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アパートの立ち退き料の相場はどれくらい?高額になりやすいケース・注意点を解説
「大家として立ち退き交渉をしたいが、いくら払えば円満に解決するのか」
「立ち退き料が高額になる可能性はある?」
アパートの立ち退き料は、法律で明確な金額が決まっているわけではありません。相場や内訳を正しく理解していないと、不当に低い金額で合意してしまったり、逆に法外な要求で交渉が決裂したりするリスクがあります。
本記事では、立ち退き料が発生する条件から具体的な計算の内訳、交渉を有利に進めるためのポイントまでを専門的な視点で解説します。立ち退き料の適正なラインが見え、納得のいく合意形成に向けた第一歩を踏み出すためにも、ぜひ参考にしてみてください。
立ち退き料に「定価・法定額」はない:金額は一律ではなく、借地借家法の「正当事由」の強さと当事者事情の比較衡量で決まる。相場だけで判断すると、低すぎて紛争化・高すぎて過払いのリスクがある。
立ち退き料は「積み上げ計算」:立ち退き料は、移転実費(引っ越し・初期費用等)、借家権・家賃差額補償(1〜3年程度の差額補填が目安)、慰謝料(事情がある場合の上乗せ)の3つが中心となって構成されている。根拠資料(見積書等)で固めるのが交渉の土台。
立ち退き料が高額化しやすいのは「転居負担が重い・正当事由が弱い」場面:高齢者・要介護・子育て世帯、店舗等の営業補償、家賃が相場より安い、借主が強硬に反対…は増額要因になりやすい。
立ち退き料を抑えたいなら正当事由の裏付けと代替案が鍵:耐震診断・修繕見積・行政指導など客観資料で必要性を示し、退去時期の猶予や家賃無料、代替物件の提案など金銭以外の納得材料も用意することが大切。
支払いは「明け渡しと引き換え+書面化」が鉄則:先払いはできるだけ避け、合意は解除合意書等で明け渡し期限・金額・支払日・清算条項を明記することが重要。名目も整理し、税務・消費税の論点を含めて専門家への早めの相談が必要。
立ち退き料の支払いに関する悩みを抱えている方は、弁護士法人「アクロピース」にお任せください。不動産トラブルに精通した弁護士が、個々のケースに合わせアドバイスを提供いたします。初回60分の無料相談も実施しているので、まずはお気軽にご相談ください。
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アパートの立ち退き料とは
アパートの立ち退き料とは、貸主(大家)の都合で賃貸借契約を終了させる際に、借主(入居者)に対して支払われる金銭的な補償のことです。
借地借家法において、借主の権利は強く守られています(借地借家法第28条)。貸主側から一方的に「出て行ってほしい」と主張しても、正当な理由が不足している場合は認められません。
立ち退き料は、この「正当な理由(正当事由)」の不足分を、金銭で補うという性質を持っています。単なる「迷惑料」や「手切れ金」ではなく、借主が居住権を失うことで被る経済的損失や、生活拠点を移すための実費を補填する性格がある点が特徴です。

監修者コメント
立ち退き料は、金額だけで考えてはいけません。移転実費・家賃差額(借家権評価)・慰謝料を積み上げ、「正当事由の強さ」とのバランスで上下します。
しかし、安すぎれば借主が立ち退きに応じる可能性は低く、高すぎれば貸主側の不要な負担になります。本記事を参考に、根拠資料を揃えて交渉の着地点を設計しましょう。
立ち退き料の基本的な考え方
立ち退き料の有無や金額は、「貸主が建物を必要とする事情」と「借主が建物を必要とする事情」の比較衡量によって決まります。
主な比較要素は、以下のとおりです。
| 比較要素 | 貸主側の事情例 | 借主側の事情例 |
|---|---|---|
| 使用の必要性 | 自身の居住、家族の介護、生計維持など | 居住の拠点、店舗営業の継続、転居困難など |
| 建物の状況 | 老朽化による倒壊の危険性 | 現状で居住・営業に支障がない |
| 経緯 | 家賃滞納の有無、信頼関係 | 長期間の居住、契約時の約束 |
| 代替案 | 代替物件の提供、金銭補償の提示 | 近隣に同条件の物件がない |



上記の要素を総合的に考慮して判断されます。
アパートの立ち退き料が必要になるケース
立ち退き料はすべての退去で発生するわけではありません。基本的に「借主には落ち度がなく、貸主側の事情を優先させたい場合」に発生します。
アパートの立ち退き料が必要になる主なケースは、以下の4つです。
以下、それぞれ具体的に解説します。
貸主(大家)の都合で契約を終了させる場合
貸主が自分や親族が住むために部屋を明け渡してほしい場合や、物件を売却して現金化したい場合などが該当します。借主は契約を守り家賃を払っているにもかかわらず、一方的に生活基盤を脅かされる形になります。
貸主の「自分で使いたい」という事情だけでは、法的な「正当事由」として不十分と判断されることがほとんどです。借主が納得して退去に合意するための材料として、十分な立ち退き料の提示が不可欠となります。



とくに、借主が高齢で次の転居先が見つかりにくい場合などは、補償額が高額になる傾向があるでしょう。
普通借家契約を更新拒絶する場合
日本における一般的な賃貸契約である「普通借家契約」では、契約期間が満了しても、貸主が更新を拒絶するには厳格な要件が必要です。単に「契約期間が終わったから」という理由だけでは、借主を退去させることはできません。
更新を拒絶するためには、借地借家法第28条に基づく「正当事由」が必要です。
借地借家法第28条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
しかし、現実には完璧な正当事由を揃えることは難しいため、不足している正当性を立ち退き料で補うという考え方が定着しています。
アパートや店舗の建て替えをする場合
建物が古くなり、建て替えを計画する場合も立ち退き料の対象となります。
「古くなったから建て替えるのは当然」と貸主は考えがちですが、入居者が安全に住めている限り、老朽化だけでは即座に退去の理由にはなりません。耐震診断の結果などで倒壊の危険性が客観的に証明されない限り、借主の居住権が優先されます。
建て替え計画をスムーズに進めるためには、引っ越し費用や新居の初期費用などを貸主が負担し、借主の協力を得る必要があります。



店舗や事務所が入居している場合は営業補償も加わるため、金額が跳ね上がる可能性があるでしょう。
関連記事:立ち退きの正当事由として老朽化は認められるのか?トラブルを防ぐコツを紹介
再開発・区画整理・道路拡張が絡む場合(民間主導)
行政による強制的な収用ではなく、民間デベロッパー主導の再開発や、任意の区画整理事業に伴う立ち退きの場合も、立ち退き料が発生します。
開発利益を見越して予算が組まれていることが多く、通常の立ち退きよりも手厚い補償が求められるケースも珍しくありません。
都市計画道路の拡張など、行政が絡む場合でも「用地買収」という形をとる際は、補償基準に基づいた立ち退き料(移転補償金)が支払われます。
アパートの立ち退き料が不要になりやすいケース
一方で、貸主が立ち退き料を一銭も支払わずに退去を求められるケースも存在します。
主に借主側に原因がある場合や、契約形態そのものが特殊な場合が該当します。アパートの立ち退き料が不要になりやすい主なケースは、以下のとおりです。



無駄な交渉を避けるためにも、立ち退き料が不要になる条件を正しく理解しておきましょう。
借主側の都合で退去する場合
借主が転勤・結婚・実家への帰省など自己都合で退去を決めた場合は、当然ながら立ち退き料は発生しません。賃貸借契約の解約権を行使するのが借主自身であるためです。
また、借主が「もっと安い部屋に引っ越したい」「設備が良い部屋に移りたい」といった理由で解約する場合も同様です。
借主に重大な契約違反がある場合
借主が契約上の義務を著しく怠り、貸主との信頼関係が破壊されたとみなされる場合、貸主は契約を解除できます。「信頼関係破壊の法理」に基づく解除の場合、立ち退き料は不要です。
具体的な契約違反の例は以下のとおりです。
- 家賃滞納:一般的に3ヶ月分以上の滞納が継続している
- 無断転貸:貸主に無断で第三者に部屋を貸している(又貸し)
- 用法違反:住居専用契約なのに店舗として使用している
- 迷惑行為:近隣住民への著しい騒音や恫喝など
上記のようなケースの場合、建物明渡請求訴訟で「信頼関係が破壊されている」と判断されやすく、立ち退き料を支払うことなく強制退去を実現することが可能です。
定期借家契約が適法に終了する場合
契約形態が「定期借家契約」である場合、契約期間の満了をもって確定的に契約が終了します。普通借家契約とは異なり、更新という概念がないため、貸主は正当事由なしに契約終了を主張することが可能です。
ただし、以下の手続きが適法に行われていることが前提となる点に注意しておきましょう。
- 契約締結時に「更新がなく期間満了で終了する」旨を書面で説明していること
- 契約期間が1年以上の場合、期間満了の1年前から6か月前までの間に「終了通知」を出していること(借地借家法第38条第6項)
これらの手続きに不備がなければ、期間満了とともに借主は退去しなければならず、原則として立ち退き料は発生しません。
アパートの立ち退き料の内訳と相場
「立ち退き料」という名目の商品があるわけではなく、その中身は複数の損害賠償や補償の積み上げで構成されています。実際の交渉では、以下の3つの要素を具体的に計算し、合計額を算出します。
以下、それぞれ具体的に解説します。
移転実費(引っ越し費用・初期費用)
借主が新しい住居に移るために直接的にかかる費用です。立ち退き料の最低ラインとなる部分といえるでしょう。
主な内訳は以下のとおりです。
| 引っ越し業者費用 | 荷物の量や時期に応じた実費 |
|---|---|
| 新居の契約金 | ・敷金 ・礼金 ・仲介手数料 ・保証会社利用料 ・火災保険料 |
| 移転諸経費 | ・インターネット移転工事費 ・エアコン脱着費 ・不用品処分費 |
これらは「見積書」を取得することで客観的な数字が出せるため、交渉の基礎となります。貸主側としても、実費精算であれば支払いを受け入れやすい項目です。
借家権価格と家賃差額補償
現在の住居に住み続ける権利(借家権)の価値や、退去によって発生するランニングコストの増加分を補償するものです。
とくにアパートを相場より著しく安い家賃で貸し出している場合、同等の広さの物件に引っ越すと家賃が上がってしまいます。この「新家賃」と「旧家賃」の差額を、一定期間(通常1年〜3年程度)補償するのが一般的です。
計算式の例は、以下のとおりです。
(新家賃8万円-旧家賃6万円)×24ヶ月=48万円



家賃が格安であればあるほど、差額補償が立ち退き料の大きなウェイトを占めることになります。
精神的苦痛への慰謝料(迷惑料)
住み慣れた土地を離れることへの精神的なストレスに対する補償です。ただし、単に「寂しい」「面倒くさい」という理由だけでは認められません。
慰謝料が考慮されやすいのは、以下のような事情がある場合です。
- 高齢者:新しい環境への適応が困難、近隣の病院に通っている
- 要介護者:バリアフリー改修済みの部屋から退去しなければならない
- 子どもの学区:転校を余儀なくされる時期である



数値化しにくい部分ですが、交渉の最終的な「上乗せ分」として調整されることが多い項目です。
関連記事:【大家都合で退去】立退料の相場と交渉方法は?過去の判例も紹介
アパート建て替えに伴う立ち退き料が高額になりやすいケース
立ち退き料は一律ではなく、入居者が抱える事情や物件の状況によって増額されることがあります。
とくに以下のようなケースでは、一般的な相場よりも高額な補償が必要です。
以下、それぞれ具体的に解説します。
高齢者・要介護者・子育て世帯など転居の負担が大きい場合
高齢者や要介護者の場合、新たな賃貸物件の入居審査に通りにくい問題があります。また、バリアフリー対応の物件を探す必要があったり、介護サービスや通院の都合でエリアを限定されたりすることも珍しくありません。
子育て世帯においては、子どもの学区を変えずに転居先を探すなど、物件の選択肢が著しく狭まる可能性があるでしょう。
こうした「住宅確保要配慮者」に対しては、転居先確保のための手厚い金銭的サポートが求められ、結果として立ち退き料が高額化します。
立ち退き理由(正当事由)が弱い場合
貸主側の「建て替えたい理由」が、単なる収益向上や相続税対策などの経済的動機である場合、正当事由としては弱くなります。
正当事由が弱ければ弱いほど、補完するために必要な立ち退き料の金額は高くなります。裁判になった場合でも、貸主の自己都合が強い案件ほど、高額な立ち退き料の支払いを条件とする和解案が出される可能性が高くなるでしょう。
たとえば建物の朽廃を理由として正当事由を証明する必要がある場合は、耐震診断報告書など客観的なデータを用いて建物の危険性を証明する準備が必要です。
入居者が事業を営んでいる場合
アパートの一室を店舗や事務所として使用している場合、住居としての補償に加え「営業補償」が必要となります。移転期間中の休業によって生じる逸失利益や、得意客の喪失による将来的な減収分などを考慮しなければなりません。
内装や設備を借主が独自に設置している場合は、その移設費用や廃棄費用も補償の対象に含まれます。主な費用は、以下のとおりです。
| 補償項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 営業補償(休業損害) | 移転に伴い営業できない期間の粗利益補償 |
| 得意先喪失補償 | 移転により既存顧客が離れることによる減収分の補填 |
| 内装・設備移転費 | 看板の撤去・設置費、厨房機器等の移設費 |
| 広告宣伝費 | 移転先を周知するためのチラシ作成やDM発送費用 |



事業用賃貸借の立ち退き料は、住居用と比較して桁違いに高額になるケースが多く、慎重な査定が求められます。
家賃を相場より安く設定している場合
長期間入居している借主の場合、現在の家賃が近隣の相場に比べて著しく安くなっていることがあります。
この場合、借主は「安い家賃で住める権利(借家権)」を享受しており、退去によってその利益を失うことになります。
同程度の広さや質の物件に引っ越すために家賃が月額2万円上がるとすれば、その差額の数年分を補償しなければ納得を得られません。
現在の家賃と新規募集家賃のギャップが大きいほど、差額家賃の補償額が膨らみ、立ち退き料全体を押し上げる要因となるでしょう。
入居者側が立ち退きに強く反対している場合
入居者が今の住環境に強い愛着を持っていたり、貸主の対応に不信感を抱いていたりすると、交渉は難航します。
頑なに退去を拒否する入居者に対して、裁判で判決を得るには多大な時間と弁護士費用がかかります。
訴訟リスクや工期の遅れによる損失を避けるために、解決金として相場以上の上乗せを提示せざるを得ない場合も珍しくありません。
関連記事:居住権を主張して居座り続ける相手を退去させるには?立ち退き請求の進め方を弁護士が解説
アパートの立ち退き料を低く抑える方法
貸主にとって、立ち退き料はキャッシュフローを圧迫する大きな出費です。無理やり追い出すことは違法ですが、知恵を絞って交渉材料を揃えることで、適正かつ低めの金額で合意できる可能性があります。
アパートの立ち退き料を低く抑える際に貸主側が意識すべきポイントは、以下の3つです。
以下、それぞれ詳細に解説します。
客観資料を集めて「正当事由」を主張する
立ち退き料は「正当事由の不足分を埋めるもの」です。つまり、正当事由が強力であればあるほど、支払うべき立ち退き料は低くなります。単に「古いから」と言うのではなく、客観的なデータで建物の危険性を証明しましょう。
客観的なデータとして効果的な資料の例は、以下のとおりです。
| 耐震診断報告書 | 倒壊の危険性が高いことを数値で示す |
|---|---|
| 大規模修繕の見積書 | 補修に莫大な費用がかかることを示す(建て替えの合理性) |
| 行政からの指導 | 是正勧告などを受けている事実を示す |
上記の資料を提示し、「居住を続けることが借主の生命にとっても危険である」という事実を共有することで、退去の必要性を理解してもらいやすくなります。
関連記事:築40年の老朽化したアパートの立ち退きの正当事由とは?大家が払う退去費用の相場と内訳
退去時期を「借主に有利」に設定する
「来月出て行ってくれ」と急な要求をすると、借主を混乱させることになります。逆に、時間的な猶予を十分に与えることで、金銭的な補償額を抑えられるケースもあるでしょう。
また、「退去までの期間は家賃無料」など条件をつけることも効果的です。借主にとっても「新居の資金を貯められる」といったメリットがあり、現金の持ち出しを減らす有効な交渉材料になります。
金銭以外で納得材料を用意する
現金での解決だけでなく、貸主が持つリソースや労力を提供することで、借主の負担を減らす方法も一つです。借主が一番面倒に感じている「物件探し」や「手続き」をサポートすることで立ち退き料を下げられる可能性があります。
具体的なサポート例は、以下のとおりです。
| 代替物件の斡旋 | 自身が所有する他の空室を優先的に、あるいは割引価格で提供する |
|---|---|
| 物件探しの代行 | 付き合いのある不動産業者を紹介し、仲介手数料を貸主側で負担する |
| 引っ越し手続きの手配 | 業者の手配や不用品処分の手続きを貸主側で行う |



「誠意ある対応」を示すことで感情的な対立が防げ、結果的に金銭交渉がスムーズに行えるでしょう。
アパートの立ち退き料について弁護士に相談すべきタイミング
立ち退き交渉は、単なる「お願い」ではなく、借地借家法という強力な法律が関わる法的な交渉です。当事者間だけで解決しようとすると、感情的な対立や法外な金銭要求に発展するリスクが高まります。
トラブルを未然に防ぎ、適正な条件で合意するためには、どの段階で専門家を頼るべきかを知っておくことが重要です。
アパートの立ち退き料について弁護士に相談すべきタイミングは、主に以下のとおりです。
以下、それぞれ具体的に解説します。
関連記事:立ち退き交渉は弁護士に相談すべき?依頼するメリット、デメリットや費用も紹介【弁護士監修】
借主に退去の話をする前
理想的な相談のタイミングは、借主に対して「出て行ってほしい」と伝える前です。
一度でも不用意な発言をしてしまうと、その後の交渉で不利になる可能性があります。たとえば、本当は建物を売却したいのに「息子が住むから」と嘘の理由を伝えてしまうと、後で矛盾が生じて正当事由としての信頼性を失うでしょう。
弁護士に事前に相談すれば、以下の準備が可能になります。
- 正当事由の判定:現在の状況で法的に退去を求められるかの確認
- 交渉戦略の立案:どのような順序で、何を伝えるべきかのシナリオ作成
- リスクの洗い出し:想定される借主の反論と対策の準備



スムーズな立ち退きを実現させるためには、弁護士に相談して最初のアプローチを掛け違えないことが大切です。
関連記事:立ち退き交渉の代行は弁護士に頼むべき?費用相場や依頼先の立ち退きに強い弁護士の選び方を解説
立ち退き料の金額を決める前
借主に提示する立ち退き料の具体的な金額を決める際も、弁護士の知見が欠かせません。相場より極端に低い金額を提示して借主の怒りを買ったり、逆に必要以上に高額な支払いを約束してしまったりする失敗を防ぐためです。
適正な金額を算出するには、以下の専門的な知識が必要です。
- 近隣の家賃相場:代替物件との家賃差額を正確に計算する
- 裁判例の傾向:類似のケースで過去にいくらで決着したかのデータ
- 借家権の評価:土地・建物の価格に対する借家権割合の算出
弁護士は上記の要素を総合的に判断し、「裁判になっても認められるであろう妥当なライン」を算出してくれます。根拠のある数字を持つことで、自信を持って交渉に臨めるでしょう。
借主が立ち退きを拒否しているとき
誠意を持って話をしても、借主が「絶対に動かない」「退去しない」と頑なに拒否するケースがあります。このような膠着状態に陥った場合、当事者同士で話し合いを続けても、感情的な溝が深まるばかりです。
また、貸主が感情的になり、脅迫的言動を伴う執拗な訪問により立ち退きを強要した場合、「強要罪(刑法第223条)」が成立するリスクもあります。
弁護士が代理人として介入すれば以下のような対策を取れるため、状況が大きく変わる可能性があるでしょう。
- 窓口の一本化:貸主への直接連絡を遮断し、冷静な交渉の場を作る
- 法的根拠の提示:感情論ではなく、法律に基づいたメリット・デメリットを借主に伝える
- 心理的な効果:弁護士が出てくることで、貸主の本気度を伝えられる



第三者が間に入ることで借主も冷静になり、条件交渉に応じてくれる可能性が高まります。
調停・訴訟を検討し始めたとき
任意の交渉が決裂し、話し合いでの解決が不可能だと判断した場合は、調停や訴訟といった法的手続きへ移行します。調停や訴訟は非常に厳格な手続きであり、法律の専門家なしで進めるのは現実的ではありません。
弁護士に相談することで、以下のような役割が期待できます。
| 手続き | 特徴 | 弁護士の役割 |
|---|---|---|
| 調停 | 調停委員を介した話し合い | ・妥当な解決案の提示 ・調停委員への説得 |
| 訴訟 | 裁判官による判決 | ・訴状の作成 ・適切な証拠の提出・法廷での弁論 |
とくに訴訟では、「正当事由」の有無が厳しく争われるため、証拠の提出や法的な主張の組み立てが勝敗を分けます。訴訟を見据える段階になれば早急に弁護士へ依頼し、勝訴の見込みや費用対効果を診断してもらいましょう。
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関連記事:立ち退き裁判とは?手続きの流れや費用・期間についても解説【弁護士監修】
アパートの立ち退き料を支払う際の注意点
交渉がまとまり、いざ立ち退き料を支払う段階になっても気は抜けません。支払い方法やタイミングを間違えると、「金は払ったのに退去してくれない」という最悪の事態を招く恐れがあります。
アパートの立ち退き料を支払う際の注意点は、以下のとおりです。
以下、それぞれ詳しく解説します。
明け渡しと引き換えに支払う
立ち退き料の支払いは、原則として「部屋の明け渡し(鍵の返却)」と同時履行にするのが鉄則です。
借主から「引っ越し費用がないから先に振り込んでほしい」と頼まれることがよくあります。しかし、先にお金を渡してしまうと、それを使ってしまった挙句に居座られるリスクもゼロではありません。



どうしても事前の支払いが必要な場合は、以下の対策を講じましょう。
| 一部のみ先払い | 引っ越し業者の見積もり額など、必要最低限の金額だけ先に渡す |
|---|---|
| 直接払い | 借主の口座ではなく、引っ越し業者へ直接支払う |
| 残額の確保 | 立ち退き料の過半額は、必ず退去確認後の支払いに残しておく |
合意内容は必ず書面に残す
口約束での合意は絶対に避け、「立ち退き合意書」や「賃貸借契約解除合意書」を作成して署名捺印をもらいましょう。
書面に残すべき重要な項目は、以下のとおりです。
- 合意解約の日付
- 明け渡し期限
- 立ち退き料の額と支払日
- 原状回復の免除
- 清算条項
後になって「やっぱり足りない」「約束と違う」と言わせないために、合意書は身を守る盾となります。
合意書は、公正証書にしておくとより確実です。公正証書に「強制執行認諾文言」を記載することで、裁判を経ずに相手の財産(預貯金や給料など)を差し押さえることが可能になります。
出典:法務省|公証制度について
「立ち退き料」の名目を明確にする
支払う金銭がどのような性質のものかを明確にしておくことは、税務処理やトラブル防止の観点で重要です。
一口に立ち退き料といっても、「借家権の買い取り」「営業補償」「移転実費」などさまざまな項目が含まれます。
とくに事業用物件の場合、以下のように名目によって消費税の課税対象になるかどうかが変わるため注意が必要です。
- 実費補償・慰謝料:原則として不課税
- 営業補償・権利の譲渡:課税対象となる場合がある
曖昧なままにしておくと、後で税務署から指摘されたり、借主から消費税分の追加請求を受けたりする原因になります。



合意書の内訳には、「移転補償金として○○円」「解決金として○○円」など、名目を具体的に記載しましょう。
分割払いはできるだけ避ける
立ち退き料が高額になる場合でも、分割払いは避け、一括払いで解決することをおすすめします。
分割払いにすると、貸主と借主の関係が支払いの完了まで続いてしまうためです。月々の支払いを管理する手間が発生します。
「手切れ金」としての性格を持つ立ち退き料は、きれいさっぱり一度で清算し、後腐れのない形にすることが大切です。資金が足りない場合は、金融機関からの融資などを検討し、借主に対しては一括で支払うようにしましょう。
税務上の扱いを把握しておく
立ち退き料を支払った貸主と、受け取った借主の双方に税金の問題が発生します。これを知らずに申告漏れになると、追徴課税のペナルティを受ける可能性があるため注意が必要です。
また、貸主の税務処理は、以下のように複雑になります。
| 不動産所得の必要経費 | 賃貸経営を継続するための立ち退きであれば、その年の経費に計上できる可能性がある |
|---|---|
| 譲渡費用の加算 | 土地建物を売却するために立ち退かせた場合は、売却時の「譲渡費用」として処理し、譲渡所得税を抑える効果がある |



金額が大きい場合は、税理士などの専門家に相談し、適切な税務処理を確認しましょう。
アパートの立ち退き料に関するよくある質問
立ち退き料に消費税はかかる?
原則として、個人の居住用アパートの立ち退き料には消費税はかかりません。
消費税は「対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、サービスの提供」にかかる税金です。立ち退き料の多くは、退去に伴う損失の補填や精神的苦痛への慰謝料としての性質を持つため、対価性がないと判断されます。
しかし、以下の場合は課税対象となる可能性があるため注意が必要です。
- 店舗や事務所の退去で、営業補償が含まれる場合
- 借家権の譲渡対価として明確に支払われる場合
事業者が関わるケースでは判断が複雑になるため、税理士などの専門家に確認しておきましょう。
立ち退き料の交渉は管理会社に任せられる?
管理会社に交渉のすべてを任せられません。弁護士以外の者が報酬を得て法律事務(交渉や和解など)を行うことは「非弁行為」として禁止されています(弁護士法72条)。
管理会社ができるのは、以下の範囲までです。
- 貸主の意向(通知書など)を借主に届ける
- 借主の希望条件を聞き取り、貸主に報告する
「100万円で手を打つように説得してくれ」といった具体的な交渉依頼は違法となるリスクが高いです。



交渉がこじれそうな場合は、管理会社ではなく弁護士に相談しましょう。
立ち退き料の支払いはいつ行うのが一般的?
「明け渡しと同時」または「合意時と明け渡し時の分割」が一般的です。
安全なのは、部屋の中が空になったことを確認し、鍵を受け取るのと引き換えに全額を支払う方法です。
しかし、借主の資金繰りの都合で、引っ越し前に一部が必要な場合もあります。その際は、以下のような配分で支払うケースが多いです。
- 合意書の締結時:総額の30〜50%(着手金として)
- 明け渡し完了時:残りの金額
全額を先払いするのはリスクが高いため、必ず残金を残すように設定しましょう。
老朽化で住むのが危険でも立ち退き料は必要?
老朽化で住むのが危険でも、立ち退き料が必要になるケースは多いです。
「危険」の程度が、即座に避難しなければならないレベル(行政からの退去命令など)でない限り、借主の居住権は守られます(借地借家法第28条)。
しかし、倒壊のリスクが極めて高く、客観的な証拠(耐震診断結果など)がある場合は、正当事由が認められやすくなります。立ち退き料の金額が通常よりも低く抑えられる可能性はあるでしょう。



「危険だからゼロ」と決めつけず、移転のための最低限の費用は負担する姿勢を見せることが大切です。
まとめ|アパートの立ち退き料について理解を深め、スムーズな手続きを目指そう
アパートの立ち退き料は、貸主と借主の利害を調整し、円満に契約を終了させるための重要な要素です。金額に定価はなく、貸主の「正当事由」の強さと、借主の「退去に伴う損失」の大きさによって変動します。
もし交渉に行き詰まったり、適正な金額がわからなかったりする場合は、早めに不動産問題に強い弁護士に相談することが大切です。専門家の助言を得ることで、無用なトラブルを回避し、納得のいくリスタートを切れるでしょう。
立ち退き料の支払いに関する悩みを抱えている方は、弁護士法人「アクロピース」にお任せください。不動産トラブルに精通した弁護士が、個々のケースに合わせアドバイスを提供いたします。初回60分の無料相談も実施しているので、まずはお気軽にご相談ください。
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