共有物分割訴訟の訴額とは?どのように計算するのか、裁判手数料も解説

共有不動産のトラブル解決を目指して「共有物分割請求訴訟」を検討している方にとって、訴額の理解は重要です。
共有物分割請求訴訟における訴額は、裁判手数料の金額を算出する重要な基準です。
しかし、訴額の計算方法は建物と土地で異なり、固定資産税評価額をもとに複雑な計算が必要で、正確な知識が求められます。
本記事では、共有物分割請求訴訟の訴額の基本から具体的な計算方法、費用見積もりのポイントを解説します。
共有物分割請求訴訟の提起に必要な「固有必要的共同訴訟」や「利益相反」「事物管轄」についてもお伝えしますので、最後までお読みください。
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訴額とは

「訴額」とは、訴訟で請求する対象物の金銭的な価値を指し、裁判を起こす際に必要となる手数料(収入印紙代)を決める基準となります。
共有物分割請求訴訟でも、訴額によって裁判手数料が決まりますが、請求する対象物の金銭的な価値がそのまま訴額となるわけではないため、その計算が必要です。
以下では、訴額ごとの裁判手数料の計算基準と、共有物分割請求における訴額の計算方法について解説します。
共有物分割請求の詳細は、こちらの記事をお読みください。
関連記事:共有物分割請求とは?共有状態の解消方法や弁護士に依頼するメリットを紹介
訴額ごとの裁判手数料の計算基準

共有物分割請求訴訟の裁判費用は、訴額に応じて手数料が異なります。
民事訴訟では裁判官や事務官の人件費、書類送達にかかる郵便料などの費用が公費で賄われますが、応益負担の原則により、当事者にも一定の負担が求められるのです。
手数料は訴額ごとに段階的に区分され、次の基準で計算します。
訴額 | 裁判手数料 |
---|---|
100万円以下の部分 | 10万円までごとに1000円 |
100万円超500万円以下の部分 | 20万円までごとに1000円 |
500万円超1000万円以下の部分 | 50万円までごとに2000円 |
1000万円超10億円以下の部分 | 100万円までごとに3000円 |
10億円超50億円以下の部分 | 500万円までごとに1万円 |
50億円超の部分 | 1000万円までごとに1万円 |
なお、判決に不服があり控訴する際の手数料は上記の1.5倍、上告する場合は2倍です。
控訴・上告にも訴額に応じた裁判手数料が発生します。
訴額が高いほど裁判手数料も増えるため、正確な計算は訴訟費用を見積もる上での重要なプロセスです。
共有物分割請求訴訟の訴額の計算方法

共有物分割請求訴訟を提起する際の、訴額の算定基準と、建物と土地の計算方法の違いについて解説します。
固定資産税評価額をもとに算出
共有物分割請求訴訟における訴額は、固定資産税評価額を基準に算出します。
固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に記載された土地・家屋の評価額です。
土地・家屋の固定資産税評価額については3年に1度「評価替え」が実施されており、この評価替えの年度を「基準年度」といいます。
固定資産税評価額は、基準年度の評価額が次年度と次々年度にそのまま引き継がれるのが原則です。
固定資産税評価額を確認するには、不動産の所在地を管轄する市区町村役場で「固定資産評価証明書」を取得する方法と、毎年送付される固定資産税の納税通知書を確認する方法があります。
正確な訴額を算出するためには、これらの資料をもとに最新の評価額の把握が重要です。
建物の訴額の計算方法
共有物分割請求訴訟で建物を対象とする場合、訴額は「固定資産税評価額×持分割合×1/3」で計算します。
建物の分割に関する訴訟では、通常の金銭請求とは異なり、訴訟の目的が占有権の分割にあたるため、評価額の3分の1という基準が適用されます。
たとえば、建物の固定資産税評価額が3,000万円で、持分が1/2の場合の訴額の計算式は、以下の通りです。
500万円(訴額)=3,000万円(固定資産税評価額)×1/2(持分割合)×1/3
共有物分割請求訴訟の訴額は単純な評価額ではなく、特別な計算方法が採用されている点に注意が必要です。
土地の訴額の計算方法
共有物分割請求訴訟で土地を対象とする場合、訴額は「固定資産税評価額×持分割合×1/6」で算定します。
土地を目的とする訴訟では、1994年4月1日以降手数料が高騰するのを防ぐため、当分の間、評価額の1/2を基準に訴額を定める措置が導入されました。
たとえば、固定資産税評価額が9,000万円で持分が1/2の場合の訴額の計算式は、以下の通りです。
750万円(訴額)=9,000万円(固定資産税評価額) × 1/2(持分割合)× 1/3× 1/2
土地の訴額は、建物と異なる算定ルールが適用されます。
共有物分割請求訴訟にかかる費用

共有物分割請求訴訟には費用が発生します。
訴訟を提起する前に、費用がどのくらいかかるのか把握しておく必要があります。
主な費用の内訳は、以下の通りです。
訴額に応じた裁判手数料、費用
共有物分割請求訴訟を提起するには、訴額に応じた裁判手数料の納付が必要です。
また、訴訟に必要な書類を裁判所から共有者全員に送付するための郵便切手代もかかります。
裁判所に納付する郵便切手は予納郵券と呼ばれ、裁判所が指定する種類の切手をあらかじめ納付しなければいけません。
東京地方裁判所を例に挙げると民事訴訟の予納郵券の内訳は、次の通りです。
切手の種類 | 枚数 |
---|---|
500円 | 8枚 |
110円 | 10枚 |
100円 | 5枚 |
50円 | 5枚 |
20円 | 5枚 |
10円 | 5枚 |
※共有者が1人増えるごとに2,440円(内訳500円4枚、110円4枚)加えて予納する
参照:裁判所 2(1)東京地方裁判所への民事訴訟事件又は行政訴訟事件の訴え提起における郵便切手の予納額について
郵便切手代は裁判所ごとに異なる場合があり、共有者が一人なら5,000円から6,000円程度必要で、被告が1人増えるごとに2,000〜2,500円程度増加します。
また、裁判が長引いて送達の回数が増えると、追加予納が命じられる可能性があります。
不動産鑑定費用
共有物分割請求訴訟では、不動産鑑定費用が発生する場合があります。
訴訟や調停の場面では、現物分割や代償分割が選択されるにあたり不動産の適正な評価額を明確にするため、鑑定士に依頼して鑑定書を訴訟資料とするケースがあるためです。
不動産鑑定には私的鑑定と裁判所選任鑑定があり、いずれも不動産の規模や種類、評価額に応じて費用が変動します。
不動産鑑定費用は、審理の経過や裁判所の判断によって発生する可能性があるため、共有物分割請求訴訟を提起する際は、事前に概算を把握しておきましょう。
弁護士費用
共有物分割請求訴訟の弁護士費用は、手続きの段階に応じて発生します。
弁護士費用は、訴訟全体の経済的負担において大きな割合を占めるため、安心して訴訟を進めるために各費用の相場を把握しておく必要があります。
主な弁護士費用は、次の通りです。
費用項目 | 相場・内容 |
---|---|
相談料 | 30分5,000円程度(初回無料の事務所もあり) |
着手金 | 22万円~33万円程度、または日弁連旧基準にもとづいて計算 |
報酬金 | 経済的利益の5.5~11%程度 |
日当 | 1日あたり3~5万円(出張や裁判所への出廷にかかる) |
実務手数料 | 1事件あたり1万~5万円程度 |
実費 | 1万~3万円程度(交通費などの預かり金) |
弁護士費用は、案件の進行状況や内容によって変わるため、正式に依頼する前に見積もりを取り、費用の全体像を把握しておくことが大切です。
共有物分割請求の弁護士費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:共有物分割請求にかかる弁護士費用は?相場や具体例、安く抑える方法を解説
共有物分割請求訴訟を提起する際の注意点

共有物分割請求訴訟には、事前に押さえておくべき注意点があります。
訴訟手続を進める際に理解が必要な主なルールは、以下の通りです。
共有者全員が当事者になる必要がある(固有必要的共同訴訟)
共有物分割請求訴訟を提起する際は、共有者全員を当事者に加える必要があります。
共有物の処分に関する権利義務は共有者全員に生じており、対立の有無にかかわらず、共有関係全体に影響が及ぶためです。
仮に一部の共有者だけで訴訟を提起しても、その訴えは不適法となり、裁判所に却下されます。
たとえば、3人で土地を共有している場合、特定の2人だけで共有物分割請求訴訟を起こすことはできず、残りの1人も必ず当事者として加える必要があります。
このように、共有物分割請求訴訟では「固有必要的共同訴訟」というルールにもとづいて手続きを進めなければなりません。
原則弁護士は当事者双方の代理人になれない(利益相反)
共有物分割請求訴訟では、弁護士が当事者双方の代理人を兼ねることは原則できません。
弁護士が当事者双方の代理人になると、利益相反のおそれがあり、公平性が損なわれる可能性があるからです。
民法第108条では、同一の法律行為について相手方の代理人や当事者双方の代理人となることを禁止しています。
ただし、例外として、債務の履行や当事者双方が同意した場合には、弁護士の双方代理が認められるケースもあります。
共有物分割請求訴訟では当事者が複数いるケースがあるため、利益相反に関するルールを理解して弁護士を選任しましょう。
共有物分割請求訴訟は地方裁判所に提起する(事物管轄)
共有物分割請求訴訟は、地方裁判所に提起する必要があります。
「事物管轄」と呼ばれるルールにもとづき、訴訟の種類ごとに担当する裁判所が決まっています。
不動産を目的とする共有物分割訴訟は、事件の性質上、地方裁判所が管轄です。
裁判所には家庭裁判所、簡易裁判所、高等裁判所、最高裁判所などがありますが、共有物分割請求は簡易裁判所の利用はできず、一審は地方裁判所に提起します。
共有物分割請求訴訟の訴額は弁護士に相談すべき理由

共有物分割請求訴訟で、訴額についての疑問があるときは、弁護士への相談をおすすめします。
訴額は裁判手数料を左右する重要な要素であり、固定資産税評価額をもとに正確に計算する必要があります。
自力での計算も可能ですが、算定には専門知識も必要であるため、弁護士に依頼して正確な訴額を算出する方が安心です。
また、共有物分割請求訴訟は親族や知人との対立を招くケースが多く、精神的負担も大きくなりがちです。
しかし、弁護士に共有物分割請求訴訟を依頼すれば、交渉の窓口になってくれるため、他の共有者と直接対立せずに済みます。
さらに、共有物分割請求訴訟に実績のある経験豊富な弁護士であれば、適正価格での買取交渉や共同売却による利益最大化も期待できるでしょう。
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まとめ|共有物分割請求訴訟は弁護士に依頼して訴額の算定と手続きを正確に進めよう
共有物分割請求訴訟に必要な訴額の計算方法と事物管轄について解説しました。
- 共有物分割請求訴訟の訴額とは訴訟において請求する対象の金銭的な価値を示す
- 訴額は共有物分割請求訴訟の裁判手数料を決める基準となる
- 共有物分割請求訴訟の訴額の計算は、固定資産税評価額がもととなり、建物と土地で算出方法が異なる
- 共有物分割請求訴訟にかかる主な費用には「裁判手数料」「不動産鑑定費用」「弁護士費用」などがある
- 共有物分割請求訴訟を提起する際は「固有必要的共同訴訟」「利益相反」「事物管轄」に注意する
共有物分割請求訴訟は親族や知人を相手にするケースが多く、関係を壊さずスムーズに交渉を進めるためにも、法律と交渉のプロである弁護士に依頼しましょう。
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