購入後の土地建物に関する売主の瑕疵担保責任は追及できるのか

土地を購入し家を建てようとした時、買主としては事前に知り得なかった瑕疵があったために建築を進めることができず、トラブルになることがあります。

このような場合、売主に対して瑕疵担保責任を追及できるのか、責任を求めるにはどのような条件が必要なのかについてご説明します。

瑕疵担保責任のトラブルでお困りの方は、専門家に相談するのが解決への一番の近道です。

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目次

土地建物に存在する欠陥に対して売主は瑕疵担保責任を負う

売買対象となる土地建物について、本来なら備わっているべき機能や品質が欠けていることがあります。これを瑕疵と言い、売主が責任を負って正しく対処すべきものとなります。

例えば、土地を購入する際の主な目的は建物建築であることがほとんどですが、地盤が軟弱だったり土壌汚染があったりすると、予定通り建築を進めることができなくなります。これを物的瑕疵と言い、売主は責任を負わなければなりません。

この他にも、ごく近隣に強い嫌悪を感じる施設や事故物件があったり、建築制限を受けるような立地であったりする場合も同様です。

万が一土地の瑕疵が発見されれば、その後の建築計画や費用が大幅に変更されることになりかねず、トラブルの原因になりやすいと言えます。

特に建物建築の場合は、不動産会社の他にも、建築会社等と複数の契約状態にあるため、買主としては想定していなかった細部の調整にも煩わされ、その影響は多大なものとなります。

仮に購入した建物が雨漏りすることが後から判明した場合、民法の原則では事実を知ってから1年以内であれば、売主が瑕疵を自覚していたかどうかに関わらず売主に損害賠償請求することができます。

建物の構造から改修工事を行うこともできなければ、買主が建物に居住する上でも賃貸物件として活用する上でも重大な欠陥が残り続けることになり、買主は契約時には想定されていなかった大きな損害を被ることになるためです。

売主は自らに過失がないと主張しても瑕疵担保責任を免れることはできませんので、売主にとっては大きなリスクとなり得るものですが、買主としては必ず確認しておくべき事項となります。

ただし双方が話し合いの上で納得し合意に至れば、売主が瑕疵担保責任を負わなくて良いとする取り決めを行うことも可能です。

これを瑕疵担保責任免除特約と言います。口頭で瑕疵担保責任についてきちんと確認することはもちろんですが、契約書に当該特約が設けられているか、双方が合意した通りの記載になっているか、細部まで読み込むことが必要です。

事後に発覚しやすい「見えない欠陥」の範囲

事後に発覚しやすい「見えない欠陥」とは、建物を建てる段階になり土中に産業廃棄物や程度の大きな障害物があった場合や、土壌汚染や地盤沈下等があった場合等、その事実を知っていれば契約に至らなかった可能性のある重大欠陥を指し、以下の状態を含みます。

近隣住民の土地との境界線に関する問題

他の住民の土地と境界線が重なり合う部分があると後から判明した場合。また近隣住民との間に境界線に関する争いがあることを後から知った場合。

冠水や浸水経験の有無

過去に冠水や浸水した経験があり、今後も同じ状況に至る可能性がある場合。

地盤沈下や地盤軟弱

購入した土地がもともと沼地等のため地盤が不安定な場合。より強固な基礎工事が必要になる可能性がある。

逆に、地盤軟弱であってもそれが事前に告知されており、地盤改良工事が必要であることがわかっている状態であれば瑕疵には当たらない。

配管の腐蝕

土中に埋まった部分の配管が腐食し給排水に問題がある場合。

土壌汚染や土地の使用履歴

人体に有害な物質が土壌に含まれている場合。有害物質を扱う事業所が過去にその土地を使用していた場合、土壌汚染の可能性を疑うことがある。

「見えない欠陥」である瑕疵は上記に限ったものではなく、様々なケースがあるため、契約成立後に瑕疵が発覚した場合の取り扱いについては、双方でよく話し合い決定事項を契約書に明記しておくことが大切です。

買主にとって後から瑕疵の疑いが生じることは、非常に不安かつ不快なものですし、売主にとってもせっかく整った契約がトラブルに発展することは望んでいないはずです。

従って売主は、販売する土地建物の使用履歴や地盤に関する注意事項、近隣住民との関係性や夜間の騒音問題に至るまで、買主では知り得ない情報を事前に十分提供しなければなりません。

買主としても、契約時にしっかり確認を行わず後から「こうなるとは思っていなかった」という事態を避けるために、土地建物の取引に関して勉強して確認を繰り返し、不明点がない状態で取引を進める心がけが大切です。

瑕疵担保責任を求めることができる期限をよく確認する

放置しておくと大事に発展しやすい土地建物の瑕疵ですが、その取り扱いについては売主と買主の間で任意に決定して良いことになっています

双方で話し合い、「土地を引き渡した後1年以内に見えざる瑕疵が発覚した場合、売主の責任においてこれを排除する。」といった取り決めをした場合、売主の瑕疵担保責任の期限は1年ということになります。

ただし、売主が不動産会社の場合は2年以上の期間を定めなければなりません

売主自身すら自覚していなかった瑕疵が原因で買主から責任追及と対処を求められることは、売主としてはあまり望ましい状態とは言えません。

このため、契約書に記載する瑕疵担保責任期間をごく短期に設定していたり、責任免除としていたりするケースもあります

事前に瑕疵を自覚できないのは買主も同様ですので、契約書の条項を読み飛ばすことなくしっかり確認し、責任を求めることができる期間について少しでも長くなるよう交渉することが大切です。

ただし、売主が事前に瑕疵を認知していたにも関わらず、買主にその事実を告知せず契約に至った場合は、売主が責任を負うことになります。

なお、中古物件の場合はすでに築年数が相当程度経過していることから、瑕疵の存在確率も高くなることが想定されます。

このため中古物件では瑕疵担保責任が免除されることも多々見られるため予め注意が必要です。

「瑕疵担保責任の時効の消滅や免責の可能性」の記事もご覧ください。

ホームインスペクション(住宅診断)でリスクを軽減

瑕疵担保責任のリスクを軽減させるために、2018年に宅建業法が改正になり、ホームインスペクションの斡旋の内容が重要事項説明に盛り込まれるようになりました。(宅地建物取引業法

ホームインスペクションとは、特定の講習を受けた建築士が、中古住宅の売買に先立って物件の状態をチェックして、瑕疵が存在しないかなどを事前に診断することをいいます。

特定の専門家のホームインスペクションを受けることで、万が一将来的に瑕疵が発覚したとしても、保険によって補填できるというサービスもあります。

ただ、ホームインスペクションを実施するためには売主の了解も必要になるため、今後その必要性が広く一般に広がっていくことが求められるでしょう。

ホームインスペクションによって中古住宅の安全性が担保されるようになれば、これまで以上に中古住宅の流通が活性化することが期待されます。

話し合いが平行線になりがちな瑕疵担保責任問題は事前に弁護士に相談を

仮に双方が瑕疵の事実を後から知ったとしても、売主には販売者としての責任があります

状況により責任の取り方は変わりますが、安心できる売買取引のためには、売主の責任を免除とすることなく対処を求めることができる期間を明確に決めておかなくてはなりません

契約する土地建物について全容が明らかな状態であれば、双方とも気持ち良く取引を進めることができますが、必ずしも理想的な取引ばかりではないことを踏まえておかなければなりません。

売主たる不動産業者が事前説明をきちんと行っていたか、契約書に読み落としがないか、買主は必要なことを確認できているか等、 契約事には一つ一つ丁寧に合意していく作業が欠かせないのです。

不動産取引における瑕疵担保責任に関するトラブルとは、瑕疵そのものの存在よりも、瑕疵が発覚してからのお互いの対処方法が明確になっていないことに原因があると考えることができます。

不動産業者というプロを相手にした取引において、いかに買主が自分自身とその資産を守るかはとても重要です。

本格的なトラブルになってしまう前に、契約前から当事務所にご相談にお越し頂き、法の専門知識をもとにしっかりと確認作業を行っていくことをお勧めします。

瑕疵担保責任に関するトラブルでお困りの方は、弁護士法人アクロピースへご相談ください。

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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

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