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自身に兄弟がいる場合に、兄弟のうち自分だけが相続できるようにしたいが「可能なのか、問題はないのか」と悩む方もいるでしょう。
兄弟のうち自分一人だけが相続すると強引に話を進めてしまうと、兄弟間でトラブルが起こり、仲が悪くなるかもしれません。
特に遺産が多い場合や負債の方が大きい場合は、兄弟間できちんとした話し合いが必要です。
兄弟のうち一人だけが相続することの可否、トラブルなく相続できるようにするための方法と注意点を解説します。
兄弟間の相続で悩んでいる方は、相続問題に強い弁護士法人アクロピースにご相談ください。
初回60分の相談は無料です。
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兄弟のうち一人だけが遺産をすべて相続できる場合もあります。
たとえば、親の遺産が不動産だけの場合、分割は困難です。
さまざまな事情により、兄弟へ遺産が分割できないケースもあるため、親が遺言を残していれば兄弟の一人だけが相続することもできます。
遺言がない場合でも、兄弟全員が遺産分割協議で兄弟の一人に相続させることに合意することで、兄弟一人が相続することも可能です。
兄弟が相続人となるケースは、次の場合です。
民法は、相続人の範囲と順位を次のとおり定めています。
相続順位 | 被相続人との関係 | 根拠規定 |
---|---|---|
1 | 子(代襲相続する孫) | 民法887条1項・2項 |
2 | 直系尊属(父母・祖父母等) | 民法889条1項1号 |
3 | 兄弟姉妹 | 民法889条1項2号 |
常に | 配偶者 | 民法890条 |
兄弟の相続順位は3位です。
被相続人の配偶者は常に相続人になります。
親(被相続人)が死亡した場合、子である兄弟は、親の配偶者とともに相続人になります。
兄弟が相続人となるケースとして、一般的によくある例です。
兄弟のうち誰かが親より先に亡くなっていた場合は、亡くなった兄弟の子(甥・姪)が相続権を引き継ぎます(代襲相続、民法887条2項)。
関連記事:【配偶者なし 子なし 親なし 兄弟あり】の相続はどうなる?相続させたくない場合の対策も解説
自分の兄弟が死亡した場合に、相続人になる場合があります。
兄弟(被相続人)に子や親がいないときは、被相続人の兄弟が、死去した兄弟の配偶者とともに相続人になります。
相続順位が1位(被相続人の子)と2位(被相続人の父母等)の相続人が相続放棄すれば、相続権は3位の兄弟姉妹に移ります。
被相続人に配偶者がいない場合は、兄弟のみが相続人になります。
相続財産を兄弟のうち一人だけが相続できるのかについて、次のケース別に解説します。
相続人が1人の場合は、すべての遺産を一人だけで相続できます。
被相続人に配偶者がおらず、子が1人だけの場合などです。
関連記事:【配偶者なし 子なし 親なし 兄弟あり】の相続はどうなる?相続させたくない場合の対策も解説
相続人が複数いても、他の相続人が全員「相続放棄」すると、残された一人が遺産をすべて相続できます。
相続放棄した人は、相続人の地位を失い「初めから相続人とならなかった」ものとみなされます(民法939条)。
権利も義務も受け継ぎません。
放棄は「自己のために相続開始があったことを知った時から3か月以内」にする必要があります(民法915条1項)。
他の相続人が全員相続分を放棄した場合や、他の相続人全員から譲渡を受けた場合も、一人で遺産をすべて相続できます。
「相続分」の放棄とは、遺産を相続しないと一方的に意思表示することです。
相続分の放棄はあくまで相続財産を承継する権利のみを放棄するものです。
相続分を放棄・譲渡した人は、相続人であることに変わりなく、負債は承継されます。
相続人が複数いるときの相続分(法定相続分)は、次のとおりです(民法900条)。
相続人 | 相続分 | 根拠規定 |
---|---|---|
配偶者と子 | 配偶者1/2、子1/2 | 民法900条1号 |
配偶者と直系尊属 | 配偶者2/3、直系尊属1/3 | 民法900条2号 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 | 民法900条3号 |
子・直系尊属・ 兄弟姉妹が数人いる | 相等しい (父母の一方のみが同じ兄弟姉妹は1/2) | 民法900条4号 |
相続人全員で遺産分割協議をし、相続人の一人が遺産をすべて相続することに合意したときは、その相続人が全遺産を相続できます(民法907条1項)。
兄弟3人が法定相続人である場合に、長男一人が預貯金・不動産などすべての遺産を相続すると合意したときなどです。
関連記事:遺産分割協議における預貯金の分け方、記載方法を弁護士が解説
相続人を1人だけ指定して「すべての遺産を相続させる」との遺言も可能です(民法902条1項参照)。
ただし、遺留分との関係で注意が必要です。
関連記事:遺言書があるかどうかを確認する方法は?自筆・公正・秘密の3種類に分けて解説
他の法定相続人(推定相続人)が全員「相続欠格者」に該当する場合や「相続人廃除」された場合は、残った一人の相続人がすべての遺産を相続します。
相続欠格とは、違法行為などをしたため、相続人となる資格を法律上失うことです(民法891条)
相続廃除とは、被相続人を虐待、侮辱するなど一定の非行があったため、被相続人により相続人の地位を奪われることです(民法892条)。
遺産の相続をする場合に確認すべきポイントが3つあります。
遺産を受け継げない場合もあれば、遺産を相続しない方がよい場合もあります。
最初に遺書の有無を確認しましょう。
被相続人が遺言書で、遺産を特定の人に渡すと指定している場合があるからです。
遺言には、遺言者が自分で作成する自筆証書遺言(民法968条)と、公証人が作成する公正証書遺言(民法969条)の2種類があります。
故人の自宅に遺言書がなければ、公証役場(公正証書遺言を保管)や法務局(自筆証書遺言書を保管)で遺言書の有無を確認することもできます。
自筆証書遺言は開封してはいけません。家庭裁判所で検認が必要です。
参考:裁判所「遺言書の検認」
被相続人の遺産はプラスとは限りません。借金などのマイナス財産もあります。
遺産の全貌がわからなければ、一人で相続した方がよいか否かの判断はできません。
借金や債務の方が多い場合は、相続放棄や限定承認を検討した方がよいです。
限定承認は、被相続人の債務の弁済を得た財産の限度内にできます(民法922条)。
兄弟姉妹が知らない相続人がいることもあります。
被相続人との関係が希薄な場合は、戸籍謄本などで他の相続人の有無を調べましょう。
被相続人の子や兄弟が亡くなっている場合は代襲相続もあり得るため、しっかり確認しましょう。
遺産を兄弟一人だけが相続する方法としては、次のような方法があります。
相続を放棄することを決めた他の兄弟が全員、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。
申述は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければなりません。
全員分が受理されれば、残った一人が遺産をすべて相続できます。
参考:裁判所|相続の放棄の申述
一人を除く他の兄弟が全員、相続分を放棄するか、相続分を兄弟の一人に譲渡する方法です。
相続分の放棄は、時期や方式に決まりはありません。
放棄は一方的な意思表示ですが、明確化のため遺産分割協議書などに「相続分を放棄する」と明示しておきましょう。
相続分を譲渡する場合は、有償か無償かを決め、譲受者との間で書面を作成しましょう。
相続分の放棄や譲渡は、相続財産を引き継ぐ権利のみを放棄・譲渡するもので、債務は引き継がれます。
遺産分割協議を行い、兄弟の一人に全遺産を相続させる旨の合意をします。
合意ができたら遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書には「全遺産を○○が相続する」との記載もできますが、不動産や預貯金などの主な財産を個別に明記しておくと、移転登記・名義変更などの相続手続きがスムーズになります。
関連記事:遺産分割協議における預貯金の分け方、記載方法を弁護士が解説
被相続人が「兄弟の一人に遺産をすべて相続させる」旨の遺言書を作成しておきます。
遺言書を自筆する場合は、財産目録を除く全文を自筆で書き、作成日を明記して署名押印する必要があります(自筆証書遺言、民法968条)。
自筆証書遺言書は自分で保管できますが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すると、紛失や改ざんの防止に有効です。
公証人役場で公証人が作成する公正証書遺言(民法969条)を利用すれば、より安心できます。
参考:法務省|自筆証書遺言書保管制度
参考:日本公証人連合|公証事務Q1.公正証書遺言とは、どのようなものですか?
関連記事:遺言書があるかどうかを確認する方法は?自筆・公正・秘密の3種類に分けて解説
兄弟の一人だけが単独相続を目指す場合は、次の3点に注意しましょう。
単独相続を目指すときは、他の相続人全員の合意が必要です。
円滑に相続手続きを進められるよう、他の相続人に単独相続を希望する理由をていねいに説明し、理解してもらえるよう努めましょう。
相続人全員が話し合いで合意しても、口約束だけでは反故にされるおそれがあります。
必ず遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書は、不動産の相続登記、預貯金の解約・払い戻しなどの相続手続きで必須の書面です。
単独相続は、次のような場合にトラブルが起こることがあります。
当事者だけでの話し合いが難しいときは、相続の専門家である弁護士に依頼して話し合った方がよいでしょう。
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。
自分に「すべての遺産を相続させる」という遺言書があっても、他の相続人が別の遺言書を持ち出す可能性もあります。
遺言書が複数ある場合、作成日が新しいものが優先されますが、内容が矛盾(抵触)していない部分はどの遺言も有効です。
参考:eーGov法令検索|民法1022条(遺言の撤回)、民法1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
遺留分は、一定の法定相続人に認められている最低限の遺産取得分です(民法1042条)。
被相続人の配偶者と子や父母などに遺留分があります。
兄弟の一人だけに遺産を譲るとの遺言があっても、他の相続人から遺留分侵害額請求があった場合は、遺留分侵害額を金銭で支払わなければなりません(民法1046条1項)。
「相続の放棄」ではなく「相続分」の放棄や譲渡をした場合、遺産を承継する権利はなくなりますが、負債の支払義務は残ります。
「相続分を放棄したからもう相続とは関係ない」と思っていても、急に債権者から支払いを求められることもあるため注意しましょう。
プラス財産よりマイナス財産が多い場合は、相続放棄も選択肢の1つとして検討すべきです。
相続放棄すれば「初めから相続人とならなかった」ものとみなされます(民法939条)。
相続の放棄は、相続人が単独で家庭裁判所に申述して行います。
相続税の基礎控除額は、次のとおりです(相続税法15条1項)。
3000万円+600万円×法定相続人の人数
相続放棄があっても法定相続人数は変更なく、基礎控除の金額も変わりません。
相続放棄は、相続人個々の自由意思でできるため、兄弟のうち一人だけ相続放棄することも可能です。(民法915条1項)。
共有の場合の持ち分を放棄することは、相続の場合に限らず民法で認められています(民法255条)。
2023年4月27日からは、相続した土地を手放したい場合に、国が引き取る制度がスタートしています。
第三順位までの法定相続人が全員放棄すると、相続人は不存在となります。
相続人が不存在になった場合、遺産は次のようになります。
特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人や、被相続人の療養看護に努めた人などで、裁判所に分与を請求できます。
兄弟のうち一人だけが相続できるようにする方法等について、まとめると次のようになります。
兄弟のうち一人だけが相続できるようにする方法で悩んでいる方は、弁護士に相談するのがおすすめです。
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弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属
私のモットーは「誰が何と言おうとあなたの味方」です。事務所の理念は「最高の法務知識」のもとでみなさまをサポートすることです。みなさまが納得できる結果を勝ち取るため、最後まで徹底してサポートしますので、相続問題にお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。