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家賃滞納と聞くと、「自分が経営している賃貸物件は家賃滞納に対して厳しく対応しているから大丈夫」「善良な入居者ばかりだからあり得ない」と思っている貸主もいるのではないでしょうか。
家賃滞納者を強制退去させるための流れや、かかる費用についてもまとめましたので、賃貸物件を経営する貸主の方はぜひご覧ください。
借主の家賃滞納問題でお困りの場合は、専門家に依頼するのが解決への一番の近道です。
弁護士法人アクロピースでは、不動産に強い弁護士が法的アドバイスはもちろん、強制退去手続きや裁判も承ります。
初回60分の相談は無料です。
LINEからも無料で相談の問い合わせができますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
貸主が家賃滞納者を強制退去させることはできます。
公益財団法人日本住宅賃貸住宅管理協会が公表している「第27回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」によると、2022年度の賃貸住宅の1カ月の家賃滞納率は0.8%、125世帯に1軒件の割合で発生しています。
公益財団法人 日本住宅賃貸住宅管理協会が公表している「第27回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」の2022年度の賃貸住宅の家賃滞納率は以下のようになっています。
月末での1カ月滞納率 | 月末での2カ月滞納率 | |
---|---|---|
首都圏 | 0.4% | 0.2% |
関西圏 | 3.3% | 1.1% |
その他地域 | 2.3% | 0.8% |
全国 | 0.8% | 0.3% |
出典:第27回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』2022年4月~2023年3月
数値を見てもわかるように、家賃滞納は他人事ではなく、どこでも起こり得るものなのです。
しかしながら、借主は借地借家法で守られているため、たとえ家賃滞納という契約違反が発生したとしても、すぐに強制退去させることはできません。
家賃滞納者を強制退去させるにはいくつかの条件をクリアし、法的手続きをもって「貸主と借主の信頼関係の破綻」を立証する必要があります。
また、強制退去を実現させるには、貸主の労力と時間、そして高額な費用が必要です。
強制退去に至る前に、任意に退去してもらうことが大切です。
強制退去は、あくまで最終手段として考えるのがよいでしょう。
貸主は家賃滞納者を強制退去できますが、次のケースに当てはまる場合は強制退去できません。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
家賃滞納の期間が1~2カ月と短期間である場合、貸主が法的手続きを取っても借主を強制退去させることは難しいでしょう。
強制退去ができるのは単なる家賃滞納という事実だけでなく、貸主と借主の信頼関係が破綻されたといえることが必要なためです。
一般的には、3カ月程度の家賃滞納があると、借主に支払いの意思がないと認められ、契約不履行として強制退去が認められやすくなります。
しかし、強制退去が認められやすい滞納期間が3カ月程度というのは、あくまでも目安です。
ケースによっては、2カ月の滞納で強制退去できることもあれば、6カ月以上の家賃滞納があっても強制退去できないこともあります。
借主にやむを得ない事情があり、一時的に家賃を支払えない場合、貸主は強制退去できません。
借主が病気やけがでの入院、失業などで一時的に収入がなくなるなどやむを得ない事情で家賃滞納してしまった場合、貸主と借主の信頼関係が破綻したとはいえないためです。
民法第五百四十一条にもその旨が記載されています。
民法五百四十一条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない
出典:e-govポータル|民法
しかし借主のやむを得ない事情があったとしても、家賃滞納期間が長期にわたる場合は、借主に家賃を支払う意思がないと判断され、強制退去ができることもあります。
借主が家賃滞納という契約違反をしていても、貸主が裁判所を通さずに無理矢理追い出すことは「自力救済」と呼ばれ、禁止されています。
たとえば、貸主の次のような行為は自力救済とみなされる恐れがあります。
これらは、貸主の違法な追い出し行為です。
場合によっては、住居侵入罪や器物損壊罪など刑事事件に発展する恐れもあるため、注意が必要です。
たとえ賃貸借契約に「借主が家賃滞納をした場合、貸主が部屋のカギを交換し、居室内の荷物を処分されても異議を述べない」という一文が記載されていたとしても、消費者契約法第十条により無効となります。
消費者契約法第十条
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
出典:e-govポータル|民法
借主が家賃滞納したとしても、借地借家法により守られているため、すぐに強制退去させられませんが、次のケースに該当する場合は強制退去できます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法律で家賃滞納の期間は定められていませんが、過去の判例では家賃滞納が3カ月以上継続している場合は、強制退去が認められやすくなります。
借主の3カ月以上の家賃滞納は「貸主と借主の信頼関係の破綻」があると判断され、裁判所から認められやすくなる傾向があるためです。
ただ借主の家賃滞納が3カ月以上であっても、すぐに賃貸借契約を解除し強制退去ができるとは限りません。
貸主が借主の賃貸借契約を解除し裁判所で強制退去を進めるには、法的手順に則り借主に催告を行う、内容証明郵便を送付するなどの対応が必要です。
賃貸借契約に明確な解除条件が記載されておりますが、解除条件に該当しただけで解除が認められるものではなく、借主が悪質な違反行為をへて信頼関係が破綻した場合には、強制退去が認めらます。
ですから、賃貸借契約に「1カ月の家賃滞納により賃貸借契約は解除される」というような規定があり裁判で争うことになった場合、契約書の効力は認められにくいでしょう。
借主を強制退去させるには、貸主と借主の信頼関係の破綻となる証拠が必要であり、1カ月程度の家賃滞納のみでは、信頼関係の破綻とは認められない可能性があります。
ただし、家賃滞納以外のトラブルで借主を強制退去させるときに、賃貸借契約に明確な解除条件が記載されていて、契約解除に該当する行為をした場合「債務不履行」となり、強制退去が認められやすくなります。
《強制退去が認められやすくなる賃貸借契約の規定》
しかしながら、すべてのケースで賃貸借契約が認められるとは限りません。
軽微な契約違反の場合は、契約解除や強制退去が認められないこともあります。
借主が家賃を長期にわたって支払わない状態は、貸主と借主の信頼関係が破綻していると判断され、強制退去が認められます。
賃貸借契約とは貸主が部屋を提供し、借主がその対価として家賃を支払うという合意の下で成立しており、信頼関係を基にする継続契約です。
借主が貸主に対して「家賃支払いの義務」を怠った場合、信頼関係のバランスが崩れます。
借主の家賃滞納が長期化すれば、貸主側は「信頼関係が破綻した」と判断でき、契約を解除することが可能です。
ただし、貸主が家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除する場合、借主に対して家賃の支払いを督促する催告をする必要があります。
あまりにも悪質なケースでない限り、家賃の支払いを督促する催告をせず、賃貸借契約の解除や強制退去はできないので、注意が必要です。
上記の強制退去のケースにあたる場合は以下の記事で強制退去の手順について解説していますので参考にしてみてください。
関連記事:強制退去の流れを7つのステップで解説!注意点やかかる費用を確認
経営している賃貸物件で家賃滞納が発生しても、すぐに強制退去できません。
家賃滞納者が発生したときに貸主がするべき対処法は、次の3つです。
それでは1つずつ詳しく見ていきましょう。
家賃滞納者が発生したら、まずは手紙や電話で家賃の未納を通知しましょう。
借主に家賃の滞納歴がない場合「うっかり忘れてしまっていた」というような過失のケースがあるためです。
最初の通知では、家賃の支払い状況を確認するという姿勢で借主から話を聞き、滞納分の支払いスケジュールを約束させましょう。
家賃滞納に対する連絡は、早ければ早いほど効果的です。
借主に対し「ここの賃貸物件のオーナーは家賃滞納を許さない人である」という印象づけができれば、今後はスムーズな家賃の支払が期待できるでしょう。
それでも借主の家賃の支払いに応じない場合は、手紙で家賃支払いの督促を行います。
手紙には「期日までに支払いがない場合、連帯保証人に請求を行う」旨を記すとよいでしょう。
連帯保証人は、父母など近い親族の方に依頼している場合がほとんどですので、叱責や注意をされたくない、迷惑をかけたくない借主は、家賃の支払いが期待できます。
電話や手紙で家賃支払いを通知しても、音沙汰のないときは借主の自宅へ訪問し、直接交渉して家賃を請求しましょう。
もしかすると、借主は突然の病気や怪我による入院や自宅療養で電話に出られなかったり、手紙を受け取れなかったりする可能性もあるためです。
また、直接話し合うことで、借主が本当に支払う意思があるのか、それとも踏み倒そうとしているのかを態度や口調で判断することもできるでしょう。
ただし、貸主は借主が家賃を滞納しているからといって、過度な督促をしないよう注意が必要です。
貸金業法で禁止されているような違法な取り立ては、家賃の取り立てにおいても行わないようにしましょう。
このような違法行為をすると、借主から慰謝料や損害賠償を請求させられる恐れがあります。
貸主が借主に対し電話や手紙、直接訪問による督促および催告を行っても、一向に家賃の支払いに応じない場合は、契約解除を予告する内容証明郵便を送付しましょう。
内容証明郵便を利用することにより、貸主が家賃滞納している借主に対し、解除予告通知書を送付したことを郵便局が証明してくれます。
内容証明郵便は、強制退去の法的手続きをするときに、借主に対して督促を行ったことを示す有力な証拠となります。
家賃滞納者を強制退去させるには、法的手続きの流れに沿って、入念な準備が必要です。
貸主が法的手続きなしに家賃滞納者である借主を追い出そうとすると、自力救済となり、逆に借主から訴えられたり、刑事事件に発展したりする恐れがあります。
貸主にとって信頼していた借主による家賃滞納は、許し難いことで憤る気持ちも理解できますが、ここはぐっとこらえて、1つずつ対処していきましょう。
家賃滞納者を強制退去させる流れとその期間は次の通りです。
強制退去の流れ | 期間 |
---|---|
電話・手紙・訪問による家賃支払いの督促やトラブル改善の要求 | 家賃滞納から1カ月程度 |
連帯保証人、または家賃保証会社に連絡 | 家賃滞納から2カ月~3カ月 |
内容証明郵便による督促や注意 | 家賃滞納から約1カ月 |
内容証明郵便による賃貸借契約の解除通知 | 家賃滞納から約2カ月~3カ月 |
裁判所へ不動産明け渡し請求の申し立て | 家賃滞納から約2カ月~3カ月 |
明け渡し請求の訴訟 | |
強制退去執行の申し立て | 判決から約1カ月~2カ月 |
裁判所から立ち退きの催促 | |
強制退去の執行 | 強制執行の申立から 2~3ヶ月 |
借主の家賃滞納から強制退去までにかかる期間は5~7か月になります。
しかしながら、貸主と借主の状況によっては、強制退去までにかかる期間が長期化することもあります。
令和5年の「司法統計年報」のデータ
貸主が強制退去を申し立ててから、1年以上にわたり審理が続いている事案は、全体の10%にもなるのです。
このことから、借主の家賃滞納は強制退去に踏み切る前に解決するのがよいでしょう。
家賃滞納者を強制退去させるには、法的手続きや退去費用、家財道具の処分費用などさまざまな費用が必要で、貸主がすべて自分で行ったとしても30万円~50万円かかります。
家賃滞納者を強制退去させるのにかかる費用項目と金額は、次の通りです。
費用項目 | 費用相場 |
---|---|
内容証明費用 | 1,300円~ |
裁判費用 | 2万円~4万円 |
強制退去執行費用 | 30万円~50万円 |
上記の金額はあくまで目安です。
たとえば、強制退去執行にかかる費用は、賃貸物件の広さや家財道具の処分量によって金額が大きく変動し、100万円程度になることもあります。
弁護士に依頼する場合の費用も、依頼する事務所によって着手金・報酬金は大きく異なるため、お困り事があればお気軽に弁護士法人アクロピースにご相談ください。
アクロピースでは、初回相談60分無料で受け付けています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
強制退去にかかる費用は、最初に貸主が立て替えますが、民事執行法第四十二条に基づき、強制退去執行後に借主に請求できます。
民事執行法第四十二条
強制執行の費用で必要なもの(以下「執行費用」という。)は、債務者の負担とする。
出典:e-govポータル|民法
しかし、強制退去にかかる費用は必ずしも借主に支払ってもらえるとは限りません。
借主に支払い能力や差し押さえ可能な財産がない場合、支払うことができないためです。
また、滞納した家賃は強制退去執行の申し立てとともに借主に請求ができます。
しかし、滞納した家賃を請求したまま借主からの支払いが一度もないと、5年間で古いものから1カ月分ずつ時効が消滅するため注意が必要です。
滞納家賃を請求しているのにもかかわらず、一向に家賃が支払われない場合は、裁判を申し立てて判決をもらうことによって、10年間の時効期間が発生します。
貸主が家賃滞納者を賃貸物件から強制退去させるには、法的手続きが必要です。
法的手続きには労力や時間、お金がかかるため賃貸物件の経営に大きな影響が出てしまう恐れがあります。
賃貸物件の家賃滞納を未然に防ぐには、借主を入居させる際の対策が重要です。
それぞれ詳しく見てみましょう。
家賃滞納を未然に防ぐには、入居審査を適切に行い、入居者をしっかり選別することが大事です。
賃貸物件の管理会社が入居審査を行う場合は、入居審査の基準を大家が事前に伝えておき、配慮してもらうとよいでしょう。
入居基準で家賃滞納者を入れないために注目すべき項目は、次の通りです。
上記は必ず確認し、入居予定者が家賃を毎月支払える能力があるかを確認しましょう。
上記の項目以外にも、できる限り入居予定者と面会し、その人の人となりを確認するのも大事です。
近年は仲介会社に入居者との面談を任せてしまい、オーナー自身は一度も入居者と合わないケースが増えていますが、私はお勧めしません。
申し込み時点で少しでも引っ掛かりを感じるようであれば、オーナー自身が実際に会ってみて、信用できる入居者かどうかをしっかり見極めましょう。
入居時に家賃保証会社の加入を義務付けると、家賃滞納が起こっても滞納家賃や立ち退きにかかる費用を保証してもらえて、損害を防げます。
家賃保証会社を利用すると、家賃滞納が発生したときに、保証会社に連絡するだけで家賃を立て替えてもらえるためです。
家賃保証会社を利用するときには、賃貸保証料が必要になります。
初年度は家賃の0.5~1か月分、2年目以降は年間1万円~2万円の保証料を支払わなければなりません。
また、家賃保証会社との契約中に、家賃滞納が発生すると信頼度が下がり次年度の更新料が上がる場合があります。
また、家賃保証会社は会社により保証内容も異なりますから、どの家賃保証会社にするのかを仲介任せにするのではなく、各社のサービス内容をよく検討して選ぶことが大切です。
家賃の支払いを自動引き落としやカード払いにすることで、借主の過失による家賃滞納を防げます。
とくにカード払いは、借主の手元に現金がなくても、家賃回収ができるのでおすすめです。
ただし、クレジットカードの手数料を貸主側が負担する形になるため、家賃の回収金額が少なくなります。
借主の家賃滞納は、賃貸借契約の債務不履行に当たるため、貸主は契約解除をして、強制退去の執行手続きができます。
しかしながら、家賃滞納があったからといって、すぐに強制退去させることは難しく、労力と時間、そしてお金がかかります。
家賃滞納者が発生したら、強制退去は最後の手段として、まずは貸主ができる範囲で電話や手紙、訪問による家賃支払いの督促を行いましょう。
貸主にとって信頼していた借主からの家賃滞納は、許せず今すぐに問い詰めたいと思う貸主もいるでしょう。
しかしながら、借主に早く滞納家賃を支払ってほしいからといって、過度な督促や自力救済をすると借主から損害賠償を求められたり、刑事罪に問われたりする恐れがあります。
家賃滞納が2カ月を超えるようであれば、強制退去の手続きを見据えてまずは弁護士に相談しましょう。
借主の家賃滞納でお困りの方は、不動産トラブルに強い弁護士法人アクロピースにぜひご相談ください。
初回60分の相談は無料です。
家賃滞納する借主の強制退去の法的手続きはもちろんのこと、強制退去を避け、借主と交渉し家賃を支払わせるための法的アドバイスも行っています。
家賃滞納者に対する対応が遅くなり、貸主が大きな損害を被らないためにも、お早めにご相談ください。
弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。