孫への贈与契約書の書き方は?契約書を作成する際の注意点を解説

孫でも必須?贈与契約書の作成作成時の注意点を紹介
代表弁護士 佐々木 一夫 (ささき かずお)

孫への生前贈与を行う際は、贈与契約書を作成しましょう。

贈与契約書がないと、贈与の存在を証明できずに相続トラブルが発生したり、想定外の税金が課せられたりする可能性があります。

この記事では、下記4つの内容について詳しく解説しています。

  • 孫への贈与契約書のひな形
  • 孫への贈与契約書を作成する際の注意点
  • 孫への生前贈与を行う際の注意点
  • 孫への生前贈与と贈与税

孫への生前贈与について契約書の作成を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

孫への贈与契約書の書き方

書き方
贈与契約は、契約書がなくても成立します。

しかし、贈与契約書を作成していなければ、あとから契約の存在や内容を証明できなくなってしまうため、想定外の課税を受けたり、相続人間の争いになったりする可能性があります。

そのため、孫への贈与についても契約書を作成しておくべきです。

孫に現金を贈与する場合、贈与契約書に最低限記載すべき事項は次のとおりです。

  • 贈与者・受贈者の住所・氏名
  • 贈与契約の日付
  • 贈与する現金の額
  • 贈与を履行する方法、履行の日付

孫への生前贈与における贈与者は祖父母、受贈者は孫です。

贈与契約の日付は、基本的には贈与の内容に双方が合意して契約書を作成した日付けとなります。

現金の額については、1円単位で正確に記載してください。

契約書に記載された金額と実際に贈与された金額にずれがあると、契約書の信用力が低下してしまいます。

履行する方法とは、手渡しや金融機関への振込送金などの贈与する方法のことです。

現金を贈与する場合、通帳にも贈与の証拠が残るように金融機関への振込送金の方法を選択することをおすすめします。

履行の日付は、契約書の作成日とは別で実際に贈与を実行する日を記載してください。

贈与契約書は2通作成して、各自が署名・押印のうえ1通ずつ保管します。

孫への贈与契約書のひな形

契約書
孫に現金を贈与する贈与契約書のひな形は次のとおりです。

〇 贈与契約書(現金)のひな形はこちら

こちらのひな形では、甲が贈与者=祖父母、乙が受贈者=孫となります。

第1条の現金の部分には贈与する現金の正確な額を記入してください。

第2条の日付は、贈与する現金を振込送金する日付を記入します。

この場合、振込手数料をどちらが負担するかも記載しておいた方が良いでしょう。

手渡しで贈与する際には、「甲は、〇年〇月〇日、第1条の現金を乙に贈与した。」という記載になります。

ただし、先に説明したとおり、現金手渡しでの贈与はおすすめできません。

甲・乙が住所、氏名を記載する欄の上にある日付の部分には、契約書の作成日(贈与契約の日付)を記載します。

続いて、孫に不動産を贈与する贈与契約書のひな形は次のとおりです。
ぜひご活用ください。

〇 贈与契約書(不動産)のひな形はこちら

贈与契約書の書き方については、下記の記事にて詳しく解説しています。
併せてご覧ください。

関連記事:贈与契約書の書き方や注意点をわかりやすく解説

贈与の目的物が不動産の場合には、登記簿謄本を確認して所在、地番、種類、地積などを正確に記載して不動産を特定します。

土地と建物では記載すべき項目が異なるため注意が必要です。

第2条の日付には、登記申請の手続きをする日付を記載します。

必要に応じて、登記費用や固定資産税の負担についての項目を追加しても良いでしょう。

贈与の目的物が不動産の場合、贈与契約書に200円の収入印紙を貼付する必要があるので忘れないようにしてください。

孫への贈与契約書を作成する際の注意点

注意点
孫への贈与契約書を作成する際には、次の4つの点に注意してください。

  • 複数回の贈与を行う際は契約書も毎回作成する
  • 収入印紙の貼付を忘れない
  • 契約書の日付や金額を正確に記載する
  • 受贈者にも契約書の内容を確認してもらう

注意点を守らなければ、せっかく作成した贈与契約者が意味のないものになってしまう可能性もあります。

以下では、それぞれの注意点について詳しく解説します。

複数回の贈与を行う際は契約書も毎回作成する

孫への生前贈与は1度限りではなく、複数回に渡って行われるケースも多いでしょう。

複数回の贈与を行う際にも、契約書はまとめて1通を作成するのではなく、贈与の度に毎回作成してください。

贈与契約書を作成する目的は、贈与契約の内容を証明するためです。

そのためには、事実関係に合った契約書を作成しなくてはなりません。

まとめて1通の契約書を作成すると、贈与の総額がわかるのみで各贈与の金額や日付がはっきりしなくなってしまいます。

1通の契約書に各贈与の金額と日付を分けて記載したとしても、最初の契約の段階で総額の贈与が予定された定期贈与と見なされてしまう可能性が高いでしょう。

定期贈与と見なされると、暦年贈与の適用がなくなり高額の贈与税が課されてしまいます。

収入印紙の貼付を忘れない

贈与の目的物が不動産の場合には、贈与契約書に収入印紙を貼付するのを忘れないようにしてください。

収入印紙は定期的にデザインが変更されているため、収入印紙を貼付するといつ頃に作成された契約書であるかを推認できます。

贈与契約のときに契約書を作成しておらず、あとからあわてて契約書を作成すると、収入印紙のデザインから契約当時に作成した契約書ではないことが発覚する可能性があるため注意してください。

契約書の日付や金額を正確に記載する

契約書に記載する日付や金額については間違いのないよう正確に記載してください。

現金を贈与する場合、契約書と通帳の記録で特定の日に贈与が行われたことを確実に証明できます。

ところが、契約書の日付や金額と通帳の記載にずれがあると、契約書の信用性に疑いが生じてしまいます。

贈与契約書を贈与契約の証拠として活用するためには、契約書に記載された内容に間違いがないよう十分に注意しましょう。

受贈者にも契約書の内容を確認してもらう

契約書は、当事者双方の合意があったことを証明する書類です。

孫への贈与契約書を作成する際は、受贈者である孫にも契約書の内容をしっかりと確認してもらいましょう。

祖父母が孫の確認を取らずに契約書を作成して、勝手に孫の署名・押印をしてしまうと私文書偽造罪に問われる可能性もあります。

贈与税を免れるために契約書を偽造した場合には、刑罰を受けるだけでなく重加算税も課されることになるでしょう。

贈与契約書を作成したら、各自が契約書の内容を確認したうえで自分自身で署名・押印するようにしてください。

孫への生前贈与を行う際の注意点

生前贈与
契約書を作成する前提として、孫への生前贈与を行う際は、次の2つの点に注意してください。

  • 現金が移動した記録を残しておく
  • 暦年贈与の際は日付や金額をずらす

注意点を守らなければ、他の相続人や税務署への説明のために契約書を作成しておいた意味がなくなってしまいます。

それぞれの注意点について詳しく解説します。

現金が移動した記録を残しておく

贈与の目的物が不動産のときには、不動産登記によって贈与した日付や目的物などの記録が残ります。
しかし、現金を手渡しで贈与したときには、契約書以外に証拠を残しておくのは難しいでしょう。

税務署から贈与の内容を疑われた場合、契約書以外にも証拠がなければ、思わぬ課税をされてしまう可能性があります。

そのため、現金を贈与する際には、手渡しではなく金融機関への振込送金で現金が移動した記録を残しておくようにしてください。

暦年贈与の際は日付や金額をずらす

贈与は、年間110万円までは贈与税がかかりません。

この仕組みを利用して複数年にわたって生前贈与する方法を暦年贈与と言います。

一方、一定の期間に一定の財産を贈与する契約を定期贈与と言います。

たとえば、「令和6年から令和10年まで毎年1月1日に100万円を贈与する」というのが定期贈与です。

この例では、契約を締結した段階で合計500万円を贈与することが約束されているので、500万円に対する贈与税が発生します。

暦年贈与をしようとしていた場合でも、毎年金額や日付を変えずに贈与を続けると、最初から一定期間の贈与が予定された定期贈与と見なされる可能性があります。

定期贈与と見なされないためには、毎年日付や金額を変える、贈与の度に契約書を作成するなどの工夫が必要です。

110万円が上限であるからと言って、毎年上限額の110万円を決まった日程で贈与するようなことがないよう注意してください。

孫への生前贈与と贈与税

相続税
孫への生前贈与を行う際は、あらかじめ税金について検討しておくべきです。

生前贈与の際に検討しておくべき税金の問題としては、次のものが挙げられます。

  • 贈与税の計算方法
  • 相続時精算課税制度
  • 贈与財産の加算
  • 教育資金の一括贈与の特例
  • 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

孫への生前贈与の際には暦年贈与を利用するケースが多くなっていますが、他の制度を利用する方が高い節税効果を得られるケースもあります。

それぞれの内容について詳しく解説します。

贈与税の計算方法

相続税は、次の計算式で計算されます。

(贈与額ー110万円)× 税率ー控除額

贈与額から差し引かれる110万円は、年間の非課税額です。

この非課税額を利用して贈与税がかからないように贈与する仕組みが暦年贈与です。

適用される税率と控除額は、孫の年齢が18歳未満か18歳以上かで異なります。

孫が18歳未満のときには一般税率が適用されて、18歳以上のときには特例税率が適用されます。

一般税率と特例税率については、国税庁のサイトでご確認ください。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、2,500万円までの生前贈与を非課税として、贈与者が亡くなったときに生前贈与した財産を相続財産に組み戻して、相続税を計算する制度です。

たとえば、2億円の財産を持っている人が、相続時精算課税制度を利用して孫に2,500万円を生前贈与した後に、1億7,500万円を遺して亡くなった場合、遺産の1億7,500万円に生前贈与した2,500万円を組み戻して、2億円の相続財産についての相続税を計算します。

つまり、相続時精算課税制度には、相続税を節税する効果はありませんでした。

しかし、法改正により、令和6年1月1日以降の贈与については、2,500万円の控除とは別に、年間110万円までの基礎控除が認められるようになりました。

基礎控除の年間110万円については、相続税の計算に当たっては相続財産に組み戻されることはないので、贈与税・相続税のどちらも課税されません。

改正によって今後は、相続税の節税のために、相続時精算課税制度を活用できるようになりました。

贈与財産の加算

相続又は遺贈により財産を取得した者に対して生前贈与した場合、生前贈与から3年以内(令和6年1月1日以降の贈与については7年以内)に贈与者が亡くなると、生前贈与した財産についても相続税の計算に加えられることになります。

これを贈与財産の加算と言います。

贈与財産の加算がされると、暦年贈与を利用していたとしても、相続財産に加えられて相続税が課せられてしまうのです。

孫に生前贈与する際には、孫が法定相続人とならず、遺言書で財産を相続させない限りは、贈与財産の加算がありません。

そのため、贈与者が高齢であっても、孫を受贈者とするのであれば暦年贈与の仕組みも安心して利用できます。

教育資金の一括贈与の特例

30歳未満の孫に教育資金を贈与する際には、「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」を活用できます。

同制度は、祖父母が教育資金口座の開設と教育資金の入金を行い、孫が教育資金口座からの払出しによって現金の贈与を受ける場合に、1,500万円までの資金について贈与税が非課税となる制度です。

同制度を利用する際の教育資金口座を開設するには、金融機関に教育資金非課税申告書を提出する必要があります。

また、孫が教育資金口座の資金を使用した際には、領収書などで何に使用したのかを金融機関に報告しなければなりません。

ただし、教育資金口座の資金は学校以外の学習塾等といった教育資金にも使用できますが、その場合には非課税枠が500万円に減額されます。

出典:国税庁(祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし)

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

孫に住宅関係の資金を生前贈与する際には、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の適用を受けられます。

「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」とは、父母や祖父母などの直系尊属から住宅の取得や増改築などのために現金の贈与を受けたときに、贈与を受けた金額のうち一定額の贈与税を非課税とする制度です。

対象となるのは、令和6年1月1日から令和8年12月31日までに行われた贈与となっています。

制度の適用を受けるには、所得要件として受贈者の年間所得が2,000万円以下、住宅の床面積要件として原則50㎡以上という要件を満たす必要があります。

制度を利用すると、質の高い住宅については1,000万円を限度として、一般住宅については500万円を限度として贈与税が非課税となります。

出典:国土交通省ウェブサイト(住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置)

まとめ

孫と祖父母

  • 孫への贈与契約書は贈与の度に毎回作成する
  • 贈与の際は契約書だけでなく銀行の振込記録も残しておく
  • 日付や金額をずらして暦年贈与を定期贈与と見なされないようにする

孫に生前贈与する際は、必ず贈与契約書を作成してください。

贈与契約書を作成することで、相続人間のトラブルや想定外の課税を防ぐことができるでしょう。

贈与の方法や贈与契約書の作成についてお悩みの方は、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士法人アクロピースでは、贈与契約に関わるどのようなお悩みでもご相談をお受けしています。

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