死亡した人の預金をおろすと罪になる?よくある相談例と解決策を解説

「亡くなった人の預金を勝手に下ろすと罪にならないの?」「預金を勝手に引き出されてしまったけど、どのように対応すればいいか分からない」等、亡くなったご親族の預金についてお悩みではありませんか?

相続・遺言の相談を300件以上取り扱ってきた弊所が、亡くなったご親族の預金を勝手に引き出すとどのようなリスクがあるのか、引き出しても問題ないケースはあるのか等をまとめました。

具体的な例を踏まえながら、わかりやすく解説します。

目次

死亡した人の預金をおろしても同居の親族などは罪にならない

死亡した人の同居の親族は、その預金をおろしたとしても、窃盗罪や横領罪などの刑事上の犯罪として罪に問われることはありません。

刑法には、親族相盗例という特例があり、家庭内の財産上の問題については、刑事責任は問わないこととされているのです。

この制度によって、死亡後だけでなく、生前に親族が預金をおろす行為についても、罪に問われることはありません。

被相続人との関係性・間柄によっては刑事的責任を問われる

ただし、死亡した人との関係性・間柄によっては、親族相盗例が適用されない可能性もありますので注意が必要です。

たとえば、

  • 親族以外の第三者が代理でおろす
  • 相続人以外で死亡した人と同居していない親族がおろす

というケースは、親族相盗例が適用されない可能性が高いです。

同居の親族でも民事上の責任を問われることはある

たとえ刑事上の責任を問われないとしても、民事上の責任が問われる可能性はあります。

他の相続人が受け取るべきだった分の預金まで勝手におろして自分のものにしてしまうと、他の相続人から不当利得返還請求損害賠償請求されてしまう場合もあるので注意しましょう。

死亡した人の銀行口座は凍結されて出金不可能に

死亡した人の銀行口座は、トラブルを未然に防止するために銀行によって凍結され、出金できなくなります。

ただし、亡くなると自動的に凍結されるわけではなく、銀行は親族から死亡の申し出を受けた段階で、口座を凍結することになります。

弊所に寄せられる死亡した人の預金にまつわる相談

死亡した人と同居していた親族が、生前から死亡した人の預金の管理をまかされていたり、生活費の引き出しなどを頼まれているといった場合があります。

弊所には、他の相続人の方から、そのような同居していた親族の引き出し行為について様々なご相談を寄せられていますので、代表的な3つのケースをご紹介します。

1.相続分を超えて出金した相続人がいる

遺言の有無、相続人の立場や人数により、各相続人の相続分が定まります。

しかし、相続人の一部が相続分を超えて出金していたというケースでは、「過剰に引き出された預金を取り戻したい」というご相談が寄せられることがあります。

2.使い道の分からない出金が見つかった

死亡した人の預金通帳に、生前・死亡後を通じて多額の出金が何度も繰り返されている記録が見られるようなケースでは、「多額の出金について同居していた親族が使途を説明してくれない」「一応説明は受けたものの、根拠に乏しく、納得できない」というご相談が寄せられることがよくあります。

3.相続人の一人が出金したことを隠していた

同居の親族が先に勝手に出金していて、それが後から他の相続人に発覚したようなケースでは、「生前も勝手に出金していたかもしれない」「他にも出金があるかもしれないので調べたい」というご相談が寄せられることがあります。

死亡した人の預金を引き出しても問題ないケースとは?

死亡した人の財産は、基本的には相続人全員の共有となり、預金も同様です。

そのため、預金を引き出すにあたっては、遺産分割協議によって相続人全員の了承を得られてから行うのが、トラブルを回避するためにも望ましいといえます。

ただし、

  • 遺言書に基づいて預金を相続した
  • 仮払い制度を利用した
  • 裁判所から仮分割の仮処分を認められた

という場合は、一部の相続人だけで預金を引き出しても問題ありません。

以下で具体的に説明していきます。

遺言書に基づいて預金を相続した

死亡した人の遺言書で、「すべての遺産は〇〇に相続させる」「◇◇銀行△△銀行の預金は〇〇に相続させる」と指定された人(受遺者といいます)は、その預金を相続することになるので、受遺者単独で預金を引き出すことができます。

仮払い制度を利用した

遺産分割が成立する前に一定額の預金を引き出すことのできる、預貯金の仮払い制度を利用することで、相続人は単独で適法に死亡した人の預金を引き出すことが可能です(民法909条の2)。

仮払い制度で実際に引き出すことのできる金額は、

  1. 死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1
  2. 150万円

上記のうち、いずれか低い金額となります。

裁判所から仮分割の仮処分を認められた

仮払い制度以外にも、裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申し立て、認めてもらうことによって、相続人が単独で預貯金の全部または一部を引き出すことが可能です(家事事件手続法200条3項)。

この制度では、仮払い制度よりも多くの金額を引き出せる可能性がありますが、以下のような要件が必要となります。

  1. 遺産分割の調停・審判が家庭裁判所に申し立てられていること
  2. 相続人が、相続財産に属する債務の弁済や相続人の生活費の支弁その他の事情により、遺産に属する預貯金を引き出す必要があると認められること
  3. 他の共同相続人の利益を害さないこと

親が死亡した後に預金を引き出すと相続税はどうなる?

相続税は、その人が死亡した時点で相続開始となります。

なので親が死亡した後に預金を引き出しても、そのお金は課税対象となります。

亡くなる前に引き出し、手元現金としてある場合も、それは変わりません。

引き出したお金を申告しなかった場合は、脱税になるので注意してください。

ただし、相続税には控除のルールがあるため、相続税の対象となっても支払う必要がないケースもあります。

基礎控除や配偶者控除がありますが、預金に限定したものではなく、相続した財産全体に対する計算となり、控除額の範囲内であれば、申告や納税の必要はなくなります。

このように、死亡前後に慌てて預金を引き出しても、相続税に変わりはありません。

ですが、死亡前後の預金の引き出しは、遺産分割の際にトラブルになる可能性もあるため、多額の引き出しは避けた方がよいでしょう。

死亡した人の預金を引き出してトラブルになった際の解決策


すでに述べたとおり、生前から死亡した人の預金の管理をまかされていたり、生活費の引き出しなどを頼まれていた同居の親族による問題のある引き出し行為について、様々なご相談が寄せられています。

以下では、そのような場合の解決策を解説します。

遺産分割協議で同意を得る

遺産分割の前に預金が引き出されてしまった場合、預金の引き出しをした相続人以外の相続人全員の同意を得ることによって、引き出された預金を遺産分割時に遺産として存在するものと見なすことができます民法906条の2)。

損害賠償請求などの訴訟を起こす

相続人の1人が死亡した人の預金を不正に引き出したことについて、遺産分割協議で解決することが難しいような場合は、不当利得の返還、もしくは不法行為による損害賠償として、訴訟を起こして請求することが考えられます。

ただし、訴訟を起こすには裁判所に納める手数料や、弁護士に依頼する場合には弁護士費用がかかります。

引き出された額と比較して割に合わない可能性もあるため注意が必要です。

弁護士に依頼してプロに対応を委ねる

遺産分割協議では、遺産の範囲や評価について争いが生じると、当事者だけでは適切かつ円滑に協議を進めることが難しい場合があります。

訴訟を起こす場合は上記の争いの問題だけでなく、どのような証拠が必要になるかや、どのような手続を取ればよいかなど、法律等の専門的な知識が必要です。

そのような場合、早めに専門家である弁護士に相談、依頼することが重要となります。

しかし、弁護士によって得意とする分野は異なるため、相続を得意とする弁護士に相談するのがよいでしょう。

死亡した人の預金トラブルを未然に防ぐ3つのコツ

葬儀費用や入院費用などの支払のために、やむを得ず遺産分割前に死亡した人の預金を引き出さなければいけないような場合もあると思います。

そのような場合でも、

  • 相続人が同意の上で口座凍結される前に預金を引き出す
  • 預金を引き出した場合はメモを残す
  • 生前贈与、遺言の作成を済ませる

といった点に気を付けておくことで、未然にトラブルを防げるでしょう。

相続人が同意の上で口座凍結される前に預金を引き出す

まず、口座が凍結される前に預金を引き出しておかなければいけない場合は、事前に各相続人から引き出しについて同意を得ておくことが重要です。

同意を得ておくことで、勝手に使ったと思われる可能性を減らすことはもちろん、口座が凍結されて資産を動かせなくなるリスクを防ぐことができます。

預金を引き出した場合はメモを残す

遺産分割前に各相続人の同意を得て預金を引き出す場合、いつ、いくら引き出したのか、それを何に使ったのかということをメモなどに記録して、いつでも他の相続人に示せるようにしておきましょう。

同時に、使途を示す証拠として取引明細や請求書、領収書を廃棄せず保管しておくことも必須です。

生前贈与、遺言の作成を済ませる

死亡後の不要なトラブルを避けたいのであれば、被相続人が亡くなる前に、生前贈与や遺言を作成しておくということも重要です。

家族間で「終活」について話す機会を設け、必要に応じて生前贈与をし、また、遺言を作成するかどうか、どのような内容にするかを話しておくことで、死亡した後になって争いが生じるのを避けることができます。

死亡した人の預金口座に関するよくある質問

ここでは、死亡した人の預金口座について、よく寄せられる質問とそれに対する回答を掲載します。

死亡した人の銀行口座は使い続けられるの?

死亡した人の預金口座をそのままにしておいても法的には問題ありません。

ただし、上記のとおり、死亡した人の預金は相続人の共有となります。

一部の人がその口座を使ってしまうと、金銭の出入りによって相続財産の範囲がわからなくなるといったトラブルに発展する可能性があります。

基本的には遺産分割が済むまでは使用しないほうがよいでしょう。

死亡した人の預金を調べる方法は?

死亡した人の預金口座は、相続人が必要書類を揃えて手続すれば、その残高や過去の取引履歴を銀行に開示してもらうことができます。

ただし、銀行名や支店名などの特定が必要です。

また、死亡した人が、生前に税理士を通じて確定申告していたような場合には、その税理士に預金口座に関する資料を開示してもらえる可能性もあります。

死亡した人の預金残高が少額の場合でも連絡は必要?

上記のとおり、死亡した人の預金口座はそのままにしておいても法的に問題はありません。

そのため、預金残高が数十円、数百円しかないなど少額の場合は、わざわざ手続するのが面倒ということであれば、敢えて銀行に連絡せずにそのままにしておいても問題はないでしょう。

まとめ

死亡した人の預金について生じ得る問題について解説してきましたが、要点をまとめると、以下のようになります。

  • 死亡した人の預金は、同居していた親族であれば、基本的には刑事上の責任を問われることはない(「親族」に該当するかどうかの検討は必要)
  • ただし、場合によっては民事上の責任は別途問われる可能性がある
  • 預金の引き出しに関するトラブルを防ぐには、事前に他の相続人に同意を得ておき、いつ、いくら、何のために引き出したのかを、その証拠とともに記録しておくことが重要
  • トラブルに発展した場合には、相続を得意分野とする弁護士に相談、依頼するのが良い

死亡した人の預金をめぐる問題は、特に相続人間で感情的な問題に発展することが多く、当事者の話し合いで解決するのが難しい問題といえます。

トラブルに発展したときだけでなく、発展しそうな段階でも、早めに弁護士に相談しておくと、ストレスなくスムーズに解決できる場合があります。

相続に関するトラブルについては、ぜひ弊所までご相談ください。

この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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