【遺産相続】妻に全額相続してほしい場合はどうするべき?方法や注意点を解説

【遺産相続】妻に全額相続してほしい場合はどうするべき?方法や注意点を解説

相続が発生した際、配偶者である妻に全額を相続させたいと考える方も多いでしょう。

しかし、法律で定められた法定相続分や遺留分の存在により、適切な対策を講じなければ、全額の相続が難しくなることがあります。

妻に全額相続させるための具体的な方法や、遺留分侵害額請求への対策、相続税の軽減措置などについて詳しく解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

妻に全額を遺産相続させる方法についてお悩みの方は、相続問題に強い弁護士法人アクロピースにご相談ください。

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目次

妻の法定相続分とは?全額相続させることはできる?

相続

相続が発生した際、まず考慮しなければならないのは法定相続分です。

法定相続分とは、法律で定められた各相続人が相続する財産の割合を指します。

妻が相続する割合は、他の相続人の有無によって異なります。

配偶者のみが法定相続人の場合、妻は遺産の100%を相続しますが、配偶者以外にも子供がいる場合は1/2、直系尊属がいる場合は2/3、兄弟姉妹がいる場合は3/4が妻の相続分となります(民法900条)。

つまり、妻が全額相続できるのは、妻以外に相続人がいない場合に限られます。

しかし、他に相続人がいる場合でも、遺言書を作成することで妻に100%相続させることが可能です。

ただし、遺言書を作成しても、他の相続人が遺留分(法律で保障された最低限の相続分)を請求した場合、100%を妻に相続させることは難しくなる場合があります。

このため、遺留分についても十分に理解し、対策を講じることが重要です。

遺留分の対策については「遺留分侵害額請求される可能性を下げる」の見出しで解説します。

妻に全額相続させる方法

遺言

妻に全額相続させるための最も確実な方法は、遺言書を作成することです。

遺言書がない場合、遺産は法定相続分に基づいて分割します。

しかし、遺言書を作成すれば、法定相続分に縛られず、妻に全額を相続させることができます。

遺言書にはいくつかの形式があり、それぞれに特徴とメリットがあります(民法967条)。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が自ら全文を手書きする形式です。遺言書の作成に関わるのが自分だけのため、自分のペースで作成できる点がメリットです。
しかし、形式的な不備や内容の曖昧さが原因で、遺言書が無効になるリスクがあります。
また、遺言者の死後に家庭裁判所での検認手続きが必要となるため、手続きがスムーズに進まない可能性があります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認し、法律に則った形式で遺言書を作成する方法です。遺言者の意向を反映した遺言書を公証人が作成するため、法的要件を満たした遺言書を作成できます。
内容が無効になるリスクが非常に低く、信頼性が高いと言えるでしょう。
また、家庭裁判所での検認手続きが不要で、相続手続きが迅速に進むというメリットもあります。
ただし、作成には手数料がかかります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にしながら公証人によって証明を受ける形式です。
遺言者が自分で作成した遺言書を封印し、公証人と証人の前でその存在を確認してもらいます。
内容を公証人に知られることがありませんが、遺言書が法的要件を満たしていることの確認は受けられません。

妻が全額を相続できなくなるケース

法的ミス

妻が遺産を全額相続できるように対策をしても、予期せぬ事態によって相続できなくなるケースがあります。

それぞれの影響や原因などについて詳しく見ていきましょう。

遺言書が作成されていない、遺言書にミスがあった

遺言書を作成していない場合、法定相続分に基づいて分割するか、遺産分割協議を行い、すべての相続人が同意した内容で遺産を分割します。

これにより、妻が全額を相続することは難しくなります。

さらに、遺言書に記載ミスがあった場合も問題が生じます。

たとえば、財産の記載が不明確であったり、特定の財産を相続させる旨が曖昧に記載されていたりすると、遺言書の有効性が争われる可能性があります。

また、署名や押印がないといった遺言書の形式に関するミスも無効とされるおそれがあるため、遺言書を作成する際は法的要件を満たしていることの確認が必要です。

関連記事:遺言書の必須項目とは?書き方や注意点も解説

遺留分侵害額請求をされる

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、その不足分を請求する権利のことです(民法1046条)。

遺言書で妻に全財産を相続させる旨を定めたとしても、他の相続人(子や両親など)が遺留分を主張すれば、妻は全額を相続できなくなる可能性があります。

遺留分の割合は、父母(または祖父母)のみが相続人の場合は遺産全体の3分の1で、それ以外のパターンは遺産全体の2分の1です。

相続人が複数人いる場合には、相続人のパターンに応じて、3分の1又は2分の1に、相続人各自の法定相続分をかけたものが各自の遺留分になります。

たとえば、相続人が配偶者と子供の場合は、遺留分の割合は2分の1になり、配偶者と子供の法定相続分もそれぞれ2分の1なので、配偶者も子供もそれぞれの遺留分は相続財産の4分1にあたります。

計算してみると、相続財産が8,000万円の場合、配偶者と子供の遺留分はそれぞれ2,000万円となり、子供が複数いる場合は2000万円を子供の人数で均等に割ります。

遺留分侵害額請求は拒否できず、法的に認められた権利であるため、注意が必要です。

ちなみに、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないので、兄弟姉妹は遺留分を請求することはできません。

相続税を支払えないために不動産の現金化が必要なことも

相続税の支払い期限は、相続開始から10ヶ月以内と定められています(相続税法27条)。

不動産が遺産の大部分を占め、現金がほとんど残されていない場合、相続税の支払いが困難になることが考えられます。

そうなれば、不動産を現金化して相続税の支払いに充てることも検討する必要があります。

なお、相続税には「基礎控除」「配偶者控除」というような各種の優遇措置があり、下記の金額までは相続税がかかりません。

「基礎控除」 :3000万円+(600万円×相続人の人数)
「配偶者控除」:1億6,000万円又は配偶者の法定相続分相当額まで

また、自宅の相続においては「小規模宅地等の特例」という土地の評価額を最大80%圧縮できる特例もあります。

これらの制度を活用すれば、相続税額は大きく圧縮できる可能性があります。

妻が遺産を全額相続させるための準備

相続準備

妻が遺産を全額相続できるようにするためには、下記の準備が不可欠です。

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

遺言書のミスを防ぐために公正証書遺言を作成する

遺言書のミスを防ぐためには、公正証書遺言の作成が有効です。

公正証書遺言は、証人2名の立会いのもとで、遺言者が伝えたい内容に従って公証人が作成するため、自筆証書遺言にありがちな形式的なミスや記載ミスを防ぐことができます(民法969条)。

さらに、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが不要であり、遺言書が迅速に執行されるため、妻がスムーズに遺産を受け取ることが可能です。

遺留分侵害額請求される可能性を下げる

遺留分侵害額請求を受けるリスクを減らすためには、事前の対策が重要です。

遺留分は、法定相続人に最低限保障される財産の取り分であり、妻に全額を相続させる場合でも、他の相続人(子供や直系尊属)が遺留分を主張できます。

このリスクを軽減するためには、相続人と事前に十分に話し合い、理解を得ることが大切です。

また、遺言書に「配慮したい事情」「なぜ妻に全額相続させるのか」を付記することで、遺留分侵害額請求をされるリスクを軽減できます。

相続税を支払えるように現金を残す

遺産が不動産のみで構成されている場合、相続税の支払いが困難になるケースがあります。

したがって、遺産の一部を現金として残しておくことが重要です。

遺産の配分を考える際に、相続税や他の費用を支払うための現金が確保できるよう、遺産全体を見直し、不動産を一部売却するなどの対応を検討しましょう。

また、生命保険の受取人を妻に指定し、死亡保険金を受け取れるようにしておくことも1つの方法です。

妻を受取人に指定することで、死亡保険金によって現金を確保できます。

また、相続人が保険金を受け取る場合、「500万円×法定相続人の数」に相当する金額が非課税になります。

さらに、生命保険金は民法上は「遺産」とならず、また原則として「特別受益」に該当しないとされているため、原則として遺留分侵害額請求の算定の基礎にもなりません。

ただし、生命保険金の金額があまりに多すぎ、著しく公平に反する場合には、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

生命保険金を相続対策に利用する場合には、遺産の総額と生命保険金のバランス、相続税の非課税額とのバランスを考えて利用する必要があります。

生前贈与をする

生前贈与を活用することも、妻に全額相続させるための有効な方法です。

贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この範囲内での贈与は非課税です。

毎年少額ずつ贈与を行うことで、相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することが可能です。

ただし、毎年同じ金額を同じ日に贈与するような場合は定期贈与とみなされ、贈与税や相続税の課税対象となるおそれがあります。

これを避けるために、贈与金額や契約日を変えたり、妻名義の口座への振込や贈与契約書の作成といった客観的な記録が残る方法で贈与したりすることが大切です。

また、婚姻期間が20年以上の夫婦間では、おしどり贈与の特例を活用することで、居住用不動産や金銭の贈与において最高2,000万円の控除ができます。

関連記事:生前贈与は贈与契約書の作成が重要!定期贈与とみなされない書き方

妻が利用できる相続税の軽減措置

軽減措置

妻に相続した際に発生する可能性がある相続税については、下記の軽減措置があります。

それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

基礎控除

「基礎控除」は相続税の計算上、遺産の総額が一定の金額までは相続税が課されないという制度です。

基礎控除額の計算式は下記の通りです。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

基礎控除額は、例えば配偶者と子供が2人の場合には法定相続人は合計3人ですから、3000万円+(600万円×3)=4800万円になります。

また、養子も1人まで(実子がいない場合には2人まで)法定相続人にカウントできますし、相続放棄した人がいる場合にも相続放棄していないものとして法定相続人にカウントできます。

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減」は、配偶者が相続する財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のどちらか高い方までの財産については、相続税が課されない制度です。

相続税申告書または更正の請求書に加えて、遺産分割協議書の写しや遺言書の写し、戸籍謄本など、相続した財産の種類や評価額などを証明する書類を提出する必要があります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例」は、妻が相続する不動産に対する相続税を大幅に軽減できる制度です。

例えば相続する宅地が居住用であれば、その宅地の評価額の80%を減額できます。

妻が相続する場合の適用条件としては、相続した土地が相続直前まで被相続人の居住の用に供されていた宅地であることです。

さらに、特例を受けるためには、相続税申告書に小規模宅地等の特例の適用を受けたい旨を記載するとともに、遺産分割協議書の写しや小規模宅地等に係る計算の明細書などの提出が必要です。

その他利用を検討すべき制度~配偶者居住権

住宅

2020年4月の法改正で新たに設けられた「配偶者居住権」は、配偶者が所有していた不動産を残された妻(夫)が一定期間、または亡くなるまで住み続けられる制度です。

自宅を「居住権」と「所有権」に分け、配偶者に居住権を、他の相続人に所有権を相続させることができます。

たとえば、相続人が配偶者と子供1人で遺産総額が1億円、内訳が自宅が7,000万円で現金が3,000万円の場合、2分の1にあたる5,000万円ずつ相続するためには、自宅を現金化しなければなりません。

しかし、配偶者居住権を利用すれば、例えば居住権を2,000万円と評価し、配偶者は自宅の居住権と3,000万円の現預金を相続できます。

これにより、配偶者は住み慣れた自宅に住み続けると同時に、生活資金も確保できます。

また、子供は不動産の所有権を5,000万円として相続できます。

ただし、配偶者居住権を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 夫(妻)が亡くなった時点で、夫(妻)が所有していた建物に配偶者が住んでいた
  • 夫(妻)と法律上の婚姻関係にあった
  • 遺産分割、遺贈、死因贈与、審判によって取得した

配偶者居住権は、原則として配偶者が死亡するまで存続し、賃料を支払う必要はありません。

固定資産税は所有者である子供が支払うのが原則ですが、固定資産税を納めた子供から請求されれば、実際に住んでいる配偶者が通常の必要費として固定資産税を支払う必要があると考えられます(民法1034条1項)。

まとめ

遺産 計算

妻に全額相続させるためには、遺言書の作成や遺留分対策など、さまざまな準備が必要です。

公正証書遺言、生前贈与、配偶者の税額軽減などを活用し、相続手続きがスムーズに進むようにしましょう。

妻に遺産を全額相続させたい場合には、さまざまな準備が必要です。

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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

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