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借地契約を締結している地主の中には「借地人から建物買取請求権を行使された」「建物はいくらで買い取ればいいのか」という悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
建物買取請求権に対して適切な対応をするためには、借地人が権利を行使できる条件や買取金額の目安について知っておかなければなりません。
借地人から建物買取請求権を行使されて困っている方は、この記事を参考に対応方法を検討してください。
建物買取請求権とは、どのような権利を指すのでしょうか。
ここでは、基礎知識や注意点を紹介します。
建物買取請求権とは、借地人が地主に対して借地上の建物を買い取ることを請求できる権利です。
わかりやすく説明すると、借地人が建物を建てるために支払った多額の費用を回収する借地人保護を目的とした権利です。
また「借地上の建物を解体する」という社会経済上の損失を最小限に抑えるためとも言われています。
借地借家法13条により、借地権の存続期間が満了して契約の更新がない場合、借地人に建物買取請求権を行使する権利が認められています。
地主の立場からすると建物を強制的に買い取る必要があるため、建物買取請求権の行使を拒否したいと考える方がいるかもしれません。
しかし、建物買取請求権を行使して借地人が建物の買い取りを請求した場合、基本的に地主はそれを拒否することができません。
後述する「借地人が建物買取請求権を行使できる3つの条件」でも解説しますが、借地人が契約の更新を希望しているにも関わらず、地主の正当な理由により契約が終了する場合は、建物の買い取りに応じる必要があるのです。
建物買取請求権は「形成権」と言われる種類の権利です。
借地人が正当に建物買取請求権を行使すれば、借地人と地主の間で建物の売買契約が成立したのと同一の法的効果が生じます。
建物の買い取りを拒否するために、借地契約において「建物買取請求権を行使しない」旨の特約を取り決めたいと考えることもあるでしょう。
しかし、借地借家法16条において、借地契約では借地人に不利な契約内容は認められないため、建物買取請求権を行使しない旨の特約は無効となります。
他方、一旦建物買取請求権が発生した時には、これを放棄することはできるとされております。
このように、建物買取請求権は、借地人保護の観点から認められた非常に強い権利であることがわかります。
借地人が、建物買取請求権を行使して地主に建物を買い取らせることができる条件は、主に次の3点です。
それぞれの条件を詳しく解説します。
1つ目の条件は、建物が借地上に存在していることです。
地主が買い取るべき建物が借地上になければ、建物買取請求権を行使することができません。
建物が存在する必要があるタイミングは次の2つです。
ただし、建物が存在しても建物買取請求権が発生しないケースがあります。
それは、建物が所有者の異なる複数の土地にまたがっている場合です。
借地人が地主に買い取りを請求できるのはあくまで借地上に建っている建物のみであるため、他の地主の土地上に建っている部分は買取請求ができないのです。
もし建物の一部を買取請求する場合は、区分所有権などにより独立した所有権を持った不動産でなければいけません。
建物買取請求権を行使するためには、借地権の存続期間が満了し契約更新がないことが条件となります。
契約更新がない主なケースは以下のとおりです。
このように、借地人が更新を希望したにも関わらず、地主の正当事由により更新できない場合に建物買取請求権を行使できます。
さらに、借地人が当初より更新する意思がなく、ただちに建物買取請求権を行使することもできると考えられています。
ただし、「地主が更新を容認する意思を示せば、建物買取請求権を免れることができる」という学説(星野英一・借地・借家法)もあるため、建物買取請求権を請求された際は、慎重な判断が必要になります。
建物買取請求権は、借地人が「権利を行使する」という意思表示を行わなければ、建物の買い取りを請求できません。
また、先述のとおり建物買取請求権は形成権のため、借地人からの一方的な意思表示により行使できます。
建物買取請求権の意思表示は、口頭だけでも問題ありません。
しかし、口頭だけでは権利を行使した客観的証拠が少なく、後日トラブルになるケースも考えられるため、内容証明郵便による意思表示がおすすめです。
建物買取請求権には、行使が認められないケースもあります。
それぞれの詳細を見ていきましょう。
建物買取請求権の行使が認められない1つ目のケースは、借地人による契約違反により借地契約が解除された場合です。
建物買取請求権は、借地人を保護するための制度のため、借地人の過失により契約が解除された場合は権利を行使できないのです。
契約違反行為には、次の内容が考えられます。
上記の行為を行った場合、契約を解除する正当事由に該当し、借地人による原状回復義務が与えられます。
それにより、借地人は更地で土地を返却する義務が発生するのです。
以下の記事では、賃貸物件の契約違反や対処の流れを7ステップに分けて解説しています。あわせて参考にしてください。
参考記事:強制退去の流れを7ステップ!注意点やかかる費用は?
借地人と地主の間で借地契約を合意解除した場合は、建物買取請求権を行使できません。
建物買取請求権は、借地人が契約更新を希望しているにも関わらず、地主がそれを認めない場合に適用される制度のためです。
ただし、この場合でも両者間で「建物買取請求権を行使する」という合意があれば、借地人が地主に対して建物の買い取りを請求することができます。
契約期間中に合意解約された場合は「合意解除でも建物買取請求権を行使できる」という内容が契約書の中にあるのかを確認する必要があります。
借地人が建物買取請求権を行使した場合、地主はいくらで建物を買い取れば良いのでしょうか。
ここでは、建物買取請求権の代金について解説します。
結論、借地借家法第13条では、建物買取請求権を行使した場合、建物の買取価格は「時価」になると定められています。
時価とは、建物が現存するまま、その用途目的のために利用されている状態における建物としての価格をいいます。
また、時価の算定基準時は、建物買取請求権を行使したタイミングです。
基本的に建物の時価は当事者間で決めるケースが多いですが、裁判で時価を算出する場合は、不動産鑑定士に査定を依頼することとなります。
建物買取請求権の行使による建物の時価は、建物自体の価格がゼロであっても「場所的利益」を踏まえて、価格が算定されます。
たとえば、以下の要素が場所的利益に反映されます。
これらの要素を考慮して、土地更地価額の10%〜20%程度が場所的利益として判断されるケースが多いとされています。
しかし、借地の立地や周辺環境により場所的利益が考慮されないことも考えられるため、買取価格に疑問を感じる場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
賃貸中や抵当権が設定されている建物の場合、建物買取請求権はどのような扱いとなるのでしょうか。
以下の2つの場合について解説します。
建物に賃借人がいるケースでも、建物買取請求権の行使は可能です。
建物に賃借人がいる場合の建物買取価格は、裁判例では、収益力をもとに計算した価格こそその場所的利益を反映した時価、すなわち建物自体の客観的な取引価格と認めるべきであるとしたものがあります(横浜地判昭和41.12.24判タ205号166頁)。
賃借人が存在する状態で建物を買い取った場合、建物の賃貸人は地主となり、賃借人と地主の間で賃貸借契約が継続することになります。
建物に抵当権が設定されている場合も、建物買取請求権を行使できます。
このケースでは、抵当権がなかった場合を想定して、買取価格が算出されます。
しかし、抵当権があるにも関わらず、その負担が考慮されないのは地主にとって不利益と考えられるでしょう。
そのため、民法577条により、地主は抵当権消滅請求の手続が完了するまで、借地人への支払いを拒否することができます。
このように、建物に賃借人が存在することや抵当権が設定されていることは、建物買取請求権を行使できない理由にはなりません。
しかし、地主には抵当権消滅まで支払いを拒否する権利があるので、適切な対応方法を理解しておくことが重要です。
建物に抵当権が残っている場合の任意売却の解説や流れを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
建物買取請求権は、借地人の権利を保護して地主との関係を調整するという重要な役割を持った制度です。
しかし、地主からすると、需要があるかどうかもわからない建物を強制的に買い取ることになるため、建物の価格によっては大きなリスクになり得るでしょう。
また、建物買取請求権に関する紛争は裁判事例の蓄積が多くなく、未だに解釈が定まっていないケースが多いです。
建物買取請求権を行使する借地人側も、これを受ける地主側も戸惑うことが多いため、建物買取請求権に関する不安を抱えている場合には、法律の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。
この記事では、借地人から建物の買い取りを請求される建物買取請求権について解説しました。
借地契約が満了した際に契約更新をしない場合、基本的に地主は建物買取請求権に応じる必要があります。
その際に「建物買取請求権が成立するケースとしないケース」を理解しておけば、建物買取請求権に対して適切な対応を取ることができるでしょう。
「建物買取請求権を行使されたものの対応方法がわからない」という方は、弁護士への相談を検討してみてください。
弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
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