切な立ち退き料の算定や、法的に不備のない通知書の作成には、専門的な知識が不可欠です。少しでも不安を感じる場合は、早い段階で不動産問題に強い弁護士に相談し、トラブルのない円満な解決を目指しましょう。
アパートの建て替えによる立ち退きに悩んでいるなら、弁護士法人アクロピースにお任せください。不動産トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、状況に応じて適切なアドバイスを提供します。初回60分の無料相談も実施しているので、まずはお気軽にご相談ください。
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