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他の相続人が印鑑を押してくれないため、困っている相続人もいるでしょう。
相続の際の遺産分割協議は、相続人全員が参加し全員が合意する必要があります。
相続人の誰かが、相続で印鑑を押してくれない時は、相続手続きが進みません。
遺産分割協議書に実印の押印がないと、相続登記などの手続きができないだけでなく、税の申告などにも支障をきたします。
本記事では、相続で印鑑を押してくれない時はどうすべきか、対処法と注意点を解説します。
相続人が印鑑を押してくれなくて困っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
弁護士法人アクロピースでは60分間の無料相談の実施しています。
相続人の確認や手続きでお困りの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
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相続で印鑑を押してくれない時とは、次のような場面が考えられます。
相続で必要な手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:死亡後に必要な手続きの優先順位とは?順番や期限について解説
遺産分割協議書の作成時には、相続人全員が署名押印しなければなりません。
次のように、法定相続分(民法900条)と異なる相続割合を決める場合は、遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議は、相続人全員が参加し全員が合意する必要があります(民法907条1項)。
協議がまとまったら遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印しなければなりません。
出典:e-Govポータル|民法
遺産分割協議における預貯金の分け方等については、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧下さい。
関連記事:遺産分割協議における預貯金の分け方、記載方法を弁護士が解説
預貯金や株式の名義変更・解約時に、遺言がなければ、相続人全員が署名押印した遺産分割協議書を提出しなければなりません。
金融機関が死亡の事実を知ったときは、口座が凍結されます。
口座凍結を解除して、預貯金などの名義変更・解約等をする際に、遺産の正当な承継者であることを証明できる書面の添付を求められます。
遺言書がないときは、預貯金や株式を受け継ぐ相続人を特定した遺産分割協議書が必要です。
不動産の相続登記の際も、登記申請人が正当な権利者であることを明らかにできる書面の添付が必要です。
遺言書で承継人を指定していれば遺言書が証明書となりますが、遺言書がないときは遺産分割協議書を作成して相続登記の際に添付する必要があります。
遺産分割協議書には、相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を各1通添付することとされています。
出典:法務省ウェブサイト
相続税の申告書時にも、遺産分割協議書が必要です。
国税庁は、相続税の申告時の添付書類として、遺言書か遺産分割協議書の写しの提出を求めています。
特例等とは、配偶者の相続税額軽減特例、小規模宅地等の評価減の特例などを指します。
出典:国税庁:(参考)相続税の申告の際に提出していただく主な書類
遺産分割協議書に印鑑を押してもらえない主な理由は以下のとおりです。
印鑑を押してもらえない1つ目の理由は、遺産分割の方法や割合に不満で納得できないからです。
たとえば、次のような理由から不満を募らせる方もいるでしょう。
生前贈与されたお金と特別受益の関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
印鑑を押してもらえない2つ目の理由は、遺産に関する情報がきちんと伝えられておらず、不信感を持たれていることです。
情報開示が不十分で遺産の全貌がわからなければ、分割案の是非の判断ができません。
必要な情報を示さない相続人が作成した遺産分割協議書は、信用できないと思われてもやむを得ないでしょう。
印鑑を押してもらえない3つ目の理由は、遺産分割協議書の内容や作成方法に異論はないが、印鑑登録していないため実印がなく、押印できないことです。
印鑑登録は、居住地の市区町村役場に本人が希望の登録印を持っていけばできます。
委任状があれば、本人以外でも手続き可能です。
参考:総務省|印鑑登録証明事務処理要領
参考:中央区|印鑑登録について
遺産分割協議書など相続で必要な書面に、相続人が印鑑を押してくれない時は、次のように対処して押印してもらいましょう。
相続人全員が納得できるように、全員でよく話し合うことが大切です。
印鑑を押さない理由を聞いて、合理的な理由があれば対応策を考えましょう。
遺産分割内容に不満があるときは、法定相続分(民法900条)のとおりに分けるのも1つの解決策です。
現物分割が困難な不動産は、換価分割・代償分割・共有分割などの方法も含め、幅広く検討して、全員が納得できる方法を見つけましょう。
現物分割 | 現物を物理的に分割(分筆)する |
換価分割 | 現物を売却した代金を分割する |
代償分割 | 現物を取得した者が他の相続人に代償財産(金銭等)を渡す |
共有分割 | 現物を共有にする |
家族の死亡後に話し合いが必要となる手続き・期限については、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:死亡後に必要な手続きの優先順位とは?順番や期限について解説
遺産に関する情報は、すべて開示して共有しましょう。
次のような書面の開示が必要です。
上記のような遺産に関する情報をしっかり調査・確認し、漏らすことなく共有しましょう。
印鑑登録をしていない相続人に、相続手続きのために印鑑(実印)が必要な理由を説明して、印鑑登録をしてもらいましょう。
印鑑登録は、居住地の市区町村役場に本人が行けば短時間ででき、印鑑証明書も通常、即日交付されます。
委任状があれば本人以外でも申請手続きは可能ですが、印鑑登録・印鑑証明書交付は、通常、後日になります。
話し合っても遺産分割協議書に印鑑を押してくれない時は、弁護士に相談しましょう。
遺産分割協議は相続に関する法律知識が必要です。
当事者だけで話し合いがまとまらないときは、相続トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、公平な立場に立って対応策を提示します。
弁護士に依頼すれば、面倒な法的手続きをすべて任せられます。
相続人間で話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
遺産分割調停では、調停委員が中立な立場で間に入るため、冷静な話し合いが可能です。
調停が不成立の場合は、自動的に遺産分割審判に移ります(家事事件手続法49条・191条)。
調停申立ての際に必要な書類は次のとおりです。
出典:eーGovポータル|家事事件手続法
出典:裁判所|遺産分割調停
相続人の一人が遺産分割協議に応じない場合に起こり得る問題は、次のようなことです。
起こり得る問題について、詳しく解説します。
実印を押印した遺産分割協議書がなければ、早期に預貯金や不動産を活用したくても、できません。
被相続人の預貯金口座の解約や不動産の名義変更は、実印を押印した遺産分割協議書の提出が必須とされているからです。
たとえば、不動産を処分しようと思っても、名義変更がすんでいなければ処分できないため、ベストなタイミングを逃すこともあるでしょう。
一方で、不動産の名義変更ができない間も、管理費や固定資産税などの固定費は発生し続けます。
預貯金は手を付けられずにいると、10年後には休眠口座になるおそれもあります。
遺産分割協議書がなければ、預貯金や不動産を活用できないだけでなく、無駄な出費や面倒な事態を招きかねないのです。
遺産分割協議がまとまらない間に、遺産を管理する相続人が遺産を使い込むリスクがあります。
遺産は法的には相続問題が決着するまで共有になりますが(民法898条)、遺産の管理は、事実上、相続人の1人に委ねられるからです。
管理を任された相続人が、他の相続人の同意なく勝手に相続財産を処分することは本来許されません(民法264条・206条)。
しかし、口座凍結されていない預貯金や現金を、遺産を管理する相続人が、無断で自分のために使い込むことはあり得ることです。
出典:eーGovポータル|民法
遺産分割協議がまとまらないまま時間が経つと、権利関係が複雑化して問題解決が遠のく懸念もあります。
たとえば、相続人の1人が遺産分割に合意する前に死亡すると、その妻や子が亡くなった人の相続人として現れ、話し合いをやり直す必要が出てくるかもしれません。
時間の経過により関係者が増え複雑化し、話し合いが振出しに戻り、長期化するおそれもあるのです。
相続の放棄期間を徒過してしまい、放棄できなくなる可能性もあります。
相続の放棄は、相続の開始があったことを知った時から「3か月以内」にしなければなりません(民法915条1項)。
放棄は相続人各自の意思でできるため、遺産分割協議が調わなくても可能です。
しかし、話し合いが難航している間に、期間を失念することもあり得ます。
相続放棄をするかどうかの判断は、相続財産全体の状況次第で、債務が資産を上回る場合は、放棄を検討した方がよいでしょう。
遺産分割協議がうまくいっていない場合、財産全体の調査が十分にできていないケースもあります。
遺産の全貌を先に把握しておくべきです。
期間内に放棄の是非を判断できなければ、放棄できなくなるため注意しましょう。
出典:eーGovポータル|民法
相続人の一人が遺産分割協議に応じない場合、税の申告期間内に申告できないおそれもあります。
相続があった場合は、次の2つの税務申告が必要ですが、遺産分割協議が整わないと、各相続人が納めるべき相続税額が算定できません。
準確定申告は、亡くなった人の1月1日から死亡日までの所得金額と税額の申告のため、遺産分割がすんでいなくても申告は可能です。
相続税の申告は、相続財産が未分割の場合でも相続税の総額は変わりません。
そのため、税法では、各相続人が法定相続分を取得したものとして期限内に申告し、分割確定後に修正申告することとされています。
準確定申告も相続税の申告も、遺産分割でもめている間に期限を徒過すると加算税を含めた追徴課税がありうるため、申告期限内に申告しましょう。
準確定申告 | 相続税の申告 | |
---|---|---|
税目 | 所得税 | 相続税 |
申告義務者 | 相続人(包括受遺者を含む) (相続人等が連署) | 遺産承継者(相続人・受遺者等) |
申告期限 | 相続開始を知った日の翌日から 4か月以内 | 相続開始を知った日の翌日から10か月以内 |
申告が必要な場合 | 確定申告と同じ(給与所得が2,000万円超、副業所得が20万円超などの場合) | 相続財産が基礎控除額を上回っている場合 |
相続での押印に関するよくある質問と回答を紹介します。
遺産分割協議書に押す印鑑は必ず実印にしましょう。
実印を押すという規定はありませんが、後日、本物かどうか争いになる懸念があります。
合意を明確にするため、遺産分割協議書の押印は、通常、実印で行われています。
登記や預金解約の際は、相続人全員の実印押印がある遺産分割協議書の提出が必要です。
実印押印は、必須と考えましょう。
遺産分割協議書には、実印を押印し、実印の証明として印鑑証明書を添付すべきです。
印鑑証明書が提出されないときは、遺産分割協議書が真正であることの確認判決を求め、判決書を添付することが考えられます。
裁判手続になるので、専門家に相談した方がよいでしょう。
相続登記の申請書には、相続人全員が押印した遺産分割協議書の添付が必要です。
相続人の一人でも印鑑を押してくれないときは、裁判で勝訴しない限り、申請が受理されないため、名義変更できません。
遺産分割協議が整う前に、法定相続分の割合で相続登記をすることは可能ですが、その後に遺産分割協議をすると、再度登記申請が必要になります。
相続で印鑑を押してくれないからといって、強引に進めようとすれば、相続人間で不信感が増し、トラブルが拡大する可能性があります。
次のような行為は、刑事罰の対象になりかねないNG行為です。
出典:eーGovポータル|刑法
無理に進めようとしてはいけません。法律に従い適正な手順を踏みましょう。
相続で印鑑を押してくれない時の対処法・注意点についてまとめます。
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