相続放棄の取り消しには期間がある?取り消す手段や無効にできる場合について

相続における注意事項の1つに、「借金などの債務も相続の対象になる」というものがあります。

そして、あまりに債務が大きすぎる場合は、「相続放棄」という手続きを利用することで、初めから相続人ではなかったとして債務の相続を免れます。

しかし、後になってからプラスの財産が出てくるなどして、やっぱり相続放棄を取り消したいと思った場合、取り消しは認められるのでしょうか?

結論からいえば、原則として相続放棄の取り消しは認められていません。

それゆえ、相続放棄するかどうかについては慎重に判断しなければならないのです。

ただ、例外的に相続放棄の取り消しが認められる場合はあります。

そこで今回は、相続放棄の取り消しについて詳しくご説明していきましょう。

目次

相続放棄を取り消すには?

まず、裁判所での手続きを取り消す場合の手段についてご説明しましょう。

手段は大きく分けて、「撤回」「取り下げ」「取り消し」の3つです。

相続放棄の撤回

相続放棄という手続きは、一旦手続きが受理されると「撤回」というのは認められていません。

相続放棄の特徴として、書類さえ集めれば誰にでも可能な手続きではありますが、受理後の撤回は認められていないことからも、慎重に判断すべきと考えられているのです。

相続放棄は自分以外の他者にも影響を及ぼす手続きです。

1人が相続放棄することで、他の相続人の相続割合が増えたり、相続順位が入れ替わってもともと相続人ではなかった者が相続人になったりもします。

一度受理された相続放棄の撤回を認めると、大きな混乱を招く恐れがあるため、原則として撤回は認められていないのです。

相続放棄の取り下げ

まず、取り下げとは、手続きが受理されるまでの間に、手続き自体がなかったものとして取り扱う方法です。

ここで重要なのが、取り下げが認められるのは、あくまでも手続きが受理される前に限るという点です。

受理後の撤回が認められていないのは上述したとおりです。

相続放棄という手続きは、正確には「相続の放棄の申述」と呼ぶのですが、この申述が受理されるまでは、裁判所の都合上、7~10日前後の期間があり、即座に受理されるわけではありません。

つまり、この期間内であれば取り下げ可能ということ。わずかな期間ではありますが、取り下げが間に合うこともあるのだと頭に入れておきましょう(家事事件手続法82条1項)。

相続放棄の取り消しには期間がある?

相続放棄は民法第919条で、「原則として熟慮期間内であっても撤回することができない」との規定があります。

ただ、冒頭でもお伝えしたとおり、例外として相続放棄の撤回が認められるケースがあり、その場合は取り消し期間が定められています。

それは、詐欺や脅迫により相続放棄をさせられた場合や、重要な事実に錯誤があり相続放棄をした場合、第三者が勝手に相続放棄をした場合などです。

相続放棄の取消期間は、「追認をすることができる時から6か月」もしくは「相続または放棄の時から10年以内」です。

以下では、その例外的な部分について見ていきましょう。

1.詐欺や強迫により相続放棄させられていた

本当は相続放棄するつもりがなかったのに、他の相続人などの第三者から詐欺や強迫により相続放棄させられていた場合、取り消しが認められる場合があります。

たとえば、相続人がAとBの2人だった場合に、Aはより多くの財産を相続するためBに対して、「多額の借金があるから一緒に相続放棄しないとまずい」といった嘘をつきます。

これを信じたBは、相続放棄してしまっても無理はありません。

しかし、実際は多額の借金などはなく、Bが相続放棄することで、Aは単独ですべての財産を相続できてしまう、などといった場合には、受理後の取り消しが認められます。

2.未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄していた

通常、未成年者が相続放棄する場合、法定代理人が代理で手続きを行い、裁判所も当然、その点をチェックしているため、こうしたケースはめずらしいと言わざるを得ません。

しかし、未成年者といっても高校生くらいになれば、法定代理人に黙って書類の作成くらいは出来てもおかしくはありません。

そこで、もしも未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄をしていた場合、未成年者の法定代理人は後からでも相続放棄を取り消すことが可能となっています。

また、これと同じようなケースで、成年被後見人が本来であれば法定代理人となるはずの成年後見人の同意なく相続放棄していた場合も、取り消しが認められます。

相続放棄が無効にできる場合もある?

上記のように、例外的に相続放棄の取り消しが認められる場合はあるものの、やはり一度受理されてしまった相続放棄を取り消すというのは簡単ではありません。

一応、その他の方法として、「錯誤無効」を主張する方法もあります。

錯誤無効というのは、心の中で思っていることと実際の行為にズレがあった場合に、その行為自体を無効にするというものです。

たとえば、相続人が配偶者である妻であった場合(子どもはなし)に、妻は生前に夫が仲の良かった兄弟姉妹に財産を相続してもらおうと思い、相続放棄をしたとします。

しかし、妻が相続放棄したことで、相続順位は兄弟姉妹ではなく、先に夫の父母へと移り、結果として兄弟姉妹が相続することが出来ませんでした。

こういった場合、相続放棄の錯誤無効が認められたケースが過去にありました。

しかし、上述している通り、一度受理された相続放棄が覆ると混乱を招く恐れがあることから、錯誤無効の判断自体に裁判所も慎重で、簡単ではないことに変わりはありません。

相続放棄の判断は慎重に

このように、相続放棄という手続き自体はそれほど難しくないものの、一度受理された相続放棄をなかったことにするのは困難を極めます。

こうしたことからも、相続放棄の判断は慎重すぎるくらいでちょうど良いと言えるでしょう。

もし、相続放棄の判断に迷われた場合は、一度当事務所にご相談ください。

財産調査についても可能な限りアドバイスさせていただきますし、実際に相続放棄する場合も、書類の取得や作成のお手伝いをさせていただくことが可能です。

相続放棄は、自身に相続があったことを知った日(多くは被相続人が亡くなった日)から3ヶ月以内に判断しなければなりません。

それゆえ、冷静な判断ができないうちに相続放棄をしてしまい後悔するという方が実際に何人もいらっしゃいます。

こうした事態にならないよう、当事務所へぜひお気軽にご相談ください。

この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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