相続人の一人が遺産分割協議に応じない7つの理由と対処法!放置リスクも解説

相続人の一人が遺産分割協議に応じない7つの理由と対処法!放置リスクも解説

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければなりません

しかし、次のように相続人の一人が遺産分割協議に応じないため、困っている相続人もいるでしょう。

  • そもそも遺産分割協議の場での話し合いを拒否している
  • 遺産分割協議書に印鑑を押してくれない

相続人の一人でも遺産分割協議に応じない場合、遺産分割はできません

そのまま放置していると、いつまでも遺産分割が確定しないだけでなく、様々なリスクが生じます。

相続人の一人が遺産分割協議に応じないケース理由放置するリスク対処法を解説しているので「相続人が遺産分割協議に応じない」と、困っている方は、ぜひ最後までご覧ください。

相続人の一人が遺産分割協議に応じないからといって、遺産分割をせずに放置することはデメリットしかありません

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目次

相続人の一人が遺産分割協議に応じない7つのケース・理由

応じない7つのケース・理由

相続人が遺産分割協議に応じないケースはいくつか考えられますが、主な理由は次のとおりです。

遺言内容に納得できない

有効な遺言書がある場合、基本的には遺産分割協議は必要なく遺言書があれば相続手続きを進めることができます

もっとも、遺言書には具体的に誰がどの遺産を相続するか特定されずに、相続分の割合だけを指定されていたような場合には、別途遺産分割協議を行う必要があります。

具体的には、遺言書には長男に遺産の3分の2を相続させ、二男には3分の1を相続させるといったような場合には、誰がどの遺産を取得するかが明らかではありませんので、遺産分割協議を経て遺産の取得先を確定させる必要があります。

そのため、遺言内容が一部の相続人に法定相続分より指定されており、遺言の内容に納得できず、遺産分割協議に応じない人もいるでしょう

法定相続分」とは、被相続人の配偶者と子・直系尊属又は兄弟姉妹に認められている相続割合です(民法900条)。

他の相続人が遺言書どおりの分割を求め譲歩しなかった場合、不満のある相続人は協議を拒み続ける可能性があります。

遺言書と異なる遺産分割の可否については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:遺言書と異なる内容の遺産分割は可能?実際の判例・遺産分割協議の進め方

相続人間の感情的な対立

相続人間の感情的な対立のため、遺産分割協議が進まないことがあります。

たとえば、相続人と仲が悪く関わるのが嫌だというケースが挙げられます。

遺産分割協議の場で家族間の不満が吐き出される場合もあるかもしれません。

そのような場合、感情的な対立が深刻化して協議が進まないこともあるでしょう。

被相続人への特別の貢献(寄与分)の認識の争い

被相続人への特別の貢献(寄与分)の主張について、相続人間で異論がある場合も協議は難航します。

その主張を他の相続人が認めなければ、協議には応じないという相続人もいるでしょう。

たとえば、相続人が、「被相続人を献身的に介護した寄与分があるから、その分を上乗せすべきだ」と主張するケースです。

寄与分民法904条の2)」とは、被相続人の療養看護や事業の手伝いなどを行って被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者に認められている相続分の加算制度です。

遺産から寄与分を控除した額を相続財産として各人の相続分を計算し、貢献した者の相続分は計算した相続分に寄与分を加えた額とするものです。

寄与分については、次の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:相続で生前に貢献した人への増額を主張できる制度とは?寄与分の仕組みを解説

多額の生前贈与を受けた(特別受益)相続人がいる

被相続人から特定の相続人に多額の生前贈与等(贈与又は遺贈)があった場合、遺産分割協議がスムーズに進まないことがあります。

たとえば、次のような贈与等があった場合は、特別受益だとの主張があり得るでしょう。

  • 住宅新築費用の贈与
  • 開業資金の援助
  • 高額な有価証券の譲渡や不動産の無償使用

生前贈与を受けた相続人が特別受益の持戻しに同意すればよいですが、同意が得られない場合は、遺産分割協議が困難な場合もあるでしょう。

特別受益の持ち戻し民法903条)」とは、遺産分割の際に、被相続人が生前贈与等をした財産を相続財産に加算し、生前贈与等を受けた者の相続分から控除することです。

特別受益の持ち戻しについては、次の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:【特別受益】特別受益の持ち戻しの対象・計算方法

相続財産の管理者への不信

相続財産を管理している相続人への不信感も協議に応じない大きな理由になります。

遺産を管理している相続人が遺産全てを開示しなければ、遺産を使い込んだ遺産を独り占めにしようとしていると疑いを持ち、遺産分割協議が進まないこともあるでしょう。

たとえば、被相続人と同居していた相続人が生前から遺産を管理していた場合です。

そもそも、遺産の全容を相続人に明示しなければ、分割対象となる遺産を確定できないため、分割協議をすることすらできないと考えるでしょう。

相続人とのつきあいがなかった

相続人同士が普段から全くつきあいがない場合、協議を行うことが難しいケースがあります。

たとえば、被相続人の前妻の子も遺産を相続する権利がありますが、相続が発生して初めて前妻との間に子がいることを知り連絡を取ることもあるでしょう。

その場合、スムーズにコミュニケーションが取れず、遺産分割協議の話し合いにまで至らないこともあるでしょう。

そもそも遺産分割したくない

「遺産分割には反対だ」という相続人がいる場合もあります。

たとえば、以下のような理由が考えられるでしょう。

  • 遺産分割をすると今住んでいる家から出ざるを得なくなるが困る
  • 自分が管理している不動産なので、そのまま引き継ぎたい

主な遺産が不動産である場合に起こりがちなため、あらかじめ相続人間でよく話し合っておいた方がよい問題です。

遺産分割協議に応じない相続人を放置する4つのリスク

リスク

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。

分割協議に応じない相続人がいる場合、放置しておくといつになっても遺産分割ができないため、以下のようなリスクが生じます。

相続財産を有効活用できない

相続財産に不動産がある場合、遺産分割が済まなければ、売却や有効活用ができません

たとえば、被相続人が所有していた不動産を売却するときは相続人全員の同意が必要で、貸す場合も共有持分割合の過半数を有する共有者の同意が必要です。

そのため、一人でも遺産分割協議に応じない場合、必要な同意が得られない場合があるのです。

遺産の使い込みや隠ぺいのおそれがある

遺産分割前の財産は本来、他の相続人の同意を得ずに処分できませんが、一人の相続人が生前から財産を管理していた場合使い込みや隠ぺいをする可能性があります。

たとえば、現金を使い込んだ場合、現金は被相続人のものか・使い込んだ相続人のものかが判別しにくいこともあり、使い込みや隠ぺいが行われやすいのです。

遺産の使い込みは不当利得(民法703条704条)又は不法行為(民法709条)となりますが、どちらの請求権も時効があるため、遺産分割協議を放置すると対処できなくなる恐れがあります。

  • 不当得返還請求権(民法166条1項:請求できることを知ったときから5年又は使い込みがあったときから10年
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第724条):損害および加害者を知ったときから3年・不法行為のときから20年

相続財産の隠ぺいについては、以下の記事も併せてご覧ください。

関連記事:【財産隠しで相続人が遺産を独り占め】遺産隠しはバレるのか・相続財産調査のコツ

相続税の申告期限を徒過するとペナルティ課税がある

相続税の申告期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが課せられるため注意が必要です。

被相続人の財産を相続した場合、相続税がかかる場合があります。

納付すべき相続税があるときは、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告が必要です。

相続税課税があり得るのに遺産分割協議が進まない場合は、放置せずに弁護士などのサポートを受け早期に解決を図りましょう。

申告期限内に遺産分割協議が成立していない場合は、少なくとも仮申告・仮納税をした方がよいです。

参考:国税庁|No.4205 相続税の申告と納税

二次相続が発生し相続関係が複雑になる

遺産分割が終わらないうちに次の相続が発生すると、相続人が増えるなど、遺産分割協議をまとめるのに煩雑となるリスクがあります。

たとえば、二次相続などが起こると、相続関係が複雑化し合意形成に時間を要することになるでしょう。

特に新たに相続人となった者と面識がないなど関係が希薄な場合は、話し合いがスムーズに進まない懸念があります。

相続人の一人が遺産分割協議に応じない場合の対処法

対処法

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合の対応方法を3つ解説します。

遺産分割協議に加わるよう呼びかける

遺産分割協議に応じない相続人がいても、相手の事情を聞き、可能な提案をするなどして協議に加わるように呼びかけることが大事です。

話し合いに応じない相続人は、そもそも遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なことを理解していない可能性もあります。

  • 自分は相続するつもりがないから関係ないと思っている
  • 多忙で時間的な余裕がない
  • 相続税の申告期限があることを知らない

などの事情があるかもしれません。

そのため、相手の事情をくみ取りながら、次のように丁寧な対応をする必要があります。

  • 遺産分割協議は全員参加が必要な旨をきちんと伝える
  • 書面でのやり取り・相続放棄の提案など、相手の状況に応じた提案・呼びかけをする

弁護士に相談・依頼する

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合は、早く弁護士に相談した方がよいです。

早期に弁護士に相談すると以下のようなメリットが得られます。

  • 弁護士に交渉を依頼すれば、相続人同士が直接やりとりしなくてもよい
  • 感情的な対立を避けられる
  • 第三者が間に入ることで、双方の精神的な負担も軽減される
  • 相談者と相手方の事情を踏まえ、相続人間の関係を悪化させない適切な提案も検討できる
  • 遺産分割調停・審判の手続きに移行した場合の対応も任せられる

弁護士が間に入れば協議が進みやすくなるため、揉めそうなときはできるだけ早く弁護士に相談しましょう。

遺産分割調停・審判を利用する

どうしても遺産分割協議に応じない相続人がいる場合は、遺産分割調停・審判で解決を図りましょう

参考:遺産分割調停|裁判所

家庭裁判所に調停を申し立てれば、それまで協議に応じなかった相続人も裁判所からの呼出しならやむを得ない、と応じる可能性があります。

相手方相続人が調停への出席を拒否するときは、審判手続きに移行し、裁判所が遺産の分割方法を決めてくれます家事事件手続法49条)。

遺産分割調停の申立ては弁護士に頼まなくてもできますが、一部の相続人が遺産分割協議に反対し揉めているやっかいなケースの場合は、弁護士に依頼した方がよいです。

弁護士を代理人に依頼していれば、これらの手続きがスムーズに進められます。

遺産分割協議の進め方

進め方

遺産分割協議は全員の合意が必要です。遺産分割協議は次の流れで行います。

スクロールできます
相続人の調査戸籍を辿って民法で定められた「法定相続人」を調査する
法定相続人は、配偶者(常時)と、第1順位:子(孫・ひ孫)、第2順位:父母(祖父母・曾祖父母)、第3順位:兄弟姉妹(甥・姪)
相続財産の調査被相続人の全遺産を調査する
プラス財産(不動産・預貯金など)とマイナス財産(借金・住宅ローンなど)がある
遺産分割協議相続人全員で誰がどの財産を引き継ぐかを決める
遺産分割協議書の作成相続人全員の合意ができれば、遺産分割協議書を作成する
登記や預貯金の名義変更などに利用する場合は、印鑑証明書の添付が必要になる場合もある

遺産分割協議書の書き方については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:相続でもめた場合はどうする?遺産分割協議のスムーズな進め方も解説

相続人の一人が遺産分割協議に応じない場合に弁護士に対処を依頼するメリット

メリット

相続人の一人が遺産分割協議に応じないからといって、遺産分割をせずに放置することはデメリットしかありません

弁護士に依頼すれば、次のようなメリットがあります。

弁護士に対処を依頼して早期に遺産分割を確定しましょう。

話し合いをスムーズに進めやすくなる

まず、遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高まることです。

弁護士は依頼者である相続人の代理人として遺産分割協議に参加できます。

相続人調査や相続財産調査を確実に行い、法的に根拠のある主張ができるため、相手方の相続人も納得しやすくなるでしょう。

相続人とやり取りしたくないと思う相続人もいるでしょうが、弁護士に交渉を依頼すれば直接やり取りをする必要がなくなるため、精神的な負担を軽減できます。

また、これまで関わりのなかった相続人も、弁護士から連絡がきたことで遺産分割協議に応じることもあるでしょう

相続や遺産分割協議を弁護士に依頼するメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

参考記事:相続手続きを弁護士に任せるメリットと弁護士選び方

調停や審判も安心して任せられる

遺産分割協議がまとまらない場合は、裁判所の調停や審判に移りますが、弁護士に依頼すれば調停や審判の対応も任せられます

自分ではうまく説明できないことも、弁護士が同席していれば、状況に応じたアドバイスや適切な対応が可能です。

書面や資料の作成など法律に則った手続きも安心して任せられます。

特別受益や寄与分の主張を適切に行える

相続人間でトラブルが起こりやすい特別受益や寄与分の主張についても、弁護士であればきちんとした主張をします。

他の相続人の特別受益の指摘や自身の寄与分の主張を認めてもらうためには、正確な財産調査や根拠となる証拠資料を揃える必要があります。

法律のプロである弁護士は、判例や審判例なども踏まえた適切な資料を準備し、法的に根拠のある主張が可能です。

まとめ

相続人の一人が遺産分割協議に応じない場合についてまとめます。

本記事のまとめ
  • 相続人が遺産分割協議に応じない理由は、遺言内容に不満・感情的な対立・寄与分や特別受益の主張などがある
  • 遺産分割協議に応じない相続人を放置すると、財産を有効活用できない・使込みや隠ぺい・相続税の申告期限の徒過・二次相続発生などのリスクがある
  • 遺産分割協議に応じない相続人がいる場合は、相続人への呼びかけを続ける・弁護士に相談する・遺産分割調停や審判を利用する
  • 遺産分割協議は、相続人と相続財産の調査・確定をしたうえで、遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
  • 弁護士に依頼すれば、話し合いをスムーズに進めやすくなる・調停や審判も安心して任せられる・特別受益や寄与分の主張を適切に行えるなどメリットが大きい

相続人の一人が遺産分割協議に応じない理由はいろいろありますが、放置すると様々なリスクがあります。

遺産分割協議を始めとする相続問題に詳しい弁護士に早めに相談しましょう

相続人間でトラブルが起こりやすい特別受益寄与分の主張についても、弁護士であればきちんとした主張をします。

スムーズに解決するためには、法律や税の知識経験が必要です。

弁護士法人アクロピースは、相続問題に強い弁護士があなたに最適な解決方法をご提案します。

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この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
東京弁護士会・東京税理士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」「最高の税務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、法務と税務の両面から最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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