腹違いの兄弟に相続権はあるのか?異母兄弟の遺産分割をめぐるトラブルと対処法を解説

腹違いの兄弟に相続権はあるのか?異母兄弟の遺産分割をめぐるトラブルと対処法を解説

父親が亡くなったときに、急に腹違いの兄弟が出現し、相続で争いになることがあります。

父親の相続をめぐって、下記のような心配や不安を感じる方もいるでしょう。

  • 腹違いの兄弟は相続人になれるのか?
  • 腹違いの兄弟の相続割合は自分と同じことはないだろう!

腹違いの兄弟は法定相続人です。

相続放棄しなければ遺産分割協議に参加することになります。

腹違いの兄弟がいる場合の相続は、相続人の範囲や順位、相続分がわかりにくいケースもあるため注意が必要です。

腹違いの兄弟がいる場合の相続について、相続人の範囲や相続割合、トラブルへの対処法などをわかりやすく解説します。

腹違いの兄弟がいて相続に関する不安がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士法人アクロピースでは、初回相談を60分間無料で行っております。

相続に関わるお悩みを早期解決に導きますので、ぜひお気軽に下記よりお問い合わせください。

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目次

腹違いの兄弟(異母兄弟)とは

腹違い

腹違いの兄弟とは父親は同じであるが母親が異なる兄弟です。

腹違いの兄弟の典型的な例は、次の2つです。

  1. 父親と前妻(後妻)との間に生まれた子
  2. 父親が認知した子

1のケースは、父親と婚姻関係にあった妻との間に生まれた子(嫡出子です。

父親が前妻と死別又は離婚した場合に、再婚や再々婚したケースなどが該当します。

2のケースは、父親と婚姻関係がない女性との間に生まれた子(いわゆる婚外子、法律的には非嫡出子)を、父親が認知した場合です(民法779条)。

腹違いの兄弟は、母親は同じで父親が異なる兄弟を異父兄弟というのに対し、異母兄弟ともいわれます。

腹違いの兄弟(異母兄弟)に相続権はあるのか?

相続権

腹違いの兄弟の相続権は、次のようになります。

  • 腹違いの兄弟は法定相続人
  • 認知された腹違いの兄弟は法定相続人になる
  • 腹違いの兄弟に相続権がない場合がある

腹違いの兄弟は、原則として、相続権がある法定相続人です。

民法は、亡くなった方(被相続人)との関係によって、相続人の範囲(法定相続人)と順位を次のとおり定めています。

順位相続人(被相続人との関係根拠条文
1配偶者と子(代襲相続する孫)民法887条1項・2項
2配偶者と直系尊属(父母・祖父母等)民法889条1項1号
3配偶者と兄弟姉妹民法889条1項2号

被相続人の配偶者は、常に相続人になります(民法890条)。

相続順位1位は、被相続人の子で、被相続人の兄弟姉妹の相続順位は3位です。

出典:国税庁ホームペジ(No.4132 相続人の範囲と法定相続分
出典:eーGovポータル|民法

相続人の範囲と順位については、以下の記事で詳しく解説しています。

ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:兄弟の一人だけが相続することはできるの?注意点を解説

腹違いの兄弟は法定相続人

父親が死去した場合、腹違いの兄弟は父親の実子であることに変わりはなく、相続権があります民法第887条)。
ちなみに「被相続人の子」は、実子だけでなく、親と養子縁組した子(血のつながりのない兄弟)も戸籍上「子」であり民法第809条、相続権があります。

前妻の子の相続権については、以下の記事で詳しく解説しています。

ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:前妻の子にも相続権はある?よくあるトラブル・注意点を解説

認知された腹違いの兄弟は法定相続人になる

父親によって認知された子(腹違いの兄弟)は、父親が死去した場合に法定相続人になります(民法784条)。

認知の方法は、次の4つがあります。

  1. 任意認知:父親が認知届を役場に提出する(民法781条1項
  2. 遺言認知:父親が遺言書で認知する(民法781条2項
  3. 強制認知:子らが認知の訴えを起こす(民法787条
  4. 死後認知:父親の死後に認知の訴えを起こす(民法787条

認知の訴えは、父又は母の死亡の日から3年以内にしなければなりません(民法787条ただし書き)。

腹違いの兄弟に相続権がない場合がある

次の場合、腹違いの兄弟に相続権はありません。

  1. 認知されていない腹違いの兄弟:
    認知されていない場合は、法律上、親子関係が認められないため
  2. 自分の母親が亡くなった場合:
    腹違いの兄弟と自分の母との間に親子関係はないため

被相続人によって、腹違いの兄弟が相続人になるか否かが変わるため、家族関係をきちんと把握しておかなければなりません。

腹違いの兄弟の相続順位と相続割合

相続順

腹違いの兄弟の相続順位と相続割合は、基本、実子と同じです。

民法が定める相続割合(法定相続分)は、次表のとおりです(民法900条)。

相続人相続割合根拠条文
1配偶者と子配偶者1/2、子1/2民法900条1号
2配偶者と直系尊属(父母・祖父母等)配偶者2/3、直系尊属1/3民法900条2号
3配偶者と兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4民法900条3号
4子・直系尊属・兄弟姉妹がそれぞれ数人いるそれぞれ均等に配分民法900条4号

出典:国税庁ホームページ(No.4132 相続人の範囲と法定相続分

腹違いの兄弟の相続順位と相続割合について、次の2つの場合に分けて説明します。

  • 親が死去した場合
  • 腹違いの兄弟が死去した場合

親が死去した場合

父親が死去した場合、腹違いの兄弟は「被相続人の子」として第1順位の相続人になります。

相続割合は、腹違いか否かに関わらず、子として皆同じです。

例として「父母と兄弟2人、腹違いの兄弟がいる」場合の、相続割合を示します。

スクロールできます
現家族腹違いの兄弟等相続割合
父母と兄弟2人
父が死去
腹違いの兄弟1人(前妻の子・認知された子)母1/2、各兄弟(腹違い含む)1/2×1/3
(前妻は相続権なし)
父母と兄弟2人
父が死去
認知されていない子1人母1/2、各兄弟1/2×1/2
(認知されていない子は相続権なし)
父と兄弟2人
(母は既に死去)
父が死去
腹違いの兄弟1人(前妻の子・認知された子)各兄弟(腹違い含む)1/3
(認知されていない子は相続権なし)

腹違いの兄弟が死去した場合

腹違いの兄弟が死去した場合、腹違いの兄弟に、子も親(直系尊属)もいないときは、腹違いの兄弟が相続人になります。

相続割合は、半血(父母の片方が同じ)は全血(父母双方が同じ)の1/2です(民法900条4号ただし書き)。

腹違いの兄弟が死去した場合の相続人と相続割合を、家族構成別に例示します。

スクロールできます
腹違いの兄弟の家族相続人相続割合
子がいる腹違いの兄弟の子
(配偶者がいれば配偶者も)
子が等分
(配偶者1/2、子1/2)
子・孫はいない、親は健在腹違いの兄弟の親
(配偶者がいれば配偶者も)
親が等分
(配偶者2/3、親1/3)
配偶者、子・孫、親はいない
全血の兄弟1人・半血の兄弟2人
腹違いの兄弟(全血・半血)腹違いの兄弟
半血各1/4、全血1/2

腹違いの兄弟(異母兄弟)の相続でよくあるトラブルと対処法

トラブル

腹違いの兄弟の相続では、次のようなトラブルが起こりがちです。

  • 腹違いの兄弟の所在がわからない
  • 相続時に腹違いの兄弟がいると初めてわかる
  • 遺産分割でもめる
  • 死後認知を請求される

腹違いの兄弟と対立し続けると、遺産分割がまとまらず相続は決着しません。

冷静に対処する必要があります。

腹違いの兄弟の所在がわからない

腹違いの兄弟とは接触が少なく、連絡先がわからないことがあります。

連絡先がわからないと相続手続きを進められません。

遺産分割協議は全員参加が原則のため、連絡先を何とか突き止め話し合う必要があります。

次のような方法で、腹違いの兄弟の所在を確認しましょう。

  • 親戚に確認する
  • 戸籍を調べる

できれば、父親が生存している間に、腹違いの兄弟の連絡先を確認しておくとよいでしょう。

相続時に腹違いの兄弟がいると初めてわかる

相続時に戸籍を確認し、初めて異母兄弟がいることを知り、驚くこともよくある例です。

相続は、期限がある届出等もあるため、冷静かつ迅速に対応する必要があります。

遺産分割でもめる

遺産を相続する際に、相続割合について争いが生じる恐れがあります。

「腹違いの兄弟は親の世話をしておらず同額はおかしい」との主張と、「これまで恩恵を受けていないから遺産は多くもらう」との主張が対立しがちです。

それぞれの言い分があっても、冷静に話し合うことが大事です。

できれば、父親にあらかじめ遺言書を作ってもらい「どの財産を」「誰に」「どれだけ渡す」か決めてもらいましょう。

死後認知を請求される

認知されていない子が、父親の死後に認知の訴えを提起する場合があります(民法787条)。

認知の訴えが認められれば、腹違いの兄弟は、子として相続人になります。

遺産分割協議後に、新たに腹違いの兄弟の存在が発覚すると、腹違いの兄弟が加わっていない遺産分割協議はやり直さなければなりません。

相続人に被相続人からの遺贈や贈与があった場合は、特別受益として持戻しを主張される可能性もあるでしょう(民法903条)。

死後認知の場合、嫡出子と非嫡出子の対立が深刻で難航することも多いため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

腹違いの兄弟(異母兄弟)がいる場合の相続でもめないための注意点

注意点

腹違いの兄弟がいる場合の相続でもめないために、次のような点に注意しましょう。

  • 相続関係を明らかにしておく
  • 腹違いの兄弟にきちんと連絡する
  • 相手の立場も考えて冷静に話し合う
  • 相続放棄の依頼も選択肢

相続関係を明らかにしておく

誰が相続人かをしっかり把握することが重要です。

親の戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍謄本)で、腹違いの兄弟(前妻の子・認知された子)がいないか確認しておきましょう。

親が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍を確認する必要があります。

戸籍は相続人が取り寄せることもできますが、できれば親が存命中に確認しておくようにしましょう。

腹違いの兄弟にきちんと連絡する

腹違いの兄弟にきちんと連絡することが必須です。

連絡するときは、腹違いの兄弟と付き合いがない場合は、相手が警戒しないよう、電話より丁寧な手紙がおすすめです。

連絡を取らず放置していると、遺産分割協議が進みません。

相続税の申告など必要な手続きが遅れないよう、早めに連絡しましょう。

相手の立場も考えて冷静に話し合う

腹違いの兄弟は、父親の相続人として遺産相続の権利があります。

遺産分割協議(民法907条)は全員の合意が必要なため、冷静に話し合いましょう。

遺産分割協議がまとまらなければ、遺産分割調停や審判などに移行して紛争が長引いてしまいます。

互いに譲歩して話し合いをまとめるようにしましょう。

相続放棄の依頼も選択肢

腹違いの兄弟が被相続人と関わりがほとんどなかった場合、相続放棄(民法939条)を受け入れてもらえる可能性もあります。

状況によっては、放棄の検討依頼もあり得る選択肢です。

ただし、一方的に放棄を迫るような対応をしてはいけません。

相手に不快感を持たれないよう十分な配慮が必要です。

腹違いの兄弟(異母兄弟)に相続させない方法はある?

相続させない

腹違いの兄弟(異母兄弟)に遺産を相続させたくないと思う場合もあるでしょう。

方法としては、次の2つが考えられます。

  • 遺言書を作成する
  • 生前贈与する

詳しく説明します。

遺言書を作成する

腹違いの兄弟(異母兄弟)に相続させない1つ目の方法は、遺言書を作り、遺産の相続方法を指定することです。

遺言者は、包括又は特定の名義で財産の全部又は一部を処分できます(民法964条第1項)。

相続人全員が別の合意をしなければ、原則、遺言書のとおりに遺産を分けられます。

嫡出子の相続分を増やし、非嫡出子や他の腹違いの兄弟の取得分を減らすことも可能です。

ただし、遺言の有効性、腹違いの兄弟の遺留分には注意が必要です。

遺言の有効性に注意

遺言当時に遺言能力がなかった場合は、遺言書が無効になります(民法963条)。

形式に不備がある遺言、死期が近い父親が書いた遺言は、有効性を争われる可能性があります(民法960条民法968条参照)。

遺留分に注意

兄弟姉妹以外の相続人の遺産取得額が遺留分を下回った場合、他の相続人などに対する遺留分侵害額請求権が発生します。

父親が亡くなった場合、相続人となる腹違いの兄弟には遺留分(1/2)が保障されています(民法1042条)。

遺言があっても遺留分を侵害する場合は、侵害額相当額を支払わなければなりません(民法1046条)。

腹違いの兄弟が亡くなって兄弟姉妹が相続する場合は、兄弟姉妹に遺留分はありません。

生前贈与する

生前贈与すれば、ほとんどの財産を腹違いの兄弟以外に渡すことが可能です。

生前贈与の方法は、次のような方法があります。

  • 暦年贈与:年間110万円の基礎控除がある
  • 相続時精算課税:2,500万円まで非課税、贈与財産は相続財産に加算される

ただし、贈与が遺産の前渡しとみなされ特別受益となる場合や、遺留分を侵害する可能性もあるので注意が必要です。

死亡した時に財産を無償で渡すと生前に決めておく死因贈与も可能です。

不動産を死因贈与すれば、土地や建物を確実に受贈者へ渡せます。

ただし、死因贈与した財産は相続税の課税対象になります。

生前贈与同様、遺留分侵害にも注意が必要です。

贈与の種類や贈与契約書の書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。

ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:贈与契約書の書き方!なぜ必要?作成手順と注意点を解説【ケース別雛形付】

出典:国税庁ホームページ(令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし

相続で腹違いの兄弟(異母兄弟)ともめたときの対応策

対応策

相続で腹違いの兄弟(異母兄弟)ともめてしまい、まとまりそうもないときは、次の対応を検討しましょう。

  • 遺産分割調停を申し立てる
  • 弁護士に相談する

遺産分割調停を申し立てる

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てると、調停の場が設けられ、調停委員が間に入って話し合いを進めてくれます。

中立的な調停委員が入ることで、お互いに冷静に話しやすくなるでしょう。

調停委員が、解決案を示してくれることもあります。

参考:裁判所|遺産分割調停

弁護士に相談する

腹違いの兄弟との話し合いが難しいときは、相続問題に詳しい弁護士に相談するのもよい方法です。

弁護士に相談すれば、次のようなメリットがあります。

  • 弁護士が当事者に代わって遺産分割の話し合いをまとめる
  • 腹違いの兄弟の連絡先がわからない場合は、相手を捜す
  • 調停や審判にもスムーズに対応できる

まとめ

まとめ

腹違いの兄弟(異母兄弟)がいる場合の相続について、まとめると次のようになります。

  • 腹違いの兄弟(認知された子を含む)は父親の第1順位の相続人・相続割合は実子として同じ
  • 死去した腹違いの兄弟に子も親もないときは生存している兄弟が相続人、相続割合は半血(父母の片方が同じ)は全血(父母双方が同じ)の半分
  • 腹違いの兄弟の所在不明、遺産分割の不満、死後認知請求などがトラブル要因
  • 相続でもめないため、相続関係を明らかにしておく、冷静に話し合うことが必要
  • 腹違いの兄弟に相続させない方法は、遺言書の作成か生前贈与

腹違いの兄弟と、トラブルのため対立し続けると、遺産分割がまとまらず相続は決着しません。

冷静に対処し迅速に解決する必要があります。

どう対応すべきか判断が難しいとき、悩むときは、法律の専門家である弁護士法人アクロピースにご相談ください。

60分間の無料相談を実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせしてみてください。

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この記事がみなさまの参考になれば幸いです
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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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