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共有名義のリフォームで注意すべき点は?同意の範囲や贈与税について弁護士が徹底解説

「共有名義の不動産をリフォームしたいけど、勝手に進めても問題ない?」
「共有名義の不動産をリフォームする際、どのようなことに注意すればいい?」
共有名義の不動産をリフォームする際、上記のように悩む人は多いのではないでしょうか。
「費用は自分が出すから」と単独で進めると、後で大きなトラブルになる恐れがあります。最悪の場合、他の共有者から工事の中止や原状回復を求められるかもしれません。
この記事では、共有名義の不動産のリフォームに必要な「同意の範囲」や贈与税などの税務リスクを解説します。
弁護士 佐々木一夫共有者全員が納得し、法的に問題のないリフォームを実現させるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
共有名義の不動産のリフォームに悩んでいる方は、「弁護士法人アクロピース」にお任せください。
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共有名義の不動産のリフォームにおける同意のルール
共有名義の不動産に対する行為は、内容によって必要な同意の範囲が法律で決まっています。リフォームは内容次第で以下の3つに分類されます。
それぞれの行為の違いと、必要な同意の要件を正確に理解しておくことが重要です。以下、それぞれ具体的に解説します。
【単独で可能】保存行為
保存行為は、不動産の現状を維持するための行為を指します(民法第252条第5項)。共有者の一人が単独で判断し、実行することが可能です。
これは、不動産の価値を維持する行為は、他の共有者にとっても利益となると考えられるためです。費用の負担については、後で他の共有者に持分に応じた分を請求できます。
保存行為の具体例は、以下のとおりです。
- 雨漏りの修繕
- 壊れた窓ガラスの交換
- シロアリの駆除
- 給湯器など生活に必須な設備の修理
ただし、修繕の範囲が広範囲に及ぶ場合は注意が必要です。単なる修理を超え、設備のグレードアップや間取りの変更を伴うと判断されれば、単独では進められません。



「これは保存行為か」と迷った場合は、他の共有者に事前に相談するのが賢明です。
【持分価格の過半数で可能】管理行為
管理行為は、不動産の性質を変えない範囲で利用・収益化する行為です(民法第252条)。
共有者の「持分価格」の過半数の同意があれば実行できます。この際、「人数」の過半数ではなく、「持分」の過半数である点が重要です。
たとえば、3人共有でAさんが持分3分の2、BさんCさんが各6分の1の場合、Aさん一人の同意で足ります。
管理行為の具体例は、以下のとおりです。
- 短期の賃貸借契約
- 共有名義の空き家を民泊として貸し出す
- 共有地の管理規約を定めること
2023年4月に施行された改正民法により、管理行為の範囲が一部拡大されました。これにより、軽微な変更(形状や効用の著しい変更を伴わないもの)も管理行為に含まれます。
ただし、リフォームがこの「軽微な変更」にあたるかの判断は専門的な知識が必要です。基本的にリフォームは、次に紹介する「変更行為」に該当すると考えておくとよいでしょう。
出典:法務省民事局長|民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(民法改正関係)
【全員の同意が必要】変更行為
変更行為は、不動産の物理的な形状や性質を変更する行為です(民法第251条)。
共有者「全員」の同意がなければ、一切実行できません。一人でも反対すれば、法的にはリフォームを進めることは不可能です。



ほとんどのリフォームやリノベーションは、この変更行為に該当します。
変更行為の具体例は、以下のとおりです。
- 間取りの変更(壁の撤去・新設)
- 増改築
- 住宅設備の大幅なグレードアップ(例:ユニットバスの全面交換)
- 外壁や屋根の全面的な張り替え
- 不動産の売却や長期の賃貸借契約
変更行為の特徴は、不動産の価値や利用方法に重大な影響を与えることです。他の共有者の権利を侵害する可能性があるため、最も厳格な要件が課されています。
「費用は全額自分が出すから」という理由も通用しません。共有名義のリフォームは、必ず全員の合意を書面で取ってから進めましょう。
リフォームの同意が得られない・連絡が取れないときの対処法
共有名義のリフォームでは、共有者間の意見対立や連絡の途絶が障害となりがちです。
しかし、状況に応じた対処法が存在します。感情的にならず、冷静に法的手続きや交渉を進めることが大切です。
ここでは3つの典型的なケースと、その具体的な対処法を解説します。
以下、それぞれ詳細に解説します。
関連記事:共有名義にするメリット・デメリットは?共有名義の土地や不動産のトラブルについて弁護士が解説
ケース1|リフォームに同意してもらえない場合
他の共有者がリフォームに明確に反対しているのは、典型的なケースです。
まずは、反対する理由を丁寧にヒアリングすることから始めましょう。「費用負担が不安」「リフォームの必要性を感じない」など、理由によって説得の方法は変わります。
メリットを説明しても同意が得られない場合、「共有物分割請求訴訟」などの法的な手段を検討することが大切です。これは、共有関係そのものを解消するための裁判手続きを指します。
裁判所の判断により、以下のいずれかの方法で分割が命じられます。
| 現物分割 | 不動産を物理的に分ける(例:土地を分筆する) |
|---|---|
| 代償分割 | 共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者に持分相当額の金銭を支払う |
| 換価分割 | 不動産全体を売却し、売却代金を持分に応じて分配する |
リフォームを強行するのではなく、共有関係を解消して単独名義にしてからリフォームする、という解決を目指しましょう。
ケース2|費用負担の割合で揉めている場合
リフォームの必要性には同意しているものの、費用負担で揉めるケースも多いです。
原則として、リフォーム費用は各共有者が「持分に応じて」負担します(民法第253条)。しかし、特定の共有者だけがその不動産に居住している場合、他の共有者は負担に難色を示すことも珍しくありません。
この場合、費用負担の割合について、事前に明確な合意書を作成することが不可欠です。もし特定の人が持分以上の費用を負担する場合、後述する「贈与税」のリスクが発生します。
費用負担の交渉が難航する場合は、弁護士などの専門家を交えるのが有効です。専門家が中立的な立場で法的な整理を行うことで、公平な負担割合での合意形成をサポートできます。



合意に至らない場合は、ケース1と同様に共有物分割請求訴訟も選択肢となるでしょう。
関連記事:共有物分割訴訟とは?共有状態解消が必要なケースと手続き・費用を解説
ケース3|共有者の連絡先が不明・所在不明の場合
共有者の一部が所在不明または連絡不能の場合、リフォームの同意を得られません。
このままでは、全員の同意が必要な「変更行為」は一切不可能です。以前はこの問題の解決が困難でしたが、2023年4月の民法改正で対処法が整備されました。
所在不明の共有者がいる場合の対処法は、以下のとおりです。
| 裁判所への申立て | 他の共有者が裁判所に対し、「所在等不明共有者」の持分を取得する裁判を申し立てられます。 ただし、相続によって共有となった不動産の場合は、相続開始後10年を経過しないと持分を取得することはできません(民法第262条の2第3項) |
|---|---|
| 持分の取得 | 裁判所の決定に基づき、申立人が所在不明者の持分の時価相当額を供託することで、その持分を取得できます(民法第262条の2第4項)。 |
また、所在不明者の持分を第三者に譲渡する裁判も可能です(民法第262条の3)。いずれにせよ、戸籍や住民票の調査(不在証明など)を行い、法的な手続きを踏む必要があります。



手続きは非常に専門的なため、必ず弁護士に相談するようにしましょう。
共有名義のリフォームで同意を得やすくするコツ
共有者全員の同意は、共有名義リフォームにおける最大の関門です。単に「リフォームしたい」と伝えるだけでは、理解や協力を得ることは難しいでしょう。
同意を円滑に得るためには、事前の準備と丁寧なコミュニケーションが不可欠です。ここでは、合意形成をスムーズに進めるための3つのコツを紹介します。
以下、それぞれ詳しく解説します。
リフォームのメリットを明確に伝える
なぜ今リフォームが必要なのか、その理由とメリットを具体的に提示することが重要です。感情論ではなく、客観的なデータや事実に基づいて説明しましょう。
たとえば、「雨漏りがひどく、放置すれば建物の構造自体が危険になる」といった緊急性などを示すと効果的です。「耐震補強をすることで資産価値がこれだけ向上する」といった経済的メリットも有効でしょう。
提示すべき具体的な情報は、主に以下のとおりです。
- リフォームの必要性(老朽化・安全性・法律への適合など)
- リフォームによる資産価値の向上(査定額の変化など)
- 賃貸に出した場合の想定家賃の上昇
- 将来的な売却のしやすさ
複数のリフォーム業者から相見積もりを取り、計画の妥当性を示す資料として活用するのもよい方法です。客観的な根拠を示すことで、相手の不安や疑念を払拭しやすくなります。
費用負担と権利関係を明確にする
リフォームの同意において、「費用」は揉めやすい問題です。総額がいくらで、誰がどれだけ負担するのかを曖昧にしてはいけません。
まずは総工費の見積もりを正確に提示しましょう。そのうえで、法律上の原則である「持分に応じた負担」をベースに交渉します。
もし持分と異なる費用負担を提案する場合は、その理由と法的な整理(贈与税対策など)もセットで説明が必要です。「自分は住んでいるから多く負担する」といった提案をしましょう。
また、支払い時期や万が一追加費用が発生した場合の対処法など、細部まで決めて書面に残しておくことが大切です。
専門家を交えて中立的な意見を取り入れる
当事者同士の話し合いでは、過去の経緯や感情が絡み合い、冷静な議論が難しいことがあります。
とくに権利関係や税金が絡むと、議論はさらに複雑化します。このような場合は、早い段階で専門家を間に入れることが大切です。
相談すべき専門家の例は、以下のとおりです。
| 専門家 | 主な役割 |
|---|---|
| 弁護士 | 権利関係の整理、合意書の作成、法的手続きの代理 |
| 税理士 | 贈与税や相続税などの税務リスクの試算と対策 |
| 司法書士 | 持分の変更登記(代物弁済など) |
| 不動産会社 | リフォーム後の資産価値の査定、売却や賃貸の相談 |
専門家が中立的な第三者として介入することで、論点が綺麗に整理されます。各共有者にとってのメリット・デメリットが可視化され、感情論ではない合理的な判断がしやすくなるでしょう。
関連記事:共有物分割請求にかかる弁護士費用は?相場や具体例、安く抑える方法を解説
共有名義の不動産のリフォームに悩んでいる方は、「弁護士法人アクロピース」にお任せください。
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共有名義の不動産をリフォームする際は「贈与税」にも注意が必要
共有者全員の同意が得られても、まだ安心はできません。贈与税のリスクにも注意が必要です。
リフォーム費用の負担方法を間違えると、思わぬ高額な税金が課される可能性があります。なぜリフォームで贈与税が発生するのか、その仕組みを理解しておくことが重要です。
以下、具体的に解説します。
共有名義のリフォームで贈与税が発生する原因
共有名義の不動産リフォームで贈与税が発生する典型的な原因は、「持分と費用負担の割合が異なること」です。
不動産の価値は、リフォーム(特に変更行為にあたる大規模改修)によって増加します。この増加した価値は、本来、持分に応じて各共有者が取得するものです。
しかし、共有者の一部がリフォーム代を支払わなければ、リフォーム代を支払わなかった共有者が経済的利益を受けたこととなります。
たとえば、持分2分の1ずつを持つAさんとBさんがいるとします。
リフォーム費用1,000万円をAさんが全額負担しました。この場合、Bさんは費用を負担せずに、自分の持分(不動産の2分の1)の価値が500万円分増加したことになります。
税務上、このBさんが得た「500万円分の経済的利益」は、AさんからBさんへの贈与とみなされます。
共有名義のリフォームにかかる贈与税の計算方法
贈与税は、基礎控除110万円を引いた後の金額に対して課税されます。計算式は以下の通りです。
(贈与されたとみなされる額-基礎控除110万円)×税率-控除額=贈与税額
税率は、贈与された額(課税価格)によって異なります。たとえば、前述のケースでBさんがAさんから500万円の贈与を受けたとみなされた場合(他に贈与がないと仮定)の計算は、以下のとおりです。
- 課税価格:500万円-110万円=390万円
- 税率・控除額:「一般贈与財産用※」の税率表より、税率20%・控除額25万円
- 贈与税額:(390万円×20%)-25万円=53万円
※兄弟間や夫婦間など直系尊属以外からの贈与や、直系尊属から18歳未満の子・孫への贈与などの場合に適用される「一般贈与財産用」の税率表です。
結果、リフォーム代を支払っていないBさんは、53万円の納税義務を負うことになります。
共有名義のリフォームで贈与税が発生するパターン例
贈与税のリスクは、特定の関係性や状況下で特に発生しやすくなります。どのようなケースが危険なのか、具体的なパターンを3つ見ていきましょう。
これらの例は、税務調査でも指摘されやすい典型的なパターンです。自身の状況が当てはまらないか、事前に確認してください。
夫婦(持分2分の1ずつ)で、費用を片方が全額負担した場合
夫婦共有名義の自宅リフォームは、非常に多く見られるケースです。
たとえば、持分は夫婦で2分の1ずつなのに、夫の収入(または夫のローン)だけでリフォーム費用1,000万円を全額支払ったとします。
この場合、夫は妻の持分(2分の1)に相当する500万円分のリフォーム費用も負担したことになります。「夫から妻へ500万円の贈与があった」とみなされ、妻は(500万円-110万円)×税率で計算された贈与税を納めなければなりません。
夫婦間の資金移動であっても、贈与税の原則は適用されます。「夫婦の財布は一つ」という感覚で安易に処理すると、後に痛い目を見ることになると覚えておきましょう。
親名義の家で子がリフォーム費用を負担した場合
親が単独で所有する実家(=子の持分はゼロ)に、子が同居しているとします。
子が親孝行のつもりで、家のリフォーム費用500万円を全額負担した場合、親は一切リフォーム費用を負担せず、自分が100%所有する家の価値が500万円上がったことになります。
これは「子から親へ500万円の贈与があった」と判断されるのが特徴です。
結果、親が贈与税の納税義務者となります。もし親に納税資金がなければ、子がさらに資金援助することになり、二重の負担になりかねません。



親名義の不動産に子がお金を出すリフォームは、慎重な計画が必要です。
共有持分と異なる割合で費用を負担した場合
持分と費用負担の割合が「完全に一致していない」場合、すべて贈与税のリスクを負います。
たとえば、兄(持分3分の2)と弟(持分3分の1)で共有する不動産があります。この場合、リフォーム費用900万円を、兄が600万円、弟が300万円負担すれば問題ありません(持分通りの負担)。
しかし、これを「半分ずつ」つまり兄450万円、弟450万円で負担したとします。弟は本来300万円の負担でよかったのに、450万円支払いました。逆に兄は600万円負担すべきところ、450万円しか払っていません。
この差額150万円は「弟から兄への贈与」とみなされます。兄は(150万円-110万円)=40万円に対して贈与税の納税が必要です。
このように、少しのズレでも基礎控除を超えれば課税対象となるため、厳密な計算が求められます。
共有名義のリフォームで贈与税を回避・軽減する対策方法
贈与税のリスクは、事前の対策によって法的に回避・軽減することが可能です。リフォーム工事の「契約前」または「実行後すぐ」に、以下の対策を打ちましょう。
どの方法が最適かは、共有者間の関係性や不動産の状況によって異なります。それぞれについて理解を深め、専門家と相談のうえで適切な方法を選択しましょう。
対策1|リフォーム前に持分割合を変更して費用負担割合と合わせる
リフォーム前に不動産の持分登記を変更し、費用負担割合と持分割合を合わせるのは、シンプルで根本的な解決策です。
たとえば、夫がリフォーム費用を全額負担する予定なら、リフォーム前に不動産名義を妻から夫へ移転(贈与または売買)し、夫の単独名義にしておきます。そうすれば、夫が自分の所有物(単独名義)に費用をかけることになるため、贈与税は発生しません。
ただし、この方法には注意点があります。
まず、共有持分を移転する際に、別の税金(不動産取得税、登録免許税)が必要です。また、共有持分を贈与で移転する場合、その「不動産の共有持分」自体に贈与税がかかる(配偶者控除が使える場合もある)可能性があります。



共有者間の合意も必要なため、共有者が多い場合は手続きが大変になるでしょう。
関連記事:共有名義の不動産を単独名義に変更するには?手続きの流れや費用を解説【弁護士監修】
対策2|リフォーム後に「代物弁済」で調整する
リフォーム後に「代物弁済」で調整する方法も一つです。
持分割合以上の費用を負担した人が、費用を負担しなかった(または少なく負担した)人に対して、本来その人が負担すべきだった金額の「貸し付け」があったと構成します。
そして、その「貸し付け金」を返済する代わりに、費用を負担しなかった(または少なく負担した)人の不動産持分の一部を負担した人に譲渡する方法です。
具体的な流れは、以下のとおりです。
- 共有者Aが共有者Bの負担分500万円を立て替える
- AとBの間で「AはBに500万円を貸した」という契約を結ぶ
- BはAへの借金返済の代わりに、不動産持分の一部(500万円相当)をAに譲渡する
- 法務局で持分移転登記を行う
この方法なら、贈与税はかかりません。ただし、共有持分を譲渡するB側に「譲渡所得税」がかかる可能性があります。また、持分移転の登録免許税も必要です。



手続きが複雑なため、一度弁護士や税理士に相談してみることをおすすめします。
対策3|金銭消費貸借契約書を作成して「貸付」にする
金銭消費貸借契約書を作成して「貸付」にする方法は、不動産の共有持分を変更したくない場合に有効です。
対策2と同様に、多く負担した人から少なく負担した人への「貸付(金銭消費貸借契約)」として処理し、金銭でもって借金を返済します。
この際、共有者A(多く負担)と共有者B(少なく負担)の間で正式な契約書を作成しなければなりません。契約書に明記すべき項目は、以下のとおりです。
- 貸付日
- 貸付金額(共有者Bが本来負担すべきだった額)
- 返済期日
- 返済方法(一括、分割など)
- 利息
この契約書を税務署に提示できれば、贈与ではなく「貸付」であると主張できます。ただし、契約書を作成しただけでなく、実際に返済が行われている実績(銀行振込の記録など)が重要です。
返済実態がないと、結局は贈与(債務免除)とみなされるリスクが残ります。
対策4|贈与額を年間110万円の基礎控除内に収める
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。もし、持分割合と費用負担のズレによって生じる「経済的利益」の額が年間110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要です。
たとえば、共有者Aから共有者Bへの贈与とみなされる額が100万円だった場合、基礎控除の範囲内なので課税されません。
また、工事を年またぎで分割する方法も考えられます。200万円の贈与が発生する工事を、年末と年始に分けて契約・支払いを実行する方法です。
1年目に100万円、2年目に100万円の贈与と分散できれば、両年とも基礎控除内に収まります。ただし、工事の契約実態が伴っている必要があり、単なる支払いの分割は認められない可能性がある点には注意が必要です。



事前に専門家に相談し、活用できるかを確認することをおすすめします。
共有名義の不動産をリフォームする具体的な流れ
共有名義のリフォームは、法務・税務のリスクを回避するため、慎重な段取りが必要です。単独名義の場合と異なり、「共有者との合意形成」というステップが加わります。
ここでは、トラブルを未然に防ぐために重要な具体的な流れを4ステップで解説します。
ステップ1|リフォーム計画を策定する(目的・規模・予算の明確化)
まずは、リフォームの具体的な計画を立てます。以下の項目を参考に、なぜリフォームが必要なのか、どこまで手を入れるのか、費用はいくらかかるのかを明確にしましょう。
- 目的:老朽化対策・耐震補強・二世帯住宅化・バリアフリー化など
- 規模:間取り変更の有無・修繕の範囲など
- 予算:見積総額・資金調達の方法(自己資金、ローン)など
この段階で、複数のリフォーム業者から相見積もりを取得しましょう。客観的な見積書があることで、後の共有者への説明がスムーズになります。
この計画が曖昧なままだと、共有者も同意の判断ができません。「なんとなく綺麗にしたい」ではなく、具体的なプランを提示することが大切です。
ステップ2|共有者全員に相談して同意をもらう
ステップ1で策定したリフォーム計画書と見積書をもとに、共有者全員に相談し、同意を求めます。リフォームの大部分は「変更行為」にあたるため、原則として「全員」の同意が必要です。
同意は口頭ではなく、必ず「書面」で取得しましょう。
相談の際は、リフォームの必要性やメリット(資産価値向上など)を丁寧に説明します。反対意見が出た場合は、その理由を傾聴し、懸念点を解消する努力が必要です。
連絡が取れない共有者がいる場合は、この段階で弁護士に相談し、法的手続き(所在調査や裁判手続き)を検討しましょう。
ステップ3|費用負担割合と贈与税リスクを確認する
リフォームの同意が得られたら、次に「お金」の詳細を詰めます。総費用を誰が・どの割合で負担するのかを決定しましょう。
原則は「持分割合に応じた負担」です。もし持分割合と異なる負担割合にする場合は、贈与税のリスクが発生することを全員が認識しなくてはなりません。
このステップは税務の専門知識が必要です。費用負担のルールを決める前に、必ず税理士などの専門家に相談し、最適な節税対策のアドバイスを受けましょう。
ステップ4|同意の内容を書面化する
すべての条件(リフォーム内容・費用負担・贈与税対策)について合意に至ったら、その内容を「リフォーム同意書」または「合意契約書」として書面化します。これが、後のトラブルを防ぐ重要な証拠となります。
同意書に盛り込むべき主要項目は、以下のとおりです。
- 対象となる不動産の特定(登記簿通りに記載)
- 実施するリフォームの具体的な内容(見積書や工事仕様書を添付)
- リフォームの総費用(上限額)
- 各共有者の費用負担額と負担割合
- 費用負担の方法と時期
- 持分割合と異なる負担をする場合の取り決め(貸付、代物弁済など)
- 追加費用が発生した場合の対処法



書面には、共有者全員が署名・押印を行いましょう。
この同意書の作成は、弁護士などの専門家に依頼するのが安全です。法的に不備のない契約書を作成してもらうことで、将来の紛争リスクを最小限に抑えられます。
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共有名義のリフォームに関するよくある質問
共有名義のリフォームは、権利関係や税務が複雑に絡むため、多くの疑問が生じます。ここでは、特に相談の多い3つの質問について簡潔に回答します。
個別の事情によって結論が変わる可能性もあるため、あくまで一般論として参考にしてみてください。
リフォーム費用は誰がどのくらい負担すべき?
原則として「持分割合に応じて」負担します。民法上、リフォームが「管理行為」であるか「処分行為」であるかにかかわらず、各共有者がその持分割合に応じて負担することになります(民法第253条)。
たとえば、共有者Aの持分割合が3分の2、共有者Bが3分の1であれば、リフォーム費用900万円のうちAさんが600万円、Bさんが300万円を負担するのが法律上の原則です。
ただし、これは当事者間の合意によって変更可能です。「Aさんだけが住んでいるからAさんが全額負担する」といった取り決めもできます。
その場合は、贈与税のリスクや将来の売却時(譲渡所得)の計算に影響が出るため、必ず合意内容を書面に残しておきましょう。
贈与税の申告を忘れたらどうなる?
贈与税の申告を忘れた場合は、税務調査で指摘されてペナルティが課されます。
贈与税の申告漏れは、税務署が不動産登記の変更履歴や工事の記録を調査する際、または将来の相続税調査の際に発覚することが多いです。
申告漏れが発覚した場合、本来納めるべきだった贈与税額に加え、以下のペナルティが課されます。
- 無申告加算税:申告しなかったことに対するペナルティ(税額に対し最大30%)
- 延滞税:納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じた利息
- 重加算税:意図的に財産を隠蔽したとみなされた場合の重い罰金(最大50%)
持分割合と異なる費用負担をした場合は、必ず弁護士や税理士に相談して適切な申告や対策を行いましょう。
所在不明の共有者がいる場合、リフォームは不可能?
リフォームには全員の同意が必要なため、これまでは所在不明者がいると手詰まりでした。しかし、2023年4月の改正民法により、裁判所の手続きを経ることで対処できるようになっています。
具体的な対処法の流れは、以下のとおりです。
- 裁判所に申立て、所在不明の共有者の共有持分を取得(買い取る)する許可を得る
- または、所在不明者の共有持分を第三者に譲渡する許可を得る
- (共有持分を取得した場合)残りの共有者の同意(または持分過半数)でリフォームを実行する
この手続きは、弁護士による戸籍などの調査と裁判所への申立てが必須です。所在不明者がいるからと諦めず、まずは不動産問題に強い弁護士に相談してください。
まとめ|共有名義のリフォームについて理解を深め、適切に進めよう
共有名義の不動産リフォームは、単独名義の家を直すのとはまったく異なります。法的な制約が多く、手続きを一つ間違えれば共有者間の深刻なトラブルや、高額な贈与税の発生につながりかねません。
計画の初期段階で共有者全員とオープンに話し合うことが大切です。適切な手順を踏むことで、共有者全員が納得する、安全で価値のあるリフォームが実現できます。
また、少しでも不安なことやトラブルを抱えているなら、弁護士などの専門家に相談することが大切です。無料相談を利用し、気軽に問い合わせてみてください。
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