兄弟の遺産相続トラブル事例11選|もめる原因と対策を弁護士が解説

【兄弟での遺産相続】もめることはある?原因や対策を解説
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弁護士法人アクロピース代表弁護士(弁護士・税理士)

 

所属団体
東京弁護士会:登録番号48554
東京税理士会:登録番号155401

相続分野を重点的に扱い、これまで累計7,000件以上の相続相談に対応してきました。遺産分割や遺留分、不動産を含む相続トラブルから、生前対策・遺言書作成まで幅広く経験しています。
「誰が何と言おうと依頼者の味方である」ことを信念に、スピードと実行力を重視した対応を心がけています。

「親の遺産を兄弟で分けたいけど、話が進まない…」
「介護を一人で担ってきたのに、他の兄弟と取り分が同じというのは納得できない。」

兄弟で遺産を相続する際、このような悩みを抱える方は少なくありません。兄弟の遺産相続には、実家の分け方・寄与分・特別受益・使い込みなど、典型的にもめやすい11のパターンが存在します。

どのような場合にトラブルになるのか、どのように対策すればいいかを知っておくことで、感情的な対立を最小限に抑えながら公平な分割を目指すことが可能です。

この記事では、兄弟の遺産相続でもめる11の典型ケースと、それぞれの対策・予防策について、当法人の解決事例を交えながら詳しく解説します。

記事の要点・結論

兄弟の相続トラブルの主な原因:実家の分け方、寄与分や特別受益の有無が不公平感を生み、争いに発展しやすい。

遺言書があっても争いは起こる:極端に偏った内容は無効にはならないが、兄弟から金銭請求を受けるリスクが残る。

財産隠し・使い込みの疑念への対処:通帳履歴や客観資料を精査しないと感情的対立が深刻化する。

連絡が取れない兄弟がいる場合:不在者財産管理人の選任など法的対応が不可欠となる。

兄弟相続トラブルの予防策:財産目録の共有や付言事項で理由を伝えることで、兄弟間の不信と紛争を大きく減らせる。

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目次

兄弟の法定相続分とは

兄弟 相続

兄弟(子)の法定相続分は、配偶者の有無や兄弟の人数などによって異なります。

法定相続人が配偶者と子の場合、相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1です(民法900条1項)。子(兄弟)が複数いる場合は、2分の1を兄弟全員で分けることになります(民法900条4項)。

たとえば、配偶者と2人の子(兄弟)がいる場合、配偶者は遺産の2分の1を相続し、残りの2分の1を兄弟2人で分けるため、各兄弟の相続分は4分の1ずつです。

弁護士 佐々木一夫

配偶者がいない場合、法定相続分は全て兄弟で均等に分けます。たとえば、兄弟が3人いる場合、3分の1がそれぞれの法定相続分です。

兄弟が遺産相続でもめるケース

遺産 計算

兄弟が遺産相続でもめるケースは以下のとおりです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

関連記事:遺産相続トラブルになりやすいケースとは?実例と対処法を弁護士が紹介

不動産(実家)の分割方法で意見が合わない

相続財産に不動産がある場合、遺産分割協議の合意がしにくくなります。

不動産は明確な価値がわからないため、その価値をめぐって意見が対立することが珍しくありません。

また、被相続人所有の土地に家を建て住んでいる子がいる場合に、その子が高額な土地を取得してしまうと他の相続人に対して代わりに支払うお金(代償金)が支払えなくなってしまうことがあります。

不動産の価値は素人にはわかりにくいうえ、不動産のプロであっても意見が別れる場合が少なくなく、評価が難しい財産です。

このような場合には、不動産会社の簡易査定をとって不動産の価値を話し合ったり、それでも合意できない場合には不動産鑑定士に価値を算定してもらう必要があります。

弁護士 佐々木一夫

不動産に精通した弁護士に依頼して、その価値を算定して話し合いをすることも有効です。

不動産の代償金の金額で揉める

不動産を一人の兄弟が取得し、他の兄弟に金銭を支払う「代償分割」では、支払う金額(代償金)をめぐって対立が生じやすくなります。代償金の額は不動産の評価額を基準にして決まり、評価方法の選び方によって金額が大きく変わるためです。

代償金の計算式は次のとおりです。

代償金 = 取得する不動産の時価 ×(他の相続人の法定相続分 ÷ 実家取得者の法定相続分)

このとき不動産の評価額には、主に3つの選択肢があります。

  • 固定資産税評価額(市区町村が算定した課税評価額)
  • 路線価(国税庁が公表する相続税評価額の基準)
  • 時価(不動産鑑定士による鑑定評価または不動産会社による査定額)

3つの評価額には差があり、時価>路線価>固定資産税評価額の順になるのが一般的です。受け取る側は高い評価額(時価)を、支払う側は低い評価額(固定資産税評価額)を主張しがちで、ここで合意が崩れることが少なくありません。

弁護士 佐々木一夫

第三者の鑑定評価を介在させると、合意までの時間を大幅に短縮することが可能です。

代償金の支払いが難しい場合は、不動産を売却して現金で分ける「換価分割」への切り替えも検討しましょう。
参考:国税庁|路線価図・評価倍率表

どちらかが被相続人の介護をしていた(寄与分)

被相続人の介護を行っていた相続人がいる場合、その介護の寄与度によっては寄与分が認められる可能性があります。

寄与分は遺産分割の際に各相続人が受け取る具体的な遺産額に影響するため、意見の相違が生じやすくなります。

寄与分が認められるためには、親族として通常の貢献を超える「特別の寄与」として法的に認められる必要があります。

たとえば兄弟の一方が親の介護をほとんど一人で担っていた場合、その兄弟が「私は介護に多くの時間と労力を費やしたのだから、他の兄弟よりも多くの遺産を受け取る権利がある」と主張することがあります。

一方で、他の兄弟が「介護をしたのはあなたの選択だった」「私たちも他の方法で親を支えていた」などと反論すれば、話し合いがますます複雑化することになりかねません。

寄与分について、相続人間で話し合いがつかない場合には、最終的には家庭裁判所で寄与分を定めてもらうことになります。

特定の兄弟に生前贈与をしていた(特別受益)

生前贈与が特別受益にあたる場合、遺産分割が複雑になり、トラブルが発生しやすくなります。

特別受益とは、被相続人が相続人に対して生前に行った一定の水準を超える特別な贈与や遺贈のことです。

たとえば、親が生前に子供に開業資金や住宅購入資金を贈与した場合、それが特別受益として扱われることがあります。

特別受益が絡むと、相続財産全体にその贈与額を加算し、その上で具体的な相続分を計算する「持ち戻し計算」を行います(民法903条)。

被相続人の総財産が6,000万円で、長男が1,000万円の開業資金を受け取っていた場合、相続財産は7,000万円として計算されます。

この持ち戻し計算により、他の相続人との公平な遺産分割が図られますが、この過程で何を特別受益とするのかをめぐって、不満や対立が生じやすくなります​。

関連記事:特別受益は遺留分侵害額請求の対象になるのか?2つの関係性や違いについても弁護士が解説

遺産額が予想よりも少ない(使い込み・財産隠し)

遺産額が予想より少ない場合、相続人間で「どちらかが遺産を隠しているのではないか」という疑念が生まれ、トラブルに発展することがあります。

特に、財産が不明瞭な場合や、被相続人が生前に財産を整理していなかった場合に起こりやすいでしょう。

たとえば、兄弟の1人が財産を管理していた場合、他の兄弟はその管理が不透明であると感じ、不信感が募ることがあります。

弁護士 佐々木一夫

このような場合には、親の銀行の取引履歴を取り付けて詳細に金銭の出入金を調べることが必要になります。

遺言書で理不尽な遺産分割方法を指定された(遺留分)

「兄だから」という理由だけで9割を相続させるなど、不公平な遺産分割を遺言書で指定した場合、遺留分を巡って争いが起きることがあります。

遺留分は遺産全体の一定割合を最低限受け取る権利です(民法1042条)。

遺留分を侵害された場合は、遺留分侵害額請求を行うことで遺留分に相当する遺産額を受け取ることができます。

遺留分は、配偶者と子が法定相続人の場合はそれぞれ4分の1、兄弟(子)のみの場合は2分の1です。

子が複数の場合には、子に割り当てられる遺留分を子の人数で等分した割合がそれぞれの遺留分の割合になります。

遺留分を請求する場合には、相続の開始及び自身の遺留分が侵害されている事を知った日から1年以内に遺留分侵害額請求をする必要があります。

あわせて読みたい
遺留分侵害額請求とは?計算方法や時効・手続きの流れをわかりやすく解説【弁護士監修】 遺留分侵害額請求とは、他の相続人に侵害された遺留分を取り戻す手続きです。記事では遺留分侵害額請求の基本や手続きの方法、遺留分減殺請求との違いを解説。弁護士に頼るべきケースも紹介しています。

遺産を独り占めしようとする兄弟がいる

「自分は長男だから」「家業を継ぐから」「親と同居して面倒を見ていたから」などの理由で、一人の兄弟が遺産の全てを取得しようとするケースも存在します。

しかし、現在の民法では家督相続のような長男優先の制度は存在しません。遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しないと法律で定められています(民法907条)。

民法第九百七条

共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
引用:e-Gov法令検索|民法第907条

一人の兄弟が他の相続人の同意を得ずに預金を引き出したり、不動産を売却したりすれば、「不当利得返還請求」や「不法行為に基づく損害賠償請求」の対象になる可能性があります。

弁護士 佐々木一夫

独り占めをめぐる主張が出てきたときには、感情的な対立に巻き込まれる前に冷静な対応を取ることが重要です。

兄弟の仲が悪い・感情的な対立がある

兄弟の仲が悪いと、遺産分割協議が円滑に進まないことが多いでしょう。

感情的な対立が激化し、協議が長引くことで遺産相続が遅延するだけでなく、関係がさらに悪化するリスクもあります。

弁護士 佐々木一夫

たとえば、兄弟間で過去にあった小さなトラブルを掘り返して、「あのときは私が折れたのだから今回はそちらが折れるべきだ」などと言い、遺産分割の話し合いが進まなくなります。

また、単純に「次男には遺産を相続させたくない」などの感情的な理由で遺産分割ができなくなることもあります。

兄弟の配偶者が口出ししてくる

兄弟の配偶者が遺産相続の話し合いに関与することで、トラブルが発生しやすくなります。

遺産相続は本来、相続人同士で行うべきですが、配偶者が口を出すと感情的な対立が激化しやすいでしょう。

たとえば、兄の妻が「私たち家族の生活を守るためにもっと多くの遺産を受け取るべきだ」と主張することで、他の兄弟との間で対立が生まれます。

また、配偶者が相続の話し合いに参加することで、相続人間の意見の違いが大きくなり、遺産分割協議が進まないことがあります。

配偶者が相続についての知識が不足しているために感情的な発言が多くなると、ますます複雑化するでしょう。

このようなトラブルを避けるためには、遺産分割協議は相続人だけで行うことが理想です。

弁護士 佐々木一夫

また、弁護士を介して冷静な話し合いを進めることも有効です。

音信不通の兄弟がいる

音信不通の兄弟がいると、遺産分割協議が進みません。

音信不通の兄弟に連絡を取るためには、戸籍をたどって住所を確認する必要があります。

しかし、現住所がわからなかったり、連絡が取れなかったりした場合、不在者財産管理人を選任する必要があります。

不在者財産管理人とは、音信不通の相続人に代わってその財産を管理し、遺産分割協議を進めるための人です(民法25条)。

不在者財産管理人を選任するには、家庭裁判所に申し立てを行い、必要な書類(申立書、不在者の戸籍謄本、不在者の財産目録など)を提出します。

弁護士 佐々木一夫

音信不通だからといって本人を外して遺産分割協議を行っても、法的に無効です。

また、無理やり法的に無効な遺産分割をしてしまっても、後に音信不通の兄弟が現れ、自身の相続分を主張することになれば、遺産分割協議をやり直す必要があります。

音信不通だった兄弟が見つかったとしても、遺産分割を巡って争いが起こりやすいでしょう。

これまでの関係性が希薄であったために、遺産を誰がどれだけ取得するかをめぐって大きく意見が対立することが珍しくありません。

前妻や前夫の子(異母・異父兄弟)がいる

被相続人に前妻や前夫の子がいる場合、遺産分割に関して意見が割れることが多いです。

相続が発生して初めて前妻等との子供がいることが発覚することも珍しくなく、長年生活を共にしてきた子供達からすれば、長年交流のなかった子供に被相続人の財産を相続させることに抵抗を覚えることもあります。

弁護士 佐々木一夫

このような場合には、一方の子どもたちから、前妻等との間の子どもたちとの話し合いは非常に困難になります。

前妻等の子らに譲歩を求める場合も、そうでない場合も、対応方法について十分な検討が必要なケースといえるでしょう。

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兄弟での相続トラブルでの事例・体験談を紹介

ここからは、実際に当事務所で解決した、兄弟での相続トラブルでの事例・体験談を紹介します。

実際の事例と自身のケースを照らし合わせ、どの様な解決策があるかを考える際の参考にしてみてください。

兄の使途不明金を追及し調停で解決した事例

相続人の一人が被相続人の生前に財産を管理していた場合、その支出が不明瞭であれば「使途不明金(使い込み)」として、遺産分割において法的に問題となることがあります。実際に当事務所で解決したのは、次のような事例です。

依頼人Bさんは、被相続人(父Aさん)が亡くなった後、生前にAさんの口座を管理していた相続人Cさん(兄)による多額の引き出しを不審に思っていました。Cさんは「介護に必要な支出だった」と主張しましたが、Bさんは納得できず、使途不明金として追及したいと相談に来られた状況です。

弁護士が受任後、Aさん名義口座の取引履歴を精査したところ、10年弱で数千万円にのぼる使途不明金が確認されました。Cさんに出金の使途について説明を求めましたが、「介護のため」と主張するのみで、領収証などの裏付け資料は一切提出されませんでした。

交渉は遺産分割調停へ移行し、弁護士は、Bさんが記録していた日記やCさんへの過去のメールなどを基に、出金額が実際の介護実態と比較して過剰であることを論理的に主張しました。

結果、家庭裁判所の調停委員の理解を得ることができ、使途不明金のうち半分以上が法的に認定され、依頼人Bさんにとって納得のいく水準での和解成立に成功しています。

今回の解決ポイントは以下の通りです。

  • 日記やメールなど間接的な資料から主張を組み立てた点
  • 時系列と金額の整合性から「支出の過剰性」を立証した点

相手方が領収証などの提出を拒否する中、依頼人が書き留めていた日記や過去のメールなどを丹念に精査し、相手方の主張に対抗するための裏付けとしました。

また、介護の実態と出金額の時系列を比較し、支出が社会通念上の介護費用として過剰であることを論理的に展開し、調停委員の理解を得ました。

本事例の詳細を確認したい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:【アクロピース解決事例集・遺産分割】父の通帳から消えた数千万円、兄の使途不明金を追及し調停で解決した事例

兄弟から遺留分請求されたが多額の生前贈与を主張して大幅減額に成功した事案

遺留分侵害額請求を受けた際、請求者(他の相続人)が被相続人から多額の生前贈与を受けていた場合、その贈与額を遺留分侵害額から控除できる可能性があります。しかし、その贈与の事実を客観的に証明するのは容易ではありません。

これから紹介するのは、実際に当事務所で解決した事例です。

ご依頼者(Bさん)は、被相続人(Aさん)の死後、兄弟(Cさん)から遺留分侵害額請求を受けました。Bさんは家業を継ぎ、両親の介護も献身的に行っていましたが、Cさんはほとんど関与していなかった状況です。

Cさんには大学進学や不動産購入時にAさんから多額の生前贈与があったものの、通帳履歴などの客観的な証拠は一切残っていませんでした。弁護士は、遺言書にあった「Cに多額の贈与をした」との記載に着目し、Aさんが遺した日記やメモを徹底的に精査し、それらをすべて文字起こしして時系列に整理して贈与の事実を具体化しました。

これらの資料を元にCさん側と粘り強く交渉した結果、最終的にCさんは生前贈与の事実をほぼ全面的に認め、請求額を大幅に減額する内容での和解の成立に成功しています。

今回の解決ポイントは以下のとおりです。

  • 「生活に根ざした資料」の徹底的な精査・分析
  • 間接的な証拠に基づく粘り強い交渉

通帳履歴などの直接的な証拠がない中、故人の遺言書や日記、メモといった一見証拠になりにくい資料を弁護士が丹念に文字起こし・時系列整理し、生前贈与の事実を裏付ける交渉材料を構築しました。

当初は贈与を否定していた相手方に対し、これらの資料を組み合わせて粘り強く贈与の事実を主張しました。結果、相手方も主張を受け入れ、請求額の大幅な減額成功につながっています。

本事例の詳細を確認したい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:【アクロピース解決事例集・遺留分侵害額被請求】兄弟からの遺留分請求、多額の生前贈与を主張して大幅減額に成功した事案

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兄弟で遺産分割でもめたときの対処法

話し合い

兄弟で遺産分割について揉めたときは、適切な対処が必要です。主に、以下3つの対処法を実施してみましょう。

以下、それぞれ具体的に解説します。

まずは当事者間で冷静に話し合う

兄弟間で遺産分割の話し合いがうまく進まず、もめることは少なくありません。

こうしたトラブルを解決するためには、いくつかの効果的な方法があります。

まず、関係がない親族などの第三者を同席させて話し合いを進めることが有効です。

第三者がいることで、感情的になりがちな相続人同士の話し合いが冷静に行われる可能性が高まります。

また、第三者の意見を参考にすることで、偏った視点からの議論を防ぐことができます。

弁護士 佐々木一夫

ここでいう第三者に指定はありませんが、相続に関与しない親族が一般的です。

法的手続き「遺産分割調停・審判」を申し立てる

兄弟間での話し合い(遺産分割協議)がまとまらない場合、法的な手続きに移行することを検討します。その最終的な解決手段が、以下の2つです。

  • 遺産分割調停
  • 遺産分割審判

遺産分割調停とは、裁判所を介した話し合いの手続きです。裁判官や調停委員が間に入り、各相続人の主張や証拠を確認しながら、公平な解決案を提示したり、話し合いを仲介したりします。

遺産分割審判とは、調停でも話し合いがまとまらず、「調停不成立」となった場合に移行する手続きです。審判では、裁判官(審判官)が双方の主張や提出された資料や法律に基づいて、遺産の分割方法を決定します。

弁護士 佐々木一夫

裁判官が下した「審判」は判決と同じ効力を持ち、相続人はその内容に従って遺産を分割しなければなりません。

調停や審判は、法律に基づいた強制力を伴う解決方法ですが、時間と労力がかかるため、弁護士などの専門家に相談しながら進めるのが一般的です。

関連記事:遺産分割調停が不成立になったらどうなる?審判移行時の対応や強制執行についても解説【弁護士監修】

弁護士に交渉や手続きを依頼する

弁護士を代理人として立てることも有効な対処法です。

弁護士は法律の専門知識を持っているため、法的なアドバイスを受けながら話し合いを進めることが可能です。

弁護士 佐々木一夫

弁護士が間に入ることで、法的に適切な解決策を見つけやすくなり、トラブルの早期解決が期待できます。

また、弁護士が代理人として交渉を進めることで、相続人同士の直接的な対立を避けることができ、関係の悪化を防ぐこともできるでしょう。

以下の記事では、相続トラブルで後悔しない弁護士の選び方についても解説しています。併せて参考にしてみてください。

関連記事:相続トラブルで後悔しない弁護士の選び方とは?口コミなど確認すべきポイントを解説

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兄弟と遺産相続でもめた際に弁護士に相談すべきタイミング

兄弟との遺産相続トラブルは、「もう少し話し合ってから」と先延ばしにするほど、選択肢が狭まり不利な状況に追い込まれやすくなります。

とくに以下の3つの状況に該当する場合は、たとえ協議が継続中であっても、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。

それぞれ詳しく解説します。

相手方の兄弟が弁護士を立ててきた・法的手続きを取られたとき

相手方の兄弟が弁護士を立てた場合は、こちらも早急に弁護士を立てましょう。

本人で対応した場合と弁護士を介入させた場合では、最終的な取得額に数百万円単位の差が生じることも珍しくありません。

相手方の弁護士は依頼者(兄弟)の利益最大化のために動くため、こちらが法的知識のない状態で交渉に応じると、本来の法定相続分を大幅に下回る金額で合意させられる可能性が高まります。

また、調停申立書を受け取って指定された期日に出頭しなかった場合は、相手方の主張のみで審判へ移行する事態にもなりかねません。

具体的には、次のような場面が発生したときに、すぐに弁護士への相談を検討してください。

  • 兄弟側から弁護士の通知書(受任通知)が内容証明郵便で届いた
  • 遺産分割調停の申立書が家庭裁判所から送られてきた
  • これ以降の連絡は代理人を通してほしいと申し入れられた
弁護士 佐々木一夫

受任通知が届いてから1〜2週間以内に相談することで、初動の遅れによる不利を防げます。

遺留分侵害額請求など法的期限(時効)が迫っているとき

法的期限が迫っている場合も、1日でも早く弁護士へ相談することが大切です。

とくに遺留分侵害額請求権の時効は「相続開始および遺留分侵害を知った日から1年」と非常に短く、気づいた段階ですぐに内容証明郵便による意思表示をする必要があります。

具体的には、次のような場面に当てはまるときが相談すべきタイミングです。

  • 偏った内容の遺言書が見つかり、遺留分が侵害されていることに気づいた
  • 被相続人の死亡から約9〜10ヶ月が経過し、相続税の申告期限が迫っている
  • 兄弟への生前贈与が判明し、特別受益として主張したいが時間が経過している

弁護士に依頼すれば、内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示を行い、時効の進行を止めることが可能です。

弁護士 佐々木一夫

請求の意思表示自体は相手方との交渉成立を待たず単独で実行可能なため、まず権利を保全したうえで交渉や調停の準備に着手できます。

相続税申告期限内に遺産分割を成立させるための調停・審判戦略の立案も、同時並行で進められる点が大きな強みです。

使い込み・財産隠しの疑いがあり、証拠を集めたいとき

使い込みや財産隠しが疑われる場面は、証拠の散逸を防ぐためにも早期相談が結果を大きく左右するタイミングです。気づいてからすぐに動けるかどうかで、調停・訴訟での認定可能性が変わります

具体的には、次のような場面で疑いを持ったときは弁護士に相談しましょう。

  • 同居していた兄弟が、被相続人の預金を生前に多額引き出していた形跡がある
  • 開示された遺産額が、生前に聞いていた財産規模より大幅に少ない
  • 不動産・有価証券の名義が、知らないうちに特定の兄弟へ変更されていた

銀行の取引履歴は法律上請求可能であるものの、本人による開示請求は手続きが煩雑で時間がかかり、その間に証拠が散逸する恐れがあります。

また、時間が経つほど「記憶にない」「介護費用に使った」といった反論を覆しづらくなる点も見逃せません。

弁護士に依頼すれば、弁護士法23条照会という制度を活用し、個人で請求すると2〜3ヶ月かかる銀行取引履歴を数週間で取得できます。通帳・領収書・日記・メールといった間接資料を調停や訴訟で通用する形に整理することも可能です。

弁護士 佐々木一夫

早期着手であれば、相手方が証拠隠滅や口裏合わせをする前に押さえられるため、できるだけ早めに弁護士に相談しましょう。

兄弟の遺産分割でもめないための対策

法律

兄弟の遺産分割でもめないようにするために、次のように対策しましょう。

それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。

不公平感のない「公正証書遺言」を作成する

遺言書の作成は、相続人間でのトラブルを未然に防ぐために重要です。

遺言は、被相続人が死亡したときに、遺言の内容通りに遺産分割が行われるという効果があります。

きちんとした遺言があれば、相続人間で遺産をめぐって対立を生じさせることなく、遺産分割を完了させられるのです。

しかし、遺言内容があまりに不公平である場合には、逆に相続人間のトラブルを招きかねません。

公正証書遺言は、証人と公証人の立会いのもとで作成されるため、内容の確実性が高く、無効となるリスクが少なくなります(民法969条)。

弁護士 佐々木一夫

また、原本が公証役場で保管されるため、紛失のリスクも抑えることができます。

遺言書に「付言事項」で想いや理由を記載する

遺産相続において兄弟間の争いを避けるためには、遺言書に具体的な対応方法やアドバイスを記載することが有効です。

遺言書に「もめないでほしい」「もめるぐらいならこうしてほしい」といった自身の気持ちやなぜこのような内容の遺言にしたかの理由を記載することで、相続人間のトラブルを減らすことができます。

このような「付言事項」として遺言書に記載することで、相続人に対するメッセージを明確に伝えることができ、法的手続きに発展する前に問題を解決できる可能性が高まります。

信頼できる弁護士を遺言に記載された内容を実現してもらうための遺言執行者に定めておくことも有効な方法の1つです。

生前に財産目録を作成し、家族で話し合っておく

生前に相続について話し合っておくことは、相続トラブルを避けるために有効な方法です。話し合いにより家族全員が相続内容を理解し、同意することで、相続発生後のトラブルを未然に防ぐことができます。

具体的には、生前に家族会議を開き、遺産の分割方法を詳細に話し合っておくことが重要です。

弁護士 佐々木一夫

たとえば、不動産や金融資産など各種財産をどのように分けるかを事前に決めておきましょう。

特に不動産は評価額や共有の問題が複雑になるため、事前にしっかりと話し合い、誰がどの不動産を引き継ぐのかを決めておくことが重要です​。

ただし、話し合いの内容は法的拘束力がないため、具体的に遺産分割をするためには正式な遺言書や相続契約書の作成が必要です。

遺産分割協議書を正しく作成する

兄弟での相続トラブルを未然に防ぐには、遺産分割協議書を整えておくことが重要です。記載漏れや形式不備があると後から作り直しが必要となり、相続人全員で再合意を取り直す手間や新たな対立を招きます。

遺産分割協議書は、相続人全員が合意した遺産の分け方を法的に証明する書面です。不動産の名義変更や預金の解約といった相続手続きを進める際にも欠かせません。

遺産分割協議書に最低限記載すべき項目は次のとおりです。

  • 被相続人の氏名・本籍・死亡日
  • 相続人全員の氏名・住所
  • 遺産の特定(不動産の地番・家屋番号、預金口座の金融機関名・支店名・口座番号など)
  • 各相続人の取得分
  • 合意した日付
  • 相続人全員の署名と実印による押印(印鑑証明書を添付)

不動産の表記は登記簿どおりに正確に記載しないと、法務局で名義変更の手続きが却下されることがあります。協議書を作り直す手間や、相続人全員の再合意を取り直す負担を考えると、最初から正しく作成することが重要です。

相続問題で迷った際の
お役立ちガイド

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兄弟の遺産相続トラブルに関するよくある質問(FAQ)

兄弟間で遺産相続トラブルが発生すると、多くの方がさまざまな疑問や不安を抱えます。とくに、法的な手続きや費用、期限などは、普段馴染みがないため分かりにくい点も多いでしょう。

ここでは、遺産相続トラブルに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

弁護士費用はどれくらいかかりますか?

一般的に、弁護士費用は以下の要素で構成されています。

弁護士費用の内訳

弁護士費用は、相談内容や依頼する業務の範囲、事案の複雑さ(争いの大きさ、財産の額など)によって大きく異なります。

料金体系は事務所によって異なるため、必ず依頼前に総額でどれくらいかかるのか、費用の内訳や見積もりを明確に確認することが重要です。

遺留分を請求できる期限はありますか?

遺留分を請求する権利(遺留分侵害額請求権)には時効(期限)があります。時効(期限)を過ぎると、たとえ遺留分を侵害されていても請求できなくなるため、細心の注意が必要です。

あわせて読みたい
遺留分侵害額請求の時効・期限は5年?10年?起算点や時効中断の方法も解説【弁護士監修】 遺留分侵害額請求の時効や起算点、中断方法を弁護士監修のもと解説しています。時効消滅を防ぐための具体策や注意点を知りたい方は必見です。

相手が弁護士を立ててきたらどうすればよいですか?

相手方(兄弟)が弁護士を立てたという連絡を受けた場合でも、まずは冷静に対応することが大切です。

相手に弁護士がついたからといって、必ずしもこちらが不利になるわけではありません。むしろ、法律の専門家が間に入ることで、法的な論点に基づいて冷静かつ合理的な交渉が進む可能性もあります。

ただし、相手は法律と交渉のプロを代理人に立てています。法的な知識や交渉の経験に差があるまま対応すると、不利な条件で合意してしまったり、交渉が長期化したりするリスクがあるでしょう。

相手方の弁護士から連絡があった場合は、ご自身も速やかに相続問題に詳しい弁護士に相談し、こちらも弁護士を代理人に立てることが大切です。相手の弁護士に直接返答する前に、まずは専門家の助言を求めましょう。

まとめ|兄弟の遺産相続トラブルは早期に弁護士に相談することが大切

協力

兄弟での遺産相続は、実家の分け方・寄与分・特別受益・使い込み・不動産代償金など、典型的にもめやすい11のケースが存在します。仲の良かった兄弟であっても、相続をきっかけに数年単位で関係が悪化するケースも珍しくありません。

すでに兄弟との間で意見が対立している場合は、まずは関係のない親族など第三者を交えた冷静な話し合いから始めましょう。協議がまとまらないときは、家庭裁判所への遺産分割調停・審判への移行を検討します。寄与分・特別受益・遺留分などの法律論点の主張や、相手方との直接交渉を避けたい場面では、相続を専門とする弁護士に代理人を依頼することが、早期解決への近道となります。

弁護士法人アクロピースは累計約7,000件以上の相続相談実績に基づき、それぞれのケースに合わせて適切な解決策をご提案いたします。「このままでは、もめるかもしれない」という段階からのご相談も可能なため、ぜひ一度ご相談ください。

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