家賃滞納による強制執行とは?立ち退き手続きの流れや費用、期間などを解説

家賃滞納による強制執行とは?立ち退き手続きの流れや費用、期間などを解説

家賃を滞納している賃借人を立ち退かせるには、強制執行が必要です。

賃貸物件のオーナーにとって、家賃滞納者への対応は頭を抱える問題の1つと言えるでしょう。

この記事では、家賃滞納者への強制執行を検討している方に向けて、次の内容について詳しく解説しています。

最後まで読めば、強制執行までの流れや手続き完了までの期間、費用などがわかるので、ぜひご覧ください。

家賃滞納者への対応についての疑問点やトラブルは、不動産問題に強い弁護士法人アクロピースにお気軽にご相談ください。

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目次

家賃滞納の賃借人を強制執行で立ち退きさせるには?

家賃滞納

家賃を滞納した賃借人を立ち退かせるには、法律に沿った手続きが必要です。

勝手に鍵を替えたり、法的手続きを経ずに追い出したりすると、賃貸人が逆に損害賠償を請求されたり、刑事責任を問われたりする可能性があります

家賃滞納者を立ち退きさせる最終的な手段は、明け渡しの強制執行です

強制執行するには、前提として債務名義が必要となります。

債務名義とは、強制執行の基礎となる文書で、具体的な例としては確定判決や執行認諾文言付きの公正証書などが挙げられます。

つまり、家賃滞納者を立ち退かせるには、民事裁判で債務名義を取得したうえで、強制執行の申し立てをする必要があるのです。

次の見出しからは、債務名義を取得するまでの流れと強制執行の流れについてより詳しく解説します。

家賃滞納者の強制執行については、次の記事でも解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:家賃滞納者は強制退去できない?家賃を督促する流れや滞納を未然に防ぐ対策を紹介

明け渡しの強制執行までの手続きの流れ

立ち退き

明け渡しの強制執行のためには、前提として債務名義を取得する必要があります。

民事訴訟で債務名義を取得するまでの流れは、次のとおりです。

家賃の滞納があった場合は、すぐに民事訴訟を提起するのではなく内容証明を送付して賃借人と交渉するのが一般的です。

交渉で問題が解決すれば、その後の民事訴訟や強制執行は必要なくなります。

ここでは、それぞれの段階の手続きについて詳しく解説します。

内容証明郵便の送付

賃借人による家賃の滞納が続いたら、まずは内容証明郵便で未払い賃料の請求の催告の通知催告期間内に支払いがなされなければ賃貸借契約を解除する旨通知します

内容証明郵便とは、文書の内容や差出日などを郵便局が証明してくれるサービスのことです。

この段階で内容証明郵便を送付しておけば、民事訴訟になった場合の証拠として利用できます。

家賃の滞納が1か月だけでは賃貸借契約を解除することはできません

賃貸借契約は、賃貸人と賃借人との信頼関係に基づく契約なので、信頼関係を破壊しない程度の債務不履行では賃貸借契約の解除は認められないのです(信頼関係破壊の法理)。

信頼関係の破壊が認められている裁判例では、少なくとも3か月以上の家賃滞納があることが多いです

家賃滞納が3か月以上続いたときには、内容証明郵便を送付して強制執行に向けての手続きを開始します。

家賃滞納があった場合の対策については、次の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:家賃滞納で1ヶ月遅れが生じた場合の対処法!NG行為や予防策も紹介

賃借人との交渉

内容証明郵便を送付したあとは、賃借人と賃料支払い、立ち退きの交渉を行います

家賃滞納者は、金銭的な余裕がない場合がほとんどで、賃料の支払いを優先すると交渉が長期化する可能性が高いでしょう。

民事裁判や強制執行にかかる期間や費用を考慮して、賃料の支払方法や金額について一定の譲歩をするのも交渉を成立させるための1つの方法です。

賃借人が交渉自体に応じてくれない場合や連絡すら取れない状況のときは、すぐに訴訟手続に移行します。

賃借人が不要な物を残して勝手に退去しているケースもありますが、その際にも勝手に荷物を処分することはできず、強制執行の手続きを進めなくてはなりません

民事訴訟の提起

賃借人との交渉が決裂した場合や交渉すらできない場合は、法的手段に移行します。

賃借人に賃料の支払いを求めるだけであれば、少額訴訟や支払督促という手段もあります。

しかし、明け渡しを求めるのであれば、民事訴訟の提起が必要です

民事訴訟では、賃料の支払いと建物の明け渡しを請求します。

賃料の滞納を理由とする民事訴訟においては、賃借人に反論の余地がないため、証拠が揃っていれば訴訟提起から平均して2〜3か月程度で判決を取得できます

建物明け渡し、賃料請求の民事訴訟で必要となる証拠は、次のとおりです。

  • 賃貸借契約書
  • 内容証明郵便(賃料請求、賃貸借契約の解除を内容とするもの)
  • 明け渡しを求める建物の全部事項証明書
  • 建物の固定資産税評価証明書 など

明け渡しの強制執行の流れ

強制執行

債務名義(判決)を取得したら、いよいよ明け渡しの強制執行に移行します。

明け渡しの強制執行の流れは、次のとおりです。

判決を取得してから、強制執行による残置物の保管期間が終了してすべての手続きが完了するまでには、3か月ほどかかります。

ここでは、それぞれの手続きの内容や手続きにかかる期間について詳しく解説します。

強制執行の申し立てをする

強制執行の申し立てをするには、次の3つの書類が必要です。

  • 確定判決の正本
  • 執行文
  • 送達証明書

民事訴訟の判決は、訴状が送達されてから2週間で確定します。

判決が確定したら、判決を出した裁判所で執行文付与の申し立てを行います。

送達証明書は、被告に債務名義が送達されたことを証明する書類です。

送達証明書についても、判決を出した裁判所で送達証明申請を行うことで取得できます。

必要書類が揃ったら、申立書を作成して物件の所在地を管轄する地方裁判所に強制執行の申し立てを行います。

申し立ての際には、予納金の納付が必要です。

申し立てから数日後には、執行官と催告日や履行補助者についての打ち合わせが行われます。

催告日は、執行官との打ち合わせから1~2週間後に指定されます。

履行補助者とは、強制執行で荷物の運び出しや保管を行う業者のことです。

執行官による明け渡しの催告

明け渡しの催告とは、賃借人に強制執行による引き渡し期限を伝えて、執行官が建物の状況を確認するための手続きです。

手続きにかかる時間は30分ほどで、建物への公示書(当該建物が強制執行の対象となることを示す書類)の貼付と賃借人への「催告書」の交付によって手続きは完了します。

催告書は、引き渡し期限と強制執行の実施日が記載された書類です。

引き渡し期限は催告日から1か月後となっており、強制執行の実施日は引き渡し期限の数日前に設定されます。

催告日には、賃借人が鍵を開けてくれない場合や不在の場合に備えて鍵開けの業者を同行させるのが通常です。

業者の同行や作業にかかる費用は、民事執行法上、債務者の負担とされておりますが、債務者が負担することは現実的には難しいと考えられますので、賃貸人が負担せざるを得ないことが多いです。

明け渡しの断行

明け渡しの断行とは、建物から荷物を運び出し、賃借人の占有を強制的に排除して建物の明け渡しを実現する手続きのことです

明け渡しの断行は、引き渡し期限の数日前に行われます。

明け渡しの断行では、執行官の立ち会いのもと、履行補助者(業者)による荷物の運び出し、鍵の交換が行われます

運び出した荷物の保管場所を用意できないときは、業者に保管の依頼もしなければなりません。

運び出した荷物は、賃貸人が取り戻しにくる場合に備えて、約1か月間保管する必要があります。

運び出した荷物の中に価値のある物があれば、その場で差し押さえて未払い賃料や執行費用の支払いに充てることも可能です。

民事訴訟の判決から強制執行が完了するまでにかかる期間をまとめると、次のようになります。

  • 判決の確定まで 2週間
  • 申し立てから明け渡しの催告まで 2週間ほど
  • 明け渡しの断行まで 1か月ほど
  • 荷物の保管 1か月ほど

強制執行で追い出された賃借人がどうなるかについては、次の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:家賃滞納して強制退去のその後はどうなる?荷物の行き先と費用の支払いを解説

強制執行にかかる費用

費用

強制執行にかかる費用は、手続きにかかる費用と弁護士費用に分けられます。

ここでは、それぞれの費用の内訳を解説します。

手続きにかかる費用

強制執行にかかる費用は、次のとおりです。

  • 予納金 7万円ほど
  • 明け渡しの催告で鍵業者に支払う費用 3万円から5万円ほど
  • 明け渡しの断行で業者に支払う費用 数十万円
  • 荷物の保管にかかる費用 10万円ほど

予納金は、執行官の旅費や手数料に充てられるもので、残金は手続き終了後に返還されます。

断行で業者に支払う費用は、建物の規模によって異なります。

規模ごとの費用の目安は、次のとおりです。

  • ワンルームマンション  10万円から20万円ほど
  • ファミリーマンション  30万円から40万円ほど
  • 一戸建て        50万円から100万円ほど

弁護士費用

明け渡しの強制執行を弁護士に依頼する際は、家賃滞納者への内容証明送付から強制執行までを依頼するケースがほとんどです。

弁護士費用は、着手金と報酬金に分けられています。

交渉から訴訟までの着手金の相場は、20万円から30万円ほどです。

その後、強制執行に移行する際には、追加で着手金が発生することが多いです。

建物明け渡しの報酬金の相場は、20万円から30万円ほどです。

賃料を回収できた場合には、回収額の25%ほどが成功報酬となります。

家賃滞納の強制執行を弁護士に依頼するメリット

メリット

家賃滞納の強制執行を弁護士に依頼する場合、着手金と報酬金を合わせて50万円ほどかかります。

費用をかけてでも弁護士に依頼するメリットとしては、次の2つが挙げられます。

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

内容証明の送付から強制執行までの手続きをすべて任せられる

家賃滞納の強制執行のためには、法律に沿って段階的に手続きを進める必要があります。

手続きを進めるには、時間と労力だけでなく専門的知識も求められるため、自分自身で手続きを進めるのは難しいでしょう。

民事訴訟や強制執行では、訴状や申立書、証拠書類の準備も必要です。

強制執行の申し立てをしてからも、執行官との打ち合わせや催告、断行の立ち会いなどに時間を取られます。

弁護士に手続きを依頼すれば、内容証明の送付から強制執行までの手続きを一任できるため、自分自身で時間と労力をかけることなく、スムーズに手続きを進められます。

手続きにかかる費用を抑えられる可能性がある

弁護士に手続きを依頼すれば、強制執行までに問題が解決して結果として手続きにかかる費用を抑えられる可能性があります。

家賃の滞納を続ける賃借人であっても、弁護士相手なら交渉に応じてくれる可能性があります。

交渉で問題が解決すれば、強制執行は必要ありません。

強制執行では、業者に支払う多額の費用がかかるため、強制執行なしで問題を解決できれば、手続きにかかる費用を大きく抑えられます

手続きが早い段階で終われば、手続き費用だけでなく弁護士費用も抑えられるでしょう。

強制執行が必要な場合でも、弁護士が安い金額で対応できる業者を紹介してくれることもあります。

まとめ

今回は、家賃滞納者に対する明け渡しの強制執行の手続きを理解するために、次の内容について解説しました。

  • 明け渡しの強制執行の前提として民事訴訟で債務名義を取得する必要がある
  • 明け渡しの強制執行は明け渡しの催告、断行という流れで行われる
  • 強制執行するには少なくとも数十万円の費用がかかる
  • 弁護士に依頼すると結果として手続き費用を抑えられる可能性もある

家賃滞納者への対応でお悩みの方は、弁護士までご相談ください。

早めに手続きを進めることで、物件を寝かせてしまう時間も短くなりますし、強制執行に至るまでに解決できる可能性も高くなります。

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この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

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