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息子が親より先に死亡してしまったが、長い間世話になっている嫁に遺産を遺したいと思っている義父母の方もいるでしょう。
しかし「そもそも息子の嫁に遺産を相続することはできるのか」と思い悩んでいる方も多いでしょう。
嫁は義父母の相続人ではありませんが、嫁に遺産を遺すことは可能です。
息子が死亡している場合に嫁は遺産相続できるか、スムーズに嫁に遺産を遺す方法と注意点を解説しているので、死亡した息子の嫁への遺産相続の方法で悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
嫁に遺産相続させる方法で悩んでいる方は、相続問題に強い弁護士法人アクロピースにご相談ください。
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遺産相続の基礎知識として知っておくべき仕組みは、次の3点です。
嫁に遺産を残すためにも、相続の仕組みを理解しておきましょう。
遺産相続とは、被相続人(亡くなった人)が残した財産(遺産)を相続人が引き継ぐことです。
遺産には、被相続人が所有していたすべての財産が含まれます。
しかし遺産には、プラス財産だけでなくマイナスの財産もあるため、注意が必要です。
被相続人の財産であっても、免許・国家資格などの被相続人の一身に専属する権利は相続財産となりません(民法896条)。
遺産相続については、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:遺産相続に嫁は口出しできるか?もめないための進め方・対処法を解説
法定相続人とは、被相続人の遺産を相続できる相続人になると法律で定められた人です。
民法は、相続人の範囲と順位を次のとおり定めています。
順位 | 法定相続人 |
---|---|
1 | 被相続人の子(代襲相続する孫)(民法887条1項・2項) |
2 | 直系尊属(父母、祖父母等)(民法889条1項1号) |
3 | 兄弟姉妹(代襲相続する甥・姪)(民法889条1項2号・2項) |
常に | 被相続人の配偶者(民法890条) |
被相続人の配偶者は、常に相続人になります。
相続順位第1位の子、第3位の兄弟姉妹が死亡している時は、その子が代襲相続人になります。
出典:eーGovポータル|民法
参考:国税庁|No.4132 相続人の範囲と法定相続分
法定相続分とは、民法で定められた法定相続人の相続割合です。
同順位の法定相続人が複数いる場合の相続割合は、次のとおり定められています(法定相続分、民法900条)。
法定相続人 | 法定相続分(相続割合) |
---|---|
配偶者と子 | 各1/2 |
配偶者と直系尊属(父母・祖父母等) | 配偶者2/3、直系尊属1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
子、直系尊属または兄弟姉妹が複数いる | それぞれの区分内で等分 |
相続人が複数いる場合の相続割合は、相続人の間で話し合い(遺産分割協議)をして決めることができます。
法定相続分は、相続人間の合意ができなかった場合に適用される相続割合です。
法定相続分で遺産分割をしなければならないわけではなく、遺産分割協議で相続人全員が合意すれば法定相続分と異なる相続割合を決めることができます。
出典:eーGovポータル|民法
参考:国税庁|No.4132 相続人の範囲と法定相続分
亡くなった親(被相続人)の息子が生きていれば、息子は第1順位の相続人です(民法887条1項)。
しかし、息子が親より先に死亡している場合は、次のようになります。
息子の嫁は、息子の親の法定相続人にはなりません。
父・母と息子(死亡、嫁と孫2人)・娘(息子の妹)の家族(下図参照)を例に説明しましょう。
息子の父親が亡くなった場合に法定相続人となるのは、被相続人の配偶者(母)と子(息子と娘)です。
このケースでは息子は死亡しているため、息子の相続分の行く先は、息子に子(被相続人の孫)がいるか否かによって変わります。
息子に子(被相続人の孫)がいる場合には、その子が相続人になり、いない場合には被相続人の親が相続人になり、その親もいない場合には、息子の兄弟のみが相続人になります。
いずれにしても、息子の嫁は、夫(息子)の生死にかかわらず、法定相続人にはなりません。
親よりも先に息子が死亡している場合、息子夫婦に子がいれば、息子の子(被相続人の孫)が息子の代わりに相続人になります(代襲相続、民法887条2項)。
息子の子(孫)の相続分は、息子が相続するはずであった相続分(兄弟である妹と等分)を引き継ぎます(民法901条)。
事例の場合の相続割合は、母1/2、妹1/4、孫2人各1/8です。
息子がすでに亡くなっており、息子の子がいない場合には、被相続人の親と被相続人の配偶者(母)だけが相続人になります。
この場合の相続割合は被相続人の親1/3、配偶者(母)2/3になります。
親より先に息子が死去しており、息子夫婦に子がいない場合は、被相続人の配偶者(母)と娘(息子の妹)だけが遺産を相続します。
相続割合は、母1/2、娘1/2です。
妹も死去している場合は、妹の子がいればその子が妹の代襲相続人になります。
息子の嫁は、このケースでも相続人にはなりません。
嫁が義父母の家で同居していた場合、家の所有権が夫の妹に移って、嫁は家を出ざるを得なくなる事態もあり得ます。
次のような場合は、相続人が不存在となります。
法定相続人が不存在の場合、遺産は次のようになります。
この場合注意しなければならないのは、「1.遺贈」の場合には、遺言内容実現のために遺言執行者の選任が必要なことです(民法1006条)。
遺言で遺言執行者が指定されていない場合には家庭裁判所に申し立てて選任してもらう必要があります(民法1010条)。
また、「2.特別縁故者」が遺産を受け取る場合には、相続財産清算人を家庭裁判所に申し立てて選任してもらう必要があります(民法952条)。
いずれにしても一度弁護士に相談するのが良いでしょう。
息子の嫁に遺産を相続させるためには、次のような方法があります。
息子の嫁に遺産を相続させる方法を注意点と併せて説明します。
相続人が嫁に遺産(全部または一部)を相続させる旨の遺言書を作成して、遺贈することで嫁は相続することができます。
遺贈は、相手が相続人でなくても有効です(民法964条第1項)。
遺言の作り方は、自筆証書、公正証書などがあります。
自分で作成できる自筆証書遺言(民法968条)は、手軽です。
ただし、厳格な要件(遺言者が全文・日付・氏名を自署、押印)があるため、無効にならないよう注意が必要です。
不安な方は、公証役場で作成する公正証書遺言(民法969条)にすると良いでしょう。
費用はかかりますが、公証人が作成するため安心でき、検認不要などのメリットもあります。
遺贈の方法には、包括遺贈(遺産を特定せず割合を指定、債務も承継)と特定遺贈(特定の財産の贈与、債務は承継しない)があります。
注意すべきは、法定相続人に保証されている遺留分(民法1042条)があることです。
遺贈が遺留分を侵害している場合、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求されることがあります(民法1046条)。
遺言書の書き方については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:【例文付き】遺言書の書き方はこちら!必須項目・注意点・遺留分・法定相続分との違いについて解説
生前贈与であれば、贈与者が生きている間に、確実に嫁に財産を引き継ぐことができます。
ただし、相続開始前1年間の生前贈与は遺留分侵害額請求の対象となる(民法1044第1項)ため、本来の相続人との間でトラブルにならないよう注意が必要です。
また、生前贈与をすると贈与税(税率は10-55%)がかかることもあるため、注意しましょう。
参考:国税庁|No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
遺留分については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
生命保険を利用することで嫁は実質的に財産を得ることができます。
息子の嫁を生命保険の受取人にしておけば、死亡保険金を受け取ることができるからです。
生命保険金は、遺産そのものではないため、遺産分割協議の対象にはなりません。
ただし、息子の嫁は法定相続人ではないため、死亡保険金の相続税の特例(法定相続人の数×500万円は非課税)は受けられません。
また、嫁が遺贈等により遺産を取得した場合、相続税が2割加算されます。
参考:国税庁|No.4157 相続税額の2割加算
息子の嫁と養子縁組をすれば、遺産を確実に相続させられます。
養子縁組(民法792条)すれば法律上の親子関係ができ、嫁を相続人にできるからです。
養子は、嫡出子の身分を取得するため(民法809条)、第1順位の法定相続人になり、相続分も実子と同じです。
ただし、子が増えるため相続分が減る相続人が反発してトラブルになる懸念があります。
また、息子の嫁が息子の親の一方とだけ養子縁組する場合には、法定相続分が実子の1/2になってしまうので注意が必要です(民法900条4号)。
特別寄与料の請求により遺産を取得することも可能です。
2018年の民法改正により、被相続人の親族が献身的に介護した場合などは、特別寄与料を請求できるようになりました(民法1050条)。
息子の嫁も要件に該当すれば、相続開始後に相続人に対して特別寄与料を請求できます。
特別寄与料とは、相続人以外の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行い、被相続人に貢献した場合に、その人が相続人に対して請求できる金銭のことです(民法1050条)。
特別寄与料と類似のものとして寄与分があります(民法904条の2)。
寄与分は、簡単に言えば相続人が被相続人の療養看護などをして、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした場合に、法定相続分に上乗せできる額です。
寄与分は、あくまでも被相続人に特別の貢献をした法定相続人にだけ認められるものです。
特別寄与料について、次の3点を中心に説明します。
参考:法務省|相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
特別寄与料は、次の3つの要件に該当する場合に請求できます(民法1050条)。
特別寄与料は、相続人以外の親族の寄与・貢献に対して認められる請求権で、相続人に認められる寄与分と違いがあります。
特別寄与料の金額について民法は次のように規定しています。
必ずしも明確な基準ではありませんが、目安として、家庭裁判所における「相続人が被相続人の療養看護をした場合の寄与分の算式」を参考にすることもあります。
算式例:
第三者が療養看護を行った場合の日当額×療養看護の日数×裁量的割合
裁量的割合(療養看護を専門職としていない人が看護をした場合の割合)0.5から0.8程度
特別寄与料の請求方法は、次の2つのステップがあります。
特別寄与料は、相続の開始後に、特別寄与者が相続人に対して支払を請求し、まず相続人と請求人が協議します。
相続人との協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に協議に代わる処分申立てをできます。
ただし、家庭裁判所への申し立ては、相続の開始及び相続人を知った日から6カ月以内、または相続開始時から1年以内に請求しなければなりません(民法1050条2項ただし書き)。
この期間は皆さんが思われるよりずっと短く、あっという間に期間が経過してしまうので、特別寄与料を請求するかもしれないと考えた時には、早めに弁護士に相談すると良いでしょう。
息子が死亡している場合に嫁は遺産相続できるかについてまとめます。
長年世話になったなどの理由で、財産を嫁に渡したいと思う義父母もいるでしょう。
息子の嫁は法定相続人ではないため、本来であれば遺産を相続できませんが、事前に遺贈や生命保険などの対策をしておけば遺産相続同様の効果を上げることが可能です。
しかし、相続人ではない嫁への財産の委譲は共同相続人の反感を招きやすいため、遺産相続の方法で悩んでいる方は、弁護士に相談するのがおすすめです。
嫁に遺産を相続させたい場合には、さまざまな準備が必要です。
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東京弁護士会所属
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