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家賃を滞納してしまった方や家賃の支払いが厳しい方は、家賃が滞ることでどのようなリスクが発生するかご存知でしょうか?
家賃滞納が起きることで、日常生活に支障をきたすことも考えられるため、リスクや対応策を知っておかなければなりません。
「家賃の支払いに困っている」「家賃を滞納してしまってトラブルが発生しそう」という方は、この記事を参考に対処方法を検討しましょう。
家賃を滞納してしまった場合に「強制退去させられるのではないか」と心配になることもあるでしょう。
強制退去の可能性が高いのは、一般的に3ヵ月以上だというのが1つの目安です。
1ヵ月〜2ヵ月の滞納はケガや病気、家庭の事情などの背景があるケースが多いため、強制退去までには至らないことが多いのです。
しかし、家賃滞納が3ヵ月を越えると「オーナーと賃借人との間の信頼関係が崩れた」と判断されることが多くなります。
3ヵ月以上の家賃滞納は、一時的な支払い困難ではなく「持続的な債務不履行の根拠」となり得るのです。
とはいえ、1ヵ月〜2ヵ月の家賃滞納が許されるわけではありません。
家賃滞納は次の章で紹介するリスクが発生するおそれがあるため、滞納が発生してしまった場合はすみやかに対処することを心がけましょう。
以下の記事では、家賃滞納が起きてしまってから強制退去までの流れを解説しています。
気になる方は、あわせてチェックしてください。
関連記事:家賃滞納して強制退去のその後はどうなる?荷物の行き先と費用の支払いを解説
家賃滞納には以下のリスクが考えられます。
家賃滞納によって起こり得るリスクを見ていきましょう。
家賃滞納の1つ目のリスクは、連帯保証人や賃貸保証会社に通知されることです。
連帯保証人とは、契約者と連携して家賃の支払い義務を持つ人を指し、契約者の親族がなることが多いです。
また、賃貸保証会社とは、契約者が家賃を滞納したときにその立て替えを行う会社で、連帯保証人が立てられないケースなどで利用されます。
家賃滞納が発生して連帯保証人である親族に通知されることで、心配をかけたり経済的負担をかけたりしてしまいます。
また、家賃保証会社が家賃を立て替えたからといって、賃借人の支払い義務が消えるわけではありません。
その分の家賃だけでなく、立て替え手数料も賃借人に請求されるため、余分な費用が発生してしまいます。
家賃滞納による遅延損害金が発生するのも家賃滞納のリスクです。
遅延損害金とは、家賃を滞納したことでペナルティとして支払う損害賠償金です。
家賃の遅延損害金の上限は、利息制限法第4条で年14.6%と定められています。
たとえば、賃貸借契約で遅延損害金の利率が年14.6%と定められていて、家賃8万円を1ヵ月(30日)滞納した場合、遅延損害金の計算式は以下のとおりになります。
80,000(円)✕0.146(14.6%)÷365(日)×30(日)=960(円) |
この場合、家賃滞納により960円の遅延損害金が発生するという結果となりました。
年14.6%という利率は、一般的なカードローンやクレジットカードのショッピング枠と同等の高金利のため、家賃が高くなったり滞納期間が長くなったりするほど大きな金銭的負担がかかってしまいます。
家賃滞納によって賃貸保証会社が家賃を立て替えることで、信用情報機関に事故情報が登録される可能性が考えられます。
信用情報とはローンやクレジットカードなどの支払い状況に関する情報のことです。
信用情報機関に滞納の事故情報が登録されると、以下の影響を受けるおそれがあります。
このように、信用情報機関に事故情報が掲載されると日常生活に支障が出ることがあります。
家賃滞納は、裁判(明け渡し請求訴訟)を起こされるリスクもはらんでいます。
明け渡し請求訴訟とは、オーナーが賃借人に物件を明け渡すことを求める訴訟で、オーナーが賃貸借契約の解除を賃借人に通知しても立ち退かなかった場合に行われます。
裁判を起こされると、裁判所への出頭や必要な書類の提出などの労力がかかり、裁判所へ納める費用も負担しなければなりません。
裁判を回避するためには、「催告書」という最終通告の書面が届いた時点で滞納分の支払いを行っておく必要があります。
家賃滞納が起こってしまいそうな場合は、以下の対応策を検討してみてください。
それぞれの対応策を詳しく解説します。
家賃の支払いが遅れそうなときは、できるだけ早くオーナーや管理会社へ相談しましょう。
正直に家賃支払いが難しい旨を伝えれば、理解を得られるかもしれません。
もし一時的な理由で滞納しそうな場合であれば、支払いを待ってもらえたり、滞納分の分割支払いに応じてくれたりする可能性があります。
何の連絡もせずに滞納した場合、オーナーや管理会社に不信感を抱かれ、厳しい督促や法的手段を取られるかもしれません。
家賃滞納が発生しそうな場合には、誠実な態度で解決策を模索したいという姿勢を見せることが重要です。
それでも家賃を用意できない場合は、家族や友人から借り入れることも検討してみてください。
家賃が支払えないからといって、消費者金融や金融機関からお金を借りてしまうと、高い金利によりかえって生活が苦しくなってしまうことが考えられます。
ただし、家族や友人からの借り入れを継続的に続けていると、信頼関係が崩れることにつながりかねません。
家族や友人からの借り入れは、あくまで一時的な理由で家賃が支払われないケースに限定しましょう。
どうしても家賃の支払いが困難になった場合は、公的支援制度が利用できる可能性があります。
条件を満たすことで、自治体から家賃の補助を受けることが可能です。
たとえば、「住宅確保給付金」という制度があります。
これは「離職や廃業から2年以内」や「収入が基準額以下」の方などを対象に、家賃補助を支給する制度です。
また、仕事が見つからない、病気や怪我などで働けないという方は、生活保護制度の利用も検討してみましょう。
生活保護制度とは、さまざまな理由により生活に困窮している方に対して、最低限の生活を保障する国の制度です。
この他にも状況によって受けられる制度があるかもしれないため、公的支援を検討する方は自治体へ相談することをおすすめします。
家賃を支払えない理由が借金の場合、債務整理で借金を整理する選択肢も考えられます。
債務整理には、主に以下の3つの種類があります。
任意整理とは、債権者と直接交渉を行い返済期間や返済金額を再設定して完済を目指す方法で、個人再生とは裁判所に介してもらい返済計画を立て直し借金の一部を免除してもらう方法です。
また、自己破産とは裁判所による関与のもと借金の支払いをすべて免除する方法で、車や住宅などの高額な財産はすべて処分されます。
債務整理を行うことで家計の負担が軽減される可能性があります。
ただし、破産や個人再生の場合、支払不能(支払能力を欠くために、すでに弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済することができない状態)に陥った後は滞納した家賃を支払うことができなくなるので、家賃滞納を理由に賃貸借契約が解除され、出ていかなければならなくなってしまう可能性が高いです。
そのため、それまでどおり住み続けたいと考えるのであれば、支払不能になる前に家賃の滞納を解消しておく必要があります。
債務整理には法的手続きが必要なケースがあるため、検討する際は弁護士に相談するのがおすすめです。
ここまで家賃滞納のリスクや対処方法を紹介してきましたが、実は家賃には時効があります。
ここからは、時効が消滅する期間や成立する条件について解説します。
家賃を含め、債権は、権利を行使することができることを知った時から5年行使しないとき、時効によって消滅すると定められています(民法166条1項1号)。
つまり、家賃を支払わないまま5年が経過すると、賃借人は時効を主張できることになるのです。
なお、民法166条1項2号では、債権の時効消滅の事由として、権利を行使することができる時から10年間行使しないとき、と定められていますが、大家が賃料債権を行使できることを知らないという状況は考えにくいため、原則5年と考えていいでしょう。
賃料債権が消滅する起算日は、それぞれの家賃の支払期限の日です。
たとえば、家賃の支払期限の日が令和6年11月30日の場合、5年後である令和11年11月30日が時効の満了する日になります。
もし1年分の家賃を滞納している場合、5年後に1年分の家賃が同時に時効になるわけではなく、支払期限が古い家賃から順番に時効となります。
家賃の時効を考える際は、この「5年」という数字や消滅時効の起算日をしっかり理解しておきましょう。
家賃の時効が成立する条件は、以下の4点です。
それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。
時効が成立する1つ目の条件は、家賃滞納から5年が経過することです。
家賃を5年以上支払っておらず、期間中に時効の中断がされていないことが条件です。
時効が中断されるとその時点から5年経過しなければならないため、さらに長い期間が必要になります。
滞納した家賃を一切支払っていないことも条件の1つです。
時効のポイントとして「債務の承認」が重要となり、賃借人に家賃を支払う意思があることが認められると時効が中断するのです。
たとえば、家賃の一部を支払った場合に時効が中断します。
令和6年10月に滞納した家賃の一部を令和6年12月に支払った場合、残りの滞納分の時効が成立するのは令和11年12月になります。
3つ目の条件は、賃借人がオーナーから家賃の請求を受けていないことです。
オーナーが家賃滞納者に対して家賃の請求をすることで、消滅時効の猶予や更新がなされるのです。
口頭で「家賃を支払ってください」と伝えたり、督促状を送ったりすると消滅時効の猶予(時効完成が6ヵ月先延ばし)となります。
一方、裁判を通じて請求を行うことで消滅時効の更新とみなされ、そこから5年後が時効期限となります。
時効の消滅期間が経過していても、オーナーに援用の意思を表明しなければ時効は成立しません。
時効の援用とは、時効を迎えた権利を行使することです。
時効の援用は、オーナーに対して「時効援用通知書」を内容証明郵便で送ることで主張できます。
ただし、時効援用通知書を送るタイミングや書式に問題があると、時効が成立しない可能性があります。
ミスなく時効を成立させるためには、弁護士や司法書士などの専門家に相談することがおすすめです。
ここまで、家賃の時効が成立する条件を紹介してきましたが、家賃支払いの時効が中断するケースもあります。
主に以下のケースで家賃の消滅時効が中断します。
上記の行為がなされると、時効期間がリセットされてその時点から新たに5年の時効期間がスタートします。
具体的にどの行為が中断にあたるのかは法的な判断が必要となるため、自身で判断できない場合は弁護士などの専門家に相談してください。
この記事では、家賃を滞納した場合のリスクや滞納しないための対応策について解説しました。
家賃滞納のまとめ
家賃を滞納すると、オーナーや管理会社との信頼関係が崩れるだけでなく、信用情報に傷がつき日常生活に支障が出るおそれがあります。
そのため、家賃滞納はトラブルに発展する前に対応策を講じておく必要があります。
また、滞納により訴訟を起こされた場合の精神的・肉体的負担は計り知れません。
家賃滞納が原因で裁判に発展してしまった際は、弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。