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家賃滞納が理由で強制退去させられたその後には、生活が深刻な事態に陥る可能性があります。
強制退去は住まいを失うだけでなく、経済的、社会的に大きなダメージを与えかねません。
また、強制執行で部屋から運び出された荷物の行き先や費用負担についても、今後の生活に影響するため気になるでしょう。
家賃が支払えず、強制退去に怯える生活をお送りの方はぜひ参考にしてください。
家賃を滞納し強制退去させられると住む家がなくなり、滞納履歴が信用情報機関などで共有され、社会的信用を失墜するおそれがあります。
家賃の滞納履歴は、次の家を借りる際の妨げになるでしょう。
さらに、滞納した家賃とそれにともなう遅延損害金や強制執行にかかった費用を請求されるため、経済的な負担ものしかかります。
これらの請求は、家賃の支払いが困難で滞納している方にとってかなりの重荷です。
強制退去は住まいを失うばかりでなく、社会的、経済的にもダメージを与え、深刻な事態を招きます。
下記の記事では、強制退去になる前に賃借人が取るべき行動について詳しく解説しています。
あわせて参考にしてください。
関連記事:強制退去になる前に要確認!強制退去になった場合に借主が取るべき3つの行動とは?
家賃の滞納が続くと、賃貸人から法的手続きによって強制退去させられる可能性があります。
ただし、家賃を滞納したからといって、直ちに強制退去させられるわけではありません。
家賃滞納から強制退去までの流れは、以下の段階を踏んで進められます。
家賃を滞納すると翌日から1週間以内に、賃貸人や管理会社から支払いの督促を受けるのが一般的です。
支払いの督促は電話や訪問、文書などのさまざまな方法で行われ、賃借人に滞納家賃を支払うよう求められます。
この段階で賃貸人は、賃借人と話し合いで円満に解決を図りたいと望む一方で、法的手段に踏み切る必要性についても検討を始めるでしょう。
支払いの督促を受けても滞納した家賃を支払わなければ、賃貸人は状況に応じて法的手続きの準備を開始します。
家賃滞納が1〜2カ月経過すると、連帯保証人に支払いを督促する通知が送られます。
連帯保証人は、賃借人が家賃を滞納した際に代わって支払う義務を負っているため、賃借人と同様に督促の対象です。
賃貸人側が法的措置を検討している場合は、督促状が内容証明郵便で送付されるケースがあります。
内容証明郵便は、以下の項目を郵便局が証明してくれます。
内容証明郵便は、内容文書の存在や差出日などに法的な証明力があります。
そのため、賃貸人が契約解除などの手続きをすすめる際にすでに督促を行っていることの証拠書類として、裁判でも認められる督促の方法です。
家賃の滞納が続くと、賃借人と賃貸人との信頼関係が破壊されたと認められる可能性が高まり、賃貸人は賃借人に対し建物明け渡しの法的措置が行える権利が発生します。
信頼関係の破壊は、3カ月以上の家賃滞納で認められるケースが一般的です。
それにともない、賃貸人から賃貸借契約解除通知が、内容証明郵便で送付される可能性があります。
民法第541条には、一定期間を定めて債務の履行を催促し、その期間に履行されなければ契約解除できるという規定があります。
民法第五百四十一条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
賃貸借契約解除通知には「指定された支払期日までに滞納家賃が支払われない場合は、賃貸借契約を解除する」旨が記載されています。
賃貸人からの催告に賃借人が期限までに応じないときは、賃貸借契約の解除が認められます。
この催告の支払期限は、催告の内容証明郵便が到達してから1週間から2週間程度に設定されることが多いでしょう。
この催告の期間内に支払いがされない時には、賃貸人は賃借人に対して建物明渡請求の訴訟を提起することになります。
賃貸借契約解除通知の効力が発生し、それでも賃借人が自主的に退去しないときは、賃貸人が裁判所に建物明渡訴訟を提起する場合があります。
建物明渡訴訟の訴状が届くのは、賃貸借契約解除通知が内容証明郵便で届いてから、1カ月程度経った頃です。
これは、賃貸人が裁判所に訴状を提出してから、訴状の審査や初回期日の決定などが行われるための期間に1ヶ月ほどを要するからです。
建物明渡訴訟で賃借人が裁判に出席して反論や和解案を提示しなければ、賃貸人の訴えが認められる可能性が高くなります。
審理が終了し明け渡しの判決が下されると、賃借人は退去しなければいけません。
賃貸人から建物明渡訴訟を提起されたときは、適切な対応をとるためにも弁護士に相談するとよいでしょう。
裁判所から明け渡しを命じた判決が出ても賃借人が自主的に退去しない場合は、以下の流れで強制退去させられる可能性があります。
強制執行では、執行官の指示のもと執行補助者が室内の荷物をすべて運び出し、鍵の交換が行われ退去させられます。
家賃滞納で強制退去させられると、住む家がなくなること以外にも、さまざまな深刻な問題に直面する可能性があります。
強制退去の後に賃借人を待ち受ける状況には、以下の内容が挙げられます。
強制執行で運び出された荷物は、執行官が指定する保管場所で一定期間保管されます。
保管期間は法律で定められていませんが、通常1カ月程度です。
期間内に賃借人が引き取りに来なければ、売却か破棄して処分されます。
強制退去時の荷物の扱いついては、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:強制退去後の荷物を引き取るには?手続きや発生する費用についても解説
家賃の滞納分を回収するために、賃貸人から給与などの財産を差し押さえられる可能性があります。
給与を差し押さえられる場合、差し押さえられた側の最低限度の生活を保障するため、民事執行法第152条で上限が定められています。
第百五十二条
次に掲げる債権については、その支払い期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
実際には、以下の金額が給与の差し押さえの上限です。
手取り額が月額44万円以下の場合 | 手取り額の内の1/4 |
---|---|
手取り額が月額44万円を超える場合 | 手取り額から33万円控除した金額 |
給与以外にも、預貯金や室内にある物や現金、自動車、不動産などの財産が差し押さえられる可能性があります。
強制執行の費用は、債務者である賃借人が支払うと民事執行法第42条で定められています。
第四十二条
強制執行の費用で必要なもの(以下「執行費用」という。)は、債務者の負担とする。
たとえば、ワンルーム賃貸物件の強制執行にかかる主な費用の目安は、以下の通りです。
※これは一例で、荷物が多い場合にはこの何倍もの高額になる場合があります。
催告時の開錠技術者費用 | 約7,000円 |
---|---|
明渡催告執行立会費用 | 約1万5,000円 |
明渡時の開錠技術者費用 | 約2万円 |
明渡執行立会費用 | 約2万円 |
執行補助者費用 | 約2万4,000円 |
荷物の運搬費用 | 約1万5,000円 |
荷物の保管費用 | 約3万円 |
荷物の廃棄費用 | 約4万2,000円 |
合計 | 約17万3,000円 |
強制執行の費用は、部屋の広さや荷物の量などによって変動します。
住まいを失ったところに請求される強制執行の費用は、賃借人にとって生活の立て直しの妨げになるでしょう。
滞納した家賃は、遅延損害金も合わせて請求されます。
遅延損害金は家賃の滞納分に賃貸借契約書に記載された利率(上限利率14.6%)で計算されます。
賃貸借契約書に利率について記載がない場合、遅延損害金の年利は3%(2020年4月以降の滞納分)です。
家賃が支払えない経済的な状況に、追い打ちをかけるように遅延損害金の支払いを求められるため、さらに生活の困窮が増してしまうおそれがあるでしょう。
また、賃貸借契約書に「倍額賠償予定条項」がある場合は、賃貸契約の終了から明け渡しまでの期間に発生する家賃の2倍相当額を、損害金として請求されます。
家賃の滞納は生活に深刻な事態を招くため、支払いが困難な状況に陥ったときは、早急に弁護士に相談し的確なアドバイスを受けてください。
弁護士法人アクロピースでは60分の無料相談を行っています。
法律の専門家である弁護士が、生活再建に必要な法的手段についてさまざまな提案を行います。
クレジットカードによる家賃の支払いや信販系の保証会社と契約していて滞納すると、信用情報機関のブラックリストに載るケースがあります。
また、全国賃貸保証業協会に加盟する保証会社の物件で家賃を滞納しても、滞納情報が共有され、入居審査に不利にはたらく可能性があります。
家賃滞納が理由で強制退去になると、5〜10年間記録が残ることがあり、次の家が借りられない事態が発生してしまうかもしれません。
強制退去は住まいを失うだけでなく社会的信用にも悪影響を及ぼすため、今後の生活にダメージを与えるでしょう。
傷病や失業、借金などが理由で家賃が支払えず、自力では生活の立て直しが難しいなら、セーフティネットの利用を検討してください。
以下の制度は、生活困窮者を救済し、自立へ向かうためのセーフティーネットです。
住宅確保給付金制度は、2年以内に離職や廃業、やむを得ない休業などで収入が減少し、住居を失うおそれがある方に賃貸住宅の家賃を支給します。
この制度は、安定した住まいの確保と就労による自立を支援することが目的です。
住宅確保給付金を受給するには、以下の要件を満たす必要があります。
(1)主たる生計維持者が
①離職・廃業後2年以内である場合
もしくは
②個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職、廃業と同程度まで減少している場合
(2)直近の月の世帯収入合計額が、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12と家賃の合計を超えていないこと
(3)現在の世帯の貯金合計が、各市町村で定める額を超えていないこと
(4)求職活動要件としてハローワーク等に求職の申込をし、誠実かつ熱心に求職活動を行うこと
支給期間は原則3カ月(最大9カ月)で、支給額の上限は居住地の市町村や世帯人数によって異なります。
以下は、東京都特別区の支給額の例です。
1人世帯 | 月額5万3,700円 |
---|---|
2人世帯 | 月額6万4,000円 |
3人世帯 | 月額6万9,800円 |
住宅確保給付金の活用で、強制退去のリスクを減らし生活再建の糸口をつかんでください。
生活保護は財産や収入がなく、経済的に最低限度の生活の維持が困難で、頼れる親族がいない方を支援する制度です。
生活保護制度は、憲法第25条に規定する生存権の理念に基づき、最低限度の生活を保障し自立を促すことを目的にしています。
第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すめての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及増進に努めなければならない
生活保護の相談や申請は、居住する地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。
ただし、福祉事務所の設置のない自治体では、町村役場でも申請できます。
支給される保護費は、最低限度の生活に必要な費用から収入を差し引いた差額です。
最低生活費 | |
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収入(年金・児童手当など) | 支給される保護費 |
強制退去させられた後の生活再建は容易ではありませんが、生活保護制度の活用は日常生活の安定につながり、自立に向けた歩みを始めるきっかけになるでしょう。
債務整理は、借金に苦しむ方の救済を目的としたセーフティーネットです。
債務整理は借金の減額や免除、支払いの猶予などによって、債務者の生活再建を後押しします。
債務整理には4つの種類があります。
任意整理 | 貸主との交渉で利息や遅延損害金を免除してもらう |
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個人再生 | 家を残しながら借金を大幅に減額してもらう |
自己破産 | 借金を全額免除してもらう |
特定調停 | 話し合いにより月々の返済額を抑え、支払いの負担を少なくしてもらう |
債務整理を活用すれば借金問題が解決に向かい、生活の困窮から抜け出すきっかけになるでしょう。
ただし、どの方法を選択するのかは、個人の状況で異なります。
債務整理を検討する際は、弁護士に相談してアドバイスを受けてください。
弁護士は借金の状況を分析して最適な債務整理の方法を提案してくれます。
家賃滞納で強制退去させられたその後に、待ち受ける状況について解説しました。
家賃滞納で強制退去させられたその後には、経済的、社会的ダメージがあるため、家賃が払えないほど困窮したときは弁護士に相談して生活の立て直しを図りましょう。
弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。