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JAに預けられている故人の預金相続手続きについて、「少額であれば簡易的な手続きで引き出せるのでは?」と考える方は少なくありません。
しかし、JAにはそのような規定はなく、預金の額に関係なく所定の手続きを行う必要があります。
また、遺産分割前でも預金を引き出せる場合があるため、その条件や方法を正しく理解することが重要です。
本記事では、JAの預金相続手続きに関する具体的な方法や注意点を詳しく解説します。
初めて手続きを進める方やスムーズに相続を進めたい方は、ぜひ最後までお読みください。
相続手続きについて詳しく知りたい方は、専門の弁護士や窓口に相談することをおすすめします。
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JAにおいて、預金が少額であっても手続きの簡略化が行われるといった規定はありません。
一方、ゆうちょ銀行では、100万円以下の預金の場合に手続きが簡易化されます。
そのため、「少額なら手続きが簡単になる」という噂を耳にした場合、それはゆうちょ銀行の規定に関する情報である可能性があります。
また、一般の銀行においても預金が少額の場合に手続きが簡略化される場合があるため、確認してみるとよいでしょう。
JAで亡くなった人の預金を引き出す場合は、具体的な手続き内容について最寄りのJA窓口または公式Webサイトに問い合わせをすることをおすすめします。
一般銀行とゆうちょ銀行の手続きについては、以下の記事で解説しています。
関連記事:亡くなった人の預金が少額の場合の対処方法
遺産分割前でも、下記のケースでは故人の預金を引き出せる可能性があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2019年の相続法改正により、遺産分割が完了していなくても、相続人が故人の預貯金を一定額まで引き出せる「預貯金の仮払い制度」が新設されました(民法909条の2)。
預貯金の仮払い制度とは、葬儀費用や急な支払いなど、相続人が最低限の支払いを行えるように凍結中の口座から一定金額を口座から引き出せる仕組みのことです。
仮払いで引き出せる金額には上限が設けられており、下記の計算式で算出します。
相続開始時の預貯金残高 × 1/3 × 法定相続分
ただし、1つの金融機関から引き出せる金額は最大150万円です。
預貯金の仮払いを行うには、金融機関の窓口で手続きを行う必要があります。
必要書類は下記のとおりです。
金融機関によって必要書類が異なる場合があるため、詳しくは窓口に確認しましょう。
家庭裁判所の保全処分を利用する方法では、家庭裁判所に申し立てを行い、必要性を証明することで故人の預貯金から必要な金額を引き出すことができます。
相続人間での合意が得られない場合や、預貯金の仮払い制度の上限金額を超える金額が必要な場合に適しています。
仮払い制度とは異なり、裁判所が必要性を認めた金額を引き出せるものであり、金額に上限が設けられていません。
また、遺産分割審判の際に仮払いされた預貯金も含めて審判が行われるため、公正な分割が担保されます。
ただし、審査や判断に時間がかかるため、急いでいる場合は仮払い制度を選択した方がよいでしょう。
遺言書に記載がある場合、「すべての遺産は〇〇に相続させる」や「◇◇銀行△△銀行の預金は〇〇に相続させる」などと指定している場合、その指定を受けた人(受遺者)は、その預金を単独で引き出す権利を持ちます。
このため、通常の相続手続きで求められる他の相続人の同意や遺産分割協議を経る必要がありません。
受遺者は、遺言書の内容を証明するために公正証書遺言や家庭裁判所で検認を受けた遺言書を金融機関に提示することで、指定された金額を引き出すことができます。
JAの預金の相続手続き方法は下記のとおりです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
関連記事:故人の少額の預金の引き出し方は?手続き方法や必要書類を解説
相続手続きを始めるには、被相続人の逝去日や住所などの情報を、電話または直接来店でJAに伝える必要があります。
案内の準備や手続きには一定の時間がかかるため、余裕をもって行動することが大切です。
また、JAなど一部の金融機関では来店予約が必要な場合もあるため、事前に確認をしておくとスムーズに手続きを進めることができます。
JAの預金の相続手続きの必要書類は、ケースごとに異なります。
ケース別の必要書類について詳しく見ていきましょう。
遺言執行者が選任されている場合、相続手続きに必要な書類は下記のとおりです。
必要書類 | 入手先 |
被相続人(亡くなられた方)の戸籍(除籍)謄本または認証文付き法定相続情報一覧図 | 戸籍(除籍)謄本:市区町村役場認証文付き法定相続情報一覧図:法務局 |
公正証書遺言謄(正)本、または自筆証書遺言など | 公正証書遺言:公証役場自筆証書遺言:所定の保管場所(家庭裁判所での検認手続きが必要) |
遺言執行者等の印鑑証明書(6ヶ月以内のもの) | 市区町村役場 |
遺言執行者の本人確認書類(免許証・マイナンバーカード等) | 遺言執行者が保管 |
被相続人の貯金通帳・証書・キャッシュカード、共済証書等 | 被相続人の保管場所 |
相続等に関する手続依頼書(記入いただく方全員の実印を押印) | JA(用紙を金融機関から取得して記入) |
その他 | 手続きに応じてJAが指定 |
遺言書があるも遺言執行者が選任されていない場合では、下記の書類を提出します。
必要書類 | 入手先 |
被相続人(亡くなられた方)の戸籍(除籍)謄本または認証文付き法定相続情報一覧図 | 戸籍(除籍)謄本:市区町村役場認証文付き法定相続情報一覧図:法務局 |
公正証書遺言謄(正)本、または自筆証書遺言など | 公正証書遺言:公証役場自筆証書遺言:所定の保管場所(家庭裁判所での検認手続きが必要) |
受遺者の印鑑証明書(6ヶ月以内のもの) | 市区町村役場 |
被相続人の貯金通帳・証書・キャッシュカード、共済証書など | 所定の保管場所 |
相続等に関する手続依頼書(記入する人全員の実印を押印) | JA(用紙を金融機関から取得して記入) |
その他 | 手続きに応じてJAが指定 |
遺産分割協議書がある場合は、下記の書類が必要です。
必要書類 | 入手先 |
被相続人(亡くなられた方)の戸籍(除籍)謄本または認証文付き法定相続情報一覧図 | 戸籍(除籍)謄本:市区町村役場認証文付き法定相続情報一覧図:法務局 |
全ての相続人の戸籍謄本(不要な場合あり) | 市区町村役場 |
全ての相続人の印鑑証明書(6ヶ月以内のもの) | 市区町村役場 |
遺産分割協議書 | 相続人全員で作成 |
被相続人の貯金通帳・証書・キャッシュカード、共済証書など | 所定の保管場所 |
相続等に関する手続依頼書(記入する人全員の実印を押印) | JA(用紙を金融機関から取得して記入) |
その他 | 手続きに応じてJAが指定 |
遺産分割協議書を作成しない場合は、下記の書類が必要です。
必要書類 | 入手先 |
被相続人(亡くなられた方)の戸籍(除籍)謄本または認証文付き法定相続情報一覧図 | 戸籍(除籍)謄本:市区町村役場認証文付き法定相続情報一覧図:法務局 |
全ての相続人の戸籍謄本(不要な場合あり) | 市区町村役場 |
全ての相続人の印鑑証明書(6ヶ月以内のもの) | 市区町村役場 |
被相続人の貯金通帳・証書・キャッシュカード、共済証書など | 所定の保管場所 |
相続等に関する手続依頼書(記入する人全員の実印を押印) | JA(用紙を金融機関から取得して記入) |
その他 | 手続きに応じてJAが指定 |
書類は、すべて原本を用意する必要があります。
提出した原本は先方で確認され、その場で写しが作成された後に返却されます。
ただし、融資取引がある場合の印鑑証明書については、発行後3ヶ月以内のものが求められ、原本は返却されません。
このため、必要に応じて追加で印鑑証明書を取得しておくことをおすすめします。
また、手続きの過程で追加書類の提出を求められる場合があります。
これを見越して、事前に手続きに関する案内を確認し、不明点があれば担当窓口に問い合わせておくとスムーズです。
必要書類をすべて提出した後、金融機関で審査が行われ、問題なければ預金口座の払戻しが行われます。
完了までに日数がかかる場合もあるため、余裕を持って進めることが重要です。
場合によっては追加の確認や書類が必要となることもあるため、手続きの進行状況を金融機関に随時確認することをおすすめします。
JAの預金に加え、共済や出資を利用している場合は、それぞれで別途手続きが必要です。
共済契約や出資の内容によって、手続きの方法や必要書類が異なるため、詳細については担当者に相談することをおすすめします。
預金の引き出しと並行して進める場合は大きな負担となるため、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
JAでの相続手続きにおいて重要な点は下記のとおりです。
相続手続きには余裕をもった対応と事前準備が不可欠です。
不明点がある場合やトラブルを防ぐためにも、専門家に相談しながら進めると安心です。
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弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
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